数理統計 第7章 §7.4 ★★ Pearson の χ2 統計量とその自由度。分割表の独立性の検定を含む
多項分布と Pearson の χ2 統計量
n 個の観測を k 個のカテゴリに分類する。カテゴリ j に入った個数を Nj とする(合計は観測数に等しい)。各観測が独立にカテゴリ j に確率 pj で入るなら、度数の組は多項分布に従う。その平均・分散・共分散は次のとおりである。
E[Nj]=npj,V[Nj]=npj(1−pj),Cov(Ni,Nj)=−npipj(i=j).
単純仮説 H0:pj=pj0(j=1,…,k)を検定したい。観測度数 Nj と期待度数 npj0 のずれをまとめた
X2=j=1∑knpj0(Nj−npj0)2(7.12)
を使う。これを Pearson の χ2 統計量と呼ぶ。
定理 7.9(Pearson の χ2 統計量の極限分布 ★★★)
帰無仮説のもとで、n→∞ のとき次が成り立つ。
X2 d χk−12.
証明
記号を簡単にするため、pj0 を pj と略す。証明は3段に分かれる。
- 度数ベクトルの漸近正規性。N=(N1,…,Nk)⊤ は、各観測のカテゴリを表す独立な指示ベクトル e(i) の和である。指示ベクトルの第 j 成分は、観測 i がそのカテゴリに入れば 1、入らなければ 0 である。その平均と共分散行列は
p=(p1,…,pk)⊤,Σ=diag(p)−pp⊤.
多次元の中心極限定理により (N−np)/ndNk(0,Σ)。2. 標準化。次のようにおく。
D=diag(p1−1/2,…,pk−1/2),Zn=nD(N−np).
成分は Zn,j=(Nj−npj)/npj なので、X2=∥Zn∥2 である。極限は ZndNk(0,DΣD) で、u=(p1,…,pk)⊤ とおくと
DΣD=Ddiag(p)D−Dpp⊤D=Ik−uu⊤.
3. 射影の2乗ノルム。∥u∥2=∑pj=1 なので、A=Ik−uu⊤ は直交射影である。射影先は u に直交する k−1 次元部分空間で、次が成り立つ。
A⊤=A,A2=A,rankA=k−1.
W∼Nk(0,Ik) をとる。AIkA⊤=A より AW∼Nk(0,A) である。
射影 A を直交行列で対角化すると、固有値は 1 が k−1 個、0 が1個である。よって ∥AW∥2=W⊤AW は、独立な標準正規 k−1 個の2乗和である。すなわち自由度 k−1 のカイ二乗分布に従う。
連続写像定理から X2=∥Zn∥2dχk−12。
自由度がカテゴリ数 k でなく k−1 になる理由は、ずれの和が 0 に縛られているからである。この制約のため、k 個のずれのうち自由に動けるのは k−1 個だけになる。
近似の目安として、期待度数がどのカテゴリでも 5 程度以上あることが求められる。足りなければ隣のカテゴリとまとめる。
尤度比統計量 G2 との関係
同じ帰無仮説の尤度比検定を作る。全体での最尤推定量は p^j=Nj/n なので
G2=−2logΛ=2j=1∑kNjlognpj0Nj(7.13)
となる。Wilks の定理からも χk−12 が得られる。全体のパラメータは ∑pj=1 の制約で k−1 次元、帰無仮説は0次元だからである。
Pearson の統計量との関係を見るため、Ej=npj0 とおき、Nj=Ej+dj と書く。対数を次のように展開する。
log(1+Ejdj)=Ejdj−2Ej2dj2+⋯
これを代入すると
G2=2j∑(Ej+dj)(Ejdj−2Ej2dj2+⋯)=2j∑dj+j∑Ejdj2+⋯
となる。ずれの和は ∑jdj=0 なので、G2=X2+(高次の項) である。ずれ dj は n の大きさで、期待度数は標本の大きさに比例する。よって高次の項は n→∞ で 0 に確率収束し、2つの統計量は漸近同等になる。
母数を推定する場合と分割表
帰無仮説が次の形の複合仮説である場合を考える。
H0: pj=pj(η)(η は未知の s 次元パラメータ).
