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平方和と自由度の計算・分散分析表の作成

2026年10月15日24分で読めますAI生成教科書『資格試験』第2章 基本的考え方と解析方法
目次
  1. 平方和の分解
  2. 計算式と修正項
  3. 自由度
  4. なぜ で割るのか
  5. 期待平均平方
  6. 分散比の分布と 検定
  7. 分散分析表
  8. 数値変換
  9. 寄与率
  10. 確認テスト
  11. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

実験計画法 第2章 §2.2 ★★★ ST=SA+SeS_T=S_A+S_e の分解・自由度・期待平均平方・FF 検定。1級で毎回問われる中心の手続き

平方和の分解

データの総平均からのずれを、水準平均を経由して2つに分ける。

xij−xˉˉ=(xˉi⋅−xˉˉ)+(xij−xˉi⋅).(2.5)x_{ij}-\bar{\bar x}=(\bar x_{i\cdot}-\bar{\bar x})+(x_{ij}-\bar x_{i\cdot}).\tag{2.5}

右辺の第1項は「どの水準でとったか」によるずれ(主効果の推定値 a^i\hat a_i)、第2項は「同じ水準の中でのばらつき」(残差 eije_{ij})である。両辺を2乗して i,ji,j について和をとる。

定義 2.3(平方和)

ST=∑i=1a∑j=1r(xij−xˉˉ)2,SA=∑i=1a∑j=1r(xˉi⋅−xˉˉ)2=r∑i=1a(xˉi⋅−xˉˉ)2,Se=∑i=1a∑j=1r(xij−xˉi⋅)2(2.6)S_T=\sum_{i=1}^a\sum_{j=1}^r(x_{ij}-\bar{\bar x})^2,\qquad S_A=\sum_{i=1}^a\sum_{j=1}^r(\bar x_{i\cdot}-\bar{\bar x})^2=r\sum_{i=1}^a(\bar x_{i\cdot}-\bar{\bar x})^2,\qquad S_e=\sum_{i=1}^a\sum_{j=1}^r(x_{ij}-\bar x_{i\cdot})^2\tag{2.6}

をそれぞれ総平方和、因子 AA の平方和(級間平方和)、誤差平方和(級内平方和)と呼ぶ。

定理 2.4(平方和の分解)

ST=SA+SeS_T=S_A+S_e が成り立つ。

証明

(2.5) を2乗して和をとると

ST=SA+Se+2∑i=1a∑j=1r(xˉi⋅−xˉˉ)(xij−xˉi⋅).S_T=S_A+S_e+2\sum_{i=1}^a\sum_{j=1}^r(\bar x_{i\cdot}-\bar{\bar x})(x_{ij}-\bar x_{i\cdot}).

交差項では、因子 xˉi⋅−xˉˉ\bar x_{i\cdot}-\bar{\bar x} が jj によらないので、内側の和の外に出せる。

2∑i=1a(xˉi⋅−xˉˉ)∑j=1r(xij−xˉi⋅)2\sum_{i=1}^a(\bar x_{i\cdot}-\bar{\bar x})\sum_{j=1}^r(x_{ij}-\bar x_{i\cdot})

内側の和は残差の水準内の和で、§2.1 で見たとおり0である。よって交差項は消える。

分解の意味は幾何で見ると分かりやすい。データ NN 個を並べたベクトルを x\bm{x} とする。

この分解は、総平均を引いた x−xˉˉ1\bm{x}-\bar{\bar x}\bm{1} を、「水準ごとに一定の値をとるベクトル」の成分と「水準ごとに和が0のベクトル」の成分に分けている。前者と後者は内積が0(直交)なので、Pythagoras の定理によって長さの2乗が足し算になる。ST=SA+SeS_T=S_A+S_e はこの直交分解の式である。

計算式と修正項

定義式 (2.6) のまま計算すると、平均が割り切れないときに端数の2乗を何度も扱うことになる。手計算では次の形を使う。

命題 2.5(平方和の計算式)

修正項を CT=T2/NCT=T^2/N とおくと

ST=∑i=1a∑j=1rxij2−CT,SA=∑i=1aTi⋅2r−CT,Se=ST−SA.(2.7)S_T=\sum_{i=1}^a\sum_{j=1}^r x_{ij}^2-CT,\qquad S_A=\sum_{i=1}^a\frac{T_{i\cdot}^2}{r}-CT,\qquad S_e=S_T-S_A.\tag{2.7}

