数理統計 第6章 §6.6
6.1 統計的推測
- 6.1-1 同時確率関数はfn(x;λ)=∏xi!λxie−λ=λ∑xie−nλ⋅∏xi!1。合計を t=∑xi とする。g(t;λ)=λte−nλ と h(x)=1/∏xi! とおく。これは分解定理の形なので、∑Xi は十分統計量である。
- 6.1-2 t=0 なら P(X1=1∣T=0)=0 である。t≥1 のときは、残りの和を R=∑i≥2Xi とおく。1回目が成功したもとでは、条件 T=t は条件 R=t−1 と同じである。R∼Bin(n−1,p) と X1 は独立だから
P(X1=1∣T=t)=(tn)pt(1−p)n−tp⋅(t−1n−1)pt−1(1−p)n−t=(tn)(t−1n−1)=nt.
t=0 の場合も t/n=0 と一致する。いずれも p を含まない。3. 6.1-3 同時密度は
fn(x;α,β)=Γ(α)nβnα1(∏xi)α−1exp(−β1∑xi)=Γ(α)nβnα1exp((α−1)∑logxi−β1∑xi).
(a) 2つのパラメータがともに未知なら、パラメータを含む因子は (∑xi,∑logxi) を通してデータに依存する。よって (∑Xi,∑logXi) が十分統計量である(対数の和の代わりに積 ∏Xi でもよい)。(b) 形のパラメータが既知なら、因子 (∏xi)α−1/Γ(α)n を h に入れられる。よって ∑Xi だけで十分である。4. 6.1-4 0<t<θ について P(X(n)≤t)=P(すべての Xi≤t)=(t/θ)n。微分して、密度はfT(t)=θnntn−1(0<t<θ)。5. 6.1-5 fn(x;θ)=g(T(x);θ)h(x) とする。U=ψ(T) とおくと T=ψ−1(U) である。そこで
g~(u;θ)=g(ψ−1(u);θ)と定めればfn(x;θ)=g~(U(x);θ)h(x)
となる。分解定理から U は十分統計量である。(正規分布で (∑Xi,∑Xi2) から (Xˉ,S2) へ移れたのはこの性質による。)
6.2 点推定量の導出方法
- 6.2-1 対数尤度と導関数は
ℓ(λ)=(∑xi)logλ−nλ−∑logxi!,ℓ′(λ)=λ∑xi−n
である。合計で場合を分ける。
- 合計が正のとき:導関数は λ=xˉ で 0 になり、その前後で正から負へ変わる。よって λ^=xˉ である。
- 合計が 0 のとき:ℓ(λ)=−nλ は正の範囲で単調減少し、λ→0 で上限をとる。パラメータ空間を λ≥0 に広げれば、λ^=0=xˉ である。
どちらの場合も λ^=Xˉ と書ける。P(X1=0)=e−λ はパラメータの1対1の関数である。不変性(定理 6.6)から、最尤推定量は e−Xˉ である。2. 6.2-2 L(p)=pn(1−p)∑xi−n、ℓ(p)=nlogp+(∑xi−n)log(1−p)。尤度方程式を解く。
ℓ′(p)=pn−1−p∑xi−n=0⟺n(1−p)=p(∑xi−n)⟺p=∑xin=xˉ1
ℓ′′(p)=−n/p2−(∑xi−n)/(1−p)2<0 なので最大点である。よって p^=1/Xˉ。(すべての xi=1 のときは p^=1 で、境界での最大になる。)3. 6.2-3 ℓ(θ)=−nlog2−∑∣xi−θ∣ である。よって最尤推定量は、次の Q を最小にする点である。
Q(θ)=∑∣xi−θ∣
Q は連続な折れ線で、観測値でない点では
Q′(θ)=#{i:xi<θ}−#{i:xi>θ}
である。n=2m+1 とし、順序統計量 x(1)≤⋯≤x(n) を使って場合を分ける。
- θ<x(m+1) では、左にある観測値は m 個以下である。よって Q′≤m−(m+1)<0。
- θ>x(m+1) では、左にある観測値は m+1 個以上である。よって Q′≥(m+1)−m>0。
したがって Q は x(m+1) まで減少し、そこから増加する。最小点は標本中央値 θ^=X(m+1) である。4. 6.2-4 (a) 対数尤度は ℓ(λ)=nlogλ−λ∑xi である。尤度方程式 n/λ−∑xi=0 から λ^=1/Xˉ を得る。2階導関数 −n/λ2 は負なので、これは最大点である。 (b) E[X2]=V[X]+E[X]2=1/λ2+1/λ2=2/λ2。2/λ2=m2′=n1∑Xi2 を解いて λ~=2/m2′。 1次の積率を使うと最尤推定量と同じ 1/Xˉ になるが、2次の積率を使うと別の推定量になる。積率法の答えは使う積率の選び方に依存する。5. 6.2-5 L(θ)=∏1{θ≤xi≤θ+1}=1{θ≤x(1)}1{x(n)−1≤θ}。尤度は閉区間 [x(n)−1, x(1)] の上で 1、それ以外で 0 である。よって、この閉区間の点はすべて最尤推定値である。データは幅 1 の台の中にあるので、x(n)−x(1)≤1 であり、区間は空でない。最尤推定値は一意とは限らない。たとえば中点 21(X(1)+X(n))−21 を選ぶのが自然である。
6.3 推定量の評価
- 6.3-1 logf(x;p)=xlogp+(1−x)log(1−p)、∂p2∂2logf=−p2x−(1−p)21−x。E[X]=p を入れて符号を変えると I(p)=p1+1−p1=p(1−p)1。Xˉ は不偏で V[Xˉ]=p(1−p)/n=1/(nI(p)) なので、下限を達成し、有効推定量である。
