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1元配置法とは

2026年10月15日35分で読めますAI生成教科書『資格試験』第3章 1元配置法
目次
  1. 実験の組み方とデータの形
  2. データの構造式と前提
  3. 平方和の分解
  4. 手計算の式.
  5. 自由度と期待平均平方
  6. 分散分析表と 検定
  7. ベクトルと射影による見方
  8. 分散分析後の推定
  9. 寄与率.
  10. 繰返し数が水準ごとに異なる場合
  11. 確認テスト
  12. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

実験計画法 第3章 §3.1 ★★★ 構造式 xij=μ+ai+εijx_{ij}=\mu+a_i+\varepsilon_{ij} から、平方和の分解・期待平均平方・FF 検定・区間推定までを導く

1元配置法は、取り上げる因子が1つだけの実験である。因子 AA の水準を aa 個決める。それらを A1,…,AaA_1,\dots,A_a と書く。各水準で同じ条件のもとに何回か実験を繰り返して特性値を測る。

たとえば熱処理の温度を4通りに変えて鋼材の引張強さを測る、触媒を3種類に変えて反応の収率を測る、といった実験がこれに当たる。

この章で作る道具は次の3つである。

  1. 平方和の分解。総平方和を、因子の平方和と誤差平方和に分ける恒等式 ST=SA+SeS_T=S_A+S_e と、その手計算の手順。
  2. 分散分析表と検定。分散比 F0=VA/VeF_0=V_A/V_e で「水準によって母平均が違うか」を判定する。
  3. 分散分析のあとの推定。各水準の母平均・2水準の母平均の差・新しく1個測ったときの値について、点推定と区間を出す。

第2章で一般の形で導いた平方和・自由度・分散分析表の型を、ここでは1元配置という具体的な形で最後まで計算する。

1級の統計応用(理工学)で実験計画法が出題されるときは、「データの構造式を書く → 平方和を計算して分散分析表を作る → FF 検定の結論を書く → 最適水準の母平均を区間推定する」という流れが基本になる。2元配置・直交配列表・乱塊法の問題も、この流れに因子と交互作用が加わった形をしている。

したがって1元配置で手順のどこにも曖昧さが残らないようにしておくことが、ほかの章の準備になる。あわせて、分散分析の前提(等分散性・正規性)の確かめ方と、繰返し数が水準ごとに揃わない場合の扱いもこの章で扱う。

実験の組み方とデータの形

因子 AA を aa 水準とる。各水準で rr 回ずつ実験し、実験の総数は N=arN=ar である。

これらの実験は、実験順序を完全に無作為に決めて行う。たとえば a=4, r=5a=4,\ r=5 なら 20 回の実験に 1 から 20 の番号を振り、乱数で並べ替えた順に実施する。このように因子以外の条件をすべて無作為化に任せる計画を完全無作為化法と呼ぶ。

無作為化を行う理由は、実験者が管理していない要因(時間とともに変わる室温、装置の暖まり具合、原料ロットの切り替わり)が特定の水準に偏って重なることを防ぐためである。たとえば A1A_1 の5回を午前中にまとめ、A4A_4 の5回を夕方にまとめたとする。すると2つの水準の差には温度の差と時刻の差が混ざってしまい、分けることができない。

順序を無作為にすれば、そうした要因の影響は各水準に確率的に均等に散らばり、次に置く誤差 εij\varepsilon_{ij} の中に入る。繰返し(反復)を行う理由は、同じ水準の中のばらつきから誤差分散 σ2\sigma^2 を推定するためである。繰返しがなければ、水準間の差が誤差より大きいかどうかを判定する基準が得られない。

無作為化と繰返しは Fisher が挙げた実験の3原則のうちの2つで、残る局所管理(ブロック化)は第11章の乱塊法で扱う。

データは、水準の番号と繰返しの番号を添字にして xijx_{ij} と書く。添字の範囲は i=1,…,ai=1,\dots,a と j=1,…,rj=1,\dots,r である。集計に使う記号を次のように決める。

Ti⋅=∑j=1rxij,xˉi⋅=Ti⋅r,T=∑i=1a∑j=1rxij,xˉˉ=TN.(3.1)T_{i\cdot}=\sum_{j=1}^r x_{ij},\qquad \bar x_{i\cdot}=\frac{T_{i\cdot}}{r},\qquad T=\sum_{i=1}^a\sum_{j=1}^r x_{ij},\qquad \bar{\bar x}=\frac{T}{N}.\tag{3.1}

Ti⋅T_{i\cdot} は AiA_i 水準のデータの和(水準和)である。xˉi⋅\bar x_{i\cdot} はその平均(水準平均)である。TT は総和、xˉˉ\bar{\bar x} は総平均である。添字の「⋅\cdot」は、その位置の添字について和をとったことを表す。

データの構造式と前提

定義 3.1(1元配置のデータの構造式)

xij=μ+ai+εij,∑i=1aai=0,εij∼N(0,σ2) (すべて独立).(3.2)x_{ij}=\mu+a_i+\varepsilon_{ij},\qquad \sum_{i=1}^a a_i=0,\qquad \varepsilon_{ij}\sim\mathrm{N}(0,\sigma^2)\ \text{(すべて独立)}.\tag{3.2}

μ\mu を一般平均、aia_i を主効果と呼ぶ。εij\varepsilon_{ij} は誤差である。AiA_i 水準の母平均はμ(Ai)=μ+ai\mu(A_i)=\mu+a_i である。

構造式 (3.2) には次の4つの前提が入っている。

  • 不偏性:誤差の期待値が0である。
  • 等分散性:誤差の分散が水準によらず同じ σ2\sigma^2 である。
  • 独立性:誤差どうしが独立である。
  • 正規性:誤差が正規分布に従う。

独立性は無作為化によって近似的に保証する。等分散性と正規性はデータから確かめる必要があり、その方法は §3.2 で扱う。

制約 ∑ai=0\sum a_i=0 は、パラメータを一意に決めるために置く。制約がなければ、一般平均に定数 cc を足し、各主効果から同じ定数を引いても母平均 μ+ai\mu+a_i は変わらない。これでは一般平均と主効果を別々には決められない。制約を置くと、両者は次のように一意に定まる。

μ=1a∑iμ(Ai) (母平均の平均),ai=μ(Ai)−μ (そこからのずれ).\mu=\frac1a\sum_i\mu(A_i)\ \text{(母平均の平均)},\qquad a_i=\mu(A_i)-\mu\ \text{(そこからのずれ)}.

