実験計画法 第12章 §12.2 ★ 2つの2元表から平方和を計算し、検定の分母を選び、比べる量ごとの分散で推定の区間を作る
平方和の計算
データから平方和を計算するには、次の2つの2元表を作る。
- A と R の2元表。各セルは1次単位の合計 Ti⋅k=∑jxijk である。
- A と B の2元表。各セルは Tij⋅=∑kxijk である。
修正項を CT=T2/N として
STSASe(1)=i,j,k∑xijk2−CT,SAR=i,k∑bTi⋅k2−CT,SAB=i,j∑rTij⋅2−CT,=i∑brTi⋅⋅2−CT,SB=j∑arT⋅j⋅2−CT,SR=k∑abT⋅⋅k2−CT,=SAR−SA−SR,SA×B=SAB−SA−SB,Se(2)=ST−SAR−SB−SA×B(12.10)
とする。SAR は1次単位の間の平方和で、(12.4) の前の3項の和に当たる。Se(2) は、総平方和から1次単位の間の平方和と2次因子に関係する平方和を引いた残りとして求めるのが手早い。
分散分析表は表 12.1 の形になる。1次単位の部分と2次単位の部分の間に線を引き、それぞれの誤差を各部分の最後の行に置くと、どの行をどの誤差で割るかが表の形で分かる。
表 12.1 分割法の分散分析表(分母は上の段が Ve(1)、下の段が Ve(2)。ただし1次誤差の行だけ Ve(2) で割る)| 要因 | 平方和 | 自由度 | F0 | E(V) |
| R | SR | r−1 | VR/Ve(1) | σ(2)2+bσ(1)2+abσR2 |
| A | SA | a−1 | VA/Ve(1) | σ(2)2+bσ(1)2+brσA2 |
| e(1) | Se(1) | (a−1)(r−1) | Ve(1)/Ve(2) | σ(2)2+bσ(1)2 |
| B | SB | b−1 | VB/Ve(2) | σ(2)2+arσB2 |
| A×B | SA×B | (a−1)(b−1) | VA×B/Ve(2) | σ(2)2+rσA×B2 |
| e(2) | Se(2) | a(b−1)(r−1) | | σ(2)2 |
| 計 | ST | abr−1 | | |
1次誤差のプーリング
Ve(1)/Ve(2) が有意でなく小さいとき(目安として F0<2 程度)、1次誤差の分散を0とみなすことがある。このときは Se(1) を Se(2) にプールし、自由度の大きい1つの誤差で全体を検定する。
ただし ϕe(1) は小さいことが多く、この検定の検出力は低い。実験の手順が2段の無作為化である以上、1次誤差は存在すると考えるのが自然なので、プールは慎重に行う。A×B が有意でないときに Ve(2) へプールする扱いは、第5章のプーリングと同じである。
分散分析後の推定
推定の対象は、第11章と同じく「実験に使った r 個の反復で平均した値」とする。つまり γˉ は推定対象の側に含め、分散には入れない。反復の母集団全体での値を推定するなら、各分散に σR2/r を足し、Satterthwaite の近似に VR を含める。手順は第11章の乱塊法の母平均の区間と同じである。
比べる量ごとの分散と推定量を表 12.2 にまとめる。導出は例題 12.1 と同じで、平均を構造式で書き、どの誤差が消えるかを見る。
表 12.2 分割法の推定に使う分散(交互作用 A×B を残す場合。反復の効果 γˉ は推定対象に含める)| 推定する量 | 推定量 | 分散 | 分散の推定量(自由度) |