- 6.3-2 logf=−21log(2πv)−2v(x−μ)2、∂v2∂2logf=2v21−v3(x−μ)2。E[(X−μ)2]=v から I(v)=−2v21+v3v=2v21。下限は 1/(nI(v))=2v2/n=2σ4/n。一方 E[v^]=v である。(Xi−μ)2/v∼χ12 の分散は 2 なので
V[v^]=n21⋅n⋅2v2=n2σ4
である。下限に一致するので有効推定量である。3. 6.3-3 (a) 6.1-4 の密度からE[X(n)]=∫0θtθnntn−1dt=n+1nθ、E[X(n)2]=n+2nθ2。よって E[θ1]=θ で不偏である。分散は
V[X(n)]V[θ1]=n+2nθ2−(n+1)2n2θ2=(n+1)2(n+2)nθ2,=n2(n+1)2V[X(n)]=n(n+2)θ2
である。
(b) V[Xi]=θ2/12 より V[θ2]=4⋅12nθ2=3nθ2。E[θ2]=θ で不偏。分散の比は V[θ1]/V[θ2]=3/(n+2) で、n≥2 なら 1 より小さい。n=1 では θ1=θ2=2X1 で一致する。4. 6.3-4 (a) 対数密度とその導関数は
logf=logλ−λx,s=λ1−x,∂λ2∂2logf=−λ21
である。2通りの式で計算すると一致する。
I=E[(λ1−X)2]=V[X]=λ21,I=−E[−λ21]=λ21
(b) 定理 6.14 から n(λ^−λ)dN(0,λ2)。デルタ法でも同じ分散を得る。n(Xˉ−1/λ)→N(0,1/λ2) に g(u)=1/u を使う。g′(1/λ)2=λ4 なので、分散は λ4/λ2=λ2 である。
(c) U=∑Xi∼Ga(n,1/λ) である。例題 6.5 (2) と同じ計算から
E[U−1]=n−1λ,E[U−2]=(n−1)(n−2)λ2
である。よって
E[λ∗]=λ,V[λ∗]=(n−1)2(n−1)(n−2)λ2−λ2=n−2λ2
である。下限は 1/(nI)=λ2/n なので、分散は下限より大きい。比 n/(n−2) は、n→∞ で 1 に近づく。5. 6.3-5 E[S2]=σ2 なので偏りは 0 である。(n−1)S2/σ2∼χn−12 の分散は 2(n−1) なので
V[S2]=(n−1)2σ4⋅2(n−1)=n−12σ4
である。よって MSE(S2)=2σ4/(n−1)→0 で、命題 6.10 から一致推定量である。
6.4 発展的事項
- 6.4-1 対数比は
logf(z)g(z)=2σ2(z−μ2)2−(z−μ1)2
である。Z∼g のとき
E[(Z−μ1)2]=σ2,E[(Z−μ2)2]=σ2+(μ1−μ2)2
なので、D(g∥f)=2σ2(μ1−μ2)2 である。2. 6.4-2 対数密度は logf=−21log(2π)−logσ−2σ2(x−μ)2 である。2階偏導関数は
∂μ2∂2logf=−σ21,∂μ∂σ∂2logf=−σ32(x−μ),∂σ2∂2logf=σ21−σ43(x−μ)2
である。期待値を取り符号を変えると、σ 成分は −σ21+σ23=σ22 となる。よって
I(μ,σ)=diag(σ21,σ22)
であり、σ^ML の漸近分散は n1(I−1)22=2nσ2 である。デルタ法では g(v)=v とおく。導関数 g′(v)=2v1=2σ1 と、最尤推定量の漸近分散 2σ4/n から
4σ21⋅n2σ4=2nσ2
を得る。2つは一致する。3. 6.4-3 モデル1では λ^=4、モデル2では λ^A=3.6, λ^B=4.4 である。 ℓ2−ℓ1=36log3.6+44log4.4−80log4=46.114+65.191−110.904=0.401。AIC1−AIC2=2×0.401−2=−1.20<0 なので、AIC が小さいモデル1(共通の平均)が選ばれる。最大対数尤度の増分 0.40 が罰則の増分 1 より小さい。4. 6.4-4 モデル0の最大対数尤度は 100log21、モデル1は xlog100x+(100−x)log100100−x。モデル1が選ばれる条件は −2ℓ1+2<−2ℓ0、すなわち d(x)=ℓ1−ℓ0>1。(a) x=60 のとき
d=60log0.6+40log0.4−100log0.5=−67.301+69.315=2.014>1
で、モデル1が選ばれる(AIC0=138.63, AIC1=136.60)。(b) d(x) は x>50 で増加する。d(57)=0.983, d(58)=1.286 なので、最小の x は 58 である。5. 6.4-5 Wn=n(θ^−θ0) とおくと WndNk(0,I−1)。I は正定値対称なので、対称な平方根 I1/2 がある。線形変換は連続なので Zn=I1/2WndNk(0,I1/2I−1I1/2)=Nk(0,Ek)。ここで nδ⊤Iδ=Wn⊤IWn=∥Zn∥2 である。写像 z↦∥z∥2 も連続である。連続写像定理により、∥Zn∥2 は独立な標準正規変数の2乗和、すなわち χk2 に分布収束する。
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