証明

ST=∑∑(xij2−2xijxˉˉ+xˉˉ2)=∑∑xij2−2xˉˉT+Nxˉˉ2S_T=\sum\sum(x_{ij}^2-2x_{ij}\bar{\bar x}+\bar{\bar x}^2)=\sum\sum x_{ij}^2-2\bar{\bar x}T+N\bar{\bar x}^2。xˉˉ=T/N\bar{\bar x}=T/N を代入すると −2T2/N+T2/N=−T2/N=−CT-2T^2/N+T^2/N=-T^2/N=-CT となる。SAS_A も同様に展開する。

SA=r∑i(xˉi⋅2−2xˉi⋅xˉˉ+xˉˉ2)=r∑ixˉi⋅2−2xˉˉ⋅r∑ixˉi⋅+raxˉˉ2=∑iTi⋅2r−CT.\begin{aligned}S_A&=r\sum_i(\bar x_{i\cdot}^2-2\bar x_{i\cdot}\bar{\bar x}+\bar{\bar x}^2) =r\sum_i\bar x_{i\cdot}^2-2\bar{\bar x}\cdot r\sum_i\bar x_{i\cdot}+ra\bar{\bar x}^2\\ &=\sum_i\frac{T_{i\cdot}^2}{r}-CT.\end{aligned}

最後の行では rxˉi⋅2=Ti⋅2/rr\bar x_{i\cdot}^2=T_{i\cdot}^2/r と r∑ixˉi⋅=Tr\sum_i\bar x_{i\cdot}=T を使った。総数は ra=Nra=N である。SeS_e は定理 2.4 から従う。

「修正項」の名前は、原点のまわりの2乗和 ∑∑xij2\sum\sum x_{ij}^2 を、総平均のまわりの2乗和へ直すために引く量であることに由来する。覚え方の要点は「合計を2乗して、その合計に含まれるデータの個数で割る」ことで、CT=T2/NCT=T^2/N も Ti⋅2/rT_{i\cdot}^2/r もこの形をしている。後の章の2元配置や直交配列表でも、平方和はすべて「(合計)2^2/(個数)の和 −CT-CT」の形で書ける。

自由度

平方和は足し合わせる項の数が多いほど大きくなるので、平方和の大小をそのまま比べても意味が無い。平方和を「独立に動ける成分の数」で割って比べる。この数が自由度である。

定義 2.6(自由度)

平方和を構成する偏差のうち、独立に値をとることのできるものの個数を、その平方和の自由度と呼ぶ。1元配置では

ϕT=N−1,ϕA=a−1,ϕe=a(r−1)=N−a,ϕT=ϕA+ϕe.(2.8)\phi_T=N-1,\qquad \phi_A=a-1,\qquad \phi_e=a(r-1)=N-a,\qquad \phi_T=\phi_A+\phi_e.\tag{2.8}

各値の根拠を数える。

  • 総平方和:偏差 xij−xˉˉx_{ij}-\bar{\bar x} は NN 個ある。偏差の総和は0なので、N−1N-1 個を決めれば残り1個は決まる。よって ϕT=N−1\phi_T=N-1。
  • 級間平方和:偏差 xˉi⋅−xˉˉ\bar x_{i\cdot}-\bar{\bar x} は aa 個ある。その和は ∑ixˉi⋅−axˉˉ=0\sum_i\bar x_{i\cdot}-a\bar{\bar x}=0 なので、ϕA=a−1\phi_A=a-1。
  • 誤差平方和:残差 eije_{ij} は NN 個ある。制約は水準ごとに1本ずつ(∑jeij=0\sum_j e_{ij}=0)あるので、ϕe=N−a\phi_e=N-a。

自由度は幾何の言葉では部分空間の次元である。平方和の分解のところで述べた「水準ごとに一定のベクトルで、成分の総和が0のもの」の全体はa−1a-1 次元、「水準ごとに和が0のベクトル」の全体は a(r−1)a(r-1) 次元である。SAS_A と SeS_e は、データをそれぞれの部分空間へ直交射影したベクトルの長さの2乗であり、自由度はその部分空間の次元に等しい。この見方は第4章で検定の理論を述べるとき、また数理統計の線形モデルの章とつなげるときに使う。

なぜ n−1n-1 で割るのか

自由度で割る操作は、不偏分散

S2=1n−1∑i=1n(Xi−Xˉ)2S^2=\frac{1}{n-1}\sum_{i=1}^n(X_i-\bar X)^2

が nn でなく n−1n-1 で割る理由と同じである。

命題 2.7(偏差平方和の期待値)

X1,…,XnX_1,\dots,X_n は独立で、期待値と分散が共通の μ,σ2\mu,\sigma^2 であるとする。このとき次が成り立つ。

E[∑k=1n(Xk−Xˉ)2]=(n−1)σ2.E\Bigl[\sum_{k=1}^n(X_k-\bar X)^2\Bigr]=(n-1)\sigma^2.

