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正規母集団からの代表的な標本分布

2026年10月15日19分で読めますAI生成教科書『資格試験』第5章 標本分布とその近似
目次
  1. カイ二乗分布
  2. と の独立性
  3. 分布
  4. 分布
  5. 確認テスト
  6. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

数理統計 第5章 §5.2 ★★★ χ²・t・F の密度の導出と、X̄ と S² の独立性。統計数理で導出そのものが問われる

この節の結果は、正規分布を仮定した推測(平均や分散の区間推定、tt 検定、FF 検定、回帰の検定)のすべてで使う。試験では「密度を導け」の形で問われるので、結果だけでなく導出の手順を再現できるようにする。

カイ二乗分布

定義 5.3(カイ二乗分布)

Z1,…,ZnZ_1,\dots,Z_n が独立に N(0,1)\mathrm{N}(0,1) に従うとする。このとき

W=Z12+⋯+Zn2W=Z_1^2+\cdots+Z_n^2

の分布を自由度 nn のカイ二乗分布と呼び、χn2\chi^2_n と書く。

定理 5.4(カイ二乗分布の密度)

χn2=Ga(n/2, 2)\chi^2_n=\mathrm{Ga}(n/2,\,2) であり、密度は

fn(w)=1Γ(n/2) 2n/2 wn/2−1e−w/2(w>0).(5.5)f_n(w)=\frac{1}{\Gamma(n/2)\,2^{n/2}}\,w^{n/2-1}\mathrm{e}^{-w/2}\qquad(w>0).\tag{5.5}

平均は nn、分散は 2n2n である。積率母関数は

M(t)=(1−2t)−n/2(t<1/2)M(t)=(1-2t)^{-n/2}\qquad(t<1/2)

である。

証明

まず n=1n=1 を変数変換で求める。Y=Z2Y=Z^2 とおくと、y>0y>0 で

P(Y≤y)=P(−y≤Z≤y)=2Φ(y)−1,P(Y\le y)=P(-\sqrt y\le Z\le\sqrt y)=2\Phi(\sqrt y)-1,

ここで Φ\Phi は N(0,1)\mathrm{N}(0,1) の分布関数である。yy で微分すると、ϕ\phi を標準正規の密度として

f1(y)=2ϕ(y)⋅12y=12π y−1/2e−y/2.f_1(y)=2\phi(\sqrt y)\cdot\frac{1}{2\sqrt y}=\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\,y^{-1/2}\mathrm{e}^{-y/2}.

Γ(1/2)=π\Gamma(1/2)=\sqrt\pi なので 2π=Γ(1/2)21/2\sqrt{2\pi}=\Gamma(1/2)2^{1/2} である。よってこれは Ga(1/2,2)\mathrm{Ga}(1/2,2) の密度に一致する。積率母関数は (5.1) から (1−2t)−1/2(1-2t)^{-1/2}。

一般の nn では、独立な和の積率母関数 (5.4) から MW(t)=(1−2t)−n/2M_W(t)=(1-2t)^{-n/2} となる。これは Ga(n/2,2)\mathrm{Ga}(n/2,2) の積率母関数である。よって一意性定理から W∼Ga(n/2,2)W\sim\mathrm{Ga}(n/2,2)。

密度は α=n/2\alpha=n/2、β=2\beta=2 をガンマ分布の密度に入れたものが (5.5) である。平均と分散は αβ=n\alpha\beta=n、αβ2=2n\alpha\beta^2=2n。

定義から直ちに、独立な2つのカイ二乗変数の和について次の再生性が成り立つ。

χm2+χn2=χm+n2.\chi^2_m+\chi^2_n=\chi^2_{m+n}.