| μ(Ai) | xˉi⋅⋅ | brσ(2)2+bσ(1)2 | Ve(1)/(br) (ϕe(1)) |
| μ(Ai)−μ(Ai′) | xˉi⋅⋅−xˉi′⋅⋅ | br2(σ(2)2+bσ(1)2) | 2Ve(1)/(br) (ϕe(1)) |
| μ(Bj)−μ(Bj′) | xˉ⋅j⋅−xˉ⋅j′⋅ | ar2σ(2)2 | 2Ve(2)/(ar) (ϕe(2)) |
| μ(AiBj)−μ(AiBj′) | xˉij⋅−xˉij′⋅ | r2σ(2)2 | 2Ve(2)/r (ϕe(2)) |
| μ(AiBj) | xˉij⋅ | rσ(1)2+σ(2)2 | brVe(1)+(b−1)Ve(2) (ϕ∗) |
| μ(AiBj)−μ(Ai′Bj) | xˉij⋅−xˉi′j⋅ | r2(σ(1)2+σ(2)2) | br2{Ve(1)+(b−1)Ve(2)} (ϕ∗) |
上の4行は、分散が1つの誤差だけで決まるので、その平均平方と自由度の t 分布で正確な区間が作れる。たとえば A の水準の差の信頼率 1−α の区間は
xˉi⋅⋅−xˉi′⋅⋅ ± tϕe(1)(α/2)br2Ve(1)
である。下の2行は、分散に σ(1)2 と σ(2)2 が係数1ずつで入る。そこで次の命題を使う。
命題 12.3(1次誤差と2次誤差の和の推定と等価自由度 ★)
σ(1)2+σ(2)2 の不偏推定量は
σ(1)2+σ(2)2=bVe(1)−Ve(2)+Ve(2)=bVe(1)+(b−1)Ve(2)(12.11)
で、これを θ^ と書く。ϕ∗θ^/(σ(1)2+σ(2)2) が近似的にカイ二乗分布に従うとみなすときの等価自由度は
ϕ∗=ϕe(1)Ve(1)2+ϕe(2){(b−1)Ve(2)}2{Ve(1)+(b−1)Ve(2)}2(12.12)
である。これを使って μ(AiBj) の信頼率 1−α の近似信頼区間は
xˉij⋅ ± tϕ∗(α/2)brVe(1)+(b−1)Ve(2)(12.13)
となる。
証明
定理 12.2 より、2つの誤差の平均平方の期待値は次のとおり。
E(Ve(1))=σ(2)2+bσ(1)2,E(Ve(2))=σ(2)2
よって E[(Ve(1)−Ve(2))/b]=σ(1)2 である。これに Ve(2) を足せば、(12.11) の期待値は σ(1)2+σ(2)2 になる。
θ^=b1Ve(1)+bb−1Ve(2) は独立な平均平方の正の係数の1次結合なので、第11章で導いた Satterthwaite の等価自由度
ϕ∗=∑k(ckVk)2/ϕk(∑kckVk)2
をそのまま使う。ここでは c1V1=Ve(1)/b、c2V2=(b−1)Ve(2)/b である。共通の因子 1/b は分子と分母で2乗ずつ出て消え、(12.12) を得る。
最後に、推定量の誤差は次の正規変数で、分散は (σ(1)2+σ(2)2)/r である。
xˉij⋅−μ(AiBj)−γˉ=εˉ(1)i⋅+εˉ(2)ij⋅
これは θ^ と独立である。右辺は、1次単位の平均 yik の水準ごとの平均と、1次単位内の偏差の平均の和で、どちらも誤差平方和を作る残差と直交するからである。標準化した量を θ^/(σ(1)2+σ(2)2) で割ると近似的に tϕ∗ になり、(12.13) が従う。