証明

∑k(Xk−Xˉ)2=∑kXk2−nXˉ2\sum_k(X_k-\bar X)^2=\sum_k X_k^2-n\bar X^2 と書ける(命題 2.5 の STS_T と同じ展開)。E[Xk2]=V[Xk]+(E[Xk])2=σ2+μ2E[X_k^2]=V[X_k]+(E[X_k])^2=\sigma^2+\mu^2、E[Xˉ2]=V[Xˉ]+μ2=σ2/n+μ2E[\bar X^2]=V[\bar X]+\mu^2=\sigma^2/n+\mu^2 を代入すると

E[∑k(Xk−Xˉ)2]=n(σ2+μ2)−n(σ2n+μ2)=(n−1)σ2.□E\Bigl[\sum_k(X_k-\bar X)^2\Bigr]=n(\sigma^2+\mu^2)-n\Bigl(\frac{\sigma^2}{n}+\mu^2\Bigr)=(n-1)\sigma^2. \quad\square

偏差 Xk−XˉX_k-\bar X の基準は、真の平均でなく、データから計算した Xˉ\bar X である。2乗和 ∑(Xk−c)2\sum(X_k-c)^2 を最小にする定数は c=Xˉc=\bar X である。そのため次の不等式が成り立ち、左辺の期待値は右辺の期待値 nσ2n\sigma^2 より小さくなる。

∑k(Xk−Xˉ)2≤∑k(Xk−μ)2\sum_k(X_k-\bar X)^2\le\sum_k(X_k-\mu)^2

減る量の期待値はちょうど σ2\sigma^2 の1個分(nV[Xˉ]nV[\bar X])である。平均を1つ推定するごとに自由度が1つ減るという言い方は、このことを指す。2乗和を自由度で割れば、平均の推定で失われた分を補正した σ2\sigma^2 の不偏推定量になる。

期待平均平方

平方和を自由度で割ったものを平均平方と呼ぶ。

VA=SAϕA,Ve=Seϕe.(2.9)V_A=\frac{S_A}{\phi_A},\qquad V_e=\frac{S_e}{\phi_e}.\tag{2.9}

平均平方の期待値(期待平均平方 E(V)E(V))を求めると、FF 検定が何をしているかが分かる。

定理 2.8(1元配置の期待平均平方)

構造式 (2.2) のもとで

E(Se)=a(r−1)σ2,E(SA)=(a−1)σ2+r∑i=1aai2,E(Ve)=σ2,E(VA)=σ2+rσA2,σA2=∑i=1aai2a−1.\begin{align*}&E(S_e)=a(r-1)\sigma^2,\qquad E(S_A)=(a-1)\sigma^2+r\sum_{i=1}^a a_i^2,\tag{2.10}\\&E(V_e)=\sigma^2,\qquad E(V_A)=\sigma^2+r\sigma_A^2,\qquad \sigma_A^2=\frac{\sum_{i=1}^a a_i^2}{a-1}.\tag{2.11}\end{align*}

証明

μ+ai\mu+a_i は引き算で消えるので、残差は誤差だけで書ける。

xij−xˉi⋅=εij−εˉi⋅x_{ij}-\bar x_{i\cdot}=\varepsilon_{ij}-\bar\varepsilon_{i\cdot}

よって水準ごとの部分は、独立な誤差 rr 個の偏差平方和である。各誤差は期待値0・分散 σ2\sigma^2 をもつ。命題 2.7 でその期待値は (r−1)σ2(r-1)\sigma^2。aa 水準分を足して E(Se)=a(r−1)σ2E(S_e)=a(r-1)\sigma^2。

SAS_A については、(2.3) と ∑ai=0\sum a_i=0 から次のように書ける。

xˉi⋅−xˉˉ=ai+(εˉi⋅−εˉˉ)\bar x_{i\cdot}-\bar{\bar x}=a_i+(\bar\varepsilon_{i\cdot}-\bar{\bar\varepsilon})

2乗して和をとると

SA=r∑iai2+2r∑iai(εˉi⋅−εˉˉ)+r∑i(εˉi⋅−εˉˉ)2.S_A=r\sum_i a_i^2+2r\sum_i a_i(\bar\varepsilon_{i\cdot}-\bar{\bar\varepsilon})+r\sum_i(\bar\varepsilon_{i\cdot}-\bar{\bar\varepsilon})^2.

