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統計量と標本分布

2026年10月15日11分で読めますAI生成教科書『資格試験』第5章 標本分布とその近似
目次
  1. 無作為標本と統計量
  2. 標本平均と不偏分散の期待値
  3. 積率母関数による和の分布
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

数理統計 第5章 §5.1 ★★ 無作為標本・統計量の定義と、平均・分散・積率母関数による標本分布の計算

推定量や検定統計量は、データ X1,…,XnX_1,\dots,X_n の関数である。データが確率変数なので、その関数もまた確率変数になり、分布を持つ。この分布を標本分布と呼ぶ。第6章以降の推定・検定・区間推定は、すべて「この統計量はどういう分布に従うか」が分かって初めて数値の判断ができるので、この章は後の章すべての前提になる。

この章で作る道具は次の3種類である。

  1. 正規母集団での厳密な分布。標本平均 Xˉ\bar X と不偏分散 S2S^2 を扱う。2つが独立であることと、(n−1)S2/σ2(n-1)S^2/\sigma^2 が χn−12\chi^2_{n-1} に従うことを示す。そこから tt 分布と FF 分布が出てくることを、密度の形まで自分の手で導く。
  2. 厳密な分布が求まらないときの近似。大数の法則・中心極限定理・Slutsky の定理・デルタ法を使い、n→∞n\to\infty での分布を求める。
  3. 順序統計量(最小値・最大値・中央値など)の分布。厳密な密度と、適当に拡大したときの極限分布を求める。

資格試験の数理の科目では、2025年に「台の端が未知母数で決まる分布の最小値について、厳密分布を求め、nn 倍して極限分布を求め、そこから信頼区間を作る」問題(統計数理 問2 の題材)と、「単回帰の推定量から χ2\chi^2 と正規を組み合わせて標本相関係数の密度を出す」問題(統計数理 問3 の題材)が出た。前者は §5.4、後者は §5.2 の手続きを使う。

この章で使う分布の記号は次のとおりとする(β\beta は尺度)。

Ex(λ): λe−λx (x>0),Ga(α,β): xα−1e−x/βΓ(α)βα (x>0).\mathrm{Ex}(\lambda):\ \lambda\mathrm{e}^{-\lambda x}\ (x>0),\qquad \mathrm{Ga}(\alpha,\beta):\ \frac{x^{\alpha-1}\mathrm{e}^{-x/\beta}}{\Gamma(\alpha)\beta^\alpha}\ (x>0).

第3章で定めた分布の性質のうち、ここで使うものは次の3つである。

E[X]=αβ,V[X]=αβ2,MX(t)=E[etX]=(1−βt)−α (t<1/β)(X∼Ga(α,β)),(5.1)E[X]=\alpha\beta,\quad V[X]=\alpha\beta^2,\quad M_X(t)=E[\mathrm{e}^{tX}]=(1-\beta t)^{-\alpha}\ (t<1/\beta)\qquad(X\sim\mathrm{Ga}(\alpha,\beta)),\tag{5.1}

また Ex(λ)=Ga(1,1/λ)\mathrm{Ex}(\lambda)=\mathrm{Ga}(1,1/\lambda) である。積率母関数 MX(t)M_X(t) が0の近くで存在して一致すれば分布が一致する、という第2章の一意性定理も繰り返し使う。

無作為標本と統計量

定義 5.1(無作為標本・統計量・標本分布)

確率変数 X1,…,XnX_1,\dots,X_n が互いに独立で、どれも同じ分布 FF に従うとする。これを分布 FF からの大きさ nn の無作為標本(i.i.d. 標本)と呼ぶ。分布 FF を母集団分布という。

X1,…,XnX_1,\dots,X_n の関数 T=T(X1,…,Xn)T=T(X_1,\dots,X_n) で、未知の母数を含まないものを統計量と呼ぶ。統計量 TT の分布を標本分布と呼ぶ。

