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状態に依る文脈依存性:KCBS 不等式

2026年10月17日6分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第9部 第3章 Kochen–Specker の定理と文脈依存性
目次
  1. 5本の射線と五角形
  2. 非文脈的な上限と量子の値
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第9部 第3章 §9.3.5 ★★ 最小の次元3で、5つの射影だけを使い、特定の状態で非文脈的な上限を破る不等式を作る

5本の射線と五角形

状態によらない証明は、3次元では十数本以上の射線を必要とする。射線を減らす代わりに状態を選ぶと、3次元・5本で文脈依存性が測れる(A. A. Klyachko, M. A. Can, S. Binicioğlu and A. S. Shumovsky (2008), Physical Review Letters 101, 020403。頭文字から KCBS と呼ぶ)。

R3\mathbb{R}^3 に5本の単位ベクトル

vj=(cos⁡θ, sin⁡θcos⁡4πj5, sin⁡θsin⁡4πj5)(j=0,…,4),cos⁡2θ=cos⁡(π/5)1+cos⁡(π/5)=15(9.3.10)\bm{v}_j=\Bigl(\cos\theta,\ \sin\theta\cos\frac{4\pi j}{5},\ \sin\theta\sin\frac{4\pi j}{5}\Bigr)\quad(j=0,\dots,4),\qquad \cos^2\theta=\frac{\cos(\pi/5)}{1+\cos(\pi/5)}=\frac{1}{\sqrt5}\tag{9.3.10}

をとる。隣り合う vj\bm{v}_j と vj+1\bm{v}_{j+1}(jj は5を法とする)は、方位角が 4π/54\pi/5 だけ違い、内積は cos⁡2θ+sin⁡2θcos⁡4π5\cos^2\theta+\sin^2\theta\cos\frac{4\pi}{5} である。cos⁡4π5=−cos⁡π5\cos\frac{4\pi}{5}=-\cos\frac\pi5 と sin⁡2θ=1−cos⁡2θ\sin^2\theta=1-\cos^2\theta を入れると、cos⁡2θ\cos^2\theta の値でちょうど 00 になる。射影を P^j=∣vj⟩⟨vj∣\hat P_j=| v_j \rangle \langle v_j | と書くと、隣り合う P^j\hat P_j と P^j+1\hat P_{j+1} は直交する(交換し、同時に測れる)。隣り合わない組は直交しない。5つの文脈 {P^j,P^j+1}\{\hat P_j,\hat P_{j+1}\} が環状につながっている(図 9.3.3)。

図

図 9.3.3 KCBS の5つの射影の直交関係。vj\bm{v}_j の方位角は 4πj/54\pi j/5 なので、隣り合う番号の射影を結ぶと星形(五角形の閉路)になる。11 を置ける頂点は、線で結ばれていない頂点どうしに限られ、5つの頂点の閉路では最大2個である。

非文脈的な上限と量子の値

非文脈的な割り当てでは、v(P^j)∈{0,1}v(\hat P_j)\in\{0,1\} で、直交する P^j,P^j+1\hat P_j,\hat P_{j+1} を両方 11 にはできない(定義 9.3.3)。5つの頂点が閉路をなすとき、隣り合わないように 11 を置けるのは最大2個なので、λ\lambda ごとに ∑jvλ(P^j)≤2\sum_jv_\lambda(\hat P_j)\le2、混合をとって

∑j=04Pr⁡(P^j=1)≤2(非文脈的な隠れた変数)(9.3.11)\sum_{j=0}^{4}\Pr(\hat P_j=1)\le2\qquad(\text{非文脈的な隠れた変数})\tag{9.3.11}

となる。ここで Pr⁡(P^j=1)\Pr(\hat P_j=1) は、P^j\hat P_j を P^j−1\hat P_{j-1} と一緒に測っても P^j+1\hat P_{j+1} と一緒に測っても同じ値をとるとした(非文脈性)。

量子力学では ∑jPr⁡(P^j=1)=⟨ψ∣S^∣ψ⟩\sum_j\Pr(\hat P_j=1)=\langle \psi | \hat S | \psi \rangle、S^=∑jP^j\hat S=\sum_j\hat P_j である。S^\hat S を計算すると、第1軸の方向 (1,0,0)(1,0,0) が固有ベクトルで固有値 5cos⁡2θ=55\cos^2\theta=\sqrt5、それに直交する平面では5本の方位が一様に散らばるので固有値 52sin⁡2θ=5−52≈1.382\frac52\sin^2\theta=\frac{5-\sqrt5}{2}\approx1.382(2重)である(トレース 5+(5−5)=5\sqrt5+(5-\sqrt5)=5 と合う)。よって

max⁡ψ∑jPr⁡(P^j=1)=5≈2.236>2(9.3.12)\max_\psi\sum_j\Pr(\hat P_j=1)=\sqrt5\approx2.236>2\tag{9.3.12}

