統計学の復習 第16章 §16.6 ★★ k 項移動平均は不規則な変動を均し、長さ k の周期の変動を消す。データは k−1 個短くなり、偶数項では中心化する
時系列と移動平均の定義
時間の順に並んだデータ y1,y2,…,yn を時系列と呼ぶ。月ごとの売上、四半期ごとの生産量、毎日の気温などである。時系列の値は、長期的な傾向、季節による周期的な変動、不規則な変動が重なってできている(§16.7)。傾向を見るには、細かい上下を均す必要がある。
定義 16.8(移動平均)
k を奇数とし、k=2m+1 と書く。時点 t を中心とする前後 k 個の平均
yˉt(k)=k1j=−m∑myt+j(t=m+1,…,n−m)(16.13)
を k 項移動平均と呼ぶ。
t が m+1 から n−m まで動くので、移動平均は n−2m=n−k+1 個得られる。最初の m 個と最後の m 個の時点では前後の値が足りず、移動平均を計算することができない。データは合わせて k−1 個短くなる。
偶数項の移動平均と中心化
四半期データ(周期 4)や月次データ(周期 12)では、周期と同じ長さの偶数項の移動平均を使いたい。しかし y1,…,y4 の平均は時点 2.5 の値になり、元の時点と揃わない。そこで、隣り合う2つの4項移動平均(時点 2.5 と 3.5)をさらに平均して、時点 3 に置く。これを中心化移動平均と呼ぶ。式で書くと
y~t=21(4yt−2+yt−1+yt+yt+1+4yt−1+yt+yt+1+yt+2)=421yt−2+yt−1+yt+yt+1+21yt+2(16.14)
で、重みは (1/8,1/4,1/4,1/4,1/8) である。前後2個ずつ使うので、データは両端で2個ずつ、合わせて4個短くなる。12か月の中心化移動平均では、両端の月に 1/24、間の11か月に 1/12 の重みを置き、合わせて12個短くなる。
移動平均が残すものと消すもの
命題 16.9(移動平均の性質)
重み w−m,…,wm が対称(w−j=wj)で和が 1 の移動平均 ∑jwjyt+j について、
- 直線の傾向 yt=a+bt はそのまま残る。
- 周期 L の変動 st(st+L=st かつ1周期の和が 0)は、L 項移動平均(L が偶数なら中心化した (16.14) の形)で 0 になる。
- 不規則な変動 et が独立で分散 σ2 なら、移動平均の分散は σ2∑jwj2 で、k 項の単純な移動平均では σ2/k である。
証明
(1) ∑jwj{a+b(t+j)}=(a+bt)∑jwj+b∑jjwj である。∑wj=1 で、対称性から j と −j の項が打ち消し合うので ∑jwj=0 となり、a+bt が残る。
(2) L が奇数のとき、連続する L 個の st−m,…,st+m は1周期分の値をちょうど1回ずつ含むので、和は 0 である。L が偶数のとき、(16.14) は2つの連続する L 個の和の平均で、どちらの和も1周期分なので 0 である。
(3) 独立な確率変数の線形結合の分散は、係数の2乗を掛けた分散の和である(第7章)。よって V[∑wjet+j]=σ2∑wj2 で、wj=1/k なら σ2⋅k/k2=σ2/k となる。
直線でなく曲がった傾向(2次以上の項)は、移動平均で少し変形する。k を大きくするほど不規則な変動はよく均されるが、傾向の曲がりも均されてしまい、データも短くなる。k の選び方はこの兼ね合いで決まり、季節変動のあるデータではその周期に合わせる。
例題 16.6 月次の売上の移動平均 ★★
オリジナルある店の9か月の売上(万円)は 12, 15, 13, 18, 16, 20, 19, 23, 21 だった。
- 3項移動平均を全部求めよ。何個得られるか。
- 5項移動平均を全部求めよ。何個得られるか。
- 不規則な変動が独立で分散が等しいとすると、3項と5項の移動平均の分散は、元の値の分散の何倍か。
解答
(1) 時点2を中心とする値は (12+15+13)/3=13.33 で、以下同様に
13.33, 15.33, 15.67, 18.00, 18.33, 20.67, 21.00
の 9−3+1=7 個である(時点2〜8)。
(2) (12+15+13+18+16)/5=14.8 から順に
14.8, 16.4, 17.2, 19.2, 19.8
の 9−5+1=5 個である(時点3〜7)。元の系列は上がり下がりを繰り返すが、5項移動平均は単調に増えており、右上がりの傾向がはっきりする。
(3) 命題 16.9 (3) から、3項では 1/3 倍、5項では 1/5 倍である。
確認テスト
オリジナル
- 16.6-1 長さ 60 の月次データに12か月の中心化移動平均を施すと、何個の値が得られるか。各時点の重みも答えよ。
- 16.6-2 四半期の系列 10,14,12,16,15,19,17,21 について、3項移動平均と、4項の中心化移動平均 (16.14) をそれぞれ全部求めよ。
- 16.6-3 周期 4 で1周期の和が 0 の変動 st に、4項の中心化移動平均 (16.14) を施すと 0 になることを、具体的に s1,…,s4 を使った式で確かめよ。また、3項移動平均では一般に 0 にならないことを例で示せ。
- 16.6-4 独立で分散 σ2 の不規則な変動に、4項の中心化移動平均を施した値の分散を求め、単純な4項移動平均の分散 σ2/4 と比べよ。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com