物理のための微分幾何入門 第7章 §7.3 ★★★ Weingarten 写像の行列式が Gauss 曲率、跡の半分が平均曲率。Gauss 曲率は法線の像の面積比でもある
Weingarten 写像
Euler の公式の証明に出てきた写像 S は、法線の微分で直接書ける。単位法線は長さ1なので、n⋅n=1 を微分すると nu⋅n=nv⋅n=0 になる。つまり nu と nv は接平面に入る。
定義 7.11(Weingarten 写像)
接平面のベクトル X=aru+brv に対して
S(X)=−(anu+bnv)(7.17)
と定める。S は X の方向に動いたときの法線の変化に負号をつけたもので、接平面から接平面への線形写像である。これをWeingarten 写像(形作用素)と呼ぶ。
命題 7.12(Weingarten 写像の行列)
すべての接ベクトル X,Y について I(SX,Y)=II(X,Y) が成り立つ。座標基底 ru,rv に関する Weingarten 写像の行列を W とすると
W=g−1h=EG−F21(G−F−FE)(LMMN)(7.18)
である。
証明
(7.12) により
I(Sru,ru)=−nu⋅ru=L,I(Sru,rv)=−nu⋅rv=M
であり、Srv についても同様に M,N が出る。両辺とも X,Y について双線形なので、基底で一致すればすべての X,Y で一致する。
次に Sri=Wkirk と書く(r1=ru,r2=rv)。rj との内積をとると、いま示した式から
Wkigkj=hij
となる。行列で書けば gW=h であり、両辺に左から g−1 を掛けて (7.18) を得る。
命題により、S は Euler の公式の証明に使った写像と同じものである。したがって S の固有値が主曲率 κ1,κ2、固有ベクトルが主方向になる。S は内積 I について対称なので、固有値は実数で、主曲率が異なれば主方向は直交する。
Gauss 曲率と平均曲率
定義 7.13(Gauss 曲率と平均曲率)
Weingarten 写像の行列式と跡の半分を
K=detS=κ1κ2,H=21trS=21(κ1+κ2)(7.19)
と書き、K をGauss 曲率、H を平均曲率と呼ぶ。
命題 7.14(基本形式の係数による表示)
K=EG−F2LN−M2,H=2(EG−F2)EN−2FM+GL.(7.20)
主曲率は2次方程式 κ2−2Hκ+K=0 の2解で、κ1,2=H±H2−K である。
証明
(7.18) から detW=deth/detg=(LN−M2)/(EG−F2) である。行列の積の対角成分は GL−FM と EN−FM である。跡はこの和を EG−F2 で割ったものになる。主曲率は W の固有値なので、特性多項式 κ2−(trW)κ+detW の根である。
法線を反転すると h の符号が変わるので、行列 W も符号を変える。2次の行列では det(−W)=detW なので、K は法線の向きによらない。一方 H と主曲率は符号を変える。§7.5 で H を圧力差と結びつけるときは、法線の向きをはっきり決めてから使う。
命題 7.15(H2≥K)
各点で H2≥K が成り立ち、等号はその点が臍点であるときに限る。
証明
(7.19) から
H2−K=41(κ1+κ2)2−κ1κ2=41(κ1−κ2)2≥0
であり、等号は κ1=κ2 のときに限る。
Gauss 曲率の符号で、点の近くの曲面の形が分かれる。(7.16) を見ると、K>0 なら曲面は接平面の片側にあり、K<0 なら接平面をはさんで両側に出る。前者を楕円点、後者を双曲点と呼ぶ。K=0 で κ1,κ2 の一方だけが0の点を放物点と呼び、円柱の点がその例である。

図 7.4 原点での接平面(青)と曲面の位置関係。左は z=0.4(x2+y2) で、曲面は接平面の上側にある。右は z=0.4(x2−y2) で、曲面は接平面の上下に出る。
Gauss 写像と面積比
