実験計画法 第7章 §7.2 ★★ 3つの2元表から分散分析表を作り、プールしたあと残った要因に合わせて推定式と ne を組み立てる
データと集計
ある樹脂の成形条件を調べるために、次の3つの因子を取り上げた。
- 成形温度 A(3水準)
- 保圧 B(2水準)
- 冷却時間 C(2水準)
各組合せで r=2 回、計 N=24 回の実験をランダムな順序で行った。特性値は曲げ強度で、大きいほどよい。計算を簡単にするため、測定値から一定の値を引いた整数で示す(定数を引いても平方和は変わらない)。
| | C1 | C2 |
| | データ | 和 | データ | 和 |
| A1 | B1 | 12, 14 | 26 | 15, 15 | 30 |
| B2 | 9, 11 | 20 | 13, 12 | 25 |
| A2 | B1 | 18, 16 | 34 | 19, 21 | 40 |
| B2 | 13, 12 | 25 | 16, 18 | 34 |
| A3 | B1 | 15, 17 | 32 | 20, 18 | 38 |
| B2 | 16, 14 | 30 | 19, 20 | 39 |
3元表の和 Tijk⋅(上の「和」の列)を、添字を1つずつ消して3つの2元表にまとめる。
| AB | B1 | B2 | 計 |
| A1 | 56 | 45 | 101 |
| A2 | 74 | 59 | 133 |
| A3 | 70 | 69 | 139 |
| 計 | 200 | 173 | 373 |
| AC | C1 | C2 |
| A1 | 46 | 55 |
| A2 | 59 | 74 |
| A3 | 62 | 77 |
| 計 | 167 | 206 |
| BC | C1 | C2 |
| B1 | 92 | 108 |
| B2 | 75 | 98 |
平方和の計算
総和・修正項・2乗和は次のとおりである。
T=373,CT=3732/24=5797.042,∑x2=6031
(7.9) の各式に代入する。各2元表のセルに入るデータの個数は、次のとおりである。
AB: nr=4,AC: mr=4,BC: lr=6
STSASBSABSA×BSACSA×CSBCSB×CSABCSA×B×CSe=6031−5797.042=233.958,=81012+1332+1392−CT=104.333,=122002+1732−CT=30.375,SC=121672+2062−CT=63.375,=4562+452+742+592+702+692−CT=147.708,=147.708−104.333−30.375=13.000,=4462+552+592+742+622+772−CT=170.708,=170.708−104.333−63.375=3.000,=6922+1082+752+982−CT=95.792,=95.792−30.375−63.375=2.042,=2262+302+⋯+392−CT=216.458,=216.458−104.333−30.375−63.375−13.000−3.000−2.042=0.333,=233.958−216.458=17.500.
分散分析表とプーリング
ϕe=12⋅1=12、Ve=17.500/12=1.458 である。比べる F 分布の点は次の4つである。
F1,12(0.05)=4.747,F1,12(0.01)=9.330,F2,12(0.05)=3.885,F2,12(0.01)=6.927
分散分析表は次のとおりである。
| 要因 | S | ϕ | V | F0 | 判定 |
| A | 104.333 | 2 | 52.167 | 35.77 | ∗∗ |
| B | 30.375 | 1 | 30.375 | 20.83 | ∗∗ |
| C | 63.375 | 1 | 63.375 | 43.46 | ∗∗ |
| A×B | 13.000 | 2 | 6.500 | 4.46 | ∗ |
| A×C | 3.000 | 2 | 1.500 | 1.03 | |
| B×C | 2.042 | 1 | 2.042 | 1.40 | |
| A×B×C | 0.333 | 2 | 0.167 | 0.11 | |
| e | 17.500 | 12 | 1.458 | | |
| 計 | 233.958 | 23 | | | |
次の3つの交互作用は、いずれも有意でなく、F0 も2を下回る。
A×C,B×C,A×B×C
技術的にもこれらの交互作用は考えにくいとして、3つを誤差にプールする。プールは高次の交互作用から順に考えるのが普通である。A×B×C が残っていると、それを構成する A×B などは推定の式から外せないからである(図 7.1 で上にある要因を残すと、その下にある要因もすべて残る)。
Se′=17.500+3.000+2.042+0.333=22.875,ϕe′=12+2+1+2=17,Ve′=1722.875=1.346.