図5.1 に密度の形を示す。自由度が大きくなると山は右へ移り、平均 nn・分散 2n2n の正規分布に近づく(中心極限定理、§5.3)。

図

図 5.1 カイ二乗分布 χn2\chi^2_n の密度 (5.5)。実線 n=2n=2(指数分布 Ex(1/2)\mathrm{Ex}(1/2))、破線 n=4n=4、点線 n=8n=8。n≥3n\ge3 では最頻値が n−2n-2 にある。

Xˉ\bar X と S2S^2 の独立性

正規母集団の標本分布論で最も大事な定理が次である。

定理 5.5(正規標本の Xˉ\bar X と S2S^2)

正規母集団からの無作為標本を考える。母集団分布を N(μ,σ2)\mathrm{N}(\mu,\sigma^2) とする。標本を X1,…,XnX_1,\dots,X_n とし、n≥2n\ge2 とする。このとき

  1. Xˉ∼N(μ,σ2/n)\bar X\sim\mathrm{N}(\mu,\sigma^2/n),
  2. (n−1)S2/σ2=∑i=1n(Xi−Xˉ)2/σ2∼χn−12(n-1)S^2/\sigma^2=\sum_{i=1}^n(X_i-\bar X)^2/\sigma^2\sim\chi^2_{n-1},
  3. Xˉ\bar X と S2S^2 は独立。
証明

標準化 Zi=(Xi−μ)/σZ_i=(X_i-\mu)/\sigma をする。Z1,…,ZnZ_1,\dots,Z_n は独立に N(0,1)\mathrm{N}(0,1) に従い、次が成り立つ。

Xˉ=μ+σZˉ,∑(Xi−Xˉ)2=σ2∑(Zi−Zˉ)2.\bar X=\mu+\sigma\bar Z,\qquad \sum(X_i-\bar X)^2=\sigma^2\sum(Z_i-\bar Z)^2 .

したがって ZZ について示せばよい。

大きさ n×nn\times n の直交行列 QQ を1つとる。ただし第1行は (1/n,…,1/n)(1/\sqrt n,\dots,1/\sqrt n) とする。具体的には Helmert 行列

Q=(1n1n1n⋯1n12⋅1−12⋅10⋯013⋅213⋅2−23⋅2⋯0⋮⋱⋮1n(n−1)⋯1n(n−1)−n−1n(n−1))Q=\begin{pmatrix} \frac{1}{\sqrt n}&\frac{1}{\sqrt n}&\frac{1}{\sqrt n}&\cdots&\frac{1}{\sqrt n}\\[2pt] \frac{1}{\sqrt{2\cdot1}}&-\frac{1}{\sqrt{2\cdot1}}&0&\cdots&0\\[2pt] \frac{1}{\sqrt{3\cdot2}}&\frac{1}{\sqrt{3\cdot2}}&-\frac{2}{\sqrt{3\cdot2}}&\cdots&0\\ \vdots&&&\ddots&\vdots\\ \frac{1}{\sqrt{n(n-1)}}&\cdots&&\frac{1}{\sqrt{n(n-1)}}&-\frac{n-1}{\sqrt{n(n-1)}} \end{pmatrix}

がそれである。第 kk 行(k≥2k\ge2)の成分は次のとおりである。

  • 最初の k−1k-1 成分は 1/k(k−1)1/\sqrt{k(k-1)}。
  • 第 kk 成分は −(k−1)/k(k−1)-(k-1)/\sqrt{k(k-1)}。
  • 残りは0。

各行の長さが1で、異なる行の内積が0になることは直接計算で確かめられる。

  • 第 kk 行の成分の和は0なので、第 kk 行は第1行と直交する。
  • k<lk<l とする。第 ll 行の最初の kk 成分は等しい。よってこの2行の内積は、第 kk 行の成分の和に比例して0になる。

Y=QZ\bm Y=Q\bm Z とおく。Z∼N(0,In)\bm Z\sim\mathrm{N}(\bm 0,I_n) なので、第4章の多変量正規分布の線形変換の結果から

Y∼N(0,QQ⊤)=N(0,In)\bm Y\sim\mathrm{N}(\bm 0,QQ^\top)=\mathrm{N}(\bm 0,I_n)

