場の量子論入門 第2部 第2章 §2.2.3 ★★★ 統計が交換関係の帰結として出る。対称化を手で課さない。
n 個の生成演算子を掛ければ n 粒子状態が作れる:
∣p1p2⋯pn⟩=2Ep1⋯2Epn ap1†ap2†⋯apn†∣0⟩.
エネルギーは ∑iEpi、運動量は ∑ipi である。すべての粒子数の状態を束ねた空間
F=H0⊕H1⊕H2⊕⋯
を Fock 空間と呼ぶ(Hn は n 粒子部分空間、H0 は真空だけの1次元空間)。
ここで決定的に重要なのは、式(2.1.7) の [ap†,aq†]=0 である。これは ap†aq†∣0⟩=aq†ap†∣0⟩、すなわち
∣pq⟩=∣qp⟩
を意味する。2つの粒子を入れ替えても状態が変わらない、つまり Bose 統計である。『量子力学入門』第9部 第1章では、同種ボゾンの波動関数の対称性は「対称化の要請」という追加の公理として手で課すものだった。ここでは正準交換関係(2.1.1) を出発点として計算しただけで、対称性が定理として出てくる。同時に、同種粒子が区別できない理由もはっきりする。すべての粒子は同一の場 ϕ の励起であって、個体としてのラベルを最初から持っていないからである。
反対称な統計(Fermi 統計)を得るには、交換子ではなく反交換子で量子化する必要がある。スカラー場でそれをやると(第1章の計算をなぞれば分かるように)ハミルトニアンが下に有界でなくなる。逆にスピン 1/2 の場を交換子で量子化しても破綻する。この対応が スピン統計定理で、第4部 第3章で扱う。
粒子数演算子は
N=∫(2π)3d3p ap†ap
であり、N∣p1⋯pn⟩=n∣p1⋯pn⟩ を満たす。自由場では [N,H]=0 であり、粒子数は保存する。これは H がa†a という「1個消して1個作る」形の項しか含まないからである。相互作用(たとえば ϕ4 項)を入れると a†a†a†a のような項が現れ、粒子数は保存しなくなる。粒子数が変わる過程を記述できることこそが、1粒子量子力学に対する場の量子論の本質的な利点であった。
例題 2.2(2粒子状態の内積)
オリジナル⟨p1p2∣q1q2⟩ を計算し、q1↔q2 の入れ替えについて対称になることを確かめよ。
解答
∣q1q2⟩=4Eq1Eq2aq1†aq2†∣0⟩、⟨p1p2∣=4Ep1Ep2⟨0∣ap2ap1 である。中身の真空期待値を、消滅演算子を右へ通しながら計算する。まず
ap1aq1†aq2†∣0⟩=(2π)3δ3(p1−q1)aq2†∣0⟩+(2π)3δ3(p1−q2)aq1†∣0⟩
(ap1 を1つずつ通すたびに交換子が δ3 を残し、最後に ap1∣0⟩=0)。続いて ap2 を作用させ ⟨0∣ と内積を取ると
⟨0∣ap2ap1aq1†aq2†∣0⟩=(2π)6[δ3(p1−q1)δ3(p2−q2)+δ3(p1−q2)δ3(p2−q1)].
規格化因子を掛け戻し、δ3 の上でエネルギーを合わせると
⟨p1p2∣q1q2⟩=(2π)6[2Ep1δ3(p1−q1)⋅2Ep2δ3(p2−q2)+2Ep1δ3(p1−q2)⋅2Ep2δ3(p2−q1)].
2項の和は q1↔q2 で入れ替わるだけなので全体は対称であり、Bose 統計と整合する。第1項が「そのまま対応する」寄与、第2項が「入れ替えて対応する」寄与で、第二量子化の内積公式(永久行列式)の2粒子版になっている。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com