このときは η を最尤法で推定し、期待度数を npj(η^) として統計量を作る。極限分布は χk−1−s2 になる。Wilks の定理で、全体が k−1 次元、帰無仮説が s 次元だからである。
この結果は、パラメータを分類後の度数から最尤推定した場合のものである。元の生データから推定した場合は、極限分布が χk−1−s2 と χk−12 の間に来る。実務では生データの推定値で k−1−s を使うことが多い。
分割表の独立性の検定はこの代表例である。2つの属性で a×b 個のセルに分類し、記号を次のように置く。
- セル (i,j) の度数を Nij とする。
- 行和を Ni⋅、列和を N⋅j とする。
独立性の仮説は H0:pij=pi⋅p⋅j である。このもとでの最尤推定量は
p^i⋅=Ni⋅/n,p^⋅j=N⋅j/n
なので、期待度数と統計量は
E^ij=np^i⋅p^⋅j=nNi⋅N⋅j,X2=i,j∑E^ij(Nij−E^ij)2.
自由度は、全体 ab−1 から推定したパラメータ (a−1)+(b−1) を引いて
ab−1−(a−1)−(b−1)=(a−1)(b−1)
となる。
例題 7.6 分離比 9:3:3:1 の適合度検定 ★★
オリジナルある交配実験で 160 個体を4つの表現型に分類し、度数 98, 28, 25, 9 を得た。理論上の分離比 9:3:3:1 に従うという仮説を、Pearson の X2 と G2 の両方で有意水準 0.05 で検定せよ。
解答
帰無仮説のもとでの期待度数は
160×(9,3,3,1)/16=(90, 30, 30, 10).
X2=9082+30(−2)2+30(−5)2+10(−1)2=0.7111+0.1333+0.8333+0.1000=1.778.
G2=2(98log9098+28log3028+25log3025+9log109)=1.815.
帰無仮説は単純仮説なので、自由度は k−1=3 である。棄却限界 χ32(0.05)=7.815 をどちらも下回るので、帰無仮説は棄却しない。2つの統計量の値は近く、上の展開のとおりである。
例題 7.7 2×3 分割表の独立性の検定 ★★
オリジナル2つの群 A、B の 140 人に3択の質問をして、次の度数を得た。回答の分布が群によらない(独立である)という仮説を有意水準 0.05 で検定せよ。
| 選択肢1 | 選択肢2 | 選択肢3 | 計 |
| A | 30 | 20 | 10 | 60 |
| B | 20 | 30 | 30 | 80 |
| 計 | 50 | 50 | 40 | 140 |
解答
期待度数 E^ij=Ni⋅N⋅j/140 は、行ごとに次のとおりである。
A 行B 行: 60×(50,50,40)/140=(21.43, 21.43, 17.14),: 80×(50,50,40)/140=(28.57, 28.57, 22.86).
X2=21.438.5712+21.431.4292+17.147.1432+28.578.5712+28.571.4292+22.867.1432=3.429+0.095+2.976+2.571+0.071+2.232=11.375.
自由度は (2−1)(3−1)=2 である。棄却限界 χ22(0.05)=5.991 を上回るので、独立性の仮説を棄却する(p 値は約 0.0034)。
偏差 Nij−E^ij は、行ごとに和が 0、列ごとにも和が 0 になっている。自由に決められる偏差が 2 個だけであることが、自由度 2 の意味である。
確認テスト
オリジナル
7.4-1 次の2つの検定のそれぞれで、Pearson の統計量の自由度を答えよ。
- (a) 3×4 分割表の独立性の検定。
- (b) 6 つのカテゴリに分けた度数にポアソン分布を当てはめ、λ を推定する適合度検定。
7.4-2 2×2 分割表の度数を (acbd) とする。総数を n=a+b+c+d とする。独立性の検定の統計量が
X2=(a+b)(c+d)(a+c)(b+d)n(ad−bc)2
と書けることを示せ。また次の度数のときの値を求めて、有意水準 0.05 で判定せよ。
a=20,b=10,c=15,d=25.
3. 7.4-3 100 個の観測を値で分類したところ、0 が 30 個、1 が 40 個、2 が 20 個、3 以上が 10 個(その 10 個の合計は 40)であった。ポアソン分布への当てはまりを、λ を標本平均で推定して有意水準 0.05 で検定せよ。4. 7.4-4 カテゴリが2つのとき、Pearson の X2 は二項分布 N1∼Bin(n,p0) の標準化の2乗に等しいことを示せ。標準化とは次の量である。
Z=np0(1−p0)N1−np0.
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com