検定したい仮説は「水準によって母平均が変わらない」ことで、構造式の言葉では次のように書ける。

H0: a1=a2=⋯=aa=0,H1: 少なくとも1つの ai≠0.(3.3)H_0:\ a_1=a_2=\dots=a_a=0,\qquad H_1:\ \text{少なくとも1つの } a_i\neq0.\tag{3.3}

平方和の分解

各データの総平均からのずれを、水準平均を経由して2つに分ける。

xij−xˉˉ=(xˉi⋅−xˉˉ)+(xij−xˉi⋅).(3.4)x_{ij}-\bar{\bar x}=(\bar x_{i\cdot}-\bar{\bar x})+(x_{ij}-\bar x_{i\cdot}).\tag{3.4}

右辺の第1項は「その水準の平均が全体からどれだけずれているか」で、水準間の違いを表す。第2項は「同じ水準の中でその1個が水準平均からどれだけずれているか」で、誤差だけから生じる。両辺を2乗して全データで和をとったものが次の定理である。

定理 3.2(平方和の分解 ★★★)

∑i=1a∑j=1r(xij−xˉˉ)2⏟ST=r∑i=1a(xˉi⋅−xˉˉ)2⏟SA+∑i=1a∑j=1r(xij−xˉi⋅)2⏟Se.(3.5)\underbrace{\sum_{i=1}^a\sum_{j=1}^r(x_{ij}-\bar{\bar x})^2}_{S_T} =\underbrace{r\sum_{i=1}^a(\bar x_{i\cdot}-\bar{\bar x})^2}_{S_A} +\underbrace{\sum_{i=1}^a\sum_{j=1}^r(x_{ij}-\bar x_{i\cdot})^2}_{S_e}.\tag{3.5}

証明

(3.4) を2乗して和をとると、

ST=∑i∑j(xˉi⋅−xˉˉ)2+∑i∑j(xij−xˉi⋅)2+2∑i∑j(xˉi⋅−xˉˉ)(xij−xˉi⋅).S_T=\sum_{i}\sum_{j}(\bar x_{i\cdot}-\bar{\bar x})^2+\sum_{i}\sum_{j}(x_{ij}-\bar x_{i\cdot})^2 +2\sum_{i}\sum_{j}(\bar x_{i\cdot}-\bar{\bar x})(x_{ij}-\bar x_{i\cdot}).

第1項の被和項は jj を含まない。そのため jj についての和は rr 倍になり、第1項は因子の平方和に等しい。交差項は、ii を固定して jj について先に和をとると

∑j=1r(xˉi⋅−xˉˉ)(xij−xˉi⋅)=(xˉi⋅−xˉˉ)(∑j=1rxij−rxˉi⋅)=(xˉi⋅−xˉˉ)(Ti⋅−Ti⋅)=0\sum_{j=1}^r(\bar x_{i\cdot}-\bar{\bar x})(x_{ij}-\bar x_{i\cdot})=(\bar x_{i\cdot}-\bar{\bar x})\Bigl(\sum_{j=1}^r x_{ij}-r\bar x_{i\cdot}\Bigr) =(\bar x_{i\cdot}-\bar{\bar x})(T_{i\cdot}-T_{i\cdot})=0

となるので、ii について和をとっても0である。

この分解は、データの NN 次元ベクトルを「水準ごとに一定のベクトル」の部分空間とその直交補空間へ射影したものと同じである。交差項が消えたことが、2つの成分が直交していることに当たる。

手計算の式.

(3.5) の定義どおりに計算すると、途中で平均の端数を扱うことになり誤りやすい。そこで修正項

CT=T2N(3.6)CT=\frac{T^2}{N}\tag{3.6}

を使って、次の形で計算する。

ST=∑i∑jxij2−CT,SA=∑i=1aTi⋅2r−CT,Se=ST−SA.(3.7)S_T=\sum_{i}\sum_{j}x_{ij}^2-CT,\qquad S_A=\sum_{i=1}^a\frac{T_{i\cdot}^2}{r}-CT,\qquad S_e=S_T-S_A.\tag{3.7}

STS_T と SAS_A の式は、2乗を展開して次のように確かめられる。

∑∑(xij−xˉˉ)2=∑∑xij2−2xˉˉT+Nxˉˉ2=∑∑xij2−T2N,r∑i(xˉi⋅−xˉˉ)2=r∑ixˉi⋅2−Nxˉˉ2=∑iTi⋅2r−T2N.\begin{aligned}\sum\sum(x_{ij}-\bar{\bar x})^2&=\sum\sum x_{ij}^2-2\bar{\bar x}T+N\bar{\bar x}^2=\sum\sum x_{ij}^2-\frac{T^2}{N},\\ r\sum_i(\bar x_{i\cdot}-\bar{\bar x})^2&=r\sum_i\bar x_{i\cdot}^2-N\bar{\bar x}^2=\sum_i \frac{T_{i\cdot}^2}{r}-\frac{T^2}{N}.\end{aligned}

SeS_e は差で求める。検算には、水準ごとの平方和 Si=∑j(xij−xˉi⋅)2S_i=\sum_j(x_{ij}-\bar x_{i\cdot})^2 を出す。その合計が SeS_e と一致するかを確かめるとよい。

自由度と期待平均平方

平方和の自由度は、平方和の中で自由に動ける偏差の個数である。3つの平方和について数えると次のようになる。

  • STS_T は、NN 個の偏差(データと総平均の差)の2乗和である。偏差の和は0なので、自由度は ϕT=N−1\phi_T=N-1 である。
  • SAS_A は、aa 個の偏差(水準平均と総平均の差)からなる。その和が0なので、自由度は ϕA=a−1\phi_A=a-1 である。
  • SeS_e では、各水準の中で偏差の和が0になる制約が aa 本ある。したがって自由度は次のとおりである。

ϕe=a(r−1)=N−a.\phi_e=a(r-1)=N-a.

