統計学の復習 第12章 §12.9 ★★★ 等分散ならプールした分散 Sp2 で tn1+n2−2、等分散を仮定しないなら Welch の近似自由度 ν∗。3群以上で t 検定を繰り返さない
等分散を仮定する場合
2つの母集団 N(μ1,σ12) と N(μ2,σ22) から、互いに独立に大きさ n1 の標本 X1,…,Xn1 と大きさ n2 の標本 Y1,…,Yn2 を取る。H0:μ1=μ2 を検定する。
σ12=σ22=σ2(未知)を仮定できる場合は、第9章・第10章で定めたプールした分散
Sp2=n1+n2−2(n1−1)S12+(n2−1)S22
を使う。第10章 §10.5 の定理で μ1−μ2=0 と置くと、H0 のもとで
T=Sp1/n1+1/n2Xˉ−Yˉ∼tn1+n2−2(12.6)
である。分子は「推定値 − 帰無仮説の値」で、帰無仮説の値 0 が見えなくなっているだけである。分母の根号の中が和 1/n1+1/n2 になるのは、独立な2つの標本平均の差の分散が V[Xˉ−Yˉ]=σ2/n1+σ2/n2 と和になるからである。自由度が n1+n2−2 なのは、偏差平方和を作るときに2つの標本平均を1回ずつ使うからである。両側検定なら ∣T∣>tn1+n2−2(α/2) で棄却する。
等分散を仮定しない場合(Welch の検定)
σ12 と σ22 が等しいと仮定できないときは、差の標準誤差を S12/n1+S22/n2 で推定した
TW=S12/n1+S22/n2Xˉ−Yˉ
を使う。TW は H0 のもとで厳密には t 分布に従わないが、第10章 §10.5 の近似自由度
ν∗=n1−1(s12/n1)2+n2−1(s22/n2)2(s12/n1+s22/n2)2
の t 分布で近似される。これを Welch の検定と呼ぶ。
等分散かどうかを先に F 検定で調べ、その結果で2つの方法を切り替える手続きは、第15章で扱うとおり予備検定にすぎず、2段階の手続き全体の有意水準は α にならない。等分散を仮定する根拠が無ければ、初めから Welch の検定を使う方が安全である。n1=n2 のときは、2つの統計量の値が一致する(確認テスト 12.9-2)。
3群以上で t 検定を繰り返さない
3つの群 A・B・C の母平均がすべて等しいかを調べるために、A と B、B と C、A と C の t 検定を有意水準 5% で3回行うのは誤りである。3回の検定がもし独立なら、すべての母平均が等しいときに少なくとも1回棄却する確率は 1−0.953=0.143 で、5% を大きく超える。これを検定の多重性と呼ぶ。3群以上の母平均を一度に比べる方法は、第15章の分散分析である。
例題 12.9 プールした t 検定と Welch の検定 ★★★
オリジナル2つの教授法で学んだ学生の得点を比べる。教授法 A の9人は平均 24.6、不偏標準偏差 3.0、教授法 B の11人は平均 21.8、不偏標準偏差 2.4 であった。得点は正規分布に従うとし、有意水準 5% の両側検定で H0:μ1=μ2 を調べる。
- 等分散を仮定して検定せよ(t18(0.025)=2.101)。
- 等分散を仮定せず、Welch の検定を行え(t15.23(0.025)=2.129 としてよい)。
解答
(1) プールした分散は
sp2=9+11−28×9.0+10×5.76=1872+57.6=7.2
で、標準誤差は 7.2×(1/9+1/11)=7.2×0.20202=1.4545=1.206 である。
tobs=1.20624.6−21.8=1.2062.8=2.32
で、2.32>2.101 なので H0 を棄却する(p=0.032)。
(2) s12/n1=9.0/9=1.0、s22/n2=5.76/11=0.5236 で、標準誤差は 1.5236=1.234、tobs=2.8/1.234=2.27 である。近似自由度は
ν∗=1.02/8+0.52362/101.52362=0.125+0.027422.3214=15.23
で、2.27>2.129 なので、こちらでも H0 を棄却する(p=0.038)。Welch の方法は、分散の大きい A の方が標本が小さいことを標準誤差に反映するので、(1) より標準誤差がやや大きく、自由度も小さい。
確認テスト
オリジナル
- 12.9-1 2群の大きさがどちらも8、平均が 15.2 と 13.1、不偏分散が 4.0 と 5.0 のとき、等分散を仮定して H0:μ1=μ2 を有意水準 5% の両側検定で調べよ(t14(0.025)=2.145)。
- 12.9-2 n1=n2=n のとき、プールした t 統計量 T と Welch の統計量 TW の値が一致することを示せ。確認テスト 12.9-1 のデータで Welch の近似自由度 ν∗ を求めよ。
- 12.9-3 4つの群のすべての2群の組で t 検定を有意水準 5% で行う。組の数を答え、検定が互いに独立だと仮定して、すべての母平均が等しいときに少なくとも1回棄却する確率を求めよ。
- 12.9-4 n1=5、s12=16、n2=25、s22=1 のとき、プールした標準誤差 sp1/n1+1/n2 と Welch の標準誤差 s12/n1+s22/n2 を求めて比べよ。等分散の仮定が崩れているのにプールすると何が起こるかを述べよ。
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