数理統計 第3章 §3.4
この章では、離散分布として二項・ポアソン・幾何・負の二項・超幾何・多項、連続分布として一様・正規・指数・ガンマ・カイ二乗・ベータと対数正規などを作り、それぞれの平均・分散・母関数を定義から導いた。導き方は3種類に分かれる。
指示変数の和に分解する方法。二項・超幾何・多項の平均と分散がこれで出る。非復元抽出では指示変数どうしの共分散が負になり、有限母集団修正 (N−n)/(N−1) が現れる。
母関数を微分する方法。次の値がこれで出る。
- ポアソンの階乗積率 λr。
- 幾何分布の平均 q/p と分散 q/p2。
- 正規分布の E[Z4]=3。
密度の規格化を別の母数で使い直す方法。次の量がこれで出る。
- ガンマ分布の積率 E[Xk]=βkΓ(α+k)/Γ(α) と、積率母関数 (1−βt)−α。
- ベータ分布の積率と、ポアソン・ガンマ混合の周辺分布。
被積分関数を見て「どの母数のどの分布の密度の、規格化定数を除いた部分か」を読み取ることが計算の要になる。
分布どうしの関係は次の連鎖にまとまる。
Ex(λ) n 個の和 Ga(n,1/λ) ×2λ Ga(n,2)=χ2n2,N(0,1) 2 乗 χ12 n 個の和 χn2,
Bin(n,p) np→λ Po(λ),Ga(a,β), Ga(b,β) 比 X/(X+Y) Beta(a,b) (和と独立),
P(Ga(n,1/λ)≤t)=P(Po(λt)≥n),Po を Ga で混合=NB.
表 3.1 に、本章の主な分布の平均・分散・母関数をまとめる。
表 3.1 主な分布の平均・分散・母関数(q=1−p)| 分布 | 平均 | 分散 | 積率母関数 MX(t) |
| Bin(n,p) | np | npq | (q+pet)n |
| Po(λ) | λ | λ | exp{λ(et−1)} |
| Ge(p)(失敗の回数) | q/p | q/p2 | p/(1−qet) |
| NB(r,p) | rq/p | rq/p2 | {p/(1−qet)}r |
| HG(N,M,n)、p=M/N | np | npq(N−n)/(N−1) | (使わない) |
| U(a,b) | (a+b)/2 | (b−a)2/12 | (ebt−eat)/{(b−a)t} |
| N(μ,σ2) | μ | σ2 | exp(μt+σ2t2/2) |
| Ex(λ) | 1/λ | 1/λ2 | λ/(λ−t) |
| Ga(α,β) | αβ | αβ2 | (1−βt)−α |
| χn2 | n | 2n | (1−2t)−n/2 |
| Beta(a,b) | a/(a+b) | ab/{(a+b)2(a+b+1)} | (使わない) |
| LN(μ,σ2) | eμ+σ2/2 | e2μ+σ2(eσ2−1) | 存在しない |
1級の統計数理(90分で5問から3問を選ぶ記述式)では、この章の内容が単独の大問になることは少なく、大問の前半の小問として現れる。典型的な連鎖は次のとおりである。
- 確率関数のたたみ込み、または積率母関数の積で和の分布を求める → 再生性を確かめる → その和を条件にした条件付き分布(二項分布)を導く →それを検定や区間推定に使う。2025年 統計数理 問5 の題材(ポアソン分布の再生性と積率母関数による無限分解可能性、対数正規分布の積と最尤推定量)はこの型の前半に当たる。
- 指数分布の標本 → 和がガンマ分布 → 2λ∑Xi∼χ2n2 → λ の信頼区間や検定の棄却域。
- 2つのガンマ変数(あるいはカイ二乗変数)→ ヤコビアンで和と比の同時密度 → 独立性とベータ分布 → F 分布の導出(第5章)。
- 分布を指数型分布族の正準形に書く → 十分統計量 ∑T(Xi) を読み取る → κ の微分で平均・分散・Fisher 情報量 → 最尤推定量とその漸近分布(第6章)。
答案では、ガンマ分布の母数が尺度か率か、幾何分布が失敗の回数か試行回数かを最初に宣言する。母関数を使うなら定義域(t<1/β、∣s∣<1/q など)を書き添える。再生性を使うときは、共通であるべき母数が共通であることを確認してから使う(二項なら p、ガンマなら β)。
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