プール後の分散分析表は次のとおりである。比べる F 分布の点は次の4つである。
F1,17(0.05)=4.451,F1,17(0.01)=8.400,F2,17(0.05)=3.592,F2,17(0.01)=6.112
| 要因 | S | ϕ | V | F0 | 判定 |
| A | 104.333 | 2 | 52.167 | 38.77 | ∗∗ |
| B | 30.375 | 1 | 30.375 | 22.57 | ∗∗ |
| C | 63.375 | 1 | 63.375 | 47.10 | ∗∗ |
| A×B | 13.000 | 2 | 6.500 | 4.83 | ∗ |
| e′ | 22.875 | 17 | 1.346 | | |
| 計 | 233.958 | 23 | | | |
主効果 A,B,C は 1% で、交互作用 A×B は 5% で有意である。

図 7.2 適用例の AB 2元表の平均 xˉij⋅⋅。実線が B1、破線が B2。A1,A2 では B1 が約 3.5 高いが、A3 ではほぼ差が無い。この平行でない形が A×B の有意に対応する。
最適条件の推定
プール後に残った要因は A,B,C,A×B なので、組合せの母平均の構造は
μ(AiBjCk)=μ+ai+bj+(ab)ij+ck=[μ+ai+bj+(ab)ij]+[μ+ck]−μ
である。右辺の3つの括弧は、順に xˉij⋅⋅、xˉ⋅⋅k⋅ と全体平均で推定できる。よって
μ^(AiBjCk)=xˉij⋅⋅+xˉ⋅⋅k⋅−xˉ.(7.11)
推定の式は、次の手順で組み立てる。
- 残った要因を図 7.1 で包含する、最も上の要因の表の平均を足す。ここでは AB 2元表と、1元表 C である。
- 重なって2回数えた部分を引く。ここでは μ である。
最適条件は、次の2つを組み合わせた A2B1C2 である。
- AB 2元表の平均が最大の A2B1。平均は 74/4=18.5 である。A×B が有意なので、2つの因子は別々にでなく2元表で選ぶ。
- C の平均が大きい C2。平均は 206/12=17.167 である。C はほかの因子と交互作用を持たないので、それだけで選んでよい。
μ^(A2B1C2)=18.5+17.167−15.542=20.125(xˉ=373/24=15.542).
有効反復数は、伊奈の式で各平均の係数をデータ数で割って足すと
ne1=nr1+lmr1−N1=41+121−241=247,
田口の式で点推定に用いた要因の自由度を数えると
ne1=N1+ϕA+ϕB+ϕA×B+ϕC=241+2+1+2+1=247
となり、どちらも ne=24/7 である。第5章で述べたとおり、2つの式が一致するのには理由がある。この推定量は、次の要因が張る7次元の部分空間への射影の成分である。
一般平均+A+B+A×B+C
釣り合った計画では、その射影行列の対角成分がすべて 7/24 に等しい。
信頼率 95% の信頼区間は、t17(0.025)=2.110 を使って
20.125±2.110neVe′=20.125±2.1101.346×247=20.125±2.110×0.6265=20.125±1.322,
すなわち [18.80, 21.45] である。この条件で新しく1回実験したときの値の 95% 予測区間は
20.125±2.110(1+247)1.346=20.125±2.782,
すなわち [17.34, 22.91] である。
もし交互作用を1つもプールしなければ、推定値は3元表の平均 xˉ212⋅=40/2=20 で ne=r=2 となる。プールによって、区間は次の2つの理由で狭くなる。
