確率論入門 第2章 §2.4 ★★ 右連続で単調な関数と、R 上の確率測度が一対一に対応する。分布関数を扱う章すべての出発点
Lebesgue–Stieltjes 測度
ここまでの3節の結果を組み合わせる。
定理 2.18(Lebesgue–Stieltjes 測度の存在と一意性 ★★★)
F:R→[0,1] が (2.4) の3条件を満たすとする。すなわち、単調非減少・右連続で、F(−∞)=0、F(+∞)=1 である。このとき (R,B(R)) の上の確率測度 PF で
PF((a,b])=F(b)−F(a)(−∞<a<b<∞)(2.12)
を満たすものがただ1つ存在する。さらに PF((−∞,x])=F(x) である。
証明
存在。定理 2.6 から、μF は SR の上で可算加法的である。補題 2.5 により、集合代数 A0 の上の前測度に延長され、μF(R)=1 となる。
Carathéodory の拡張定理 2.11 により、これは σ(A0) の上の確率測度 PF に延長される。補題 2.17 から σ(A0)=B(R) なので、PF は Borel 集合族の上の確率測度である。また (−∞,x]∈SR なので PF((−∞,x])=μF((−∞,x])=F(x)−F(−∞)=F(x)。
一意性。(2.12) を満たす確率測度 Q をとる。(−∞,x]=⋃m(−m,x] と連続性から Q((−∞,x])=limm(F(x)−F(−m))=F(x)。
同様に Q((a,∞))=1−F(a) である。よって2つの測度は、π系 SR の上で一致する。系 2.16 と補題 2.17 から Q=PF。
PF を F の定める Lebesgue–Stieltjes 測度と呼ぶ。たとえば F(x)=min(max(x,0),1) のときを考える。このとき PF は (0,1] 上の一様分布である。これは Leb を (0,1] に制限したものである。
逆向きの対応も成り立つ。Borel 集合族の上の確率測度 P に対して、F(x):=P((−∞,x]) とおく。このとき F は (2.4) を満たす。
- 単調性は、測度の単調性から従う。
- 右連続性は、(−∞,x+1/m]↓(−∞,x] と連続性から従う。
- 両端の極限は、次と連続性から従う。
(−∞,−m]↓∅,(−∞,m]↑R.
定理 2.18 と合わせると、次が得られる。
要点
(2.4) を満たす関数と、Borel 集合族の上の確率測度は一対一に対応する。対応は F(x)=P((−∞,x]) で与えられる。
第3章 §3.3 では、この対応を確率変数の分布と分布関数の言葉で述べ直す。
1点や閉区間の確率
PF は Borel 集合すべての確率を定めているので、1点や閉区間の確率も F から計算できる。F(x−):=limy↑xF(y) を左極限とする(単調関数なので必ず存在する)。
命題 2.19(区間の端点の扱い)
a<b について次が成り立つ。
PF({x})PF((a,b))=F(x)−F(x−),=F(b−)−F(a),PF([a,b])=F(b)−F(a−),PF([a,b))=F(b−)−F(a−).(2.13)(2.14)
証明
(x−1/m,x]↓{x} なので、連続性からPF({x})=limm(F(x)−F(x−1/m))=F(x)−F(x−)。残りは (2.13) と加法性から出る。
たとえば (a,b)=(a,b]∖{b} から PF((a,b))=F(b)−F(a)−(F(b)−F(b−))=F(b−)−F(a)。[a,b]={a}⊔(a,b] から PF([a,b])=F(a)−F(a−)+F(b)−F(a)=F(b)−F(a−)。[a,b)={a}⊔(a,b) についても同様である。
(2.13) から、点 x での連続性は PF({x})=0 と同値である。
F の跳びの位置は高々可算個である。実際、跳びの大きさが 1/k を超える点が k 個以上あれば、それらの点の確率の和が 1 を超えてしまう。したがって、跳びが 1/k を超える点は k 個未満である。これを k=1,2,… について合わせても、可算個である。
3種類の分布関数
- 離散型。F が跳びだけで増える階段関数のとき、PF は跳びの位置に跳びの大きさの確率を置いた分布になる。二項分布や Poisson 分布がこの型である。
- 絶対連続型。非負の可積分関数 f で、F(x)=∫−∞xf(t)dt と書けるとする。このとき次が成り立つ。
PF((a,b])=∫abf(t)dt.
