実験計画法 第14章 §14.2 ★ 数値の表から3段の平方和・2つの F 検定・母平均の区間・分散成分までを一通り計算する
次の例題で、前節の道具を1つのデータに最後まで適用する。数値は練習用に作った。
例題 14.3 熱処理温度と硬さの実験を2段の誤差で解析する ★
オリジナル鋼の熱処理温度 A を3水準 A1,A2,A3 に変えたとき、硬さがどう変わるかを調べる。各水準で試験片を3回独立に作り(実験は計9回、順序は乱数で決めた)、各試験片の硬さを2回ずつ測定した。測定値から 60 を引いた値を表 14.2 に示す。
表 14.2 硬さの測定値(60 を引いた値) | 試験片 1 | 試験片 2 | 試験片 3 | 計 Ti⋅⋅ |
| A1 | 5, 6 | 7, 7 | 4, 5 | 34 |
| A2 | 9, 10 | 11, 11 | 8, 9 | 58 |
| A3 | 12, 13 | 10, 11 | 14, 14 | 74 |
| | | | T=166 |
- 分散分析表を作り、A と1次誤差 e(1) をそれぞれ有意水準 5%・1% で検定せよ。
- 硬さが最大の水準の母平均の信頼率 95% の信頼区間を求めよ(60 を引いた尺度でよい)。
- 最大の水準と A1 の母平均の差の信頼率 95% の信頼区間を求めよ。
- σ(1)2 と σ(2)2 の点推定値を求めよ。さらに試験片1個の費用を c1=6、測定1回の費用を c2=1 とする。推定値を真の値とみなして命題 14.3 の m∗ を求め、今回の2回測定が妥当かを論じよ。
数表の値は F2,6(0.05)=5.14, F2,6(0.01)=10.92, F6,9(0.05)=3.37, F6,9(0.01)=5.80、t6(0.025)=2.447 を用いる。
解答
- a=3, r=3, m=2, N=18。∑xijk2=1694, CT=1662/18=27556/18=1530.889。試験片ごとの合計 Tij⋅ は次のとおりである。
A1: 11,14,9,A2: 19,22,17,A3: 25,21,28
STSASARSe(1)Se(2)=1694−1530.889=163.111,=6342+582+742−CT=69996−1530.889=1666−1530.889=135.111,=2112+142+92+192+222+172+252+212+282−CT=23382−1530.889=160.111,=SAR−SA=160.111−135.111=25.000,=ST−SAR=1694−1691=3.000.
自由度は ϕA=2, ϕe(1)=3×2=6, ϕe(2)=9×1=9, ϕT=17。分散分析表は表 14.3 になる。
表 14.3 例題 14.3 の分散分析表(∗∗ は 1% 有意)| 要因 | 平方和 | 自由度 | 平均平方 | F0 | E(V) |
| A | 135.111 | 2 | 67.556 | 16.21∗∗ | σ(2)2+2σ(1)2+6σA2 |
| e(1) | 25.000 | 6 | 4.167 | 12.50∗∗ | σ(2)2+2σ(1)2 |
| e(2) | 3.000 | 9 | 0.333 | | σ(2)2 |
| 計 | 163.111 | 17 | | | |
判定は次のとおりである。
- A:F0=67.556/4.167=16.21≥F2,6(0.01)=10.92 で 1% 有意。
- e(1):F0=4.167/0.333=12.50≥F6,9(0.01)=5.80 で 1% 有意。試験片を作る段階のばらつきが、測定のばらつきに比べて無視できない。
したがってプールはしない。2. 最大は A3 で、μ^(A3)=74/6=12.333。(14.11) より
12.333±t6(0.025)rmVe(1)=12.333±2.44764.167=12.333±2.447×0.833=12.333±2.039,
すなわち [10.29, 14.37](元の尺度では [70.29, 74.37])。3. xˉ3⋅⋅−xˉ1⋅⋅=(74−34)/6=6.667。
6.667±2.44762×4.167=6.667±2.447×1.179=6.667±2.884,
すなわち [3.78, 9.55]。差の区間には 60 を引いた影響は無い。4. (14.12) より σ^(2)2=Ve(2)=0.333, σ^(1)2=(4.167−0.333)/2=1.917。
m∗=c2σ^(1)2c1σ^(2)2=1×1.9176×0.333=1.043≈1.02.