平方和と同じく ϕT=ϕA+ϕe\phi_T=\phi_A+\phi_e が成り立つ。

平方和を自由度で割ったものを平均平方(または不偏分散)と呼ぶ。

VA=SAϕA,Ve=Seϕe.V_A=\frac{S_A}{\phi_A},\qquad V_e=\frac{S_e}{\phi_e}.

その期待値を計算すると、FF 検定の意味がはっきりする。

定理 3.3(期待平均平方 ★★★)

構造式 (3.2) のもとで

E(Ve)=σ2,E(VA)=σ2+r∑i=1aai2a−1.(3.8)E(V_e)=\sigma^2,\qquad E(V_A)=\sigma^2+\frac{r\sum_{i=1}^a a_i^2}{a-1}.\tag{3.8}

証明

誤差の平均を

εˉi⋅=1r∑jεij,εˉˉ=1N∑i∑jεij\bar\varepsilon_{i\cdot}=\frac1r\sum_j\varepsilon_{ij},\qquad \bar{\bar\varepsilon}=\frac1N\sum_i\sum_j\varepsilon_{ij}

とおく。構造式を代入すると、∑ai=0\sum a_i=0 を使って次の2式を得る。

xˉi⋅=μ+ai+εˉi⋅,xˉˉ=μ+εˉˉ.\bar x_{i\cdot}=\mu+a_i+\bar\varepsilon_{i\cdot},\qquad \bar{\bar x}=\mu+\bar{\bar\varepsilon}.

誤差平方和は、xij−xˉi⋅=εij−εˉi⋅x_{ij}-\bar x_{i\cdot}=\varepsilon_{ij}-\bar\varepsilon_{i\cdot} から次の形になる。

Se=∑i∑j(εij−εˉi⋅)2.S_e=\sum_i\sum_j(\varepsilon_{ij}-\bar\varepsilon_{i\cdot})^2.

水準ごとに見ると、εi1,…,εir\varepsilon_{i1},\dots,\varepsilon_{ir} は正規分布 N(0,σ2)\mathrm{N}(0,\sigma^2) からの標本である。標本の大きさは rr である。そのため不偏分散の性質から次が成り立つ。

E[∑j(εij−εˉi⋅)2]=(r−1)σ2.E\Bigl[\sum_j(\varepsilon_{ij}-\bar\varepsilon_{i\cdot})^2\Bigr]=(r-1)\sigma^2.

これを aa 個の水準で足すと E(Se)=a(r−1)σ2=ϕeσ2E(S_e)=a(r-1)\sigma^2=\phi_e\sigma^2 となる。すなわち E(Ve)=σ2E(V_e)=\sigma^2 である。

因子の平方和は xˉi⋅−xˉˉ=ai+(εˉi⋅−εˉˉ)\bar x_{i\cdot}-\bar{\bar x}=a_i+(\bar\varepsilon_{i\cdot}-\bar{\bar\varepsilon}) から

SA=r∑iai2+2r∑iai(εˉi⋅−εˉˉ)+r∑i(εˉi⋅−εˉˉ)2.S_A=r\sum_i a_i^2+2r\sum_i a_i(\bar\varepsilon_{i\cdot}-\bar{\bar\varepsilon})+r\sum_i(\bar\varepsilon_{i\cdot}-\bar{\bar\varepsilon})^2.

第2項の期待値は0である。第3項について、εˉ1⋅,…,εˉa⋅\bar\varepsilon_{1\cdot},\dots,\bar\varepsilon_{a\cdot} は独立に N(0,σ2/r)\mathrm{N}(0,\sigma^2/r) に従う。εˉˉ\bar{\bar\varepsilon} はその平均なので、大きさ aa の標本の偏差平方和として次が成り立つ。

E[∑i(εˉi⋅−εˉˉ)2]=(a−1)σ2r.E\Bigl[\sum_i(\bar\varepsilon_{i\cdot}-\bar{\bar\varepsilon})^2\Bigr]=\frac{(a-1)\sigma^2}{r}.

したがって E(SA)=r∑iai2+(a−1)σ2E(S_A)=r\sum_i a_i^2+(a-1)\sigma^2 となる。これを ϕA\phi_A で割れば (3.8) を得る。

2つの平均平方の期待値は、仮説によって次のように振る舞う。

  • E(Ve)=σ2E(V_e)=\sigma^2 である。これは H0H_0 の真偽によらない。
  • E(VA)E(V_A) は、帰無仮説のもとで σ2\sigma^2 に等しい。対立仮説のもとではそれより大きい。

そこで F0=VA/VeF_0=V_A/V_e が1より十分大きければ H0H_0 を棄却する、という片側の検定を組む。F0F_0 が1より小さいことは、H1H_1 を支持する証拠にはならない。この理屈の詳しい議論(検定の意味と検出力)は第4章 §4.1 で行う。

分散分析表と FF 検定

定理 3.4(H0H_0 のもとでの F0F_0 の分布 ★★★)

構造式 (3.2) のもとで次の (i)(ii) が成り立つ。

  • (i) Se/σ2∼χϕe2S_e/\sigma^2\sim\chi^2_{\phi_e} である。また2つの平方和 Se,SAS_e,S_A は独立である。
  • (ii) H0H_0 が正しければ SA/σ2∼χϕA2S_A/\sigma^2\sim\chi^2_{\phi_A} で、

F0=VAVe=SA/ϕASe/ϕe∼FϕA,ϕe.(3.9)F_0=\frac{V_A}{V_e}=\frac{S_A/\phi_A}{S_e/\phi_e}\sim F_{\phi_A,\phi_e}.\tag{3.9}

証明

正規母集団からの大きさ nn の標本について、次の2つが成り立つ(正規母集団の標本分布の基本定理。数理統計の解説 第5章 §5.2 で導く)。

∑(Xj−Xˉ)2σ2∼χn−12,偏差平方和と標本平均 Xˉ は独立.\frac{\sum(X_j-\bar X)^2}{\sigma^2}\sim\chi^2_{n-1},\qquad \text{偏差平方和と標本平均 }\bar X\text{ は独立}.