となる。すなわち Y1,…,YnY_1,\dots,Y_n は独立に N(0,1)\mathrm{N}(0,1) に従う。第1行の形から Y1=n ZˉY_1=\sqrt n\,\bar Z。また直交変換は長さを保つので ∑Yi2=∑Zi2\sum Y_i^2=\sum Z_i^2 であり、恒等式 (5.3) と合わせて

∑i=1n(Zi−Zˉ)2=∑i=1nZi2−nZˉ2=∑i=1nYi2−Y12=∑i=2nYi2.\sum_{i=1}^n(Z_i-\bar Z)^2=\sum_{i=1}^n Z_i^2-n\bar Z^2=\sum_{i=1}^n Y_i^2-Y_1^2=\sum_{i=2}^n Y_i^2 .

左辺は Y2,…,YnY_2,\dots,Y_n だけの関数である。一方 Zˉ=Y1/n\bar Z=Y_1/\sqrt n は Y1Y_1 だけの関数である。Y1Y_1 と (Y2,…,Yn)(Y_2,\dots,Y_n) は独立なので (3) が従う。

右辺は独立な n−1n-1 個の標準正規の平方和なので χn−12\chi^2_{n-1} に従い (2) が従う。(1) は Y1∼N(0,1)Y_1\sim\mathrm{N}(0,1) から出る。

自由度が n−1n-1 になる理由

偏差 Zi−ZˉZ_i-\bar Z は、和が0という1本の制約を満たす。そのため nn 個の偏差が自由に動ける方向は n−1n-1 個しかない。直交変換はこの事情を座標で見えるようにしたもので、Zˉ\bar Z の方向(第1軸)を切り離すと、残りの n−1n-1 本の軸の上に偏差がちょうど乗る。

正規分布は回転で形が変わらない(等方的)ので、どの軸の成分も独立な標準正規になる。この「回転不変性」は正規分布に固有の性質で、正規でない母集団では Xˉ\bar X と S2S^2 は一般に独立にならない。

tt 分布

定義 5.6(tt 分布)

独立な2つの確率変数を考える。一方は Z∼N(0,1)Z\sim\mathrm{N}(0,1)、他方は W∼χn2W\sim\chi^2_n とする。このとき

T=ZW/nT=\frac{Z}{\sqrt{W/n}}

の分布を自由度 nn の tt 分布と呼ぶ。記号では tnt_n と書く。

定理 5.7(tt 分布の密度)

tnt_n の密度は

f(t)=Γ(n+12)nπ Γ(n2)(1+t2n)−n+12(−∞<t<∞).(5.6)f(t)=\frac{\Gamma\bigl(\frac{n+1}{2}\bigr)}{\sqrt{n\pi}\,\Gamma\bigl(\frac n2\bigr)}\Bigl(1+\frac{t^2}{n}\Bigr)^{-\frac{n+1}{2}}\qquad(-\infty<t<\infty).\tag{5.6}

証明

W=wW=w で条件付ける。独立性から、条件付けても ZZ の分布は変わらない。よって T=Zn/wT=Z\sqrt{n/w} は N(0,n/w)\mathrm{N}(0,n/w) に従い、その条件付き密度は

wn ϕ(twn)\sqrt{\frac wn}\,\phi\Bigl(t\sqrt{\frac wn}\Bigr)

である。WW の密度 fn(w)f_n(w) で重みをつけて積分すると

f(t)=∫0∞fn(w)wn ϕ(twn)dw=1Γ(n/2)2n/22πn∫0∞wn+12−1exp⁡{−w2(1+t2n)}dw.f(t)=\int_0^\infty f_n(w)\sqrt{\frac wn}\,\phi\Bigl(t\sqrt{\frac wn}\Bigr)\mathrm{d} w =\frac{1}{\Gamma(n/2)2^{n/2}\sqrt{2\pi n}}\int_0^\infty w^{\frac{n+1}{2}-1}\exp\Bigl\{-\frac w2\Bigl(1+\frac{t^2}{n}\Bigr)\Bigr\}\mathrm{d} w .

