実験計画法 第11章 §11.2 ★★★ 数値の表から分散分析表・検定・推定・分散成分の区間推定までを一通り計算する
次の例題で、前節の道具を1つのデータに最後まで適用する。数値は練習用に作った。
例題 11.2 触媒の比較を乱塊法で解析する ★★★
オリジナル反応の収率(%)を上げるため、触媒 A の4種類 A1,…,A4 を比べる。1日に4回しか実験できないので、5日を5つのブロック R1,…,R5 とし、各日に4種類を1回ずつ、日の中の順番は乱数で決めて実施した。結果を表 11.2 に示す。
表 11.2 触媒の比較の収率データ(%) | R1 | R2 | R3 | R4 | R5 | 計 Ti⋅ |
| A1 | 71 | 79 | 70 | 74 | 81 | 375 |
| A2 | 74 | 80 | 73 | 79 | 82 | 388 |
| A3 | 72 | 77 | 69 | 73 | 79 | 370 |
| A4 | 75 | 82 | 74 | 78 | 84 | 393 |
| 計 T⋅j | 292 | 318 | 286 | 304 | 326 | 1526 |
- 分散分析表を作り、有意水準 5%(および 1%)で A と R を検定せよ。∑xij2=116798 である。
- 収率が最大の水準の母平均(ブロックの母集団で平均したもの)の信頼率 95% の信頼区間を求めよ。
- 最大の水準と A1 の母平均の差の信頼率 95% の信頼区間を求めよ。
- ブロック因子の分散成分 σR2 の点推定値と、Satterthwaite の近似による信頼率 95% の信頼区間を求めよ。
数表の値は次を用いる。
F3,12(0.05)=3.49,F3,12(0.01)=5.95,F4,12(0.05)=3.26,F4,12(0.01)=5.41,t12(0.025)=2.179,t4(0.025)=2.776,χ42(0.025)=11.14,χ42(0.975)=0.484.
解答
- 水準数 4、ブロック数 5、総データ数 20 である。修正項は CT=15262/20=2328676/20=116433.8。
STSASRSe=116798−116433.8=364.2,=53752+3882+3702+3932−CT=5582518−116433.8=116503.6−116433.8=69.8,=42922+3182+2862+3042+3262−CT=4466876−116433.8=116719−116433.8=285.2,=ST−SA−SR=364.2−69.8−285.2=9.2.
自由度は因子が 3、ブロックが 4、誤差が 3×4=12、全体が 19 である。分散分析表は次のとおり。
| 要因 | 平方和 | 自由度 | 平均平方 | F0 | E(V) |
| A | 69.8 | 3 | 23.27 | 30.3∗∗ | σ2+5σA2 |
| R | 285.2 | 4 | 71.30 | 93.0∗∗ | σ2+4σR2 |
| e | 9.2 | 12 | 0.767 | | σ2 |
| 計 | 364.2 | 19 | | | |
2つの F0 はどちらも 1% 点を上回る。
F0(A)F0(R)=23.27/0.767=30.3>F3,12(0.01)=5.95,=71.30/0.767=93.0>F4,12(0.01)=5.41.
よって因子もブロックも有意水準 1% で有意である(∗∗ は 1% 有意の印)。2. 平均が最大の水準は A4 で、点推定は μ^(A4)=xˉ4⋅=393/5=78.6。(11.11) より
V[xˉ4⋅]=arVR+(a−1)Ve=2071.30+3×0.7667=2073.60=3.680.
等価自由度は (11.12) で
ϕ∗=71.302/4+2.302/1273.602=1270.9+0.445417.0=4.26 → 4.
よって
78.6±t4(0.025)3.680=78.6±2.776×1.918=78.6±5.33,
すなわち 73.3≤μ(A4)≤83.9。3. 差の点推定は xˉ4⋅−xˉ1⋅=(393−375)/5=3.6。(11.10) より
3.6±t12(0.025)2×0.7667/5=3.6±2.179×0.5538=3.6±1.21,
すなわち 2.39≤μ(A4)−μ(A1)≤4.81。4. 点推定は σ^R2=(71.30−0.767)/4=17.63。等価自由度は (11.14) で
ϕ∗=71.302/4+0.7672/12(71.30−0.767)2=1270.9+0.0494975.0=3.91 → 4.
よって
11.144×17.63≤σR2≤0.4844×17.63,すなわち6.33≤σR2≤145.6.