これを各水準の誤差 εi1,…,εir\varepsilon_{i1},\dots,\varepsilon_{ir} に使うと、次を得る。

Siσ2=∑j(εij−εˉi⋅)2σ2∼χr−12,Si と εˉi⋅ は独立.\frac{S_i}{\sigma^2}=\frac{\sum_j(\varepsilon_{ij}-\bar\varepsilon_{i\cdot})^2}{\sigma^2}\sim\chi^2_{r-1},\qquad S_i\text{ と }\bar\varepsilon_{i\cdot}\text{ は独立}.

異なる水準の誤差は独立なので、S1,…,SaS_1,\dots,S_a と εˉ1⋅,…,εˉa⋅\bar\varepsilon_{1\cdot},\dots,\bar\varepsilon_{a\cdot} は全体として独立になる。カイ二乗分布の再生性から Se/σ2=∑iSi/σ2∼χa(r−1)2S_e/\sigma^2=\sum_iS_i/\sigma^2\sim\chi^2_{a(r-1)} である。

SA=r∑i(xˉi⋅−xˉˉ)2S_A=r\sum_i(\bar x_{i\cdot}-\bar{\bar x})^2 は、水準平均 xˉi⋅=μ+ai+εˉi⋅\bar x_{i\cdot}=\mu+a_i+\bar\varepsilon_{i\cdot} だけの関数である。誤差の水準平均たちは SiS_i たちと独立だから、2つの平方和 SA,SeS_A,S_e は独立である。

帰無仮説のもとでは、水準平均 xˉ1⋅,…,xˉa⋅\bar x_{1\cdot},\dots,\bar x_{a\cdot} が独立に N(μ,σ2/r)\mathrm{N}(\mu,\sigma^2/r) に従う。総平均はその平均である。大きさ aa・分散 σ2/r\sigma^2/r の正規標本の偏差平方和に同じ定理を使えば、次を得る。

∑i(xˉi⋅−xˉˉ)2σ2/r=SAσ2∼χa−12.\frac{\sum_i(\bar x_{i\cdot}-\bar{\bar x})^2}{\sigma^2/r}=\frac{S_A}{\sigma^2}\sim\chi^2_{a-1}.

独立なカイ二乗変数をそれぞれの自由度で割った比なので、FF 分布の定義から (3.9) が従う。

以上をまとめたものが分散分析表(表 3.1)である。検定の規則は次のとおりである。

F0≥FϕA,ϕe(α) のとき、有意水準 α で H0 を棄却する.F_0\ge F_{\phi_A,\phi_e}(\alpha)\ \text{のとき、有意水準 }\alpha\text{ で }H_0\text{ を棄却する}.

棄却したら「因子 AA は有意である」と結論する。実務の表では、F0F_0 の右に5%と1%の棄却限界を並べる。5%で有意なら分散比に ∗* を、1%で有意なら ∗∗** を付ける慣習がある。

表 3.1 1元配置法の分散分析表
要因平方和 SS自由度 ϕ\phi平均平方 VVF0F_0E(V)E(V)
AASAS_Aa−1a-1VA=SA/ϕAV_A=S_A/\phi_AVA/VeV_A/V_eσ2+r∑ai2/(a−1)\sigma^2+r\sum a_i^2/(a-1)
eeSeS_ea(r−1)a(r-1)Ve=Se/ϕeV_e=S_e/\phi_eσ2\sigma^2
計STS_Tar−1ar-1

ベクトルと射影による見方

定理 3.2〜定理 3.4 は、データを1本のベクトルとみなすと1つの命題にまとまる。繰返し数が不揃いな場合(次の小節)も同じ議論で済むので、ここで rir_i を一般にしたまま書いておく。

NN 個のデータを縦に並べたベクトルを x∈RN\bm{x}\in\mathbb{R}^N とする。すべての成分が1のベクトルを 1\bm{1} と書く。AiA_i 水準のデータの位置だけが1でほかが0のベクトルを ui\bm{u}_i とし、2つの部分空間

V0=span⁡{1},VA=span⁡{u1,…,ua}\mathcal{V}_0=\operatorname{span}\{\bm{1}\},\qquad \mathcal{V}_A=\operatorname{span}\{\bm{u}_1,\dots,\bm{u}_a\}

を考える。1=∑iui\bm{1}=\sum_i\bm{u}_i なので V0⊂VA\mathcal{V}_0\subset\mathcal{V}_A である。2つの部分空間の次元はそれぞれ1と aa である。

ui\bm{u}_i どうしは直交し、∥ui∥2=ri\lVert \bm{u}_i\rVert ^2=r_i である。そのため2つの直交射影は次のように書ける。

PAx=∑iui⊤xriui=∑ixˉi⋅ui(各成分をその水準の平均で置き換えたベクトル),P0x=xˉˉ1(V0 への直交射影).\begin{aligned}P_A\bm{x}&=\sum_i\frac{\bm{u}_i^\top\bm{x}}{r_i}\bm{u}_i=\sum_i\bar x_{i\cdot}\bm{u}_i &&\text{(各成分をその水準の平均で置き換えたベクトル)},\\ P_0\bm{x}&=\bar{\bar x}\bm{1} &&\text{($\mathcal{V}_0$ への直交射影)}.\end{aligned}