積分はガンマ関数の形

∫0∞wa−1e−bwdw=Γ(a)ba\int_0^\infty w^{a-1}\mathrm{e}^{-bw}\mathrm{d} w=\frac{\Gamma(a)}{b^a}

で、a=(n+1)/2a=(n+1)/2、b=(1+t2/n)/2b=(1+t^2/n)/2 とおけば

Γ(n+12)2n+12(1+t2n)−n+12\Gamma\Bigl(\frac{n+1}{2}\Bigr)2^{\frac{n+1}{2}}\Bigl(1+\frac{t^2}{n}\Bigr)^{-\frac{n+1}{2}}

になる。定数をまとめると 2(n+1)/2/(2n/22πn)=1/nπ2^{(n+1)/2}/(2^{n/2}\sqrt{2\pi n})=1/\sqrt{n\pi} なので (5.6) を得る。

密度は tt について偶関数なので tnt_n は0について対称である。n→∞n\to\infty では

(1+t2n)−(n+1)/2→e−t2/2\Bigl(1+\frac{t^2}{n}\Bigr)^{-(n+1)/2}\to\mathrm{e}^{-t^2/2}

となり、標準正規分布に近づく。§5.3 の言葉では、W/n→1W/n\to1 に確率収束するので Slutsky の定理からも分かる。n=1n=1 はコーシー分布で、平均が存在しない。図5.2 に示すように、tt 分布は正規分布より裾が重い。

図

図 5.2 tt 分布の密度 (5.6) と標準正規分布の密度。実線 N(0,1)\mathrm{N}(0,1)、破線 t4t_4、点線 t1t_1(コーシー分布)。自由度が小さいほど中央が低く、裾が重い。

系 5.8(スチューデント化した平均)

N(μ,σ2)\mathrm{N}(\mu,\sigma^2) からの無作為標本について

n(Xˉ−μ)S∼tn−1.(5.7)\frac{\sqrt n(\bar X-\mu)}{S}\sim t_{n-1}.\tag{5.7}

証明

Z=n(Xˉ−μ)/σ∼N(0,1)Z=\sqrt n(\bar X-\mu)/\sigma\sim\mathrm{N}(0,1)、W=(n−1)S2/σ2∼χn−12W=(n-1)S^2/\sigma^2\sim\chi^2_{n-1} で、定理5.5 から両者は独立。Z/W/(n−1)=n(Xˉ−μ)/SZ/\sqrt{W/(n-1)}=\sqrt n(\bar X-\mu)/S で、σ\sigma が分母と分子で消える。

この量は σ\sigma を含まない。分布も μ\mu と σ\sigma によらないので、ピボットになっている。たとえば n=10n=10 なら t9(0.025)=2.262t_9(0.025)=2.262 で、

P(∣10(Xˉ−μ)/S∣≤2.262)=0.95P\bigl(|\sqrt{10}(\bar X-\mu)/S|\le2.262\bigr)=0.95

である。これを μ\mu について解いたものが第8章の信頼区間である。

同様に W=9S2/σ2∼χ92W=9S^2/\sigma^2\sim\chi^2_9 を考える。数表の値 χ92(0.975)=2.700\chi^2_9(0.975)=2.700 と χ92(0.025)=19.02\chi^2_9(0.025)=19.02 から

P(2.700≤9S2/σ2≤19.02)=0.95P(2.700\le 9S^2/\sigma^2\le19.02)=0.95

となり、σ2\sigma^2 の区間推定に使える。

FF 分布

定義 5.9(FF 分布)

独立な2つの確率変数を考える。一方は U∼χm2U\sim\chi^2_m、他方は V∼χn2V\sim\chi^2_n とする。このとき

F=U/mV/nF=\frac{U/m}{V/n}

の分布を自由度 (m,n)(m,n) の FF 分布と呼ぶ。記号では Fm,nF_{m,n} と書く。

定理 5.10(FF 分布の密度)

