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繰返しのない2元配置法とは

2026年10月15日33分で読めますAI生成教科書『資格試験』第6章 繰返しのない2元配置法
目次
  1. 実験の形とデータの構造式
  2. 平方和の分解と自由度
  3. 期待平均平方と検定
  4. 交互作用を検定できない理由
  5. が変量因子のとき
  6. 交互作用の有無を調べる補助の方法
  7. 分散分析後の推定
  8. 欠測値があるとき
  9. 確認テスト
  10. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

実験計画法 第6章 §6.1 ★★ 加法模型の構造式・平方和の分解・期待平均平方・交互作用を検定できない理由・推定

第5章では、2つの因子 A,BA,B のすべての水準の組合せで、複数回ずつ実験する繰返しのある2元配置法を扱った。この章では各組合せでちょうど1回だけ実験する繰返しのない2元配置法を扱う。実験の回数は lmlm 回で済むが、その代わりに交互作用 A×BA\times B を誤差と分けて検定することができなくなる。

この章で作る道具は次の3つである。

  1. 交互作用が無いという仮定(加法模型)のもとで総平方和を ST=SA+SB+SeS_T=S_A+S_B+S_e と分解し、期待平均平方と FF 検定を導く。
  2. 交互作用が実際には存在したときに、誤差の平均平方と推定量がどれだけずれるかを式で示す。交互作用を検定できない理由を、データの個数と母数の個数の勘定から説明する。
  3. 組合せの母平均を xˉi⋅+xˉ⋅j−xˉ\bar x_{i\cdot}+\bar x_{\cdot j}-\bar x で推定する。有効反復数 ne=lm/(l+m−1)n_e=lm/(l+m-1) を使って、信頼区間と予測区間を作る。

計算の形は第11章の乱塊法と同じである。乱塊法では因子 BB がブロック因子(日・ロット・実験者など)になり、ブロックと処理の交互作用は誤差に含めて扱う。資格試験の応用(理工学)の科目でこの形が出題されると、「構造式を書く → 平方和を計算して分散分析表を作る → 交互作用を仮定できない理由を述べる → 最適条件の母平均を有効反復数つきで区間推定する」という連鎖で問われる。この連鎖のうち、理論を §6.1 に、数値の計算を §6.2 にまとめた。

実験の形とデータの構造式

因子 AA の水準を A1,…,AlA_1,\dots,A_l とする。因子 BB の水準を B1,…,BmB_1,\dots,B_m とする。すべての組合せ AiBjA_iB_j で1回ずつ、計 N=lmN=lm 回の実験をランダムな順序で行う。組合せ AiBjA_iB_j のデータを xijx_{ij} と書く。データの構造式は

xij=μ+ai+bj+εij,∑i=1lai=0,∑j=1mbj=0,εij∼N(0,σ2) 独立(6.1)x_{ij}=\mu+a_i+b_j+\varepsilon _{ij},\qquad \sum_{i=1}^la_i=0,\quad \sum_{j=1}^mb_j=0,\qquad \varepsilon _{ij}\sim\mathrm{N}(0,\sigma^2)\ \text{独立}\tag{6.1}

とする。第5章の構造式から交互作用の項 (ab)ij(ab)_{ij} を除いた形で、これを加法模型と呼ぶ。加法模型では、組合せの母平均が主効果の和 μ(AiBj)=μ+ai+bj\mu(A_iB_j)=\mu+a_i+b_j で書ける。よって AA の水準を変えたときの母平均の変化 ai′−aia_{i'}-a_i は、もう一方の因子の水準によらない。

和と平均を次のように書く。

Ti⋅=∑j=1mxij,T⋅j=∑i=1lxij,T=∑i,jxij,xˉi⋅=Ti⋅m,xˉ⋅j=T⋅jl,xˉ=TN.T_{i\cdot}=\sum_{j=1}^mx_{ij},\quad T_{\cdot j}=\sum_{i=1}^lx_{ij},\quad T=\sum_{i,j}x_{ij},\qquad \bar x_{i\cdot}=\frac{T_{i\cdot}}{m},\quad \bar x_{\cdot j}=\frac{T_{\cdot j}}{l},\quad \bar x=\frac{T}{N}.

誤差についても同じ規則で εˉi⋅,εˉ⋅j,εˉ\bar\varepsilon _{i\cdot},\bar\varepsilon _{\cdot j},\bar\varepsilon と書く。

繰返しのない2元配置法を選ぶ場面は、大きく2つある。

  1. 技術的な知見から交互作用が無いと考えてよく、実験の回数を減らしたいとき。
  2. BB が日や原料ロットのように実験の場を区切るために入れた因子で、AA との交互作用に関心が無いとき。

後者は第11章の乱塊法の考え方である。BB を入れることでその水準間の違いを誤差から取り除き、AA の検定と推定の精度を上げることが目的になる。

平方和の分解と自由度

各データの全体平均からの偏差を

xij−xˉ=(xˉi⋅−xˉ)⏟A+(xˉ⋅j−xˉ)⏟B+(xij−xˉi⋅−xˉ⋅j+xˉ)⏟e(6.2)x_{ij}-\bar x=\underbrace{(\bar x_{i\cdot}-\bar x)}_{A}+\underbrace{(\bar x_{\cdot j}-\bar x)}_{B}+\underbrace{(x_{ij}-\bar x_{i\cdot}-\bar x_{\cdot j}+\bar x)}_{e}\tag{6.2}

と3つに分ける。最後の項を残差と呼び、eije_{ij} と書く。残差は、第5章で交互作用の推定値と呼んだ量と同じ式である。

定理 6.1(平方和の分解 ★★★)