Satterthwaite の近似は、係数がすべて正の1次結合では精度がよい。ϕ∗ の値は2つの項の大きさの比で動く。
- 1次誤差の項 Ve(1) が十分大きいと、ϕ∗ は1次誤差の自由度に近づく。
- 逆なら、ϕ∗ は ϕe(2) に近づく。
一般に ϕ∗ は次の範囲の値を取る(上限は Cauchy–Schwarz の不等式による)。
min(ϕe(1),ϕe(2))≤ϕ∗≤ϕe(1)+ϕe(2)
交互作用をプールしたときの組合せの推定。
A×B が有意でなく、2次誤差にプールしたとする。プール後の2次誤差を改めて Ve(2)、自由度を ϕe(2) と書く。このとき組合せの母平均を次のように推定する。
μ(AiBj)=μ+ai+bj,μ^(AiBj)=xˉi⋅⋅+xˉ⋅j⋅−xˉ
誤差の部分は
μ^(AiBj)−μ(AiBj)−γˉ=εˉ(1)i⋅+(εˉ(2)i⋅⋅+εˉ(2)⋅j⋅−εˉ(2))
である(1次誤差の部分は εˉ(1)i⋅+εˉ(1)⋅⋅−εˉ(1)⋅⋅=εˉ(1)i⋅)。1次誤差の部分と2次誤差の部分は独立で、2次誤差の部分の分散は、繰返し r の2元配置で交互作用をプールしたときの伊奈の式(第5章)と同じ計算で σ(2)2(a+b−1)/(abr) になる。よって
V[μ^(AiBj)]=rσ(1)2+abr(a+b−1)σ(2)2=brσ(2)2+bσ(1)2+abr(b−1)σ(2)2.(12.14)
右の形の分散成分を、期待値が等しい平均平方で置き換える。
σ(2)2+bσ(1)2 → Ve(1),σ(2)2 → Ve(2)
すると不偏推定量
V[μ^(AiBj)]=brVe(1)+abr(b−1)Ve(2)=abraVe(1)+(b−1)Ve(2)(12.15)
を得る。等価自由度は ϕ∗={aVe(1)+(b−1)Ve(2)}2/{a2Ve(1)2/ϕe(1)+(b−1)2Ve(2)2/ϕe(2)} である。(12.14) の右の形は、「A の水準の平均の分散」に「B の効果を足したことによる2次誤差の分の上乗せ」が加わったものと読める。
例題 12.2 平方和から分散分析表を作り推定する ★
オリジナル1次因子(3水準)・2次因子(4水準)・反復(3回)の分割法で、平方和が次のように得られた。
SR=12.0,SA=96.0,Se(1)=16.0,SB=45.0,SA×B=9.0,Se(2)=18.0.
また、総平均と各水準の平均は次のとおりであった。
xˉ=50.0,xˉ1⋅⋅=48.0,xˉ2⋅⋅=50.0,xˉ3⋅⋅=52.0,xˉ⋅1⋅=48.5,xˉ⋅2⋅=49.5,xˉ⋅3⋅=50.5,xˉ⋅4⋅=51.5.
特性値は大きいほど良い。
- 分散分析表を作り、各要因を有意水準 5% で検定せよ。
- A×B をプールして表を作り直し、B を検定せよ。
- μ(A3)−μ(A1) と μ(B4)−μ(B1) の信頼率 95% の信頼区間を求めよ。
- 最適条件 A3B4 の母平均の点推定値と、信頼率 95% の近似信頼区間を求めよ。
数表は次の値を用いる。
F2,4(0.05)=6.94,F4,18(0.05)=2.93,F4,18(0.01)=4.58,F3,18(0.01)=5.09,F6,18(0.05)=2.66,F3,24(0.01)=4.72,t4(0.025)=2.776,t24(0.025)=2.064,t6(0.025)=2.447.