Fm,nF_{m,n} の密度は

f(x)=Γ(m+n2)Γ(m2)Γ(n2)(mn)m/2xm/2−1(1+mx/n)(m+n)/2(x>0).(5.8)f(x)=\frac{\Gamma\bigl(\frac{m+n}{2}\bigr)}{\Gamma\bigl(\frac m2\bigr)\Gamma\bigl(\frac n2\bigr)}\Bigl(\frac mn\Bigr)^{m/2} \frac{x^{m/2-1}}{(1+mx/n)^{(m+n)/2}}\qquad(x>0).\tag{5.8}

証明

tt 分布と同じく V=vV=v で条件付ける。このとき F=nU/(mv)F=nU/(mv) である。変数変換 U=(mv/n)FU=(mv/n)F により、条件付き密度は (mv/n)fm(mvx/n)(mv/n)f_m(mvx/n) になる。VV について積分すると

f(x)=∫0∞mvn⋅(mvx/n)m/2−1e−mvx/(2n)Γ(m/2)2m/2⋅vn/2−1e−v/2Γ(n/2)2n/2dv=(m/n)m/2xm/2−1Γ(m2)Γ(n2)2(m+n)/2∫0∞vm+n2−1e−v2(1+mxn)dv.f(x)=\int_0^\infty\frac{mv}{n}\cdot\frac{(mvx/n)^{m/2-1}\mathrm{e}^{-mvx/(2n)}}{\Gamma(m/2)2^{m/2}}\cdot\frac{v^{n/2-1}\mathrm{e}^{-v/2}}{\Gamma(n/2)2^{n/2}}\mathrm{d} v =\frac{(m/n)^{m/2}x^{m/2-1}}{\Gamma(\frac m2)\Gamma(\frac n2)2^{(m+n)/2}}\int_0^\infty v^{\frac{m+n}{2}-1}\mathrm{e}^{-\frac v2(1+\frac{mx}{n})}\mathrm{d} v .

最後の積分は Γ(m+n2)2(m+n)/2(1+mx/n)−(m+n)/2\Gamma\bigl(\frac{m+n}{2}\bigr)2^{(m+n)/2}(1+mx/n)^{-(m+n)/2} で、2(m+n)/22^{(m+n)/2} が消えて (5.8) を得る。

定義から、次の2つの性質がすぐ出る。

  1. tt 分布の2乗。T∼tnT\sim t_n なら T2=Z2/(W/n)T^2=Z^2/(W/n) である。Z2∼χ12Z^2\sim\chi^2_1 なので T2∼F1,nT^2\sim F_{1,n}。これから両側の点について tn(α/2)2=F1,n(α)t_n(\alpha/2)^2=F_{1,n}(\alpha)。
  2. 逆数。F∼Fm,nF\sim F_{m,n} なら 1/F∼Fn,m1/F\sim F_{n,m} なので、下側の点は上側の点で書ける。

Fm,n(1−α)=1Fn,m(α).(5.9)F_{m,n}(1-\alpha)=\frac{1}{F_{n,m}(\alpha)} .\tag{5.9}

数表には上側の点しか載っていないことが多いので、(5.9) は計算で頻繁に使う。

2つの正規母集団 N(μ1,σ12)\mathrm{N}(\mu_1,\sigma_1^2)、N(μ2,σ22)\mathrm{N}(\mu_2,\sigma_2^2) を考える。それぞれから独立に大きさ mm、nn の標本をとる。不偏分散を S12S_1^2、S22S_2^2 とすると、定理5.5 の (2) を両方に使って

S12/σ12S22/σ22∼Fm−1, n−1(5.10)\frac{S_1^2/\sigma_1^2}{S_2^2/\sigma_2^2}\sim F_{m-1,\,n-1}\tag{5.10}