すると

x−P0x=(PA−P0)x+(I−PA)x,SA=∥(PA−P0)x∥2,Se=∥(I−PA)x∥2(3.10)\bm{x}-P_0\bm{x}=(P_A-P_0)\bm{x}+(I-P_A)\bm{x},\qquad S_A=\lVert (P_A-P_0)\bm{x}\rVert ^2,\quad S_e=\lVert (I-P_A)\bm{x}\rVert ^2\tag{3.10}

と書ける。2つの射影の像は次のとおりで、互いに直交する。

  • PA−P0P_A-P_0 は、VA\mathcal{V}_A の中で、すべての成分が1のベクトルに直交する部分への射影である。その次元は a−1a-1 である。
  • I−PAI-P_A は、VA\mathcal{V}_A の直交補空間への射影である。その次元は N−aN-a である。

平方和の分解は Pythagoras の定理そのものであり、自由度は射影の階数(=像の次元)に等しい。

構造式はベクトルで次のように書ける。

x=m+ε,m=∑i(μ+ai)ui∈VA,ε∼N(0,σ2I).\bm{x}=\bm{m}+\bm{\varepsilon},\qquad \bm{m}=\sum_i(\mu+a_i)\bm{u}_i\in\mathcal{V}_A,\qquad \bm{\varepsilon}\sim\mathrm{N}(\bm 0,\sigma^2I).

次の補題を使う。

補題 3.5(射影と χ2\chi^2 分布)

ε∼N(0,σ2IN)\bm{\varepsilon}\sim\mathrm{N}(\bm 0,\sigma^2I_N) とする。P,QP,Q は PQ=OPQ=O を満たす直交射影とする。階数をそれぞれ k,lk,l とする。このとき次が成り立つ。

  • (i) PεP\bm{\varepsilon} と QεQ\bm{\varepsilon} は独立で、

∥Pε∥2σ2∼χk2,∥Qε∥2σ2∼χl2.\frac{\lVert P\bm{\varepsilon}\rVert ^2}{\sigma^2}\sim\chi^2_k,\qquad \frac{\lVert Q\bm{\varepsilon}\rVert ^2}{\sigma^2}\sim\chi^2_l.

  • (ii) 定ベクトル c\bm{c} について、∥P(c+ε)∥2/σ2\lVert P(\bm{c}+\bm{\varepsilon})\rVert ^2/\sigma^2 は非心カイ二乗分布に従う。自由度は kk である。非心度は ∥Pc∥2/σ2\lVert P\bm{c}\rVert ^2/\sigma^2 で、期待値は次のとおりである。

k+∥Pc∥2σ2.k+\frac{\lVert P\bm{c}\rVert ^2}{\sigma^2}.

証明

PP の像の正規直交基底 q1,…,qk\bm{q}_1,\dots,\bm{q}_k をとる。QQ の像の正規直交基底 qk+1,…,qk+l\bm{q}_{k+1},\dots,\bm{q}_{k+l} もとる。PQ=OPQ=O から2つの像は直交する。

これを RN\mathbb{R}^N の正規直交基底に延ばし、それを並べた直交行列を UU とする。z=U⊤ε\bm{z}=U^\top\bm{\varepsilon} は次の分布に従う。

z∼N(0,σ2U⊤U)=N(0,σ2I).\bm{z}\sim\mathrm{N}(\bm 0,\sigma^2U^\top U)=\mathrm{N}(\bm 0,\sigma^2I).

したがって成分 z1,…,zNz_1,\dots,z_N は独立に N(0,σ2)\mathrm{N}(0,\sigma^2) である。2つのノルムはこの座標で

∥Pε∥2=∑m=1kzm2,∥Qε∥2=∑m=k+1k+lzm2\lVert P\bm{\varepsilon}\rVert ^2=\sum_{m=1}^kz_m^2,\qquad \lVert Q\bm{\varepsilon}\rVert ^2=\sum_{m=k+1}^{k+l}z_m^2

と書ける。互いに重ならない成分の関数なので独立であり、それぞれ σ2χk2\sigma^2\chi^2_k と σ2χl2\sigma^2\chi^2_l に従う。

非心の場合も同じ座標で ∥P(c+ε)∥2=∑m=1k(qm⊤c+zm)2\lVert P(\bm{c}+\bm{\varepsilon})\rVert ^2=\sum_{m=1}^k(\bm{q}_m^\top\bm{c}+z_m)^2 となる。各項の期待値

E[(qm⊤c+zm)2]=(qm⊤c)2+σ2E[(\bm{q}_m^\top\bm{c}+z_m)^2]=(\bm{q}_m^\top\bm{c})^2+\sigma^2

を足し合わせれば kσ2+∥Pc∥2k\sigma^2+\lVert P\bm{c}\rVert ^2 を得る。

補題を1元配置に当てはめると、次の3点が分かる。

  1. (I−PA)m=0(I-P_A)\bm{m}=\bm 0 なので Se=∥(I−PA)ε∥2S_e=\lVert (I-P_A)\bm{\varepsilon}\rVert ^2 である。補題から Se/σ2∼χN−a2S_e/\sigma^2\sim\chi^2_{N-a} となる。
  2. (PA−P0)(I−PA)=O(P_A-P_0)(I-P_A)=O なので、2つの平方和は独立である。
  3. (PA−P0)m(P_A-P_0)\bm{m} は、各成分 μ+ai\mu+a_i から重みつき平均を引いたものである。制約 ∑iriai=0\sum_ir_ia_i=0 のもとでは各成分が aia_i になる。したがって ∥(PA−P0)m∥2=∑iriai2\lVert (P_A-P_0)\bm{m}\rVert ^2=\sum_ir_ia_i^2 である。