統計量の定義で「未知の母数を含まない」と断る理由は、データを観測したあとで TT の値が計算できなければ推定にも検定にも使えないからである。たとえば母平均 μ\mu が未知のとき、Xˉ−μ\bar X-\mu は統計量ではない。一方 Xˉ−μ\bar X-\mu の分布が μ\mu によらない、というような性質は信頼区間を作るときに使い(第8章)、そうした量はピボットと呼ばれる。

代表的な統計量は、標本平均と不偏分散

Xˉ=1n∑i=1nXi,S2=1n−1∑i=1n(Xi−Xˉ)2(5.2)\bar X=\frac1n\sum_{i=1}^n X_i,\qquad S^2=\frac{1}{n-1}\sum_{i=1}^n(X_i-\bar X)^2\tag{5.2}

である。

標本平均と不偏分散の期待値

命題 5.2(標本平均と不偏分散の期待値)

母集団分布の平均を μ\mu、分散を σ2<∞\sigma^2<\infty とする。母集団分布の形によらず

E[Xˉ]=μ,V[Xˉ]=σ2n,E[S2]=σ2.E[\bar X]=\mu,\qquad V[\bar X]=\frac{\sigma^2}{n},\qquad E[S^2]=\sigma^2 .

証明

期待値の線形性から E[Xˉ]=1n∑E[Xi]=μE[\bar X]=\frac1n\sum E[X_i]=\mu。独立性から共分散が消えるのでV[Xˉ]=1n2∑V[Xi]=σ2/nV[\bar X]=\frac{1}{n^2}\sum V[X_i]=\sigma^2/n。

不偏分散については、まず展開して

∑i=1n(Xi−Xˉ)2=∑i=1nXi2−2Xˉ∑i=1nXi+nXˉ2=∑i=1nXi2−nXˉ2(5.3)\sum_{i=1}^n(X_i-\bar X)^2=\sum_{i=1}^n X_i^2-2\bar X\sum_{i=1}^n X_i+n\bar X^2=\sum_{i=1}^n X_i^2-n\bar X^2\tag{5.3}

を得る。E[Xi2]=V[Xi]+(E[Xi])2=σ2+μ2E[X_i^2]=V[X_i]+(E[X_i])^2=\sigma^2+\mu^2、E[Xˉ2]=V[Xˉ]+(E[Xˉ])2=σ2/n+μ2E[\bar X^2]=V[\bar X]+(E[\bar X])^2=\sigma^2/n+\mu^2 を代入すると

E[∑(Xi−Xˉ)2]=n(σ2+μ2)−n(σ2n+μ2)=(n−1)σ2.E\Bigl[\sum(X_i-\bar X)^2\Bigr]=n(\sigma^2+\mu^2)-n\Bigl(\frac{\sigma^2}{n}+\mu^2\Bigr)=(n-1)\sigma^2 .

両辺を n−1n-1 で割れば E[S2]=σ2E[S^2]=\sigma^2。

nn でなく n−1n-1 で割る理由は、この計算に表れている。Xˉ\bar X はデータに最も近くなるように選ばれた中心である。そのため ∑(Xi−Xˉ)2\sum(X_i-\bar X)^2 は、真の μ\mu のまわりの平方和より小さくなる。小さくなる量の期待値がちょうど σ2\sigma^2 の1個分であり、これを n−1n-1 で割ることで補う。

積率母関数による和の分布

独立な確率変数の和の分布は、積率母関数を使うと掛け算で求まる。X1,…,XnX_1,\dots,X_n が独立なら

MX1+⋯+Xn(t)=E[etX1⋯etXn]=∏i=1nMXi(t)(5.4)M_{X_1+\cdots+X_n}(t)=E\bigl[\mathrm{e}^{tX_1}\cdots\mathrm{e}^{tX_n}\bigr]=\prod_{i=1}^n M_{X_i}(t)\tag{5.4}

で、同じ分布なら MX(t)nM_X(t)^n になる。右辺が既知の分布の積率母関数の形をしていれば、一意性定理によって和の分布が決まる。こうして示せる「同じ族の独立な和がまた同じ族に入る」性質を再生性と呼ぶ。代表的なものを並べる(いずれも積率母関数を掛けるだけで確かめられる)。

  • 二項分布(M(t)=(1−p+pet)mM(t)=(1-p+p\mathrm{e}^t)^m):

Bin(m,p)+Bin(n,p)=Bin(m+n,p).\mathrm{Bin}(m,p)+\mathrm{Bin}(n,p)=\mathrm{Bin}(m+n,p).