m∗ はほぼ 1 なので、この測定器は実験のばらつきに比べて十分精度がよく、測定は1回にして浮いた費用で試験片の数を増やす方が、同じ費用で平均の精度を上げることができる。ただし2回測ったことで σ(2)2 を推定でき、測定器の精度が十分であることが確かめられた。次回以降の実験で測定を1回にする根拠が、このデータから得られたことになる。
結果の読み方
例題 14.3 のデータを、18個の測定値を繰返し6の1元配置とみなして解析してみる。誤差平方和は Se(1)+Se(2)=28、自由度は 15 で、誤差分散は 28/15=1.867 になる。分散比は F0=67.556/1.867=36.19 と、正しい 16.21 の2倍以上になる。この例では要因の効果が大きいので結論は変わらないが、効果が小さいデータでは、誤った解析だけが有意になることが起きる(例題 14.1 の (3))。
逆に、試験片ごとの平均 5.5, 7, 4.5; 9.5, 11, 8.5; 12.5, 10.5, 14 を9個のデータとし、繰返し3の1元配置で解析する。水準間平方和は 135.111/2=67.556、誤差平方和は 25/2=12.5 である。分散比は F0=(67.556/2)/(12.5/6)=16.21 となり、正しい解析と一致する(確認テスト 14.1-5)。
2元配置で測定を繰り返す場合
2つの母数因子 A,B の全組合せで実験を1回ずつ行い、各実験の試料を何回か測定する場合を考える。水準数を a,b、測定回数を m とすると、構造式は
xijk=μ+ai+bj+ε(1)ij+ε(2)ijk(14.14)
である。実験の繰返しが無いので、交互作用 A×B は1次誤差と区別できない。繰返しのない2元配置(第6章)と同じく交互作用は無いと仮定する(あれば1次誤差に含まれる)。平方和は次のように分かれる。
STSe(1)Se(2)=SA+SB+Se(1)+Se(2),=SAB−SA−SB,SAB=i,j∑Tij⋅2/m−CT,=ST−SAB.
自由度は a−1, b−1, (a−1)(b−1), ab(m−1) である。定理 14.2 と同じ計算で
E(VA)=σ(2)2+mσ(1)2+bmσA2,E(VB)=σ(2)2+mσ(1)2+amσB2,E(Ve(1))=σ(2)2+mσ(1)2,E(Ve(2))=σ(2)2(14.15)
となる。2つの要因は、どちらも1次誤差の平均平方 Ve(1) で割って検定する。
確認テスト
オリジナル
- 14.2-1 3水準の因子 A について各水準で実験を2回行い、各実験の試料を3回測定して次のデータを得た。分散分析表を作り、e(1) を有意水準 5% で検定せよ。その結果に応じてプールの判断をし、A を有意水準 5% で検定せよ。プールしない場合の判定とも比べよ。
| 実験 1 | 実験 2 |
| A1 | 3, 5, 4 | 4, 6, 5 |
| A2 | 6, 7, 5 | 5, 7, 6 |
| A3 | 4, 4, 6 | 5, 3, 4 |
数表の値は F3,12(0.05)=3.49, F2,3(0.05)=9.55, F2,15(0.05)=3.68, F2,15(0.01)=6.36 を用いる。
- 14.2-2 14.2-1 でプールした後の解析で、μ(A2) と μ(A2)−μ(A3) の信頼率 95% の信頼区間を求めよ。t15(0.025)=2.131 を用いる。
- 14.2-3 A を3水準、B を4水準とし、全組合せで実験を1回ずつ行い各試料を2回測定した。SA=40, SB=30, Se(1)=12, Se(2)=6 を得た。自由度と期待平均平方を書いて分散分析表を作り、A, B, e(1) を有意水準 5%・1% で検定せよ。数表の値は F2,6(0.05)=5.14, F2,6(0.01)=10.92, F3,6(0.05)=4.76, F3,6(0.01)=9.78、F6,12(0.05)=3.00, F6,12(0.01)=4.82 を用いる。
- 14.2-4 4水準の因子 A の各水準で実験を1回だけ行い、その試料を3回測定した(r=1, m=3)。A と e(2) の自由度と期待平均平方を求めよ。また、VA/Ve(2) による検定が要因の効果の検定にならない理由を述べよ。
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