したがって

E(SA)=(a−1)σ2+∑i=1ariai2,SAσ2∼χa−1′2(λ=∑iriai2σ2)(3.11)E(S_A)=(a-1)\sigma^2+\sum_{i=1}^ar_ia_i^2,\qquad \frac{S_A}{\sigma^2}\sim\chi'^2_{a-1}\Bigl(\lambda=\frac{\sum_ir_ia_i^2}{\sigma^2}\Bigr)\tag{3.11}

となる。H0H_0(すべての主効果が0)のもとでは λ=0\lambda=0 となる。このとき F0∼Fa−1,N−aF_0\sim F_{a-1,N-a} が従う。

λ>0\lambda>0 のとき分散比は非心 FF 分布に従い、検出力はこの非心度で決まる。非心度が rir_i に比例して増えることが、繰返しを増やすと差を見つけやすくなることの数式上の表れである。

この見方は、線形モデル Y=Xβ+ε\bm{Y}=X\bm{\beta}+\bm{\varepsilon} の残差平方和と射影行列の議論(数理統計の解説 第9章)と同じものである。射影行列は H=X(X⊤X)−1X⊤H=X(X^\top X)^{-1}X^\top である。1元配置は計画行列が X=(u1,…,ua)X=(\bm{u}_1,\dots,\bm{u}_a) の場合に当たり、このとき H=PAH=P_A となる。

分散分析後の推定

AA が有意になったら、各水準の母平均 μ(Ai)=μ+ai\mu(A_i)=\mu+a_i を推定し、どの水準が良いかを判断する。点推定とその分布は次のとおりである。

μ^(Ai)=μ+ai^=xˉi⋅,xˉi⋅∼N(μ(Ai),σ2r).\hat\mu(A_i)=\widehat{\mu+a_i}=\bar x_{i\cdot},\qquad \bar x_{i\cdot}\sim\mathrm{N}\Bigl(\mu(A_i),\frac{\sigma^2}{r}\Bigr).

σ2\sigma^2 を VeV_e で置き換える。水準平均と VeV_e は独立(定理 3.4 の証明で示した)なので、次の分布を得る。

xˉi⋅−μ(Ai)Ve/r∼tϕe\frac{\bar x_{i\cdot}-\mu(A_i)}{\sqrt{V_e/r}}\sim t_{\phi_e}

これは、分子を標準化した N(0,1)\mathrm{N}(0,1) 変数と (Se/σ2)/ϕe\sqrt{(S_e/\sigma^2)/\phi_e} の比になっているからである。

ここから次の3つの区間が得られる。いずれも信頼率(予測の場合は確率)は 1−α1-\alpha である。tϕe(α/2)t_{\phi_e}(\alpha/2) は、誤差の自由度をもつ tt 分布の上側の点を表す。その上側確率は α/2\alpha/2 である。

1元配置法の分散分析後の区間

母平均 μ(Ai):xˉi⋅±tϕe(α/2)Ver,母平均の差 μ(Ai)−μ(Ai′):(xˉi⋅−xˉi′⋅)±tϕe(α/2)2Ver,新しいデータ x の予測:xˉi⋅±tϕe(α/2)(1+1r)Ve.\begin{align*}&\text{母平均 } \mu(A_i):& &\bar x_{i\cdot}\pm t_{\phi_e}(\alpha/2)\sqrt{\frac{V_e}{r}},\tag{3.12}\\&\text{母平均の差 } \mu(A_i)-\mu(A_{i'}):& &(\bar x_{i\cdot}-\bar x_{i'\cdot})\pm t_{\phi_e}(\alpha/2)\sqrt{\frac{2V_e}{r}},\tag{3.13}\\&\text{新しいデータ } x \text{ の予測:}& &\bar x_{i\cdot}\pm t_{\phi_e}(\alpha/2)\sqrt{\Bigl(1+\frac1r\Bigr)V_e}.\tag{3.14}\end{align*}

差の区間 (3.13) では、2つの水準平均が独立なので V[xˉi⋅−xˉi′⋅]=2σ2/rV[\bar x_{i\cdot}-\bar x_{i'\cdot}]=2\sigma^2/r を使った。

予測区間 (3.14) は、これから AiA_i で1回実験したときの値 x=μ(Ai)+εx=\mu(A_i)+\varepsilon が入る範囲である。新しい値と水準平均は独立なので V[x−xˉi⋅]=σ2+σ2/rV[x-\bar x_{i\cdot}]=\sigma^2+\sigma^2/r となる。母平均の区間より、誤差1個の分散の分だけ広い。母平均の区間は r→∞r\to\infty で幅が0に縮むが、予測区間は ±zα/2σ\pm z_{\alpha/2}\sigma より狭くはならない。

AA が有意でなかったときは、水準による違いを認めずに AA を誤差にプールする。誤差分散と全体の母平均は次のように推定する。

VT=SA+SeϕA+ϕe=STN−1,μ^=xˉˉ.V_T=\frac{S_A+S_e}{\phi_A+\phi_e}=\frac{S_T}{N-1},\qquad \hat\mu=\bar{\bar x}.

この場合の区間は xˉˉ±tN−1(α/2)VT/N\bar{\bar x}\pm t_{N-1}(\alpha/2)\sqrt{V_T/N} になる。

寄与率.