となる。分散の比の検定と区間推定はこれに基づく。

例題 5.2 不偏分散の分散と標本標準偏差の偏り ★★★

オリジナルX1,…,XnX_1,\dots,X_n を N(μ,σ2)\mathrm{N}(\mu,\sigma^2) からの無作為標本とする。ただし n≥2n\ge2 とする。

  1. V[S2]V[S^2] を求めよ。
  2. E[S]E[S] を求めよ。
  3. n=10n=10 のとき E[S]/σE[S]/\sigma の値を小数第4位まで求めよ。また、SS が σ\sigma の不偏推定量でないことを確かめよ。
解答

k=n−1k=n-1 とおく。W=kS2/σ2W=kS^2/\sigma^2 とおくと、定理5.5 より W∼χk2W\sim\chi^2_k。

  1. S2=σ2W/kS^2=\sigma^2W/k で V[W]=2kV[W]=2k なので

V[S2]=σ4⋅2kk2=2σ4n−1.V[S^2]=\sigma^4\cdot\frac{2k}{k^2}=\frac{2\sigma^4}{n-1}. 2. S=σW/kS=\sigma\sqrt{W/k} なので E[W]E[\sqrt W] を求めればよい。密度 (5.5) で積分すると

E[W]=1Γ(k/2)2k/2∫0∞wk+12−1e−w/2dw=Γ(k+12)2(k+1)/2Γ(k/2)2k/2=2 Γ(k+12)Γ(k2).E[\sqrt W]=\frac{1}{\Gamma(k/2)2^{k/2}}\int_0^\infty w^{\frac{k+1}{2}-1}\mathrm{e}^{-w/2}\mathrm{d} w =\frac{\Gamma\bigl(\frac{k+1}{2}\bigr)2^{(k+1)/2}}{\Gamma(k/2)2^{k/2}}=\sqrt2\,\frac{\Gamma\bigl(\frac{k+1}{2}\bigr)}{\Gamma\bigl(\frac k2\bigr)}.

k=n−1k=n-1 を戻して

E[S]=σ2n−1  Γ(n/2)Γ((n−1)/2).E[S]=\sigma\sqrt{\frac{2}{n-1}}\;\frac{\Gamma(n/2)}{\Gamma((n-1)/2)} . 3. n=10n=10 では次のようになる。

Γ(5)=24,Γ(4.5)=72⋅52⋅32⋅12π=10516π≈11.632,E[S]/σ=2/9×24/11.632≈0.9727.\begin{aligned}\Gamma(5)&=24,\\ \Gamma(4.5)&=\frac72\cdot\frac52\cdot\frac32\cdot\frac12\sqrt\pi=\frac{105}{16}\sqrt\pi\approx11.632,\\ E[S]/\sigma&=\sqrt{2/9}\times24/11.632\approx0.9727.\end{aligned}

この値は1より小さいので、SS は σ\sigma を平均的に小さく見積もる。これは ⋅\sqrt{\cdot} が凹関数で、Jensen の不等式 E[S2]≤E[S2]=σE[\sqrt{S^2}]\le\sqrt{E[S^2]}=\sigma が成り立つことと整合する。

例題 5.3 2標本のプールした tt 統計量 ★★★

オリジナル2つの正規母集団から独立に標本をとる(分散は共通で未知)。一方の標本 X1,…,XmX_1,\dots,X_m は N(μ1,σ2)\mathrm{N}(\mu_1,\sigma^2) からとる。他方の標本 Y1,…,YnY_1,\dots,Y_n は N(μ2,σ2)\mathrm{N}(\mu_2,\sigma^2) からとる。不偏分散を S12S_1^2、S22S_2^2 とし、次の量をおく。