  • ポアソン分布(M(t)=exp⁡{λ(et−1)}M(t)=\exp\{\lambda(\mathrm{e}^t-1)\}):

Po(λ1)+Po(λ2)=Po(λ1+λ2).\mathrm{Po}(\lambda_1)+\mathrm{Po}(\lambda_2)=\mathrm{Po}(\lambda_1+\lambda_2).

  • 正規分布(M(t)=exp⁡(μt+σ2t2/2)M(t)=\exp(\mu t+\sigma^2t^2/2)):

N(μ1,σ12)+N(μ2,σ22)=N(μ1+μ2,σ12+σ22).\mathrm{N}(\mu_1,\sigma_1^2)+\mathrm{N}(\mu_2,\sigma_2^2)=\mathrm{N}(\mu_1+\mu_2,\sigma_1^2+\sigma_2^2).

  • 尺度が同じガンマ分布:

Ga(α1,β)+Ga(α2,β)=Ga(α1+α2,β).\mathrm{Ga}(\alpha_1,\beta)+\mathrm{Ga}(\alpha_2,\beta)=\mathrm{Ga}(\alpha_1+\alpha_2,\beta).

ここで「++」は独立な確率変数の和の分布を表す。正規分布については、さらに定数倍も正規分布になるので、Xˉ∼N(μ,σ2/n)\bar X\sim\mathrm{N}(\mu,\sigma^2/n) が直ちに従う。

落とし穴

再生性は「同じ族」で「必要な母数がそろっている」ときに限る。ガンマ分布の和は尺度 β\beta が等しいときにだけガンマ分布になる。二項分布も成功確率 pp が等しいときに限る。尺度の違う指数分布の和は、ガンマ分布ではない(密度は指数関数の差の形になる)。

例題 5.1 指数分布の標本と 1/Xˉ1/\bar X の期待値 ★★

オリジナル分布 Ex(λ)\mathrm{Ex}(\lambda) を考える。X1,…,XnX_1,\dots,X_n をその無作為標本とし、n≥3n\ge3 とする。

  1. T=∑i=1nXiT=\sum_{i=1}^n X_i の分布を求めよ。
  2. E[1/Xˉ]E[1/\bar X] と V[1/Xˉ]V[1/\bar X] を求めよ。
  3. λ\lambda の不偏推定量を、定数倍 c/Xˉc/\bar X の形で求めよ。
解答
  1. XiX_i の積率母関数は、t<λt<\lambda で次のようになる。

M(t)=∫0∞etxλe−λxdx=λλ−t=(1−tλ)−1.M(t)=\int_0^\infty\mathrm{e}^{tx}\lambda\mathrm{e}^{-\lambda x}\mathrm{d} x=\frac{\lambda}{\lambda-t}=\Bigl(1-\frac t\lambda\Bigr)^{-1}.

独立なので MT(t)=(1−t/λ)−nM_T(t)=(1-t/\lambda)^{-n} である。これは (5.1) で α=n\alpha=n、β=1/λ\beta=1/\lambda とした形である。よって T∼Ga(n,1/λ)T\sim\mathrm{Ga}(n,1/\lambda) で、密度は

fT(s)=λnsn−1e−λsΓ(n)(s>0).f_T(s)=\frac{\lambda^n s^{n-1}\mathrm{e}^{-\lambda s}}{\Gamma(n)}\qquad(s>0). 2. 1/Xˉ=n/T1/\bar X=n/T である。したがって E[T−1]E[T^{-1}] と E[T−2]E[T^{-2}] を求めればよい。ガンマ関数の積分

∫0∞sa−1e−λsds=Γ(a)λa\int_0^\infty s^{a-1}\mathrm{e}^{-\lambda s}\mathrm{d} s=\frac{\Gamma(a)}{\lambda^a}