- 推定に使うデータが実質的に増える。ne は2から 24/7≈3.43 へ増える。
- 誤差の自由度が12から17へ増える。
ただし、プールした交互作用が実際には0でないとする。このとき推定量の期待値は、真の母平均から次の量だけずれる。
E[xˉij⋅⋅+xˉ⋅⋅k⋅−xˉ]−μ(AiBjCk)=(ac)ik+(bc)jk+(abc)ijk
これがプールの判断を慎重に行う理由である。
残った要因と推定の式・有効反復数(3元配置、N=lmnr)
| 残った交互作用 | μ^(AiBjCk) | 1/ne(伊奈) |
| なし | xˉi⋅⋅⋅+xˉ⋅j⋅⋅+xˉ⋅⋅k⋅−2xˉ | mnr1+lnr1+lmr1−N2 |
| A×B | xˉij⋅⋅+xˉ⋅⋅k⋅−xˉ | nr1+lmr1−N1 |
| A×B, A×C | xˉij⋅⋅+xˉi⋅k⋅−xˉi⋅⋅⋅ | nr1+mr1−mnr1 |
| 2因子交互作用3つ | xˉij⋅⋅+xˉi⋅k⋅+xˉ⋅jk⋅ | 田口の式で Nlmn−ϕA×B×C |
| −xˉi⋅⋅⋅−xˉ⋅j⋅⋅−xˉ⋅⋅k⋅+xˉ | |
| 全部(A×B×C も) | xˉijk⋅ | r1 |
主効果
A,B,C はどの行でも残っているとする。どの行でも、田口の式と伊奈の式で同じ値になる。田口の式は
ne1=N1+(残った要因の自由度の和)
である。
例題 7.3 空欄のある分散分析表から最適条件の区間推定まで ★★
オリジナル水準数を (l,m,n)=(2,3,2) とする。各組合せで r=2 回、計 N=24 回の実験をした。平方和は次のとおりであった。
| ST | SA | SB | SC | SA×B | SA×C | SB×C | SA×B×C |
| 150.0 | 40.0 | 30.0 | 12.0 | 3.0 | 21.0 | 4.0 | 2.0 |
特性値は大きいほどよい。平均は次のとおりである。
- AC 2元表で最大の平均は xˉ1⋅2⋅=31.0 である。
- B で最大の平均は xˉ⋅3⋅⋅=27.5 である。
- 全体平均は xˉ=25.0 である。
- Se を求めて分散分析表を作り、5% と 1% で検定せよ。
- 交互作用のうち F0<2 のものをプールして表を作り直し、検定せよ。C の判定が変わる理由を述べよ。
- 最適条件の母平均の点推定値と、信頼率 95% の信頼区間を求めよ。
必要なら次の値を用いよ。
F1,12(0.05)=4.747,F1,12(0.01)=9.330,F2,12(0.05)=3.885,F2,12(0.01)=6.927,F1,18(0.05)=4.414,F1,18(0.01)=8.285,F2,18(0.05)=3.555,F2,18(0.01)=6.013,t18(0.025)=2.101
解答
- 自由度は次のとおりで、和は23である。
ϕA=1,ϕB=2,ϕC=1,ϕA×B=2,ϕA×C=1,ϕB×C=2,ϕA×B×C=2,ϕe=12⋅1=12
誤差の平方和と平均平方は次のとおりである。
Se=150.0−(40+30+12+3+21+4+2)=38.0,Ve=38.0/12=3.167
FA=3.16740.0=12.63,FB=3.16715.0=4.74,FC=3.16712.0=3.79,FA×B=3.1671.5=0.47,FA×C=3.16721.0=6.63,FB×C=3.1672.0=0.63,FA×B×C=3.1671.0=0.32.