Sp2=(m−1)S12+(n−1)S22m+n−2S_p^2=\frac{(m-1)S_1^2+(n-1)S_2^2}{m+n-2}

このとき

T=Xˉ−Yˉ−(μ1−μ2)Sp1/m+1/nT=\frac{\bar X-\bar Y-(\mu_1-\mu_2)}{S_p\sqrt{1/m+1/n}}

が tm+n−2t_{m+n-2} に従うことを示せ。

解答

分子について。Xˉ∼N(μ1,σ2/m)\bar X\sim\mathrm{N}(\mu_1,\sigma^2/m) と Yˉ∼N(μ2,σ2/n)\bar Y\sim\mathrm{N}(\mu_2,\sigma^2/n) は独立である。正規分布の再生性から

Xˉ−Yˉ∼N(μ1−μ2, σ2(1/m+1/n))\bar X-\bar Y\sim\mathrm{N}\bigl(\mu_1-\mu_2,\ \sigma^2(1/m+1/n)\bigr)

となる。よって

Z=Xˉ−Yˉ−(μ1−μ2)σ1/m+1/n∼N(0,1).Z=\frac{\bar X-\bar Y-(\mu_1-\mu_2)}{\sigma\sqrt{1/m+1/n}}\sim\mathrm{N}(0,1).

分母について。定理5.5 より (m−1)S12/σ2∼χm−12(m-1)S_1^2/\sigma^2\sim\chi^2_{m-1}、(n−1)S22/σ2∼χn−12(n-1)S_2^2/\sigma^2\sim\chi^2_{n-1} で、2つの標本は独立なのでこの2つも独立。カイ二乗分布の再生性から

W=(m+n−2)Sp2σ2=(m−1)S12σ2+(n−1)S22σ2∼χm+n−22.W=\frac{(m+n-2)S_p^2}{\sigma^2}=\frac{(m-1)S_1^2}{\sigma^2}+\frac{(n-1)S_2^2}{\sigma^2}\sim\chi^2_{m+n-2}.

独立性について。次の3つが成り立つ。

  • 定理5.5 の (3) より、Xˉ\bar X と S12S_1^2 は独立である。
  • 同様に Yˉ\bar Y と S22S_2^2 も独立である。
  • XX の標本と YY の標本は独立である。

したがって (Xˉ,Yˉ)(\bar X,\bar Y) と (S12,S22)(S_1^2,S_2^2) は独立である。よって ZZ と WW は独立。

以上から Z/W/(m+n−2)∼tm+n−2Z/\sqrt{W/(m+n-2)}\sim t_{m+n-2} で、この比を計算すると σ\sigma が消えて

ZW/(m+n−2)=Xˉ−Yˉ−(μ1−μ2)σ1/m+1/n⋅σSp=T.\frac{Z}{\sqrt{W/(m+n-2)}}=\frac{\bar X-\bar Y-(\mu_1-\mu_2)}{\sigma\sqrt{1/m+1/n}}\cdot\frac{\sigma}{S_p}=T .

確認テスト

オリジナル

  1. 5.2-1 χn2\chi^2_n の積率母関数 (1−2t)−n/2(1-2t)^{-n/2} を2回微分する。これにより平均 nn と分散 2n2n を確かめよ。
  2. 5.2-2 T∼tnT\sim t_n とし、n>2n>2 とする。E[T]=0E[T]=0 と E[T2]=n/(n−2)E[T^2]=n/(n-2) を示せ。
  3. 5.2-3 N(μ,σ2)\mathrm{N}(\mu,\sigma^2)(ともに未知)からの大きさ16の標本を考える。P(∣Xˉ−μ∣≤cS)=0.95P(|\bar X-\mu|\le cS)=0.95 となる定数 cc を求めよ。t15(0.025)=2.131t_{15}(0.025)=2.131 を使ってよい。
  4. 5.2-4 F∼Fm,nF\sim F_{m,n} とする。B=mF/(n+mF)B=mF/(n+mF) がベータ分布 Beta(m/2,n/2)\mathrm{Beta}(m/2,n/2) に従うことを示せ。
  5. 5.2-5 F10,5(0.05)=4.735F_{10,5}(0.05)=4.735 である。F5,10(0.95)F_{5,10}(0.95) を求めよ。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

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