(6.2) の両辺を2乗して i,ji,j について和をとると、交差項はすべて0になり

ST=SA+SB+Se,SA=m∑i(xˉi⋅−xˉ)2,SB=l∑j(xˉ⋅j−xˉ)2,Se=∑i,jeij2(6.3)S_T=S_A+S_B+S_e,\qquad S_A=m\sum_i(\bar x_{i\cdot}-\bar x)^2,\quad S_B=l\sum_j(\bar x_{\cdot j}-\bar x)^2,\quad S_e=\sum_{i,j}e_{ij}^2\tag{6.3}

が成り立つ。自由度は

ϕT=lm−1,ϕA=l−1,ϕB=m−1,ϕe=(l−1)(m−1)(6.4)\phi_T=lm-1,\qquad \phi_A=l-1,\qquad \phi_B=m-1,\qquad \phi_e=(l-1)(m-1)\tag{6.4}

で、ϕA+ϕB+ϕe=ϕT\phi_A+\phi_B+\phi_e=\phi_T である。

証明

uiA=xˉi⋅−xˉu^A_i=\bar x_{i\cdot}-\bar x、ujB=xˉ⋅j−xˉu^B_j=\bar x_{\cdot j}-\bar x とおく。平均の定義から ∑iuiA=∑jujB=0\sum_iu^A_i=\sum_ju^B_j=0 である。残差を jj について足す。∑jxij=mxˉi⋅\sum_jx_{ij}=m\bar x_{i\cdot} と ∑jxˉ⋅j=mxˉ\sum_j\bar x_{\cdot j}=m\bar x から

∑jeij=mxˉi⋅−mxˉi⋅−mxˉ+mxˉ=0\sum_je_{ij}=m\bar x_{i\cdot}-m\bar x_{i\cdot}-m\bar x+m\bar x=0

となる。同様に ∑ieij=0\sum_ie_{ij}=0 である。交差項は

∑i,juiAujB=(∑iuiA)(∑jujB)=0,∑i,juiAeij=∑iuiA(∑jeij)=0,∑i,jujBeij=∑jujB(∑ieij)=0\begin{aligned} \sum_{i,j}u^A_iu^B_j&=\Big(\sum_iu^A_i\Big)\Big(\sum_ju^B_j\Big)=0,\\ \sum_{i,j}u^A_ie_{ij}&=\sum_iu^A_i\Big(\sum_je_{ij}\Big)=0,\qquad \sum_{i,j}u^B_je_{ij}=\sum_ju^B_j\Big(\sum_ie_{ij}\Big)=0 \end{aligned}

で、すべて0になる。行の偏差 uiAu^A_i は各行のすべてのデータに共通に現れるので、SAS_A に係数として行のデータ数が付く。列の側の係数 ll も同じ理由による。

自由度は、各部分がとりうる値の自由に決められる個数である。

  • uAu^A は ll 個の値に、和が0という制約が1本かかる。自由度は l−1l-1 で、同様に列の側は m−1m-1 である。
  • 残差は lmlm 個の値に、行の和の制約と列の和の制約が合わせて l+ml+m 本かかる。行の和をすべて足した式と列の和をすべて足した式は、どちらも∑i,jeij=0\sum_{i,j}e_{ij}=0 で同じである。よって独立な制約は l+m−1l+m-1 本で、ϕe=lm−(l+m−1)=(l−1)(m−1)\phi_e=lm-(l+m-1)=(l-1)(m-1) になる。

手で計算するときは、修正項 CT=T2/NCT=T^2/N を使って

ST=∑i,jxij2−CT,SA=∑iTi⋅2m−CT,SB=∑jT⋅j2l−CT,Se=ST−SA−SB(6.5)S_T=\sum_{i,j}x_{ij}^2-CT,\qquad S_A=\sum_i\frac{T_{i\cdot}^2}{m}-CT,\qquad S_B=\sum_j\frac{T_{\cdot j}^2}{l}-CT,\qquad S_e=S_T-S_A-S_B\tag{6.5}

とする。誤差の平方和は、残差の2乗和から直接求めるより、引き算で求める方が計算の手間が少ない。

期待平均平方と検定

定理 6.2(期待平均平方 ★★★)

加法模型 (6.1) のもとで

E(VA)=σ2+m σA2,E(VB)=σ2+l σB2,E(Ve)=σ2,(6.6)E(V_A)=\sigma^2+m\,\sigma_A^2,\qquad E(V_B)=\sigma^2+l\,\sigma_B^2,\qquad E(V_e)=\sigma^2,\tag{6.6}

ここで記号は第5章と同じで、次のとおりである。

σA2=∑iai2/(l−1),σB2=∑jbj2/(m−1)\sigma_A^2=\sum_ia_i^2/(l-1),\qquad \sigma_B^2=\sum_jb_j^2/(m-1)

証明

補助として、Y1,…,YnY_1,\dots,Y_n が独立に平均0・分散 τ2\tau^2 に従うとき

E[∑k=1n(Yk−Yˉ)2]=nτ2−n⋅τ2n=(n−1)τ2(6.7)E\Big[\sum_{k=1}^n(Y_k-\bar Y)^2\Big]=n\tau^2-n\cdot\frac{\tau^2}{n}=(n-1)\tau^2\tag{6.7}

が成り立つことを使う(E[∑Yk2]=nτ2E[\sum Y_k^2]=n\tau^2 と E[nYˉ2]=τ2E[n\bar Y^2]=\tau^2 による)。

VAV_A の期待値。構造式を代入すると、bjb_j は jj についての和で消える。

xˉi⋅=μ+ai+εˉi⋅,xˉ=μ+εˉ,xˉi⋅−xˉ=ai+(εˉi⋅−εˉ)\bar x_{i\cdot}=\mu+a_i+\bar\varepsilon _{i\cdot},\qquad \bar x=\mu+\bar\varepsilon ,\qquad \bar x_{i\cdot}-\bar x=a_i+(\bar\varepsilon _{i\cdot}-\bar\varepsilon )