第2項の期待値は0である。第3項について考える。εˉ1⋅,…,εˉa⋅\bar\varepsilon_{1\cdot},\dots,\bar\varepsilon_{a\cdot} は独立で、期待値0・分散 σ2/r\sigma^2/r をもつ。その平均が εˉˉ\bar{\bar\varepsilon} なので、命題 2.7 を n=an=a として使えば次を得る。

E[∑i(εˉi⋅−εˉˉ)2]=(a−1)σ2rE\Bigl[\sum_i(\bar\varepsilon_{i\cdot}-\bar{\bar\varepsilon})^2\Bigr]=\frac{(a-1)\sigma^2}{r}

rr 倍して (a−1)σ2(a-1)\sigma^2 を得る。自由度で割れば E(Ve)E(V_e)、E(VA)E(V_A) の式になる。

σA2\sigma_A^2 は主効果の大きさを分散の形で表した量で、母数模型(水準を固定して選んだ模型)では確率変数でなく定数である。

定理 2.8 から、2つの平均平方は次の量の不偏推定量である。

  • VeV_e は誤差分散 σ2\sigma^2 を推定する。
  • VAV_A は、誤差の分に主効果の分を足した σ2+rσA2\sigma^2+r\sigma_A^2 を推定する。

帰無仮説は次のとおりである。

H0: a1=⋯=aa=0(すなわち σA2=0)H_0:\ a_1=\dots=a_a=0\quad(\text{すなわち}\ \sigma_A^2=0)

H0H_0 のもとでは2つの平均平方がどちらも誤差分散を推定するので、比 VA/VeV_A/V_e は1の近くに来る。主効果があれば VAV_A の期待値は rσA2r\sigma_A^2 だけ大きくなり、比は1より大きくなる。これが分散比で検定する理由である。また、この式から σA2\sigma_A^2 の不偏推定量 σ^A2=(VA−Ve)/r\hat\sigma_A^2=(V_A-V_e)/r も得られる。

分散比の分布と FF 検定

検定に使うには、比の分布が要る。正規母集団の標本分布の結果(数理統計の第5章 §5.2)として、X1,…,XnX_1,\dots,X_n が独立に N(μ,σ2)\mathrm{N}(\mu,\sigma^2) に従うとき

1σ2∑k=1n(Xk−Xˉ)2∼χn−12,Xˉ と ∑k=1n(Xk−Xˉ)2 は独立(2.12)\frac{1}{\sigma^2}\sum_{k=1}^n(X_k-\bar X)^2\sim\chi^2_{n-1},\qquad \bar X\ \text{と}\ \sum_{k=1}^n(X_k-\bar X)^2\ \text{は独立}\tag{2.12}

が成り立つ。これを借りると次が言える。

定理 2.9(分散比の分布)

構造式 (2.2) のもとで、次の (i)(ii) が成り立つ。

  • (i) Se/σ2∼χϕe2S_e/\sigma^2\sim\chi^2_{\phi_e} である。また SeS_e は水準平均の組 (xˉ1⋅,…,xˉa⋅)(\bar x_{1\cdot},\dots,\bar x_{a\cdot}) と独立である。
  • (ii) H0:a1=⋯=aa=0H_0:a_1=\dots=a_a=0 のもとで SA/σ2∼χϕA2S_A/\sigma^2\sim\chi^2_{\phi_A} であり、次が成り立つ。

F0=VAVe∼FϕA,ϕe.(2.13)F_0=\frac{V_A}{V_e}\sim F_{\phi_A,\phi_e}.\tag{2.13}

証明

水準 ii のデータは、独立に N(μ+ai,σ2)\mathrm{N}(\mu+a_i,\sigma^2) に従う。(2.12) より、次の量は χr−12\chi^2_{r-1} に従い、xˉi⋅\bar x_{i\cdot} と独立である。

