統計学の復習 第16章 §16.8 ★★ 時点を h だけずらした値どうしの相関が自己相関で、並べた図がコレログラム。季節変動があれば周期のラグで山ができ、独立な系列なら ±2/n の範囲に収まる
標本自己相関係数
時系列では、隣り合う時点の値が似ていることが多い。この性質を、時点を h だけずらした値の組 (yt,yt+h) の相関で測る。h をラグ(時差)と呼ぶ。
定義 16.10(標本自己共分散・標本自己相関係数)
時系列 y1,…,yn の平均を yˉ とする。ラグ h の標本自己共分散と標本自己相関係数を
ch=n1t=1∑n−h(yt−yˉ)(yt+h−yˉ),rh=c0ch(16.17)
と定める。c0=n1∑(yt−yˉ)2 は n で割った分散である。rh をラグ h に対して棒で並べた図をコレログラムと呼ぶ。
この定義は、第14章の相関係数を2つの系列 (y1,…,yn−h) と (y1+h,…,yn) に当てはめたものと少し違う。平均には系列全体の yˉ を使い、分母は n のまま、分散も全体の c0 を使う。h が n に比べて小さければ、ふつうの相関係数とほぼ同じ値になる。分母を n−h でなく n にしておくと、∣rh∣≤1 が保証され、h の大きい(組の数の少ない)rh が不安定に大きくなることを防げる。
コレログラムの形から、系列の性質を読み取ることができる。
- 傾向(右上がりなど)のある系列では、離れた時点どうしも「両方とも平均より上」または「両方とも下」になりやすいので、rh は正で、h とともにゆっくり減る。
- 周期 L の季節変動のある系列では、h=L,2L,… で同じ季節どうしが組になるので、rh がその位置で山になる。
- 互いに独立な系列(ホワイトノイズ)では、h≥1 の rh は 0 の近くに散らばり、n が大きいとき近似的に N(0,1/n) に従う。そのため ±1.96/n(約 ±2/n)の範囲を目安の線としてコレログラムに引き、それを超える rh を「自己相関がある」ことの手がかりとする。この近似の根拠は1級の範囲で、ここでは結果だけを使う。
自己相関を持つ系列の例
自己相関がどのように生じるかを、2つの簡単な系列で計算しておく。以下、et は互いに独立で平均 0、分散 σ2 とする。母集団での自己相関(理論値)を ρ(h)=Cov(yt,yt+h)/V[yt] と書く。
命題 16.11(移動平均した系列の自己相関)
yt=(et−1+et+et+1)/3 のとき、ρ(1)=2/3、ρ(2)=1/3、h≥3 で ρ(h)=0 である。
証明
V[yt]=3σ2/9=σ2/3 である(命題 16.9 (3))。yt と yt+1=(et+et+1+et+2)/3 は et と et+1 の2つを共有し、異なる e どうしの共分散は 0 なので、共分散の双線形性(第7章)から Cov(yt,yt+1)=2σ2/9 である。よって ρ(1)=(2σ2/9)/(σ2/3)=2/3。yt+2 とは et+1 の1つだけを共有するので ρ(2)=(σ2/9)/(σ2/3)=1/3、h≥3 では共有する e が無いので ρ(h)=0 である。
この命題は、移動平均で均した系列には、元の系列が独立でも見かけの自己相関が生じることを示している。移動平均した値どうしは同じデータを共有しているからである。移動平均した系列のコレログラムを読むときは、この見かけの相関を割り引く。
もう1つの典型は、今期の値が前期の値に引きずられる系列 yt=ϕyt−1+et(∣ϕ∣<1、1次の自己回帰)で、ρ(h)=ϕh とラグとともに指数的に減る(確認テスト 16.8-4)。自己回帰の系列や、より一般の確率過程は数理統計の解説 第12章で扱う。
例題 16.8 短い系列の自己相関 ★★
オリジナル6時点の系列 3, 5, 4, 6, 8, 7 について、
- c0、c1、c2 と r1、r2 を求めよ。
- ±1.96/n の目安の線と比べて、r1 をどう解釈するかを述べよ。
解答
(1) yˉ=33/6=5.5 で、偏差は dt=−2.5, −0.5, −1.5, 0.5, 2.5, 1.5 である。
c0=66.25+0.25+2.25+0.25+6.25+2.25=617.5=2.917
である。ラグ1の積の和は
(−2.5)(−0.5)+(−0.5)(−1.5)+(−1.5)(0.5)+(0.5)(2.5)+(2.5)(1.5)=1.25+0.75−0.75+1.25+3.75=6.25
で c1=6.25/6=1.042、ラグ2の積の和は
(−2.5)(−1.5)+(−0.5)(0.5)+(−1.5)(2.5)+(0.5)(1.5)=3.75−0.25−3.75+0.75=0.5
で c2=0.5/6=0.083 である。よって r1=6.25/17.5=0.357、r2=0.5/17.5=0.029 となる(分母の n は約分で消える)。
(2) 1.96/6=0.80 で、r1=0.357 はこの範囲に収まる。この系列は右上がりに見えるが、6点しかないので、独立な系列でもこの程度の r1 はよく現れる。自己相関があると言うことはできない。目安の線は 1/n に比例するので、自己相関の有無を判断するには数十点以上の長さが要る。
確認テスト
オリジナル
- 16.8-1 例題 16.7 の12時点の生産量の標本自己相関係数は、r1=0.438、r2=−0.059、r3=0.202、r4=0.348 だった。r4 が r2、r3 より大きい理由を述べよ。
- 16.8-2 系列 4,6,5,3,2,4 の r1 と r2 を求めよ。
- 16.8-3 yt=(et+et+1)/2 のとき、ρ(1) と ρ(2) を求めよ。命題 16.11 と同じ方法でよい。
- 16.8-4 yt=ϕyt−1+et(∣ϕ∣<1、et は過去の y と独立)で、V[yt] と Cov(yt,yt+h) が t によらないとする。V[yt]=σ2/(1−ϕ2) と ρ(h)=ϕh を示せ。
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