誤差の行の平均 εˉ1⋅,…,εˉl⋅\bar\varepsilon _{1\cdot},\dots,\bar\varepsilon _{l\cdot} は重なりの無い mm 個ずつの平均なので、互いに独立である。分散は σ2/m\sigma^2/m である。εˉ\bar\varepsilon はそれらの平均である。交差項の期待値は E[εˉi⋅−εˉ]=0E[\bar\varepsilon _{i\cdot}-\bar\varepsilon ]=0 により消える。(6.7) で n=l, τ2=σ2/mn=l,\ \tau^2=\sigma^2/m として

E(SA)=m∑iai2+m(l−1)σ2m=(l−1)σ2+m∑iai2.E(S_A)=m\sum_ia_i^2+m(l-1)\frac{\sigma^2}{m}=(l-1)\sigma^2+m\sum_ia_i^2.

自由度 l−1l-1 で割れば、E(VA)E(V_A) の式になる。VBV_B も添字の役割を入れ替えれば同じである。

VeV_e の期待値。構造式を残差に代入すると、母数の部分は

(μ+ai+bj)−(μ+ai)−(μ+bj)+μ=0(\mu+a_i+b_j)-(\mu+a_i)-(\mu+b_j)+\mu=0

で消える。よって eij=εij−εˉi⋅−εˉ⋅j+εˉe_{ij}=\varepsilon _{ij}-\bar\varepsilon _{i\cdot}-\bar\varepsilon _{\cdot j}+\bar\varepsilon となる。(6.3) を誤差の表に当てはめると

∑i,jeij2=∑i,j(εij−εˉ)2−m∑i(εˉi⋅−εˉ)2−l∑j(εˉ⋅j−εˉ)2\sum_{i,j}e_{ij}^2=\sum_{i,j}(\varepsilon _{ij}-\bar\varepsilon )^2-m\sum_i(\bar\varepsilon _{i\cdot}-\bar\varepsilon )^2-l\sum_j(\bar\varepsilon _{\cdot j}-\bar\varepsilon )^2

である。右辺の3つの期待値は、(6.7) から順に次のようになる。

(lm−1)σ2,m(l−1)σ2/m=(l−1)σ2,l(m−1)σ2/l=(m−1)σ2,E(Se)=(lm−1−l+1−m+1)σ2=(l−1)(m−1)σ2.\begin{aligned}&(lm-1)\sigma^2,\qquad m(l-1)\sigma^2/m=(l-1)\sigma^2,\qquad l(m-1)\sigma^2/l=(m-1)\sigma^2,\\ &E(S_e)=(lm-1-l+1-m+1)\sigma^2=(l-1)(m-1)\sigma^2.\end{aligned}

自由度で割って E(Ve)=σ2E(V_e)=\sigma^2 を得る。

(6.6) から、帰無仮説 H0A:a1=⋯=al=0H_0^A:a_1=\dots=a_l=0 のもとで E(VA)=E(Ve)E(V_A)=E(V_e) となる。帰無仮説が偽なら E(VA)>E(Ve)E(V_A)>E(V_e) になる。

誤差が正規分布に従うとき、3つの平方和は、データベクトルを互いに直交する3つの部分空間へ射影した長さの2乗である。部分空間の次元は、それぞれの自由度 ϕA,ϕB,ϕe\phi_A,\phi_B,\phi_e である。第5章の定理と同じ理由で3つの平方和は互いに独立で、

Se/σ2∼χϕe2,SA/σ2∼χϕA2 (H0A のもと)S_e/\sigma^2\sim\chi^2_{\phi_e},\qquad S_A/\sigma^2\sim\chi^2_{\phi_A}\ (H_0^A\text{ のもと})

となる。したがって

F0=VAVe∼FϕA,ϕe(H0A のもと),VBVe∼FϕB,ϕe(H0B のもと)(6.8)F_0=\frac{V_A}{V_e}\sim F_{\phi_A,\phi_e}\quad(H_0^A\text{ のもと}),\qquad \frac{V_B}{V_e}\sim F_{\phi_B,\phi_e}\quad(H_0^B\text{ のもと})\tag{6.8}

で、F0F_0 が上側5%点(1%点)を超えたら帰無仮説を棄却する。分散分析表は次の形になる。

要因平方和 SS自由度 ϕ\phi平均平方 VVF0F_0E(V)E(V)
AASAS_Al−1l-1VAV_AVA/VeV_A/V_eσ2+mσA2\sigma^2+m\sigma_A^2
BBSBS_Bm−1m-1VBV_BVB/VeV_B/V_eσ2+lσB2\sigma^2+l\sigma_B^2
eeSeS_e(l−1)(m−1)(l-1)(m-1)VeV_eσ2\sigma^2
計STS_Tlm−1lm-1

繰返しのある2元配置法の表(第5章)と比べると、違いは次の2点である。

  • 交互作用 A×BA\times B の行と誤差の行が1つにまとまる。
  • 期待平均平方の欄で、主効果の係数が mr,lrmr,lr から m,lm,l に変わる。

交互作用を検定できない理由

交互作用が存在するかもしれない一般の構造式

xij=μ+ai+bj+(ab)ij+εij,∑iai=∑jbj=0,∑i(ab)ij=∑j(ab)ij=0(6.9)x_{ij}=\mu+a_i+b_j+(ab)_{ij}+\varepsilon _{ij},\qquad \sum_ia_i=\sum_jb_j=0,\quad \sum_i(ab)_{ij}=\sum_j(ab)_{ij}=0\tag{6.9}