判定は次のとおりである。
- A は 12.63>9.330 で 1% 有意である。
- B は 3.885<4.74<6.927 で 5% 有意である。
- A×C は 4.747<6.63<9.330 で 5% 有意である。
- C は 3.79<4.747 で有意でない。ほかの交互作用も有意でない。
- F0<2 の交互作用は、次の3つである。これらをプールする。
A×B,B×C,A×B×C
Se′=38.0+3.0+4.0+2.0=47.0,ϕe′=12+2+2+2=18,Ve′=2.611
FA=2.61140.0=15.32,FB=2.61115.0=5.74,FC=2.61112.0=4.60,FA×C=2.61121.0=8.04.
判定は次のとおりである。
- A は 1% 有意である。
- B は 3.555<5.74<6.013 で 5% 有意である。
- C は 4.414<4.60<8.285 で 5% 有意である。
- A×C は 4.414<8.04<8.285 で 5% 有意である。
C が有意に変わったのは、次の2つによる。
- 誤差の自由度が12から18に増えた。そのため F1,ϕ(0.05) が 4.747 から 4.414 に下がった。
- プールした3つの平均平方は、いずれも Ve より小さかった。そのため誤差の平均平方が 3.167 から 2.611 に下がった。
なお、C はプール前に有意でなくても、推定の式から外すことはできない。A×C が有意だからである。交互作用 A×C を残すと、その部分である2つの主効果も残る。3. 残った要因は A,B,C,A×C なので、推定の式は次のとおりである。
μ^(AiBjCk)=xˉi⋅k⋅+xˉ⋅j⋅⋅−xˉ
最適条件は、AC 2元表で最大の A1C2 に、もう1つの因子で最大の水準を組み合わせたものである。それは A1B3C2 で、
μ^(A1B3C2)=31.0+27.5−25.0=33.5.
有効反復数を2つの式で求める。
ne1=N1+ϕA+ϕC+ϕA×C+ϕB=241+1+1+1+2=41
- 伊奈の式では、xˉ1⋅2⋅ は mr=6 個の平均である。xˉ⋅3⋅⋅ は lnr=8 個の平均である。
ne1=61+81−241=41
どちらも ne=4 である。
33.5±2.10142.611=33.5±2.101×0.808=33.5±1.70,
すなわち [31.80, 35.20] である。
確認テスト
オリジナル
- 7.2-1 3つの因子がいずれも2水準で、r=2 の3元配置(N=16)を考える。AB 2元表の和は次のとおりであった。
T11⋅⋅=40,T12⋅⋅=52,T21⋅⋅=50,T22⋅⋅=46
次の4つを求めよ。
CT,SA,SB,SA×B
また2水準では次となることを確かめよ。
SA×B=N(T11⋅⋅−T12⋅⋅−T21⋅⋅+T22⋅⋅)2
2. 7.2-2 水準数を (l,m,n)=(3,3,2)、r=2 とする3元配置で、平方和は次のとおりであった。
| SA | SB | SC | SA×B | SA×C | SB×C | SA×B×C | Se |
| 48.0 | 20.0 | 9.0 | 6.0 | 5.2 | 1.2 | 4.4 | 27.0 |
分散分析表を作って検定せよ。交互作用をすべてプールした表でも検定せよ。プール後の最適条件の推定で、ne はいくらか。必要なら次の値を用いよ。
F2,18(0.01)=6.013,F1,18(0.05)=4.414,F1,18(0.01)=8.285,F4,18(0.05)=2.928,F2,18(0.05)=3.555,F2,30(0.01)=5.390,F1,30(0.05)=4.171,F1,30(0.01)=7.562
3. 7.2-3 水準数を (l,m,n)=(3,2,2)、r=2 とする3元配置を考える。プール後に、2つの交互作用 A×B と B×C が残った。μ^(AiBjCk) の式を書け。また ne を、伊奈の式と田口の式の両方で求めよ。4. 7.2-4 本節の適用例で、μ(A2B1C2)−μ(A3B1C2) の点推定値と信頼率 95% の信頼区間を求めよ。5. 7.2-5 推定量 xˉij⋅⋅+xˉ⋅⋅k⋅−xˉ の分散が σ2(nr1+lmr1−N1) であることを、平均どうしの共分散を計算して示せ。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com