各点にその単位法線を対応させると、曲面から単位球面への写像ができる。これを Gauss 写像と呼ぶ。Gauss 曲率は、Gauss 写像が面積を何倍にするかという量でもある。
定理 7.16(Gauss 曲率は面積比 ★★)
曲面片の各点で
nu×nv=Kru×rv(7.21)
が成り立つ。点 p を含む小さな領域 U を縮めていくと、面積比はその点の Gauss 曲率に近づく。ここで面積比とは、法線の像 n(U) の向きつき面積を U の面積で割ったものである。
証明
W の成分を使うと、Weingarten 写像の定義から
nu=−(W11ru+W21rv),nv=−(W12ru+W22rv)
である。外積を展開すると、ru×ru=rv×rv=0 により
nu×nv=(W11W22−W21W12)ru×rv=detWru×rv
が残る。detW=K なので (7.21) を得る。
n(U) の向きつき面積は ∬U(nu×nv)⋅ndudv である。(7.21) を代入すると ∬UK∣ru×rv∣dudv になる。Gauss 曲率は連続なので、U を縮めると、この積分を面積で割ったものは K(p) に収束する。
K>0 の点の近くでは Gauss 写像は向きを保ち、K<0 の点の近くでは向きを反転する。例えば半径 R の球面では法線の像は単位球面そのもので、面積は 1/R2 倍になる。これは K=1/R2 と一致する。
例題 7.3 トーラスの曲率と Gauss 写像 ★★★
オリジナル例題 7.1 のトーラスについて答えよ。
- 単位法線と第二基本形式を求め、主曲率・Gauss 曲率・平均曲率を求めよ。
- K の符号で、楕円点・双曲点・放物点の位置を答えよ。
- トーラス全体での ∬KdA と ∬∣K∣dA を求め、Gauss 写像で読め。
解答
(1) ρ=R+rcosu とおく。外積は
ru×rv=−rρ(cosucosv,cosusinv,sinu)
なので、単位法線は n=−(cosucosv,cosusinv,sinu) で、管の中心線に向かう。2階の偏微分は
ruu=−r(cosucosv,cosusinv,sinu),ruv=rsinu(sinv,−cosv,0),rvv=−ρ(cosv,sinv,0)
である。法線との内積をとると L=r,M=0,N=ρcosu になる。
F=M=0 なので、W=diag(L/E,N/G) である。主方向は座標曲線の方向になる。主曲率は
κ1=EL=r1,κ2=GN=R+rcosucosu
で、
K=r(R+rcosu)cosu,H=2r(R+rcosu)R+2rcosu
となる。
(2) ρ>0 なので、Gauss 曲率の符号は cosu の符号に等しい。外側の半分 ∣u∣<π/2 は楕円点、内側の半分 π/2<u<3π/2 は双曲点である。u=±π/2 の上下の2つの円は放物点で、そこでは接平面が水平になる。
(3) 面積要素は dA=rρdudv なので KdA=cosududv である。1周の積分で ∬KdA=2π∫02πcosudu=0,∬∣K∣dA=2π∫02π∣cosu∣du=8π となる。外側の楕円点の部分は Gauss 写像で単位球面(面積 4π)を向きを保って1回覆う。内側の双曲点の部分は向きを反転して1回覆うので、向きつきの合計は0になる。
確認テスト
オリジナル
- 7.3-1 法線の向きを反転したとき、主曲率・K・H がそれぞれどう変わるかを答えよ。
- 7.3-2 放物面 z=21(x2+y2) を (x,y) で表し、法線を上向きにとる。一般の点での K と H を求めよ。
- 7.3-3 曲面 z=xy について、原点での主曲率と主方向を求めよ。さらに一般の点での Gauss 曲率を求めよ。
- 7.3-4 臍点だけからなる連結な曲面片は、平面か球面の一部であることを示せ(ヒント:nu=−λru,nv=−λrv から λ が定数であることを示す)。
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