から出発して、なぜ繰返しが無いと交互作用を検定できないのかを2つの面から説明する。

第一は母数の個数の勘定である。(6.9) で自由に決められる母数の個数は次のとおりである。

  • 一般平均 μ\mu:1個。
  • 主効果 aia_i:l−1l-1 個。主効果 bjb_j:m−1m-1 個。
  • 交互作用 (ab)ij(ab)_{ij}:(l−1)(m−1)(l-1)(m-1) 個。

合計は 1+(l−1)+(m−1)+(l−1)(m−1)=lm1+(l-1)+(m-1)+(l-1)(m-1)=lm 個で、データの個数と等しい。各組合せの母平均をそのデータで推定すると当てはまりは完全になり、誤差の推定に使える自由度は0しか残らない。誤差分散の推定量が作れないので、どの要因の FF 比も作ることができない。

第二は期待平均平方の形である。交互作用がある (6.9) のもとで、加法模型と同じように誤差の平方和を計算する。残差の母数の部分は (ab)ij(ab)_{ij} になる(主効果は打ち消されるが、交互作用は打ち消されない)。したがって

E(Se)=(l−1)(m−1)σ2+∑i,j(ab)ij2,E(Ve)=σ2+σA×B2,σA×B2=∑i,j(ab)ij2(l−1)(m−1)(6.10)E(S_e)=(l-1)(m-1)\sigma^2+\sum_{i,j}(ab)_{ij}^2,\qquad E(V_e)=\sigma^2+\sigma_{A\times B}^2,\qquad \sigma_{A\times B}^2=\frac{\sum_{i,j}(ab)_{ij}^2}{(l-1)(m-1)}\tag{6.10}

となる(導出は確認テスト 6.1-2)。主効果の期待平均平方は (6.6) のまま変わらない。誤差の平均平方は「誤差の分散」と「交互作用の大きさ」の和を推定しており、この2つを分ける別の平均平方が表のどこにも無い。

繰返しのある2元配置法では、同じ組合せの rr 個のデータのばらつきが σ2\sigma^2 だけを推定していた。それを分母にして交互作用を検定することができた。繰返しのない2元配置法ではその分母に当たるものが無い。残差の平均平方が大きくても、それが誤差によるのか交互作用によるのかを判定することができない。

交互作用があるのに加法模型で解析したとき

(6.10) から、交互作用を無視した解析には次の2つのずれが生じる。

  1. 検定が保守的になる。誤差の平均平方が σ2\sigma^2 を過大に見積もるので、主効果の F0F_0 は小さくなり、主効果を見落としやすくなる。
  2. 推定に偏りが出る。組合せの母平均の推定量 xˉi⋅+xˉ⋅j−xˉ\bar x_{i\cdot}+\bar x_{\cdot j}-\bar x の期待値は μ+ai+bj\mu+a_i+b_j である。真の値

μ(AiBj)=μ+ai+bj+(ab)ij\mu(A_iB_j)=\mu+a_i+b_j+(ab)_{ij}

から −(ab)ij-(ab)_{ij} だけずれる。最適条件の母平均を推定するときに、この偏りは信頼区間の幅には現れない。

したがって繰返しのない2元配置法は、交互作用が無いと技術的に判断できる場合に使う計画である。

例題 6.1 交互作用が主効果を隠す例 ★★

オリジナルAA を2水準、BB を3水準とり、繰返しのない2元配置法で実験する。組合せの母平均は次の表のとおりで、誤差分散は σ2\sigma^2 とする。

B1B_1B2B_2B3B_3
A1A_1101214
A2A_2121212
  1. 母平均を μ,ai,bj,(ab)ij\mu,a_i,b_j,(ab)_{ij} に分解せよ。
  2. データを加法模型で解析するとき、3つの期待平均平方 E(VA),E(VB),E(Ve)E(V_A),E(V_B),E(V_e) を求めよ。
  3. BB の主効果は存在するのに、F0=VB/VeF_0=V_B/V_e で検出しにくい理由を説明せよ。
  4. 推定量 xˉ1⋅+xˉ⋅3−xˉ\bar x_{1\cdot}+\bar x_{\cdot3}-\bar x の期待値を求め、真の母平均との差を答えよ。
解答
  1. 全体の平均は μ=(36+36)/6=12\mu=(36+36)/6=12。行の平均はどちらも12なので a1=a2=0a_1=a_2=0。列の平均は 11, 12, 13 なので b1=−1, b2=0, b3=1b_1=-1,\ b_2=0,\ b_3=1。交互作用は

(ab)ij=μ(AiBj)−μˉi⋅−μˉ⋅j+μ(ab)_{ij}=\mu(A_iB_j)-\bar\mu_{i\cdot}-\bar\mu_{\cdot j}+\mu

で、

(ab)11=10−12−11+12=−1,(ab)21=12−12−11+12=1,(ab)12=12−12−12+12=0,(ab)22=12−12−12+12=0,(ab)13=14−12−13+12=1,(ab)23=12−12−13+12=−1.\begin{aligned} (ab)_{11}&=10-12-11+12=-1, & (ab)_{21}&=12-12-11+12=1,\\ (ab)_{12}&=12-12-12+12=0, & (ab)_{22}&=12-12-12+12=0,\\ (ab)_{13}&=14-12-13+12=1, & (ab)_{23}&=12-12-13+12=-1. \end{aligned}

行の和と列の和がすべて0であることも確かめることができる。2. l=2, m=3l=2,\ m=3 なので、自由度と母数の2乗和は次のとおりである。

ϕA=1,ϕB=2,ϕe=2,∑ai2=0,∑bj2=2,∑(ab)ij2=4\phi_A=1,\quad \phi_B=2,\quad \phi_e=2,\qquad \sum a_i^2=0,\quad \sum b_j^2=2,\quad \sum(ab)_{ij}^2=4