を使うと

E[T−1]=λnΓ(n)∫0∞sn−2e−λsds=λnΓ(n)⋅Γ(n−1)λn−1=λn−1,E[T^{-1}]=\frac{\lambda^n}{\Gamma(n)}\int_0^\infty s^{n-2}\mathrm{e}^{-\lambda s}\mathrm{d} s=\frac{\lambda^n}{\Gamma(n)}\cdot\frac{\Gamma(n-1)}{\lambda^{n-1}}=\frac{\lambda}{n-1},

E[T−2]=λnΓ(n)⋅Γ(n−2)λn−2=λ2(n−1)(n−2).E[T^{-2}]=\frac{\lambda^n}{\Gamma(n)}\cdot\frac{\Gamma(n-2)}{\lambda^{n-2}}=\frac{\lambda^2}{(n-1)(n-2)} .

ここで Γ(n)=(n−1)Γ(n−1)=(n−1)(n−2)Γ(n−2)\Gamma(n)=(n-1)\Gamma(n-1)=(n-1)(n-2)\Gamma(n-2) を使った。n≥3n\ge3 は E[T−2]E[T^{-2}] の積分が収束するための条件である。したがって

E[1Xˉ]=nλn−1,V[1Xˉ]=n2{λ2(n−1)(n−2)−λ2(n−1)2}=n2λ2(n−1)2(n−2).E\Bigl[\frac1{\bar X}\Bigr]=\frac{n\lambda}{n-1},\qquad V\Bigl[\frac1{\bar X}\Bigr]=n^2\Bigl\{\frac{\lambda^2}{(n-1)(n-2)}-\frac{\lambda^2}{(n-1)^2}\Bigr\}=\frac{n^2\lambda^2}{(n-1)^2(n-2)} . 3. E[c/Xˉ]=cnλ/(n−1)=λE[c/\bar X]=cn\lambda/(n-1)=\lambda より c=(n−1)/nc=(n-1)/n。不偏推定量は (n−1)/(nXˉ)=(n−1)/T(n-1)/(n\bar X)=(n-1)/T である。

1/Xˉ1/\bar X は第6章で求める λ\lambda の最尤推定量であり、この計算はそれが上向きに偏ることを示している。偏りは λ/(n−1)\lambda/(n-1) で、n→∞n\to\infty で0になる。

確認テスト

オリジナル

  1. 5.1-1 X1,…,XnX_1,\dots,X_n を N(μ,σ2)\mathrm{N}(\mu,\sigma^2) からの無作為標本とする。μ\mu は未知、σ2\sigma^2 は既知とする。(a) ∑(Xi−Xˉ)2/σ2\sum(X_i-\bar X)^2/\sigma^2、(b) n(Xˉ−μ)/σ\sqrt n(\bar X-\mu)/\sigma のそれぞれが統計量かどうかを答えよ。
  2. 5.1-2 X1,…,X4X_1,\dots,X_4 を Po(0.5)\mathrm{Po}(0.5) からの無作為標本とする。P(Xˉ≤1/4)P(\bar X\le 1/4) を求めよ。
  3. 5.1-3 分散 σ2<∞\sigma^2<\infty の分布からの無作為標本を考える。各 ii について Cov(Xˉ, Xi−Xˉ)=0\mathrm{Cov}(\bar X,\,X_i-\bar X)=0 を示せ。
  4. 5.1-4 X1,…,XnX_1,\dots,X_n を一様分布 U(0,θ)\mathrm{U}(0,\theta) からの無作為標本とする。2Xˉ2\bar X が θ\theta の不偏推定量であることを示し、その分散を求めよ。
  5. 5.1-5 X1,…,XnX_1,\dots,X_n を成功確率 pp のベルヌーイ分布からの無作為標本とする。E[Xˉ(1−Xˉ)]E[\bar X(1-\bar X)] を求め、p(1−p)p(1-p) の不偏推定量を1つ作れ。

木下の勉強ステータス

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