標準偏差に直すと 2.5≤σR≤12.1 である。
結果の読み方
この例題の数値には、乱塊法の推定の非対称性がはっきり出ている。(2) の母平均の区間の半幅は 5.33 もあるのに、(3) の差の区間の半幅は 1.21 しかない。理由は次のとおりである。
- 母平均の区間には「別の日に実験したら水準全体がどれだけずれるか」という日間変動 σR2 が入る。しかもその推定の自由度が 4 程度しか無いので、t の値も大きい。
- 差の区間では日間変動が消え、自由度 12 の誤差分散だけで決まる。
「どの触媒が良いか」という結論は精度よく出せるが、「その触媒で来月の収率がいくつになるか」は日間変動のせいで幅を持つ、という読み方になる。
ブロックを母数とみなすと、推定するのは「この5日間の平均の水準での A4 の母平均」になる。その区間は
78.6±2.1790.767/5=78.6±0.85
で大きく狭まるが、推定している量が別物であることに注意する。
(4) の区間が 6.33 から 145.6 までと非常に広いのは、ブロック数 5 に対して自由度が4しかないからである。分散成分を精度よく推定するには、ブロックの数そのものを増やす必要がある(1つのブロックの中で実験を増やしても ϕR は増えない)。
比 θ=σR2/σ2 で見ると、点推定は θ^=(F0−1)/a=(93.0−1)/4=23.0 である。正確な 95% 区間は、(11.16) に次の値を入れて求める。
F4,12(0.025)=4.121,F4,12(0.975)=1/F12,4(0.025)=0.1143.
結果は
41(4.12193.0−1)=5.39 ≤θ≤ 41(0.114393.0−1)=203
となる。日間変動は誤差の分散の少なくとも約5倍あると読める。
図 11.2 は各触媒の収率を日ごとに結んだものである。4本の折れ線がほぼ平行に上下していることが、日の効果が全水準に共通にかかっていること(構造式に A×R の項を置かない仮定が妥当そうであること)を表している。日による上下の幅(約 10 ポイント)は触媒間の差(数ポイント)よりずっと大きい。ブロックを無視して1元配置で解析すると、誤差分散は Ve′=(285.2+9.2)/16=18.4 になる。すると
F0′=23.27/18.4=1.26<F3,16(0.05)=3.24
で、因子は有意にならない。同じデータでも、ブロックを分散分析表に立てるかどうかで結論が逆になる。

図 11.2 表 11.2 の収率を触媒ごとに日で結んだ図。黒の実線が A1、青の実線が A2、緑の破線が A3、赤の実線が A4。日による上下(ブロック効果)が4本に共通にかかり、触媒間の差はその上に乗った小さな平行移動として現れる。
2因子の実験を乱塊法で行う
乱塊法は1因子に限らない。
2つの因子 A、B を考える。水準数はそれぞれ a、b とする。その全組合せを1つのブロックとする。各ブロックの中で ab 個の順番を無作為に決めれば、繰返しのある2元配置(第5章)の「繰返し」をブロックに置き換えた計画になる。構造式は
xijk=μ+ai+bj+(ab)ij+γk+εijk,γk∼N(0,σR2), εijk∼N(0,σ2)(11.17)
である(k=1,…,r、母数の効果には通常の和が 0 の制約)。平方和は次のように分かれる。
ST=SA+SB+SA×B+SR+Se.
繰返しのある2元配置の誤差平方和のうち、ブロック間の部分 SR(自由度 r−1)が別の行になり、残りが誤差になる。
例題 11.3 2因子乱塊法の分散分析表と組合せの推定 ★★
オリジナル3水準の因子と2水準の因子の6通りの組合せを1ブロックとし、4ブロックの乱塊法で実験した。構造式は (11.17) である。
a=3,b=2,r=4.
- 分散分析表の各要因の自由度と期待平均平方を書け。
- 2つの組合せ AiBj と Ai′Bj′ の母平均の差を考える。推定量 xˉij⋅−xˉi′j′⋅ の分散を求めよ。
- 交互作用が有意でなく、誤差にプールしたとする。組合せの母平均 μ(AiBj)=μ+ai+bj を、次の推定量で推定する。
μ^(AiBj)=xˉi⋅⋅+xˉ⋅j⋅−xˉ
その分散を σ2 と σR2 で表せ。ブロックの項を除いた部分を σ2/ne と書いたときの有効反復数 ne も求めよ。
解答
- 自由度は次のとおりで、合計は 23=abr−1 である。
ϕA=2,ϕB=1,ϕA×B=2,ϕR=3,ϕe=(ab−1)(r−1)=5×3=15.