定理 6.2 と (6.10) から

E(VA)=σ2+3⋅0=σ2,E(VB)=σ2+2⋅22=σ2+2,E(Ve)=σ2+42=σ2+2.E(V_A)=\sigma^2+3\cdot0=\sigma^2,\qquad E(V_B)=\sigma^2+2\cdot\frac{2}{2}=\sigma^2+2,\qquad E(V_e)=\sigma^2+\frac{4}{2}=\sigma^2+2. 3. BB と誤差の期待平均平方がどちらも σ2+2\sigma^2+2 で等しい。よって F0=VB/VeF_0=V_B/V_e は平均的に1前後の値をとり、主効果があるのに大きな値になりにくい。分母に交互作用の大きさ σA×B2=2\sigma_{A\times B}^2=2 が入り込み、BB の主効果と同じ大きさだけ分母を大きくしているためである。4. 各平均の期待値は次のとおりである。

E[xˉ1⋅]=μ+a1=12,E[xˉ⋅3]=μ+b3=13,E[xˉ]=μ=12E[\bar x_{1\cdot}]=\mu+a_1=12,\qquad E[\bar x_{\cdot3}]=\mu+b_3=13,\qquad E[\bar x]=\mu=12

よって推定量の期待値は 12+13−12=1312+13-12=13 である。真の母平均は14なので、差は 13−14=−113-14=-1 で、これは −(ab)13-(ab)_{13} に等しい。加法模型で推定すると、A1B3A_1B_3 の母平均を平均的に1だけ低く見積もる。

BB が変量因子のとき

BB が原料ロットや実験日のように、多くの候補から偶然選ばれた水準を持つ変量因子であるとする。このとき bj∼N(0,σB2)b_j\sim\mathrm{N}(0,\sigma_B^2) を確率変数とみなす。交互作用も確率的なばらつきとみなし、各 (ab)ij(ab)_{ij} が互いに独立に N(0,σA×B2)\mathrm{N}(0,\sigma_{A\times B}^2) に従うとする。すると ηij=(ab)ij+εij\eta_{ij}=(ab)_{ij}+\varepsilon _{ij} はまとめて独立に、分散 σ2+σA×B2\sigma^2+\sigma_{A\times B}^2 の正規分布に従う。構造式は

xij=μ+ai+bj+ηijx_{ij}=\mu+a_i+b_j+\eta_{ij}

となり、誤差の分散が σ2+σA×B2\sigma^2+\sigma_{A\times B}^2 に置き換わっただけの形になる。

また bjb_j は列ごとに、その列のすべてのデータに共通に入る。よって行の平均の差 xˉi⋅−xˉ\bar x_{i\cdot}-\bar x と残差からは消える。したがって

E(VA)=σ2+σA×B2+mσA2,E(Ve)=σ2+σA×B2(6.11)E(V_A)=\sigma^2+\sigma_{A\times B}^2+m\sigma_A^2,\qquad E(V_e)=\sigma^2+\sigma_{A\times B}^2\tag{6.11}

となり、帰無仮説 H0AH_0^A のもとで E(VA)=E(Ve)E(V_A)=E(V_e) が成り立つ。つまり BB が変量因子なら、交互作用が存在しても、VA/VeV_A/V_e による検定はそのまま正しい(確認テスト 6.1-5)。この理由から、乱塊法(第11章)ではブロックと処理の交互作用を誤差に含めてよい。

ただし AA の母平均の区間推定では、行の平均の分散が

(σ2+σA×B2+σB2)/m(\sigma^2+\sigma_{A\times B}^2+\sigma_B^2)/m

になる。Ve/mV_e/m では σB2\sigma_B^2 の分を見落とす点に注意する(乱塊法の章で扱う)。

交互作用の有無を調べる補助の方法

繰返しが無くても、交互作用の形を「主効果の積に比例する」と限れば、1自由度だけを使って検定することができる。これは Tukey の1自由度の非加法性検定と呼ばれる。交互作用を (ab)ij=γ aibj(ab)_{ij}=\gamma\,a_ib_j と仮定する。すると交互作用の向きは、データから推定した主効果の積で決まる。

cij=(xˉi⋅−xˉ)(xˉ⋅j−xˉ)c_{ij}=(\bar x_{i\cdot}-\bar x)(\bar x_{\cdot j}-\bar x)

この向きへの残差の成分を取り出した平方和

SN=[∑i,j(xˉi⋅−xˉ)(xˉ⋅j−xˉ) xij]2∑i(xˉi⋅−xˉ)2 ∑j(xˉ⋅j−xˉ)2(6.12)S_N=\frac{\Big[\sum_{i,j}(\bar x_{i\cdot}-\bar x)(\bar x_{\cdot j}-\bar x)\,x_{ij}\Big]^2}{\sum_i(\bar x_{i\cdot}-\bar x)^2\,\sum_j(\bar x_{\cdot j}-\bar x)^2}\tag{6.12}

を使い、

F0=SN(Se−SN)/{(l−1)(m−1)−1}(6.13)F_0=\frac{S_N}{(S_e-S_N)/\{(l-1)(m-1)-1\}}\tag{6.13}

を F1,(l−1)(m−1)−1F_{1,(l-1)(m-1)-1} と比べる。

命題 6.3(Tukey の検定統計量の分布 ★)

加法模型 (6.1) のもとで、(6.13) の F0F_0 は F1,(l−1)(m−1)−1F_{1,(l-1)(m-1)-1} に従う。

証明

cijc_{ij} は行の和も列の和も0である。実際、

∑jcij=(xˉi⋅−xˉ)∑j(xˉ⋅j−xˉ)=0.\sum_jc_{ij}=(\bar x_{i\cdot}-\bar x)\sum_j(\bar x_{\cdot j}-\bar x)=0.