因子 AA が全体の変動のどれだけを説明するかの目安として、寄与率

ρA=SA−ϕAVeST(3.15)\rho_A=\frac{S_A-\phi_AV_e}{S_T}\tag{3.15}

を使う(定義と意味は第2章で扱った)。分子から ϕAVe\phi_AV_e を引く理由は次のとおりである。SAS_A の期待値は E(SA)=ϕAσ2+r∑ai2E(S_A)=\phi_A\sigma^2+r\sum a_i^2 で、第1項は誤差に由来する。これを除いて、水準の違いそのものの大きさ r∑ai2r\sum a_i^2 を推定するためである。

例題 3.1 3水準・繰返し4回の分散分析 ★★★

オリジナルある部品の接着工程で、接着剤の種類 AA を3種類(A1,A2,A3A_1,A_2,A_3)とり、各4回、完全無作為化して接着強度を測った。

水準データ
A1A_1810911
A2A_212131114
A3A_39121011
  1. 修正項 CTCT と平方和 ST,SA,SeS_T,S_A,S_e を求め、分散分析表を作れ。
  2. 有意水準5%で AA の効果を検定せよ。数表の値は F2,9(0.05)=4.256F_{2,9}(0.05)=4.256 と F2,9(0.01)=8.022F_{2,9}(0.01)=8.022 を使う。
  3. A2A_2 の母平均の95%信頼区間を求めよ(t9(0.025)=2.262t_9(0.025)=2.262)。
  4. 寄与率 ρA\rho_A を求めよ。
解答

(1) 水準和と総和は次のとおりで、データ数は N=12N=12 である。

T1⋅=38,T2⋅=50,T3⋅=42,T=130.T_{1\cdot}=38,\quad T_{2\cdot}=50,\quad T_{3\cdot}=42,\quad T=130.

CT=130212=1690012=1408.33,∑∑xij2=366+630+446=1442.CT=\frac{130^2}{12}=\frac{16900}{12}=1408.33,\qquad \sum\sum x_{ij}^2=366+630+446=1442.

2乗和の内訳は次のとおりである。

A1: 64+100+81+121=366,A2: 144+169+121+196=630,A3: 81+144+100+121=446.\begin{gathered}A_1:\ 64+100+81+121=366,\qquad A_2:\ 144+169+121+196=630,\\ A_3:\ 81+144+100+121=446.\end{gathered}

したがって

ST=1442−1408.33=33.67,SA=382+502+4224−CT=1444+2500+17644−1408.33=1427−1408.33=18.67,Se=ST−SA=15.00.\begin{aligned}S_T&=1442-1408.33=33.67,\\ S_A&=\frac{38^2+50^2+42^2}{4}-CT=\frac{1444+2500+1764}{4}-1408.33=1427-1408.33=18.67,\\ S_e&=S_T-S_A=15.00.\end{aligned}

検算として水準ごとの平方和を出す。水準平均は 9.5, 12.5, 10.5 で、そのまわりの平方和は各水準とも(±0.5)2×2+(±1.5)2×2=5(\pm0.5)^2\times2+(\pm1.5)^2\times2=5 である。合計は15で SeS_e と一致する。自由度は ϕA=2, ϕe=9, ϕT=11\phi_A=2,\ \phi_e=9,\ \phi_T=11 である。

要因SSϕ\phiVVF0F_0
AA18.6729.3335.60∗^*
ee15.0091.667
計33.6711

(2) 分散比は F0=9.333/1.667=5.60F_0=9.333/1.667=5.60 である。これは5%点 4.256 以上で、1%点 8.022 未満である。したがって有意水準5%で H0H_0 を棄却する。接着剤の種類によって母平均の接着強度は異なると結論する(1%では有意でない)。

(3) 点推定は μ^(A2)=xˉ2⋅=12.5\hat\mu(A_2)=\bar x_{2\cdot}=12.5、標準誤差は Ve/r=1.667/4=0.6455\sqrt{V_e/r}=\sqrt{1.667/4}=0.6455 である。区間は

12.5±2.262×0.6455=12.5±1.46,すなわち [11.04, 13.96].12.5\pm2.262\times0.6455=12.5\pm1.46,\quad\text{すなわち }[11.04,\ 13.96].

(4) ρA=(18.67−2×1.667)/33.67=15.33/33.67=0.455\rho_A=(18.67-2\times1.667)/33.67=15.33/33.67=0.455。全変動の約46%を接着剤の違いが説明している。

繰返し数が水準ごとに異なる場合

実験の一部が失敗してデータが欠けた、あるいは水準によって用意できる試料の数が違った、という理由で、水準 AiA_i の繰返し数が rir_i と揃わないことがある。総数を N=∑iriN=\sum_i r_i とする。この場合も構造式は同じ形で書ける。ただし一般平均の定義と制約を次のように変えるのが計算上自然である(こうすると xˉˉ\bar{\bar x} が μ\mu の不偏推定量になる)。

μ=1N∑iriμ(Ai),∑iriai=0.\mu=\frac1N\sum_i r_i\mu(A_i),\qquad \sum_i r_ia_i=0.

平方和の分解 (3.5) の証明は、交差項を水準の中で先に和をとって消すところが rir_i に置き換わるだけで、そのまま成り立つ。

ST=∑i∑j=1rixij2−CT,SA=∑i=1aTi⋅2ri−CT,Se=ST−SA,ϕA=a−1, ϕe=N−a.(3.16)S_T=\sum_i\sum_{j=1}^{r_i}x_{ij}^2-CT,\quad S_A=\sum_{i=1}^a\frac{T_{i\cdot}^2}{r_i}-CT,\quad S_e=S_T-S_A,\qquad \phi_A=a-1,\ \phi_e=N-a.\tag{3.16}

期待平均平方は次のようになる(§3.1.6 の (3.11)。射影を使わない直接の計算は確認テスト 3.1-4)。

E(Ve)=σ2,E(VA)=σ2+∑iriai2a−1.E(V_e)=\sigma^2,\qquad E(V_A)=\sigma^2+\frac{\sum_ir_ia_i^2}{a-1}.