解答
- 自由度は次のとおりで、合計は 35=abr−1 である。
ϕR=2,ϕA=2,ϕe(1)=2×2=4,ϕB=3,ϕA×B=6,ϕe(2)=3×3×2=18
| 要因 | 平方和 | 自由度 | 平均平方 | F0 | 分母 |
| R | 12.0 | 2 | 6.0 | 1.50 | Ve(1) |
| A | 96.0 | 2 | 48.0 | 12.0∗ | Ve(1) |
| e(1) | 16.0 | 4 | 4.0 | 4.00∗ | Ve(2) |
| B | 45.0 | 3 | 15.0 | 15.0∗∗ | Ve(2) |
| A×B | 9.0 | 6 | 1.5 | 1.50 | Ve(2) |
| e(2) | 18.0 | 18 | 1.0 | | |
| 計 | 196.0 | 35 | | | |
各要因の判定は次のとおり。
- A:12.0>F2,4(0.05)=6.94 で 5% 有意。
- R:1.50<6.94 で有意でない。
- e(1):4.00>F4,18(0.05)=2.93 で 5% 有意(1% 点4.58より小さい)。1次誤差は無視できず、A を Ve(2) で割ってはいけない。
- B:15.0>F3,18(0.01)=5.09 で 1% 有意。
- A×B:1.50<F6,18(0.05)=2.66 で有意でない。
- A×B は有意でなく、F0=1.50<2 なので2次誤差にプールする。
Se(2)′=9.0+18.0=27.0,ϕe(2)′=24,Ve(2)′=1.125
B の F0=15.0/1.125=13.3>F3,24(0.01)=4.72 で、やはり 1% 有意。1次単位の側の表は変わらない。3. A の差は xˉ3⋅⋅−xˉ1⋅⋅=4.0 である。分散の推定値は 2Ve(1)/(br)=2×4.0/12=0.6667 で、区間は
4.0±t4(0.025)0.6667=4.0±2.776×0.8165=4.0±2.27,すなわち1.73≤μ(A3)−μ(A1)≤6.27.
B の差は xˉ⋅4⋅−xˉ⋅1⋅=3.0 である。分散の推定値は 2Ve(2)′/(ar)=2×1.125/9=0.25 で、区間は
3.0±t24(0.025)×0.5=3.0±1.03,すなわち1.97≤μ(B4)−μ(B1)≤4.03.
A の差の区間の半幅(2.27)は B の差の区間の半幅(1.03)の2倍以上あり、1次因子の推定精度が低いことが数値に表れている。4. 交互作用をプールしたので、点推定値は次のとおり。
μ^(A3B4)=xˉ3⋅⋅+xˉ⋅4⋅−xˉ=52.0+51.5−50.0=53.5
(12.15) より
V=abraVe(1)+(b−1)Ve(2)′=363×4.0+3×1.125=3615.375=0.4271.
等価自由度は
ϕ∗=12.02/4+3.3752/2415.3752=36.00+0.475236.39=6.48 → 6.
よって区間は次のとおり。
53.5±t6(0.025)0.4271=53.5±2.447×0.6535=53.5±1.60,すなわち51.9≤μ(A3B4)≤55.1.
確認テスト
オリジナル
- 12.2-1 1次因子(2水準)・2次因子(3水準)・反復4回の分割法で、次の平方和を得た。
SR=9.0,SA=24.0,Se(1)=6.0,SB=30.0,SA×B=2.0,Se(2)=12.0
分散分析表を作り、各要因を有意水準 5% で検定せよ。また1次誤差の分散 σ(1)2 の点推定値を求めよ。次の値を用いてよい。
F1,3(0.05)=10.13,F3,3(0.05)=9.28,F3,12(0.05)=3.49,F2,12(0.05)=3.89,F2,12(0.01)=6.93
2. 12.2-2 例題 12.2 の (1) の表(プール前、Ve(1)=4.0、Ve(2)=1.0)を使う。ある Bj で xˉ3j⋅−xˉ1j⋅=3.0 であった。μ(A3Bj)−μ(A1Bj) の分散の推定量を表 12.2 から書き、等価自由度を求めて、信頼率 95% の近似信頼区間を作れ。t11(0.025)=2.201 を用いてよい。3. 12.2-3 例題 12.2 のデータを、分割法であることを無視して繰返し3回の2元配置として解析したとする(R も区別しない)。誤差平方和・自由度・誤差分散を求め、2つの主効果の F0 を計算せよ。分割法の解析と比べて何が起きたかを述べよ。F2,24(0.01)=5.61 を用いてよい。4. 12.2-4 交互作用をプールした分割法で、μ^(AiBj)=xˉi⋅⋅+xˉ⋅j⋅−xˉ の分散が (12.14) になることを、2次誤差の部分の分散 σ(2)2(a+b−1)/(abr) を各平均の分散と共分散から計算するところまで含めて導け。
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