統計学の復習 第14章 §14.5 ★★ 説明変数が2つの最小二乗法は2本の正規方程式を解けばよい。偏回帰係数は「ほかの変数で説明できる分を除いた xj」に y を回帰した傾きで、単回帰の傾きとは一般に異なる
説明変数が2つの重回帰
説明変数が x1,x2 の2つのとき、予測式 y^=b0+b1x1+b2x2 の係数を、残差平方和 ∑(yi−b0−b1x1i−b2x2i)2 を最小にするように選ぶ。b1,b2 を偏回帰係数と呼ぶ。偏差平方和と偏差積和を S11=∑(x1i−xˉ1)2、S22、S12=∑(x1i−xˉ1)(x2i−xˉ2)、S1y=∑(x1i−xˉ1)(yi−yˉ)、S2y と書く。
単回帰と同じく、b0 について最小化すると b0=yˉ−b1xˉ1−b2xˉ2 で、予測式は平均の点を通る。これを代入して b1,b2 で偏微分して 0 と置くと、正規方程式
S11b1+S12b2=S1y,S12b1+S22b2=S2y(14.17)
が得られる。S11S22−S122>0(x1 と x2 の相関係数が ±1 でない)なら、連立方程式はただ1組の解
b1=S11S22−S122S22S1y−S12S2y,b2=S11S22−S122S11S2y−S12S1y(14.18)
を持つ。単回帰と同じ残差の直交性(残差は 1・x1・x2 のどれとも直交する)から、平方和の分解 Syy=SR+Se も成り立ち、
SR=∑(y^i−yˉ)2=∑(y^i−yˉ)(yi−yˉ)=b1S1y+b2S2y(14.19)
である。2つ目の等号は yi−yˉ=(y^i−yˉ)+ei と ∑(y^i−yˉ)ei=0 から、3つ目は y^i−yˉ=b1(x1i−xˉ1)+b2(x2i−xˉ2) から出る。
偏回帰係数の意味
式 (14.18) の b1 の分子と分母を S22 で割ると
b1=S11−S22S122S1y−S22S12S2y
となる。§14.2 の式 (14.5) と同じく、x1 から x2 の1次式で説明できる分を引いた残り x~1i=(x1i−xˉ1)−(S12/S22)(x2i−xˉ2) を作ると、分子は ∑x~1i(yi−yˉ)、分母は ∑x~1i2 である。したがって
b1=∑ix~1i2∑ix~1iyi(14.20)
であり(∑x~1i=0 なので yi−yˉ を yi にしてよい)、b1 は「x2 で説明できる分を除いた x1」に y を単回帰した傾きである。このため b1 は「x2 を固定したまま x1 を1単位増やしたときの y の変化」と読まれ、x1 だけで単回帰したときの傾き S1y/S11 とは一般に一致しない。第1式 (14.17) を S11 で割ると
S11S1y=b1+b2S11S12(14.21)
で、単回帰の傾きは、偏回帰係数 b1 に「x2 の効果 b2 を、x1 と x2 の連動の分 S12/S11 だけ取り込んだもの」を足した値になる。
決定係数と重相関係数
定義 14.9(決定係数と重相関係数)
回帰(単回帰でも重回帰でも)の平方和の分解 Syy=SR+Se について、
R2=SyySR=1−SyySe(14.22)
を決定係数と呼ぶ。また、観測値 yi と予測値 y^i の相関係数 R を重相関係数と呼ぶ。
0≤SR≤Syy なので 0≤R2≤1 で、R2 は y の散らばりのうち回帰で説明される割合である。重相関係数と決定係数の関係は次のとおりである。y^i の平均は yˉ(∑ei=0 から)で、∑(yi−yˉ)(y^i−yˉ)=SR(式 (14.19) の2つ目の等号)なので
R=SyySRSR=SyySR
となり、重相関係数の2乗が決定係数である。R≥0 である。単回帰では式 (14.16) から R2=r2 で、R=∣r∣ になる。単回帰で決定係数から相関係数を戻すときは、傾き b1 の符号を付ける(R2=0.49、b1<0 なら r=−0.7)。重回帰の R2 は、どれか1つの相関係数の2乗ではない。
説明変数を増やすと、最小化する範囲が広がるので(新しい係数を 0 に固定すれば元のモデルになる)、Se は増えず、R2 は減らない。y と無関係な変数を足しても R2 は上がるので、説明変数の数が違うモデルを R2 で比べることはできない。そこで、説明変数が p 個のとき
Rˉ2=1−Syy/(n−1)Se/(n−p−1)=1−(1−R2)n−p−1n−1(14.23)