1σ2∑j=1r(xij−xˉi⋅)2\frac{1}{\sigma^2}\sum_{j=1}^r(x_{ij}-\bar x_{i\cdot})^2

異なる水準のデータは独立である。そのため Se/σ2S_e/\sigma^2 は、独立な χr−12\chi^2_{r-1} を水準の数だけ足したものである。カイ二乗分布の再生性により、これは χa(r−1)2\chi^2_{a(r-1)} に従う。また SeS_e は、水準平均の組全体と独立である。

帰無仮説のもとでは、水準平均 xˉ1⋅,…,xˉa⋅\bar x_{1\cdot},\dots,\bar x_{a\cdot} は独立に同じ分布 N(μ,σ2/r)\mathrm{N}(\mu,\sigma^2/r) に従う。再び (2.12) を n=an=a として使うと次を得る。

∑i(xˉi⋅−xˉˉ)2σ2/r=SAσ2∼χa−12\frac{\sum_i(\bar x_{i\cdot}-\bar{\bar x})^2}{\sigma^2/r}=\frac{S_A}{\sigma^2}\sim\chi^2_{a-1}

SAS_A は水準平均だけの関数なので SeS_e と独立である。独立なカイ二乗変数をそれぞれの自由度で割った比は FF 分布に従うので、F0=(SA/σ2)/ϕA(Se/σ2)/ϕe∼FϕA,ϕeF_0=\dfrac{(S_A/\sigma^2)/\phi_A}{(S_e/\sigma^2)/\phi_e}\sim F_{\phi_A,\phi_e}。σ2\sigma^2 は約分で消える。

F0F_0 が大きいほど主効果がある証拠になるので、棄却域は上側にとる。有意水準 α\alpha の検定は

F0≥FϕA,ϕe(α) ならば H0 を棄却する(2.14)F_0\ge F_{\phi_A,\phi_e}(\alpha)\ \text{ならば}\ H_0\ \text{を棄却する}\tag{2.14}

である。実験計画法の慣習では、有意水準5%で有意なら F0F_0 の右に「∗*」を付ける。1%で有意なら「∗∗**」を付ける。検出力や非心 FF 分布を使った検定の意味づけは第4章 §4.1 で扱う。

分散分析表

ここまでの量を1つの表にまとめたものが分散分析表である(表 2.2)。

表 2.2 1元配置の分散分析表の形
要因平方和 SS自由度 ϕ\phi平均平方 VV分散比 F0F_0E(V)E(V)
AASAS_Aa−1a-1VA=SA/ϕAV_A=S_A/\phi_AVA/VeV_A/V_eσ2+rσA2\sigma^2+r\sigma_A^2
eeSeS_ea(r−1)a(r-1)Ve=Se/ϕeV_e=S_e/\phi_eσ2\sigma^2
計 TTSTS_TN−1N-1

表の作り方の手順をまとめておく。

  • (i) 水準合計 Ti⋅T_{i\cdot}、総合計 TT、データの2乗和を計算する。
  • (ii) CT=T2/NCT=T^2/N を求める。
  • (iii) (2.7) で STS_T と SAS_A を求める。残りを Se=ST−SAS_e=S_T-S_A とする。
  • (iv) 自由度を (2.8) で数え、ϕT=ϕA+ϕe\phi_T=\phi_A+\phi_e を確かめる。
  • (v) 平均平方と F0F_0 を計算し、FF 表の値と比べて判定する。

図 2.2 は、通し例で使う F3,12F_{3,12} 分布の密度と棄却域である。

図

図 2.2 F3,12F_{3,12} 分布の密度。上側5%点 F3,12(0.05)=3.49F_{3,12}(0.05)=3.49 より右が有意水準5%の棄却域で、通し例の F0=11.67F_0=11.67 はその中に入る

数値変換

測定値の桁が大きいときや小数点以下が長いときは、平方和の計算の前にデータを一次変換して扱いやすい数にする。定数 x0x_0 と h>0h>0 を選び、次のようにおく。

Xij=(xij−x0) hX_{ij}=(x_{ij}-x_0)\,h

命題 2.10(数値変換の影響)

変換後のデータで計算した平方和を S(X)S^{(X)} と書くと、どの平方和についても S(x)=S(X)/h2S^{(x)}=S^{(X)}/h^2 が成り立つ。自由度は変わらず、平均平方も h2h^2 倍の関係にある。したがって分散比 F0F_0 は変換によって変わらない。平均は xˉ=x0+Xˉ/h\bar x=x_0+\bar X/h と戻す。

