統計学の復習 第6章 §6.4 ★★★ 表は z≥0 の側しか載せない。対称性 Φ(−z)=1−Φ(z) と、上側・両側の点の引き分けで、すべての確率と分位点を出す
標準化した値(z 値)と偏差値
データの値 x を、平均 μ と標準偏差 σ で z=(x−μ)/σ に直した値を標準化した値(z 値)と呼ぶ。z は「平均から標準偏差の何個ぶん離れているか」を表し、単位を持たない。平均や単位の違う2つの試験の得点を比べるときは、z 値で比べる。z=1.5 の得点は、どちらの試験でも平均より標準偏差1.5個ぶん上にある。
偏差値は 50+10z で、標準化した値を平均 50、標準偏差 10 に線形変換したものである。得点が正規分布に従うと見なせるなら、偏差値 60(z=1)以上の人は上位 1−Φ(1)=15.9%、偏差値 70(z=2)以上は上位 2.3% である。正規分布に従わない得点の分布では、偏差値は定義できても、この割合の読み替えはできない。標準化は平均と分散だけを使う操作で、分布の形までは決めないからである。
表の引き方と対称性
標準正規分布の表には2つの形式がある。1つは z≥0 に対して Φ(z)=P(Z≤z) を載せたもの、もう1つは上側確率 Q(z)=P(Z>z)=1−Φ(z) を載せたもので、資格試験で配られる表は上側確率の形式である。どちらの表も z≥0 の側しか載せないので、負の z は対称性で処理する。
命題 6.8(標準正規分布の対称性)
すべての実数 z について Φ(−z)=1−Φ(z)、すなわち P(Z≤−z)=P(Z>z) である。したがって c>0 に対して P(∣Z∣≤c)=2Φ(c)−1、P(∣Z∣>c)=2{1−Φ(c)} である。
証明
φ(−t)=φ(t) なので、t=−u と置換すると
Φ(−z)=∫−∞−zφ(t)dt=∫z∞φ(−u)du=∫z∞φ(u)du=1−Φ(z).
後半は P(∣Z∣≤c)=Φ(c)−Φ(−c)=Φ(c)−(1−Φ(c))=2Φ(c)−1 と、その余事象である。
確率を引くときは、求める範囲を数直線に描き、表に載っている z≥0 の側の面積の足し引きで書き表すと、符号の取り違えを防ぐことができる。たとえば
P(−1.2<Z<0.5)=Φ(0.5)−Φ(−1.2)=Φ(0.5)−{1−Φ(1.2)}
で、上側確率の表なら {1−Q(0.5)}−Q(1.2) と書き直す(確認テスト 6.4-1)。
上側 100α% 点
第4章で定義したとおり、P(Z>zα)=α となる点 zα を標準正規分布の上側 100α% 点と呼ぶ。Φ(zα)=1−α と同じことである。対称性から、下側 100α% 点は −zα である。よく使う値は次の表のとおりで、z0.05=1.645 と z0.025=1.960 は区別して覚える。
| α | 0.25 | 0.10 | 0.05 | 0.025 | 0.01 | 0.005 |
| zα | 0.6745 | 1.2816 | 1.6449 | 1.9600 | 2.3263 | 2.5758 |
両側で確率 α を外に残す点、すなわち P(∣Z∣>c)=α となる c は、命題 6.8 から 2{1−Φ(c)}=α、すなわち c=zα/2 である。「P(∣Z∣≤c)=0.95 となる c」は z0.025=1.960 で、「P(Z≤c)=0.95 となる c」は z0.05=1.645 である。
1.96 と 1.645 の取り違え
1.96 は「両側で合わせて 5%」、1.645 は「片側だけで 5%」の点である。区間推定の 95% 信頼区間(第10章)と両側検定(第12章)では、外に残す 5% を左右に 2.5% ずつ分けるので z0.025=1.96 を使う。片側検定と「上位 5% の境目」では z0.05=1.645 を使う。問題文の「95%」がどちらの意味かを、外に残す確率を左右のどちらに置くかで確かめてから表を引く。t 分布や χ2 分布の表でも、同じ区別が要る(第10章・第11章)。
例題 6.7 試験の得点の分布 ★★★
オリジナルある試験の得点は N(62,122) に従うと見なせる。
- 得点が 50 点以上 80 点以下の受験者の割合を求めよ。
- 上位 5% に入るには何点以上が必要か。
- 80 点の受験者の偏差値を求めよ。
Φ(1)=0.8413、Φ(1.5)=0.9332、z0.05=1.645 を使ってよい。
解答
(1) 50 点と 80 点を標準化すると (50−62)/12=−1、(80−62)/12=1.5 である。式 (6.7) と命題 6.8 から
P(50≤X≤80)=Φ(1.5)−Φ(−1)=Φ(1.5)−{1−Φ(1)}=0.9332−0.1587=0.7745
で、約 77.5% である。連続型なので端点の等号は確率を変えない(第4章)。
(2) 求める点を c とすると P(X≥c)=0.05 で、標準化すると P(Z≥(c−62)/12)=0.05 である。上側 5% 点は z0.05=1.645 なので (c−62)/12=1.645、
c=62+1.645×12=81.74
で、約 81.7 点以上である。分位点を求める問題は、確率を求める問題の逆向きで、「表から z を引く → x=μ+zσ と戻す」の順になる。
(3) z=1.5 なので偏差値は 50+10×1.5=65 である。
例題 6.8 充填量の下限から平均の設定値を逆算する ★★
オリジナルある機械は飲料を1本ずつ詰め、内容量は平均 μ の設定値、標準偏差 2 ミリリットルの正規分布に従う。表示量 500 ミリリットルを下回る本数を 1% 以下にしたい。
- μ をいくら以上に設定すればよいか。z0.01=2.326 を使ってよい。
- 機械を改良して標準偏差を 1.5 に下げると、必要な設定値はいくら下げられるか。
解答
(1) 条件は P(X<500)≤0.01 である。標準化すると Φ((500−μ)/2)≤0.01 で、Φ(−z0.01)=0.01 なので、Φ が増加関数であることから (500−μ)/2≤−2.326 と同値である。
μ≥500+2.326×2=504.65
で、設定値は 504.65 ミリリットル以上にする。下側の点を使うので、z0.01 に負の符号が付くことに注意する。
(2) 同じ計算で μ≥500+2.326×1.5=503.49 となり、設定値は 504.65−503.49=1.16 ミリリットル下げられる。必要な余裕 z0.01σ は標準偏差に比例するので、ばらつきを減らすことが平均の上乗せを減らすことに直結する。
確認テスト
オリジナル
- 6.4-1 Φ(0.5)=0.6915、Φ(1.2)=0.8849 を使って P(−1.2<Z<0.5) を求めよ。また、上側確率の表 Q(z)=1−Φ(z) だけで同じ確率を書き表せ。
- 6.4-2 P(∣Z∣<c)=0.90 となる c と、P(Z>d)=0.90 となる d を、z0.05=1.645、z0.10=1.282 を使って答えよ。
- 6.4-3 部品の長さが N(100,0.52)(ミリメートル)に従い、規格は 99.2 以上 101.0 以下である。規格外の割合を求めよ。また、平均を規格の中央 100.1 に動かすと規格外の割合はいくらになるか。Φ(1.6)=0.9452、Φ(1.8)=0.9641、Φ(2)=0.9772 を使ってよい。
- 6.4-4 得点が N(55,152) に従う試験を400人が受けた。85 点以上の人数の期待値と、85 点の偏差値を求めよ。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com