統計学の復習 第6章 §6.2 ★ 平均と分散で測れない分布の形を、標準化した3次と4次の積率で測る。正規分布は歪度 0・尖度 3(3 を引く流儀では 0)
定義
平均と分散が同じでも、分布の形は違いうる。図 6.2 の3つの密度は、どれも平均 1、分散 1 だが、指数分布は右に長い裾を引き、一様分布は裾を持たない。この違いを数で表すために、標準化した値 (X−μ)/σ の3乗と4乗の期待値を使う。
定義 6.5(歪度と尖度)
平均 μ、標準偏差 σ の確率変数 X に対して、
γ1=E[(σX−μ)3]=σ3E[(X−μ)3],β2=E[(σX−μ)4]=σ4E[(X−μ)4](6.5)
をそれぞれ歪度、尖度と呼ぶ。尖度から 3 を引いた γ2=β2−3 を尖度と呼ぶ流儀もある。
尖度には2つの流儀があり、本や表計算ソフトによって β2 と γ2 のどちらを「尖度」と呼ぶかが違う。3 を引くのは、正規分布の β2 が 3 なので、正規分布を基準の 0 にそろえるためである。試験の問題文で「正規分布の尖度は 0」とあれば γ2、「3」とあれば β2 の流儀である。数理統計の解説 第2章は 3 を引く流儀で書いている。
標準化した値で定義するので、歪度と尖度は単位を持たない。Y=aX+b(a=0)とすると Y−E[Y]=a(X−μ)、V[Y]1/2=∣a∣σ なので
γ1(Y)=∣a∣3σ3a3E[(X−μ)3]=sgn(a)γ1(X),β2(Y)=a4σ4a4E[(X−μ)4]=β2(X)
となる(sgn(a) は a の符号)。歪度は向きを反転すると符号が変わり、尖度は線形変換で変わらない。
歪度の符号は、平均から右と左のどちらに大きく外れた値が出やすいかを表す。(X−μ)3 は外れた方向の符号を保ったまま外れの大きさを3乗で強調するので、右に長い裾があれば正の値が重く数えられて γ1>0 になる。左右対称な分布では、μ+t と μ−t の寄与が打ち消し合って γ1=0 である。尖度は4乗なので符号の情報は無く、平均から大きく外れた値がどれだけ出やすいか(裾の重さ)を表す。名前は「尖り」だが、山の頂上の尖り方よりも、裾にどれだけの確率が載っているかで値が決まる。
3つの分布の歪度と尖度
正規分布では、§6.1 の式 (6.3) から E[Z3]=0、E[Z4]=3 なので、γ1=0、β2=3 である。
連続一様分布 U(0,1)(§6.6 で定義する。密度は区間 (0,1) で 1)では、平均 1/2、分散 1/12 で、対称なので γ1=0 である。4次の中心積率は
E[(X−21)4]=∫01(x−21)4dx=[51(x−21)5]01=51(321+321)=801
なので β2=(1/80)/(1/12)2=144/80=1.8 で、正規分布の 3 より小さい(確認テスト 6.2-2 で一般の区間でも同じことを確かめる)。一様分布は区間の外に値をとらないので、正規分布よりも裾が軽い。
指数分布 Ex(λ) では、例題 6.3 で計算するとおり γ1=2、β2=9 で、右に長い裾を持ち、正規分布よりも裾が重い。

図 6.2 平均 1、分散 1 をそろえた3つの密度。一様分布は区間 (1−3, 1+3) 上の一様分布である。歪度は正規分布と一様分布が 0、指数分布が 2。尖度 β2 は一様分布 1.8、正規分布 3、指数分布 9 で、裾が重いほど大きい。
データの歪度と尖度
データ x1,…,xn に対しては、期待値を標本の平均に置き換えて
g1=σ^3n1∑i=1n(xi−xˉ)3,b2=σ^4n1∑i=1n(xi−xˉ)4,σ^2=n1i=1∑n(xi−xˉ)2(6.6)
を標本歪度・標本尖度とする。この巻の記号(第2章)に従い、n で割る標本分散を σ^2 と書いた。表計算ソフトの関数は、n−1 で割る不偏分散を使った補正つきの式で計算するので、小さな標本では値が少しずれる。2級の問題では、問題文が与えた定義に従えばよい。
第2章で見たとおり、右に裾を引くデータでは平均が中央値より大きくなりやすい。歪度が正であることと「平均 > 中央値」は同じ向きの傾向を表すが、必ず両立するわけではないので、一方から他方を断定しない。
例題 6.3 指数分布の歪度と尖度 ★★
オリジナルX∼Ex(λ)(密度 λe−λx、x>0)について、E[Xk]=k!/λk(k=1,2,3,4)を使って、歪度 γ1 と尖度 β2 を求めよ。E[Xk]=k!/λk は確認テスト 6.5-2 で示す。
解答
μ=1/λ、E[X2]=2/λ2 から σ2=2/λ2−1/λ2=1/λ2、σ=1/λ である。3次の中心積率を、(X−μ)3=X3−3μX2+3μ2X−μ3 と展開して期待値の線形性で計算すると
E[(X−μ)3]=E[X3]−3μE[X2]+3μ2E[X]−μ3=λ36−λ3⋅λ22+λ23⋅λ1−λ31=λ32
となる。σ3=1/λ3 で割って γ1=2 である。4次も同じく (X−μ)4=X4−4μX3+6μ2X2−4μ3X+μ4 と展開して
E[(X−μ)4]=λ424−λ4⋅λ36+λ26⋅λ22−λ34⋅λ1+λ41=λ424−24+12−4+1=λ49
となり、β2=9(3 を引く流儀では γ2=6)である。
どちらも λ によらない。λ を変えることは X を 1/λ 倍に伸び縮みさせる線形変換に当たり、標準化した積率はそれで変わらないからである。
例題 6.4 5個のデータの歪度と尖度 ★
オリジナルデータ 2, 3, 3, 4, 8 について、式 (6.6) の標本歪度と標本尖度を求め、平均と中央値の大小と合わせて分布の形を述べよ。
解答
平均は xˉ=20/5=4 で、偏差は −2,−1,−1,0,4 である。偏差の2乗・3乗・4乗の和は
∑(xi−xˉ)2∑(xi−xˉ)3∑(xi−xˉ)4=4+1+1+0+16=22,=−8−1−1+0+64=54,=16+1+1+0+256=274
である。σ^2=22/5=4.4 なので σ^3=4.43/2=9.230、σ^4=4.42=19.36 で、
g1=9.23054/5=9.23010.8=1.170,b2=19.36274/5=19.3654.8=2.831
となる。3乗の和では、偏差 4 の1個が 64 を占め、負の偏差の −10 を大きく上回る。外れた1個の寄与が3乗で強調されるので歪度が正になる。中央値は 3 で平均 4 より小さく、右に裾を引く形と整合する。尖度は b2=2.831(3 を引けば −0.169)で、データが5個しかないので、この値から裾の重さを判断するのは難しい。
確認テスト
オリジナル
- 6.2-1 確率変数 X の歪度が 0.8、尖度 β2 が 4.5 のとき、Y=10−3X の歪度と尖度を答えよ。
- 6.2-2 X∼U(a,b) の歪度と尖度 β2 を求め、a,b によらないことを示せ。
- 6.2-3 データ 1, 1, 2, 2, 9 の標本歪度を式 (6.6) で求め、中央値と平均を比べよ。
- 6.2-4 ベルヌーイ分布 Bin(1,p) の歪度が (1−2p)/p(1−p) であることを示し、歪度が正になる p の範囲を答えよ。
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