統計学の復習 第16章 §16.9 ★★ 物価指数は価格の比を支出額の重みで平均したもの。Laspeyres は基準時点の数量、Paasche は比較時点の数量で重みを付ける
指数とは
ある量の値を、基準となる時点の値を 100 として表したものを指数と呼ぶ。1つの品目の価格なら、基準時点の価格 p0 と比較時点の価格 p1 から 100×p1/p0 が価格指数である。比 p1/p0 を価格比と呼ぶ。物価のように多くの品目をまとめるときは、品目ごとの価格比をどう平均するかが問題になる。価格比を単純に平均すると、家計の支出に占める割合の小さい品目の値上がりも、大きい品目の値上がりも同じ重さで数えてしまう。そこで、買う量(数量)を固定した「買い物かご」の費用の比として指数を定める。
定義 16.12(Laspeyres 指数・Paasche 指数・Fisher 指数)
品目 i の基準時点の価格と数量を p0i,q0i、比較時点の価格と数量を p1i,q1i とする。
PL=∑ip0iq0i∑ip1iq0i,PP=∑ip0iq1i∑ip1iq1i,PF=PLPP(16.18)
をそれぞれ Laspeyres 指数・Paasche 指数・Fisher 指数と呼ぶ(100 倍して表すことが多い)。
Laspeyres 指数は「基準時点の買い物かごを、比較時点の価格で買うといくらかかるか」、Paasche 指数は「比較時点の買い物かごを、基準時点の価格で買うといくらだったか」の比である。Laspeyres 指数は基準時点の数量だけを調べればよいので、毎期の数量の調査が要らない。日本の消費者物価指数は Laspeyres 型の指数である。
命題 16.13(価格比の加重平均としての表示)
基準時点の支出額の割合を w0i=p0iq0i/∑jp0jq0j、比較時点の支出額の割合を w1i=p1iq1i/∑jp1jq1j とすると
PL=i∑w0ip0ip1i,PP1=i∑w1ip1ip0i(16.19)
である。Laspeyres 指数は価格比の基準時点の支出額による加重算術平均、Paasche 指数は価格比の比較時点の支出額による加重調和平均である。
証明
∑iw0ip1i/p0i=∑ip0iq0i(p1i/p0i)/∑jp0jq0j=∑ip1iq0i/∑jp0jq0j=PL である。同様に ∑iw1ip0i/p1i=∑ip1iq1i(p0i/p1i)/∑jp1jq1j=∑ip0iq1i/∑jp1jq1j=1/PP である。
値上がりした品目の購入を減らして別の品目に切り替える行動があると、比較時点の数量は値上がりした品目で小さくなる。そのため Paasche 指数は値上がりした品目を軽く数え、Laspeyres 指数より低めに出ることが多い。これはいつでも成り立つ定理ではなく、そうした切り替えがあるときの傾向である。Fisher 指数は2つの幾何平均で、両者の間の値をとる。
基準の変更と実質化
指数の基準時点を変えるときは、全時点の指数を新しい基準時点の指数で割って 100 を掛ける。指数の比は基準によらないので、これで新しい基準時点が 100 になる(Laspeyres 指数では、数量の重みまで新しい基準時点に揃えたことにはならない点に注意する)。金額で表した量(名目値)を物価の変化を除いた量(実質値)に直すには、名目値を物価指数で割って 100 を掛ける。これを実質化と呼び、使う物価指数をデフレーターと呼ぶ。名目の伸び率と実質の伸び率の関係は (1+名目)=(1+実質)(1+物価) で、伸び率が小さいときは近似的に「実質 ≈ 名目 − 物価」となる。
例題 16.9 2品目の物価指数 ★★
オリジナル2つの品目 A・B の価格と数量が次のように変わった。
| p0 | q0 | p1 | q1 |
| A | 100 | 10 | 120 | 8 |
| B | 200 | 5 | 210 | 6 |
- Laspeyres 指数・Paasche 指数・Fisher 指数を求めよ(基準時点を 100 とする)。
- Laspeyres 指数を、価格比の加重平均 (16.19) として計算し直せ。
- Paasche 指数が Laspeyres 指数より小さくなった理由を、数量の変化から説明せよ。
解答
(1) 基準時点の支出額は 100×10+200×5=2000、基準時点の数量を比較時点の価格で買う費用は 120×10+210×5=2250 なので PL=2250/2000=1.125、指数は 112.5 である。比較時点の数量では ∑p1q1=120×8+210×6=2220、∑p0q1=100×8+200×6=2000 なので PP=2220/2000=1.110、指数は 111.0 である。Fisher 指数は 1.125×1.110=1.24875=1.1175 で、111.7 である。
(2) 価格比は A が 1.2、B が 1.05、基準時点の支出額の割合は A が 1000/2000=0.5、B が 0.5 なので、PL=0.5×1.2+0.5×1.05=1.125 で (1) と一致する。
(3) 値上がり率の大きい A(20%)の数量が 10 から 8 に減り、値上がり率の小さい B(5%)の数量が 5 から 6 に増えた。比較時点の数量で重みを付ける Paasche 指数では、A の値上がりが軽く数えられるので、Laspeyres 指数より小さくなる。
確認テスト
オリジナル
- 16.9-1 Laspeyres 指数と Paasche 指数のそれぞれについて、計算に要るデータと、指数が表している「買い物かご」の意味を述べよ。
- 16.9-2 3品目の基準時点と比較時点の価格・数量が (p0,q0,p1,q1)=(50,20,60,15)、(200,5,210,6)、(80,10,72,12) のとき、Laspeyres 指数・Paasche 指数・Fisher 指数を求めよ。
- 16.9-3 2020年を 100 とする物価指数が、2022年に 103.0、2024年に 109.2 だった。(a) 2022年を 100 とする指数に直したときの2024年の値を求めよ。(b) 名目の月給が2022年の 30.0 万円から2024年の 31.5 万円に上がった。2022年の価格で表した2024年の実質の月給と、実質の伸び率を求めよ。
- 16.9-4 命題 16.13 の Paasche 指数の式を、品目が1つだけの場合に確かめ、そのとき3つの指数がすべて価格比に一致することを示せ。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com