そのため ∑cij(μ+ai+bj)=0\sum c_{ij}(\mu+a_i+b_j)=0 となる。さらに ∑cijxij=∑cijeij\sum c_{ij}x_{ij}=\sum c_{ij}e_{ij} が成り立ち、データを残差に置き換えてよい。分母は

∑cij2=∑i(xˉi⋅−xˉ)2∑j(xˉ⋅j−xˉ)2\sum c_{ij}^2=\sum_i(\bar x_{i\cdot}-\bar x)^2\sum_j(\bar x_{\cdot j}-\bar x)^2

なので、q=c/∥c∥\bm q=\bm c/\lVert \bm c\rVert とおくと SN=(q⊤e)2S_N=(\bm q^\top\bm e)^2 である。ここで q\bm q は、残差の属する (l−1)(m−1)(l-1)(m-1) 次元の部分空間の単位ベクトルである。e\bm e はその部分空間への誤差の射影である。

c\bm c は行と列の平均だけの関数である。正規性のもとで、行と列の平均は残差ベクトルと独立である(直交する部分空間への射影だから)。そこで行と列の平均を固定した条件付き分布を考えると、q\bm q は定数ベクトルになる。

部分空間の正規直交基底を、q\bm q を1本目にとって選ぶ。残差の座標は独立に N(0,σ2)\mathrm{N}(0,\sigma^2) に従うので、次の2つは独立である。

SN/σ2∼χ12,(Se−SN)/σ2∼χ(l−1)(m−1)−12S_N/\sigma^2\sim\chi^2_1,\qquad (S_e-S_N)/\sigma^2\sim\chi^2_{(l-1)(m-1)-1}

条件付き分布として F0∼F1,(l−1)(m−1)−1F_0\sim F_{1,(l-1)(m-1)-1} が得られる。この分布は条件にした値によらないので、条件を外しても同じ分布になる。

Tukey の検定が有意にならなくても、主効果の積に比例しない形の交互作用が無いとは言えない。試験で問われるのは主に「交互作用を検定できない理由」の方で、この検定は残差の表を見て交互作用を疑ったときの補助として位置づける。

例題 6.2 1自由度の非加法性検定 ★

オリジナル2つの因子をともに3水準とった繰返しのない2元配置法で、次のデータを得た。

B1B_1B2B_2B3B_3
A1A_1312
A2A_2156
A3A_32610
  1. SA,SB,SeS_A,S_B,S_e を求めよ。
  2. Tukey の SNS_N を求め、有意水準 5% で非加法性を検定せよ。F1,3(0.05)=10.13, F1,3(0.01)=34.12F_{1,3}(0.05)=10.13,\ F_{1,3}(0.01)=34.12 を用いよ。
解答
  1. 行の和は 6, 12, 18、列の和も 6, 12, 18 である。総和と修正項・2乗和は次のとおりである。

T=36,CT=362/9=144,∑xij2=216T=36,\qquad CT=36^2/9=144,\qquad \sum x_{ij}^2=216

ST=216−144=72,SA=62+122+1823−144=5043−144=24,SB=24 (列の和が行の和と同じ),Se=72−24−24=24.\begin{aligned} S_T&=216-144=72, & S_A&=\frac{6^2+12^2+18^2}{3}-144=\frac{504}{3}-144=24,\\ S_B&=24\ (\text{列の和が行の和と同じ}), & S_e&=72-24-24=24. \end{aligned} 2. 行の平均は 2, 4, 6、列の平均も 2, 4, 6、全体の平均は4である。よって偏差は

xˉi⋅−xˉ=(−2,0,2),xˉ⋅j−xˉ=(−2,0,2).\bar x_{i\cdot}-\bar x=(-2,0,2),\qquad \bar x_{\cdot j}-\bar x=(-2,0,2).

積 cijc_{ij} が0でないのは4隅だけで、c11=c33=4, c13=c31=−4c_{11}=c_{33}=4,\ c_{13}=c_{31}=-4。分子の中身は

∑cijxij=4⋅3−4⋅2−4⋅2+4⋅10=36.\sum c_{ij}x_{ij}=4\cdot3-4\cdot2-4\cdot2+4\cdot10=36.

次のように計算が進む。

分母={(−2)2+02+22}2=8⋅8=64,SN=362/64=1296/64=20.25,Se−SN=3.75 (自由度 (3−1)(3−1)−1=3),平均平方=1.25,F0=20.25/1.25=16.2.\begin{aligned}&\text{分母}=\{(-2)^2+0^2+2^2\}^2=8\cdot8=64, && S_N=36^2/64=1296/64=20.25,\\ &S_e-S_N=3.75\ (\text{自由度 }(3-1)(3-1)-1=3), && \text{平均平方}=1.25,\\ &F_0=20.25/1.25=16.2.\end{aligned}

10.13<16.2<34.1210.13<16.2<34.12 なので 5% で有意である。

残差の平方和24の大部分(20.25)が、主効果の積の向きに集まっている。「行の効果が大きいほど列の効果も大きく現れる」形の交互作用が疑われる。このデータで加法模型の分散分析を行うのは適切でなく、たとえば対数をとって積の構造を和に直すことを検討する。

分散分析後の推定

加法模型では、組合せ AiBjA_iB_j の母平均 μ+ai+bj\mu+a_i+b_j を

μ^(AiBj)=μ^+a^i+b^j=xˉ+(xˉi⋅−xˉ)+(xˉ⋅j−xˉ)=xˉi⋅+xˉ⋅j−xˉ(6.14)\hat\mu(A_iB_j)=\hat\mu+\hat a_i+\hat b_j=\bar x+(\bar x_{i\cdot}-\bar x)+(\bar x_{\cdot j}-\bar x)=\bar x_{i\cdot}+\bar x_{\cdot j}-\bar x\tag{6.14}