証明

平方和はすべて「データから何らかの平均を引いた偏差の2乗和」である。Xij=(xij−x0)hX_{ij}=(x_{ij}-x_0)h のとき、どの平均も同じ変換を受ける(たとえば Xˉi⋅=(xˉi⋅−x0)h\bar X_{i\cdot}=(\bar x_{i\cdot}-x_0)h)。

そのため偏差では x0x_0 が引き算で消え、偏差は hh 倍になる。2乗和は h2h^2 倍になる。F0F_0 は2つの平均平方の比なので、h2h^2 が約分で消える。

平行移動 x0x_0 は平方和に影響しないので、総平均に近い値を選んで数を小さくする。倍率 hh は小数点を消すために10の累乗を選ぶことが多い。平方和を元の単位に戻すときは hh でなく h2h^2 で割る。一方、信頼区間の幅は Ve\sqrt{V_e} に比例するので、hh で割って戻す。

寄与率

FF 検定は「効果があるか無いか」を判定するが、効果が全体のばらつきのどれだけを占めるかは表さない。それを表すのが寄与率である。

単純に SA/STS_A/S_T をとると、効果が無くても0にならない。定理 2.8 のとおり、SAS_A の期待値には誤差の分 ϕAσ2\phi_A\sigma^2 が含まれるためである。そこで誤差の分を差し引く。

定義 2.11(純変動と寄与率)

SA′=SA−ϕAVe,Se′=Se+ϕAVe,ρA=SA′ST,ρe=Se′ST.(2.15)S_A'=S_A-\phi_A V_e,\qquad S_e'=S_e+\phi_A V_e,\qquad \rho_A=\frac{S_A'}{S_T},\qquad \rho_e=\frac{S_e'}{S_T}.\tag{2.15}

SA′S_A' を因子 AA の純変動と呼ぶ。ρA\rho_A を寄与率と呼ぶ。SA′+Se′=STS_A'+S_e'=S_T なので ρA+ρe=1\rho_A+\rho_e=1 である。

E(SA−ϕAVe)=ϕAσ2+r∑ai2−ϕAσ2=r∑ai2E(S_A-\phi_A V_e)=\phi_A\sigma^2+r\sum a_i^2-\phi_A\sigma^2=r\sum a_i^2 なので、純変動は主効果だけによる変動の不偏推定量である。差し引いた ϕAVe\phi_A V_e は誤差の側へ戻すので、Se′S_e' は誤差平方和に同じ量を足したものになる。

例題 2.2 通し例の分散分析表 ★★★

オリジナル表 2.1 のデータについて、次の問いに答えよ。

  • (1) 修正項 CTCT、平方和 ST,SA,SeS_T,S_A,S_e を計算式 (2.7) で求め、定義式による値と一致することを確かめよ。
  • (2) 分散分析表を作り、有意水準5%と1%で因子 AA の効果を判定せよ。F3,12(0.05)=3.49F_{3,12}(0.05)=3.49、F3,12(0.01)=5.95F_{3,12}(0.01)=5.95 を用いてよい。
  • (3) 寄与率 ρA,ρe\rho_A,\rho_e と、σA2\sigma_A^2 の推定値を求めよ。
解答

(1) 総合計と総数は T=264T=264、N=16N=16 である。修正項は CT=2642/16=69696/16=4356CT=264^2/16=69696/16=4356。データの2乗和は

∑∑xij2=(144+225+196+121)+(324+256+361+225)+(196+289+144+289)+(400+484+361+529)=686+1166+918+1774=4544\begin{aligned} \sum\sum x_{ij}^2&=(144+225+196+121)+(324+256+361+225)\\ &\quad+(196+289+144+289)+(400+484+361+529)\\ &=686+1166+918+1774=4544 \end{aligned}

なので ST=4544−4356=188S_T=4544-4356=188。水準合計の2乗和は 522+682+602+842=2704+4624+3600+7056=1798452^2+68^2+60^2+84^2=2704+4624+3600+7056=17984 で、SA=17984/4−4356=4496−4356=140S_A=17984/4-4356=4496-4356=140。Se=188−140=48S_e=188-140=48。

定義式で確かめる。SA=4{(−3.5)2+0.52+(−1.5)2+4.52}=4(12.25+0.25+2.25+20.25)=4×35=140S_A=4\{(-3.5)^2+0.5^2+(-1.5)^2+4.5^2\}=4(12.25+0.25+2.25+20.25)=4\times35=140。SeS_e は例題 2.1 (2) の残差2乗和の合計 10+10+18+10=4810+10+18+10=48。どちらも一致する。