正規分布や指数分布がこの型で、f を密度関数と呼ぶ。
- 特異連続型。Cantor 集合(確認テスト 2.2-3)の上でだけ増える連続な階段状の関数(Cantor 関数)がある。F は連続なので1点の確率は 0 だが、確率 1 が Leb で測って長さ 0 の集合に乗っているので、密度では書けない。
一般の分布関数はこの3つの型の混合で書ける(Lebesgue 分解)。その主張は第3章 §3.4 で扱う。
例題 2.5 跳びと連続部分を持つ分布関数 ★★
オリジナル次の関数 F を考える(図 2.3)。
F(x)=⎩⎨⎧041+x1(x<0)(0≤x<1)(x≥1)
- F が (2.4) の3条件を満たすことを確かめよ。
- 次の3つを求め、和が 1 になることを確かめよ。
PF({0}),PF({1}),PF((0,1)).
3. 次の3つを求めよ。
PF([0,21]),PF((21,1]),PF([21,1)).
解答
- 各区間の中で F は定数か増加関数である。境目では次のように上がるので、単調非減少である。
F(0−)=0≤F(0)=41,F(1−)=21≤F(1)=1.
境目の値 F(0)=41 と F(1)=1 は、それぞれ右側の式で与えられているので右連続である。x<0 で 0、x≥1 で 1 なので極限の条件も満たす。2. (2.13) と (2.14) から
PF({0})PF({1})PF((0,1))=F(0)−F(0−)=41,=F(1)−F(1−)=1−21=21,=F(1−)−F(0)=21−41=41.
x<0 の部分の確率は F(0−)−F(−∞)=0 である。x>1 の部分の確率も F(+∞)−F(1)=0 である。よって全体は 41+21+41=1。確率の置かれ方は次のとおりである。
- 点 0 に 41。
- 点 1 に 21。
- 区間 (0,1) に一様に 41。
- F(21)=F(21−)=83(21 では連続)を使って
PF([0,21])PF((21,1])PF([21,1))=F(21)−F(0−)=83,=F(1)−F(21)=85,=F(1−)−F(21−)=21−83=81.
2つ目は点 1 の跳び 21 を含み、3つ目は含まない。差 85−81=21 がちょうど跳びの大きさである。

図 2.3 例題 2.5 の分布関数。黒丸はその点での値、白丸は値をとらない端点を表す。各跳びで値は上側の黒丸にあり、これが右連続性である。跳びの大きさが1点の確率になる。
多次元の分布関数
R2 の上の確率測度 P についても、分布関数を次で定める。
F(x,y)=P((−∞,x]×(−∞,y]).
確認テスト 2.3-3 から、この F が P を決める。ただし、存在の側の条件は1次元より強い。長方形の確率
P((a1,b1]×(a2,b2])=F(b1,b2)−F(a1,b2)−F(b1,a2)+F(a1,a2)
が非負であることを、各変数についての単調性とは別に要求する必要がある(確認テスト 2.4-5 に反例がある)。この条件と右連続性・極限の条件のもとで、1次元と同じ手順(長方形の半代数→前測度→Carathéodory→Dynkin)で R2 上の確率測度ができる。第4章 §4.3 の同時分布はこの測度である。
確認テスト
オリジナル
2.4-1 次の関数のうち、(2.4) の3条件を満たすものをすべて選び、満たさないものはどの条件が成り立たないかを答えよ。
- (a) F(x)=21+π1arctanx。
- (b) 次の階段関数。
F(x)={01(x≤0)(x>0)
- (c) F(x)=exp(−e−x)。
- (d) 次の関数。
F(x)={ex1(x<0)(x≥0)
2. 2.4-2 関数 F を次で定める。
F(x)=⎩⎨⎧01−2x1(x<1)(x≥1)
次の4つを求めよ。
PF({1}),PF((1,2]),PF([2,∞)),PF((1,3)).
3. 2.4-3 0<p<1 とし、関数 F を次で定める。
F(x)={01−(1−p)⌊x⌋(x<1)(x≥1)
ここで ⌊x⌋ は x 以下の最大の整数である。PF({k})(k=1,2,…)を求めよ。また p=31 のとき PF((1.5,4]) を求めよ。4. 2.4-4 F が連続だとする。このとき、任意の可算集合 C⊂R について PF(C)=0 であることを証明せよ。5. 2.4-5 関数 G を次で定める。
G(x,y)={10(x+y≥0)(x+y<0)
次の3つを確かめよ。
- G は各変数について単調非減少で右連続である。
- x→−∞ または y→−∞ で 0 に近づく。
- 両方の変数を +∞ へ送ると 1 に近づく。
そのうえで、長方形 (−1,1]×(−1,1] に上の式で割り当てた値を計算せよ。さらに、G がどんな確率測度の2次元分布関数にもならないことを示せ。
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