で推定する。AA だけが有意なときは、もう一方の因子を誤差にプールして μ^(Ai)=xˉi⋅\hat\mu(A_i)=\bar x_{i\cdot} で推定する。

定理 6.4(推定量の分散と有効反復数 ★★★)

V[xˉi⋅+xˉ⋅j−xˉ]=(1m+1l−1lm)σ2=l+m−1lm σ2,ne=lml+m−1.V[\bar x_{i\cdot}+\bar x_{\cdot j}-\bar x]=\Big(\frac1m+\frac1l-\frac1{lm}\Big)\sigma^2=\frac{l+m-1}{lm}\,\sigma^2,\qquad n_e=\frac{lm}{l+m-1}.

証明

各平均の分散は次のとおりである。

V[xˉi⋅]=σ2/m,V[xˉ⋅j]=σ2/l,V[xˉ]=σ2/NV[\bar x_{i\cdot}]=\sigma^2/m,\qquad V[\bar x_{\cdot j}]=\sigma^2/l,\qquad V[\bar x]=\sigma^2/N

共分散は、2つの平均に共通に含まれるデータの個数で決まる。行の平均(mm 個の平均)と列の平均(ll 個の平均)が共有するのは、交点のデータ1個だけなので

Cov(xˉi⋅,xˉ⋅j)=1m⋅1l⋅σ2=σ2N.\mathrm{Cov}(\bar x_{i\cdot},\bar x_{\cdot j})=\frac1m\cdot\frac1l\cdot\sigma^2=\frac{\sigma^2}{N}.

行の平均と全体の平均は mm 個を共有するので、次のようになる。列の平均と全体の平均も同様である。

Cov(xˉi⋅,xˉ)=1m⋅1N⋅mσ2=σ2N,Cov(xˉ⋅j,xˉ)=σ2N\mathrm{Cov}(\bar x_{i\cdot},\bar x)=\frac1m\cdot\frac1N\cdot m\sigma^2=\frac{\sigma^2}N,\qquad \mathrm{Cov}(\bar x_{\cdot j},\bar x)=\frac{\sigma^2}N

よって

V[xˉi⋅+xˉ⋅j−xˉ]=σ2[1m+1l+1N+2N−2N−2N]=σ2[1m+1l−1N]V[\bar x_{i\cdot}+\bar x_{\cdot j}-\bar x]=\sigma^2\Big[\frac1m+\frac1l+\frac1N+\frac2N-\frac2N-\frac2N\Big]=\sigma^2\Big[\frac1m+\frac1l-\frac1N\Big]

で、通分すると (l+m−1)σ2/(lm)(l+m-1)\sigma^2/(lm) になる。

この有効反復数は、第5章で述べた2つの簡便な式のどちらでも同じ値になる。

  • 伊奈の式:点推定の式に現れる平均の係数を、その平均のデータ数で割って足す。1/ne=1/m+1/l−1/N1/n_e=1/m+1/l-1/N となる。
  • 田口の式:点推定に用いた要因(一般平均を含む)の自由度の和を、データの総数で割る。

1/ne=(1+ϕA+ϕB)/N=(l+m−1)/(lm)1/n_e=(1+\phi_A+\phi_B)/N=(l+m-1)/(lm)

繰返しのある2元配置法で交互作用をプールしたときの ne=lmr/(l+m−1)n_e=lmr/(l+m-1) で、r=1r=1 とおいた値でもある。

点推定値 μ^\hat\mu と VeV_e は独立である(前者は行と列の平均の関数で、後者は残差の関数)。したがって

(μ^−μ(AiBj))/Ve/ne∼tϕe(\hat\mu-\mu(A_iB_j))/\sqrt{V_e/n_e}\sim t_{\phi_e}

となる。信頼率 95% の信頼区間と、同じ条件で新たに1回実験したときの値の予測区間は

μ^(AiBj)±tϕe(0.025)Vene,μ^(AiBj)±tϕe(0.025)(1+1ne)Ve(6.15)\hat\mu(A_iB_j)\pm t_{\phi_e}(0.025)\sqrt{\frac{V_e}{n_e}},\qquad \hat\mu(A_iB_j)\pm t_{\phi_e}(0.025)\sqrt{\Big(1+\frac1{n_e}\Big)V_e}\tag{6.15}

である。予測区間の根号の中の1は、新しいデータの誤差の分散の分である。新しい誤差は既存のデータと独立なので、分散が足し算になる。

2つの水準の母平均の差 ai−ai′a_i-a_{i'} は、xˉi⋅−xˉi′⋅\bar x_{i\cdot}-\bar x_{i'\cdot} で推定する。2つの平均は重なりが無いので分散は 2σ2/m2\sigma^2/m で、1/ne=2/m1/n_e=2/m として

(xˉi⋅−xˉi′⋅)±tϕe(0.025)2Vem(6.16)(\bar x_{i\cdot}-\bar x_{i'\cdot})\pm t_{\phi_e}(0.025)\sqrt{\frac{2V_e}{m}}\tag{6.16}

とする。同じ列で2つの水準を比べる場合も、加法模型では次のようになるので同じ区間になる。

μ^(AiBj)−μ^(Ai′Bj)=xˉi⋅−xˉi′⋅\hat\mu(A_iB_j)-\hat\mu(A_{i'}B_j)=\bar x_{i\cdot}-\bar x_{i'\cdot}