で、状態 (1,0,0)(1,0,0) が非文脈的な上限を破る。5本の射影の選び方まで最適化しても 5\sqrt5 を超えないことは、直交関係のグラフ(5点の閉路)の Lovász 数が 5\sqrt5 であることから出る(L. Lovász (1979), IEEE Transactions on Information Theory 25, 1–7)。

A^j=2P^j−1^\hat A_j=2\hat P_j-\hat 1(固有値 ±1\pm1)を使えば、相関の形にも書くことができる。P^jP^j+1=0\hat P_j\hat P_{j+1}=0 から A^jA^j+1=1^−2P^j−2P^j+1\hat A_j\hat A_{j+1}=\hat 1-2\hat P_j-2\hat P_{j+1} なので、∑j⟨A^jA^j+1⟩=5−4∑jPr⁡(P^j=1)\sum_j\langle \hat A_j\hat A_{j+1} \rangle =5-4\sum_j\Pr(\hat P_j=1) となり、(9.3.11) は ∑j⟨A^jA^j+1⟩≥−3\sum_j\langle \hat A_j\hat A_{j+1} \rangle \ge-3、量子の最小値は 5−45≈−3.9445-4\sqrt5\approx-3.944 である。単一の光子の3準位系(qutrit)でこの不等式の破れが観測されている(R. Lapkiewicz et al. (2011), Nature 474, 490–493)。

この不等式は、Peres–Mermin と違って状態に依る。S^\hat S の固有値 1.3821.382 の方向にある状態では、量子の値も 22 以下になる。一方、必要な次元は3で、Bell の不等式のような2つの系も、もつれも要らない。1つの分けられない系の中で、測定の組み合わせの間の関係だけで古典と量子が分かれる。

例題 9.3.5 KCBS の値を状態の向きで調べる ★★

オリジナル状態を ∣ψ⟩=(cos⁡α,sin⁡α,0)| \psi \rangle =(\cos\alpha,\sin\alpha,0)(実の3準位系)とする。

  1. (1) ∑jPr⁡(P^j=1)\sum_j\Pr(\hat P_j=1) を α\alpha で表せ。
  2. (2) α=12\alpha=\frac12(ラジアン)での値を求め、(9.3.11) を破るか判定せよ。
  3. (3) 破れが起きる α\alpha の範囲を求めよ。
解答

(1) ∣ψ⟩| \psi \rangle は S^\hat S の固有ベクトル (1,0,0)(1,0,0)(固有値 5\sqrt5)と (0,1,0)(0,1,0)(固有値 5−52\frac{5-\sqrt5}{2})の重ね合わせなので

∑jPr⁡(P^j=1)=⟨ψ∣S^∣ψ⟩=5cos⁡2α+5−52sin⁡2α.\sum_j\Pr(\hat P_j=1)=\langle \psi | \hat S | \psi \rangle =\sqrt5\cos^2\alpha+\frac{5-\sqrt5}{2}\sin^2\alpha .

(2) cos⁡212≈0.7702\cos^2\frac12\approx0.7702、sin⁡212≈0.2298\sin^2\frac12\approx0.2298 なので、2.2361×0.7702+1.3820×0.2298≈1.7221+0.3176≈2.0402.2361\times0.7702+1.3820\times0.2298\approx1.7221+0.3176\approx2.040。22 を超えるので破る。

(3) 5cos⁡2α+5−52sin⁡2α>2\sqrt5\cos^2\alpha+\frac{5-\sqrt5}{2}\sin^2\alpha>2 を cos⁡2α+sin⁡2α=1\cos^2\alpha+\sin^2\alpha=1 で整理すると

tan⁡2α<5−22−5−52=2(5−2)5−1=3−52=(5−12)2.\tan^2\alpha<\frac{\sqrt5-2}{2-\frac{5-\sqrt5}{2}}=\frac{2(\sqrt5-2)}{\sqrt5-1}=\frac{3-\sqrt5}{2}=\Bigl(\frac{\sqrt5-1}{2}\Bigr)^2 .

よって ∣tan⁡α∣<5−12≈0.618\lvert \tan\alpha\rvert <\frac{\sqrt5-1}{2}\approx0.618、すなわち (1,0,0)(1,0,0) から約 31.7∘31.7^\circ 以内の向きの状態で破れる。状態が対称軸から離れると、非文脈的な模型で説明できる範囲に入る。

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