(2) 自由度・平均平方・分散比は次のとおりである。

ϕA=4−1=3,ϕe=4×3=12,ϕT=15,VA=140/3=46.67,Ve=48/12=4.00,F0=46.67/4.00=11.67.\begin{gathered}\phi_A=4-1=3,\qquad \phi_e=4\times3=12,\qquad \phi_T=15,\\ V_A=140/3=46.67,\qquad V_e=48/12=4.00,\qquad F_0=46.67/4.00=11.67.\end{gathered}

要因SSϕ\phiVVF0F_0E(V)E(V)
AA140346.6711.67∗∗^{**}σ2+4σA2\sigma^2+4\sigma_A^2
ee48124.00σ2\sigma^2
TT18815

F0=11.67≥F3,12(0.01)=5.95F_0=11.67\ge F_{3,12}(0.01)=5.95 なので、因子 AA は有意水準1%で有意である。添加剤の種類によって強度の母平均は異なると判断する。

(3) SA′=140−3×4.00=128S_A'=140-3\times4.00=128、Se′=48+12=60S_e'=48+12=60。ρA=128/188=0.681\rho_A=128/188=0.681(68.1%)、ρe=60/188=0.319\rho_e=60/188=0.319(31.9%)。強度のばらつきの約7割が添加剤の違いによって説明される。σA2\sigma_A^2 の推定値は (VA−Ve)/r=(46.67−4.00)/4=10.67(V_A-V_e)/r=(46.67-4.00)/4=10.67 である。

例題 2.3 数値変換をして分散分析する ★★

オリジナル通し例の強度が、実は xij=2.0+Xij/10x_{ij}=2.0+X_{ij}/10(単位 GPa)という元の測定値を Xij=(xij−2.0)×10X_{ij}=(x_{ij}-2.0)\times10 と変換したものだったとする。元の単位に戻した平方和 SA,SeS_A,S_e と平均平方 VeV_e を求めよ。また分散比 F0F_0 と水準 A4A_4 の平均を求めよ。

解答

変換は x0=2.0x_0=2.0、h=10h=10 の形である。命題 2.10 より、元の単位の平方和は変換後の値を h2=100h^2=100 で割ったものである。

SA=140/100=1.40,Se=48/100=0.48S_A=140/100=1.40,\qquad S_e=48/100=0.48自由度は変わらないので Ve=0.48/12=0.04V_e=0.48/12=0.04、VA=1.40/3=0.467V_A=1.40/3=0.467。F0=0.467/0.04=11.67F_0=0.467/0.04=11.67 で、変換後と同じ値になる。平均は逆の変換で戻し、xˉ4⋅=2.0+21/10=4.1\bar x_{4\cdot}=2.0+21/10=4.1 である。

確認テスト

オリジナル

  1. 2.2-1 1元配置で誤差平方和の自由度が a(r−1)a(r-1) になる理由を、残差が満たす制約を使って1〜2文で説明せよ。
  2. 2.2-2 確認テスト 2.1-2 のデータについて、CTCT と平方和 ST,SA,SeS_T,S_A,S_e を計算式で求め、分散分析表を作って有意水準5%と1%で判定せよ。F2,6(0.05)=5.14F_{2,6}(0.05)=5.14、F2,6(0.01)=10.92F_{2,6}(0.01)=10.92 を用いてよい。
  3. 2.2-3 確認テスト 2.1-2 のデータが、元の測定値 xx を X=(x−2.30)×100X=(x-2.30)\times100 と変換したものであったとする。元の単位での平方和 SA,SeS_A,S_e と分散比 F0F_0 を求めよ。
  4. 2.2-4 定義式 SA=r∑i(xˉi⋅−xˉˉ)2S_A=r\sum_i(\bar x_{i\cdot}-\bar{\bar x})^2 から、計算式 SA=∑iTi⋅2/r−T2/NS_A=\sum_i T_{i\cdot}^2/r-T^2/N を導け。
  5. 2.2-5 確認テスト 2.2-2 の結果から、純変動 SA′S_A' と寄与率 ρA,ρe\rho_A,\rho_e を求めよ。また、SA/STS_A/S_T を寄与率として使ってはいけない理由を期待値を使って述べよ。

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