統計学の復習 第15章 §15.6 ★★ 各組合せで1回だけ測ると、交互作用と誤差を分けることができない。交互作用が無いと仮定し、残差を誤差とみなす。一方の要因をブロックと見れば、ブロックの違いを誤差から取り除く方法になる
モデルと平方和
各組合せ AiBj で1回だけデータを取る。r=1 なので、定理 15.11 の Se は 0 になり、自由度も ab(1−1)=0 になる(確認テスト 15.5-3)。組合せの中のばらつきが観測されないので、誤差の分散 σ2 を直接推定する手段が無い。そこで交互作用が無いと仮定して、モデルを
xij=μ+ai+bj+εij,i∑ai=0, j∑bj=0,εij∼N(0,σ2) 独立(15.18)
とする。偏差の分解は式 (15.16) で r=1 としたもので、
ST=SA+SB+Se,SA=bi∑(xˉi⋅−xˉ)2,SB=aj∑(xˉ⋅j−xˉ)2,Se=i,j∑(xij−xˉi⋅−xˉ⋅j+xˉ)2
である。交差項が消える証明は定理 15.11 と同じである。Se は、繰り返しのある場合の交互作用の平方和と同じ式で、自由度は (a−1)(b−1) である。
モデル (15.18) のもとでは E[Ve]=σ2 で、FA=VA/Ve を Fa−1,(a−1)(b−1) と、FB=VB/Ve を Fb−1,(a−1)(b−1) と比べる。しかし本当は交互作用 (ab)ij があると、残差には誤差と交互作用が混ざり
E[Ve]=σ2+(a−1)(b−1)∑i,j(ab)ij2
となる。分母が大きくなる分だけ FA・FB は小さくなり、検定は本当にある主効果を見逃しやすくなる。繰り返しが無いと交互作用を誤差と分けることができないので、交互作用が無いことを、データでなく実験の対象についての知識から判断して使う。
ブロックとしての要因
繰り返しのない二元配置がよく使われるのは、要因 B が調べたい処理でなく、実験の日・材料のロット・被験者のように、ばらつきの原因として分かっているが、それ自体には関心が無いものの場合である。このような要因をブロックと呼ぶ。同じブロックの中ですべての処理を試せば、ブロックどうしの違いは SB に分かれ、誤差 Se に入らない。一元配置としてブロックを無視すると、ブロックの違いは群内変動に入り、Ve が大きくなって処理の違いが見えにくくなる(例題 15.7)。これは Fisher の3原則のうちの局所管理の考え方で、ブロックの中で処理を割り付ける順を無作為にした実験を乱塊法と呼ぶ。第16章と実験計画法の解説 第11章で扱う。
命題 15.12(2処理の繰り返しのない二元配置は対応のある t 検定と同じである)
a=2 の繰り返しのない二元配置で、差を dj=x1j−x2j(j=1,…,b)、その平均を dˉ、不偏分散を sd2 とする。要因 A の FA は、第10章の対応のある差の t 統計量 t=dˉ/(sd/b) の2乗に等しい。
証明
xˉ1⋅−xˉ2⋅=dˉ で、xˉ はその中点なので xˉ1⋅−xˉ=dˉ/2、xˉ2⋅−xˉ=−dˉ/2 である。したがって SA=b(dˉ2/4+dˉ2/4)=bdˉ2/2 で、ϕA=1 である。残差は、xˉ⋅j=(x1j+x2j)/2 から x1j−xˉ⋅j=dj/2 なので、x1j−xˉ1⋅−xˉ⋅j+xˉ=dj/2−dˉ/2 である。i=2 の残差はその符号を変えたものである。よって Se=2∑j(dj−dˉ)2/4=(b−1)sd2/2、ϕe=b−1、Ve=sd2/2 で
FA=sd2/2bdˉ2/2=sd2/bdˉ2=t2
である。
第10章で、対応のあるデータは差をとって分析すると個体どうしの違いが消えることを見た。命題 15.12 は、その操作が「個体をブロックとした二元配置」と同じものであることを示している。
例題 15.7 ブロックを取り除くと処理の違いが見える ★★★
オリジナル3種類の教え方 A1,A2,A3 を、4つのクラス B1,…,B4 でそれぞれ1回ずつ試し、小テストの平均点を記録した。
| B1 | B2 | B3 | B4 |
| A1 | 8 | 10 | 7 | 11 |
| A2 | 10 | 13 | 9 | 12 |
| A3 | 11 | 13 | 10 | 14 |
- 繰り返しのない二元配置として分散分析表を作り、有意水準 1% で A と B を検定せよ(F2,6(0.01)=10.92、F3,6(0.01)=9.780)。
- クラスを無視して一元配置(各水準4個)として分析し、有意水準 5% で A を検定せよ(F2,9(0.05)=4.256)。(1) と結論が違う理由を述べよ。
解答
(1) 行の合計は 36, 44, 48、列の合計は 29, 36, 26, 37、総合計は 128 で、CT=1282/12=1365.33、∑x2=1414 から ST=48.67 である。
SA=4362+442+482−CT=1384−1365.33=18.67,
SB=3292+362+262+372−CT=1394−1365.33=28.67
で、Se=48.67−18.67−28.67=1.33 である。
| 要因 | 平方和 | 自由度 | 平均平方 | F0 | 1% 点 |
| A | 18.67 | 2 | 9.333 | 42.0 | 10.92 |
| B | 28.67 | 3 | 9.556 | 43.0 | 9.780 |
| e | 1.33 | 6 | 0.222 | | |
| 計 | 48.67 | 11 | | | |
A も B も有意水準 1% で有意である。教え方によって平均点は異なる。
(2) 一元配置では SA=18.67(同じ式)、Se=ST−SA=30.00、ϕe=9、Ve=3.333 で、F0=9.333/3.333=2.80<4.256 となり、5% でも有意でない。(1) と (2) で SA は同じである。違うのは誤差の大きさで、(2) ではクラスどうしの違い SB=28.67 が群内変動に入って Ve が 15 倍になった。どのクラスでも A1<A2≤A3 の順はほぼ揃っているが、クラスの平均の違い(B3 は低く B4 は高い)がそれより大きいので、ブロックを取り除かないと処理の違いが誤差に埋もれる。
確認テスト
オリジナル
- 15.6-1 A が4水準・B が5水準の繰り返しのない二元配置で、各要因・誤差・計の自由度を求めよ。
- 15.6-2 4人の被験者に2つの条件で作業させ、所要時間を測った。条件 A1 は 5, 7, 6, 9、A2 は 7, 8, 9, 11(同じ順の被験者)であった。繰り返しのない二元配置の FA と、対応のある差の t 統計量を計算し、命題 15.12 を確かめよ。
- 15.6-3 モデル (15.18) が正しいとき、E[Se]=(a−1)(b−1)σ2 となることを、a=b=2 の場合に Se を εij で表して確かめよ。
- 15.6-4 本当は交互作用があるのに繰り返しのない二元配置で分析すると、要因 A の検定の第1種の誤りの確率は名目の α より大きくなるか小さくなるか。理由とともに答えよ。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com