欠測値があるとき

繰返しのない2元配置法では、1つのデータが失われると表が釣り合わなくなる。主効果の平方和を和の式 (6.5) で計算することができなくなる。そこで、欠けたデータ x11x_{11} の位置に値 zz を入れ、誤差の平方和を最小にする値を推定値として使う方法がある。加法模型の当てはめは残差の2乗和を最小にすることなので、その値は「残りのデータに加法模型を当てはめたときの A1B1A_1B_1 の予測値」になる。

欠けた位置を除いた和を、T1⋅′,T⋅1′,T′T'_{1\cdot},T'_{\cdot1},T' と書く。値を入れたときの和は、それぞれに zz を足したものなので、

Se(z)=(∑′xij2+z2)−(T1⋅′+z)2+∑i≥2Ti⋅2m−(T⋅1′+z)2+∑j≥2T⋅j2l+(T′+z)2lmS_e(z)=\Big(\sum{}'x_{ij}^2+z^2\Big)-\frac{(T'_{1\cdot}+z)^2+\sum_{i\ge2}T_{i\cdot}^2}{m}-\frac{(T'_{\cdot1}+z)^2+\sum_{j\ge2}T_{\cdot j}^2}{l}+\frac{(T'+z)^2}{lm}

である(∑′\sum' は欠けた位置を除く和)。zz で微分して0とおくと

z−T1⋅′+zm−T⋅1′+zl+T′+zlm=0.z-\frac{T'_{1\cdot}+z}{m}-\frac{T'_{\cdot1}+z}{l}+\frac{T'+z}{lm}=0.

両辺に lmlm を掛けて整理すると

z(lm−l−m+1)=lT1⋅′+mT⋅1′−T′z(lm-l-m+1)=lT'_{1\cdot}+mT'_{\cdot1}-T'

となり、

z^=lT1⋅′+mT⋅1′−T′(l−1)(m−1)(6.17)\hat z=\frac{lT'_{1\cdot}+mT'_{\cdot1}-T'}{(l-1)(m-1)}\tag{6.17}

を得る。z2z^2 の係数は次のとおり正なので、これは最小値である。

1−1/m−1/l+1/(lm)=(l−1)(m−1)/(lm)>01-1/m-1/l+1/(lm)=(l-1)(m-1)/(lm)>0

推定値を入れた表で通常どおり平方和を計算し、誤差の自由度と総自由度をそれぞれ1だけ減らして ϕe=(l−1)(m−1)−1\phi_e=(l-1)(m-1)-1 とする。推定値は観測値ではなく、新しい情報を持たないので、自由度を数えてはいけない。

例

§6.2 の表 6.1 で、A1B1A_1B_1 の値(42)が失われたとする。l=4, m=3l=4,\ m=3 で、欠けた位置を除いた和は

T1⋅′=45+46=91,T⋅1′=46+49+48=143,T′=578−42=536T'_{1\cdot}=45+46=91,\qquad T'_{\cdot1}=46+49+48=143,\qquad T'=578-42=536

なので

z^=4×91+3×143−5363×2=364+429−5366=2576=42.83\hat z=\frac{4\times91+3\times143-536}{3\times2}=\frac{364+429-536}{6}=\frac{257}{6}=42.83

で、失われた値42に近い値が得られる。このあと誤差の自由度は 6−1=56-1=5 として分散分析表を作る。

確認テスト

オリジナル

  1. 6.1-1 AA を5水準、BB を4水準とった繰返しのない2元配置法について、各要因の自由度と期待平均平方の欄を書け。また、交互作用が存在するとき、期待平均平方の欄のどこがどう変わるかを答えよ。
  2. 6.1-2 交互作用のある構造式 (6.9) のもとで、次を導け。

E(Se)=(l−1)(m−1)σ2+∑i,j(ab)ij2E(S_e)=(l-1)(m-1)\sigma^2+\sum_{i,j}(ab)_{ij}^2 3. 6.1-3 2つの因子をともに3水準とり、次のデータを得た。分散分析表を作り、F2,4(0.05)=6.944, F2,4(0.01)=18.00F_{2,4}(0.05)=6.944,\ F_{2,4}(0.01)=18.00 で検定せよ。さらに μ(A3B3)\mu(A_3B_3) の点推定値と信頼率 95% の信頼区間を求めよ(t4(0.025)=2.776t_4(0.025)=2.776)。

B1B_1B2B_2B3B_3
A1A_181012
A2A_291213
A3A_3131417
4. 6.1-4 l=4, m=5l=4,\ m=5 の繰返しのない2元配置法で、次の推定量の有効反復数を田口の式と伊奈の式の両方で求めよ。

  1. (a) μ^(AiBj)=xˉi⋅+xˉ⋅j−xˉ\hat\mu(A_iB_j)=\bar x_{i\cdot}+\bar x_{\cdot j}-\bar x
  2. (b) BB をプールしたときの μ^(Ai)=xˉi⋅\hat\mu(A_i)=\bar x_{i\cdot}
  3. (c) 差 xˉi⋅−xˉi′⋅\bar x_{i\cdot}-\bar x_{i'\cdot}(1/ne1/n_e を答えよ)
  4. 6.1-5 次の模型で、(6.11) を導け。

xij=μ+ai+bj+(ab)ij+εij(∑ai=0)x_{ij}=\mu+a_i+b_j+(ab)_{ij}+\varepsilon _{ij}\quad(\textstyle\sum a_i=0)

ここで次の確率変数はすべて独立とする。

bj∼N(0,σB2),(ab)ij∼N(0,σA×B2),εij∼N(0,σ2)b_j\sim\mathrm{N}(0,\sigma_B^2),\qquad (ab)_{ij}\sim\mathrm{N}(0,\sigma_{A\times B}^2),\qquad \varepsilon _{ij}\sim\mathrm{N}(0,\sigma^2)

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