H0H_0 のもとで F0∼Fa−1,N−aF_0\sim F_{a-1,N-a} となることも §3.1.6 の補題から従う。推定の区間は (3.12)〜(3.14) の rr を水準ごとの rir_i に置き換える。差の区間の分散は Ve(1/ri+1/ri′)V_e(1/r_i+1/r_{i'}) を使う。

繰返し数が揃っていなくても解析の手順は変わらないが、注意点が2つある。

  1. 効率。総数 NN を固定したとき、差の分散 σ2(1/ri+1/ri′)\sigma^2(1/r_i+1/r_{i'}) は2つの繰返し数が等しいとき最小になる。どの2水準の比較も同程度に重要なら、繰返しは揃えるのがよい。
  2. 前提の破れに対する強さ。繰返しが揃っていれば、水準間の分散が多少違っても FF 検定の有意水準はあまり狂わない。しかし繰返しが不揃いで、しかも繰返しの少ない水準の分散が大きいと、実際の第1種の誤りの確率が名目の α\alpha より大きくなる。

不揃いのデータでは、等分散性の確認(§3.2)をより慎重に行う。

例題 3.2 繰返し数が不揃いな1元配置 ★★

オリジナルある樹脂の添加剤 AA の3水準で硬度を測ったところ、一部の試験片が破損し、繰返し数が揃わなかった。

水準データ
A1A_15, 7, 6
A2A_29, 8, 10, 11
A3A_36, 8, 7, 9, 5

分散分析表を作って有意水準5%で検定し、μ(A2)−μ(A3)\mu(A_2)-\mu(A_3) の95%信頼区間を求めよ。数表の値は F2,9(0.05)=4.256, t9(0.025)=2.262F_{2,9}(0.05)=4.256,\ t_9(0.025)=2.262 を使う。

解答

繰返し数は r1=3, r2=4, r3=5r_1=3,\ r_2=4,\ r_3=5 で、N=12N=12 である。水準和と総和は次のとおりである。

T1⋅=18,T2⋅=38,T3⋅=35,T=91.T_{1\cdot}=18,\quad T_{2\cdot}=38,\quad T_{3\cdot}=35,\quad T=91.

CT=91212=828112=690.08,∑∑xij2=(25+49+36)+(81+64+100+121)+(36+64+49+81+25)=110+366+255=731,ST=731−690.08=40.92,SA=1823+3824+3525−CT=108+361+245−690.08=23.92,Se=40.92−23.92=17.00.\begin{aligned}CT&=\frac{91^2}{12}=\frac{8281}{12}=690.08,\\ \sum\sum x_{ij}^2&=(25+49+36)+(81+64+100+121)+(36+64+49+81+25)\\ &=110+366+255=731,\\ S_T&=731-690.08=40.92,\\ S_A&=\frac{18^2}{3}+\frac{38^2}{4}+\frac{35^2}{5}-CT=108+361+245-690.08=23.92,\\ S_e&=40.92-23.92=17.00.\end{aligned}

検算として水準ごとの平方和を出す。水準平均は 6, 9.5, 7 で、そのまわりの平方和は順に 2, 5, 10 である。和は17で一致する。自由度は ϕA=2\phi_A=2、ϕe=12−3=9\phi_e=12-3=9 である。

要因SSϕ\phiVVF0F_0
AA23.92211.966.33∗^*
ee17.0091.889
計40.9211

F0=6.33≥4.256F_0=6.33\ge4.256 なので有意水準5%で AA は有意である。

差の点推定は xˉ2⋅−xˉ3⋅=9.5−7=2.5\bar x_{2\cdot}-\bar x_{3\cdot}=9.5-7=2.5 である。標準誤差と区間は次のとおりである。

Ve(1/4+1/5)=1.889×0.45=0.922,2.5±2.262×0.922=2.5±2.09,すなわち [0.41, 4.59].\begin{aligned}\sqrt{V_e(1/4+1/5)}&=\sqrt{1.889\times0.45}=0.922,\\ 2.5\pm2.262\times0.922&=2.5\pm2.09,\quad\text{すなわち }[0.41,\ 4.59].\end{aligned}

区間が0を含まないので、A2A_2 と A3A_3 の母平均にも差があると読める。

確認テスト

オリジナル

  1. 3.1-1 因子 AA を5水準とり、各水準で6回ずつ繰り返す1元配置実験について、3つの自由度 ϕT,ϕA,ϕe\phi_T,\phi_A,\phi_e を答えよ。また H0H_0 のもとでの2つの期待平均平方 E(VA),E(Ve)E(V_A),E(V_e) を書け。
  2. 3.1-2 a=3, r=5a=3,\ r=5 の1元配置実験で、データの2乗和が ∑∑xij2=1445\sum\sum x_{ij}^2=1445、水準和が次のとおりであった。

T1⋅=40,T2⋅=55,T3⋅=50.T_{1\cdot}=40,\quad T_{2\cdot}=55,\quad T_{3\cdot}=50.

分散分析表を作り、有意水準5%と1%で検定せよ(F2,12(0.05)=3.885F_{2,12}(0.05)=3.885、F2,12(0.01)=6.927F_{2,12}(0.01)=6.927)。3. 3.1-3 繰返し数が rir_i(i=1,…,ai=1,\dots,a)と不揃いな場合に、次の式を示せ。

ST=∑iri(xˉi⋅−xˉˉ)2+∑i∑j(xij−xˉi⋅)2S_T=\sum_ir_i(\bar x_{i\cdot}-\bar{\bar x})^2+\sum_i\sum_j(x_{ij}-\bar x_{i\cdot})^2

ここで xˉi⋅=Ti⋅/ri\bar x_{i\cdot}=T_{i\cdot}/r_i、xˉˉ=T/N\bar{\bar x}=T/N である。4. 3.1-4 繰返し数が不揃いな構造式 xij=μ+ai+εijx_{ij}=\mu+a_i+\varepsilon_{ij}(∑iriai=0\sum_ir_ia_i=0)のもとで、次の2式を導け。

E(Se)=(N−a)σ2,E(SA)=(a−1)σ2+∑iriai2E(S_e)=(N-a)\sigma^2,\qquad E(S_A)=(a-1)\sigma^2+\sum_ir_ia_i^2 5. 3.1-5 3.1-2 のデータで、μ(A2)−μ(A1)\mu(A_2)-\mu(A_1) の95%信頼区間を求めよ(t12(0.025)=2.179t_{12}(0.025)=2.179)。

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