を自由度調整済み決定係数と呼ぶ。分子と分母の平方和をそれぞれの自由度で割っている。Se の自由度 n−p−1 は、データ数 n から推定した係数の数 p+1(切片と p 個の偏回帰係数)を引いた数である。Rˉ2 は変数を足すと下がることがあり、負になることもある。
多重共線性とダミー変数
式 (14.18) の分母 S11S22−S122=S11S22(1−r122) は、x1 と x2 の相関係数 r12 が ±1 に近いと 0 に近くなる。このとき偏回帰係数はデータの小さな変化で大きく動き、標準誤差が大きくなる(確認テスト 14.5-4 で V[b1]=σ2/{S11(1−r122)} を示す)。説明変数どうしが強く相関しているこの状態を多重共線性と呼ぶ。R2 は大きいのに個々の係数が有意にならない、係数の符号が予想と逆になる、といった症状が出る。1/(1−r122) を分散拡大係数(VIF)と呼び、診断に使う。対処は、相関の強い変数の片方を外すことである。
性別や地域のような質的な変数は、0 と 1 をとるダミー変数にして回帰に入れる。2水準なら1本のダミー d(基準の水準で 0、もう一方で 1)を入れ、y^=b0+b1x+b2d とすると、b2 は x が同じときの2水準の予測値の差を表す。m 水準の変数には m−1 本のダミーを入れる。m 本すべてを入れると、ダミーの和がいつも 1 になって切片の列と一致し、正規方程式の解が1つに決まらなくなる。
例題 14.6 説明変数が2つの重回帰と単回帰の傾きの違い ★★
オリジナルある製品の強度 y を、2つの原料の配合量 x1,x2 で説明する。n=10 個の試作品について、xˉ1=4、xˉ2=6、yˉ=15、S11=10、S22=20、S12=8、S1y=13、S2y=24、Syy=40 であった。
- 重回帰式 y^=b0+b1x1+b2x2 を求めよ。
- y を x1 だけに単回帰したときの傾きを求め、b1 と違う理由を式 (14.21) で説明せよ。
- 決定係数・重相関係数・自由度調整済み決定係数を求めよ。
解答
(1) 分母は S11S22−S122=200−64=136 である。式 (14.18) から
b1=13620×13−8×24=136260−192=0.5,b2=13610×24−8×13=136240−104=1.0
で、b0=15−0.5×4−1.0×6=7 である。重回帰式は y^=7+0.5x1+1.0x2 である。
(2) 単回帰の傾きは S1y/S11=13/10=1.3 で、b1=0.5 の2倍以上である。式 (14.21) に入れると 1.3=0.5+1.0×(8/10)=0.5+0.8 である。x1 と x2 は正の相関(r12=8/200=0.566)を持つので、x1 が大きい試作品は x2 も大きい傾向がある。単回帰では x2 の効果 0.8 ぶんが x1 の傾きに取り込まれている。
(3) 式 (14.19) から SR=0.5×13+1.0×24=30.5、Se=40−30.5=9.5 である。R2=30.5/40=0.7625、R=0.7625=0.873 である。p=2 なので式 (14.23) から Rˉ2=1−(9.5/7)/(40/9)=1−1.3571/4.4444=0.695 である。
確認テスト
オリジナル
- 14.5-1 説明変数を1つ増やすと決定係数 R2 が減らない理由を1文で答えよ。
- 14.5-2 r1y=0.6、r2y=0.5、r12=0.4 のとき、標準化した変数(各変数から平均を引き、偏差平方和が 1 になるように割ったもの)での偏回帰係数 b1∗,b2∗ と決定係数 R2 を求めよ。
- 14.5-3 気温 x とダミー変数 d(平日 0・休日 1)で来客数 y を説明する重回帰式 y^=20+3x+5d を得た。x=4 の平日と休日の予測値を求め、5 の意味を答えよ。また、曜日を「月〜金・土・日」の3水準で扱うときダミー変数は何本入れるか。
- 14.5-4 誤差が独立で分散 σ2 のとき(§14.6 のモデル)、式 (14.20) を使って V[b1]=σ2/{S11(1−r122)} を示せ。例題 14.6 の値で、x2 を入れたことによる b1 の分散の増え方(VIF)を求めよ。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com