期待平均平方は、平均を取るときに各効果が何個のデータに乗っているかで決まり、
E(VA)=σ2+brσA2=σ2+8σA2,E(VB)=σ2+12σB2,E(VA×B)=σ2+4σA×B2,
E(VR)=σ2+abσR2=σ2+6σR2,E(Ve)=σ2.
ここで母数因子の大きさは次のように定める。
σA2=a−1∑ai2,σB2=b−1∑bj2,σA×B2=(a−1)(b−1)∑(ab)ij2.
導き方は定理 11.2 と同じである。xˉi⋅⋅ などの平均ではブロック効果が γˉ として共通に入り、総平均との差で消える。2. 組合せの平均は次のとおりである。
xˉij⋅=μ+ai+bj+(ab)ij+γˉ+εˉij⋅
差ではブロック効果の平均が消えるので
V[xˉij⋅−xˉi′j′⋅]=V[εˉij⋅]+V[εˉi′j′⋅]=2σ2/r=σ2/2.
3. 交互作用をプールした構造式で考えると、各平均は次のとおりである。
xˉi⋅⋅=μ+ai+γˉ+εˉi⋅⋅,xˉ⋅j⋅=μ+bj+γˉ+εˉ⋅j⋅,xˉ=μ+γˉ+εˉ.
よって
μ^(AiBj)=μ+ai+bj+γˉ+(εˉi⋅⋅+εˉ⋅j⋅−εˉ).
ブロック効果の平均の分散は σR2/r である。誤差の部分は、誤差 εi′j′k の1次結合で、係数は
ci′j′=brδii′+arδjj′−abr1
である。分散は σ2∑i′,j′,kci′j′2 になる。係数の値と個数は次のとおりである。
| 場合 | 係数 | 個数 |
| (i′,j′)=(i,j) | 81+121−241=244 | r |
| i′=i, j′=j | 81−241=242 | r(b−1) |
| i′=i, j′=j | 121−241=241 | r(a−1) |
| それ以外 | −241 | r(a−1)(b−1) |
よって
∑c2=5764×(16+4+2×1+2×1)=5764×24=61.
よって次のようになり、有効反復数は ne=6 である。
V[μ^(AiBj)]=4σR2+6σ2.
これは第5章の2つの式と一致する。
伊奈の式:田口の式:ne1=br1+ar1−abr1=81+121−241=61,ne=1+ϕA+ϕBabr=424=6.
ブロックの項 σR2/r は、有効反復数の式の外に別に加わる。
欠測値が出たとき
乱塊法は全セルが埋まっていることを前提に、平方和が (11.4) のように直交に分かれる。1つのセルの測定に失敗すると直交性が崩れる。
よく使われる対処は Yates の方法である。欠けた値 y を「Se を最小にする値」で埋めて通常の計算を行い、誤差の自由度を1減らす。その値の式は確認テスト 11.2-3 で導く。
確認テスト
オリジナル
11.2-1 3水準の因子 A を4ブロックの乱塊法で実験し、次のデータを得た。分散分析表を作り、有意水準 1% で因子とブロックを検定せよ。数表の値 F2,6(0.01)=10.92、F3,6(0.01)=9.78 を用いてよい。
| R1 | R2 | R3 | R4 |
| A1 | 12 | 15 | 10 | 13 |
| A2 | 14 | 18 | 13 | 15 |
| A3 | 11 | 13 | 9 | 11 |
11.2-2 11.2-1 のデータで、次の2つの信頼率 95% の信頼区間を求めよ。数表の値 t6(0.025)=2.447、t3(0.025)=3.182 を用いてよい。
- (a) 差 μ(A2)−μ(A3)。
- (b) ブロックを変量とみなしたときの μ(A2)(Satterthwaite の近似)。
11.2-3 a 水準・r ブロックの乱塊法で、水準 1 のブロック 1 の値が欠測した。欠測値を y とおく。y を除いた合計を次のように書く。
水準 1 の合計 T1⋅′,ブロック 1 の合計 T⋅1′,総合計 T′.
誤差平方和を欠測値の関数とみて最小にする値が
y=(a−1)(r−1)aT1⋅′+rT⋅1′−T′
であることを示せ。また、11.2-1 のデータで水準 1・ブロック 1 の値(12)が欠測したとして、y を計算せよ。4. 11.2-4 例題 11.2 のデータを、ブロックを無視して1元配置で解析したときの分散分析表を作り、有意水準 5% で因子を検定せよ。F3,16(0.05)=3.24 を用いてよい。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com