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確率変数=可測関数

2026年10月15日21分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第3章 確率変数と分布
目次
  1. なぜ可測性を要求するか
  2. 生成元で確かめれば足りる
  3. 確率変数が生成する σ加法族
  4. 連続関数・合成・和と積・上限
  5. 確認テスト
  6. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

確率論入門 第3章 §3.1 ★★★ 確率変数は「逆像が事象になる関数」。半直線の逆像だけを確かめれば十分で、連続関数との合成や和・積・上限も確率変数になる

第1章と第2章では確率空間 (Ω,F,P)(\Omega,\mathcal F,P) を作った。標本空間 Ω\Omega と σ加法族 F\mathcal F の組に、確率測度を載せたものである。

しかし実際に確率を計算したい対象は、たいてい Ω\Omega の元そのものではなく、そこから決まる数値である。サイコロを2回振ったときの目の和、粒子が検出器に届くまでの時間、ある時刻の株価などがその例である。この章では、こうした数値を確率変数として定義し、その確率的な性質を実数直線 R\mathbb{R} の上の確率測度(分布)と、1変数の関数(分布関数)に移す。

章の流れは次のとおりである。

  1. §3.1 では、確率変数を「可測関数」として定義し、可測性を確かめるには半直線の逆像だけを調べれば足りることを証明する。
  2. §3.2 では、確率変数が R\mathbb{R} の上に新しい確率測度(分布、押し出し測度)を作ることを示す。
  3. §3.3 では、分布が1変数の関数 FXF_X だけで決まることを示す。さらに FXF_X が、単調・右連続・両端で 0 と 1 という3性質で特徴づけられることを示す。
  4. §3.4 では分布を離散・絶対連続・特異連続の3種に分類し、どの分布もこの3種の混合に一意に分解されること(Lebesgue 分解)を述べる。
  5. 最後に §3.5 で、一様乱数から任意の分布関数をもつ確率変数を作る逆変換法を証明する。

前の章からは次の3つの結果を借りる。第一に、第1章 §1.4 で示した確率測度の連続性である。

A1⊂A2⊂⋯ ⇒ P(⋃nAn)=lim⁡n→∞P(An),A1⊃A2⊃⋯ ⇒ P(⋂nAn)=lim⁡n→∞P(An).(3.1)A_1\subset A_2\subset\cdots\ \Rightarrow\ P\Bigl(\bigcup_n A_n\Bigr)=\lim_{n\to\infty}P(A_n),\qquad A_1\supset A_2\supset\cdots\ \Rightarrow\ P\Bigl(\bigcap_n A_n\Bigr)=\lim_{n\to\infty}P(A_n).\tag{3.1}

第二に、第1章 §1.5 で定めた Borel 集合族 B(R)\mathcal B(\mathbb{R})(R\mathbb{R} の開集合全体から生成される σ加法族)である。第三に、第2章 §2.3 の Dynkin の定理から従う測度の一意性である。

π系 C の上で一致する2つの確率測度は、σ(C) の上でも一致する。(3.2)\text{π系 }\mathcal C\text{ の上で一致する2つの確率測度は、}\sigma(\mathcal C)\text{ の上でも一致する。}\tag{3.2}

ここで π系とは、有限個の共通部分をとる操作で閉じた集合族のことである。また、区間 (0,1)(0,1) の上の Lebesgue 測度(区間に長さを割り当てる確率測度)が存在することも第2章で示した結果として使う。

この章で作る言葉は、第4章(独立性と同時分布)、第5章(期待値を分布の上の積分として書く変数変換公式)、第6章(代表的な分布)、第7章(変数変換)、第11章(分布収束を分布関数で定義する)で使う。

なぜ可測性を要求するか

確率空間の上の関数 X ⁣:Ω→RX\colon\Omega\to\mathbb{R} について、値が xx 以下である確率を考えたい。この確率は集合

{X≤x}≔{ω∈Ω:X(ω)≤x}\{X\le x\}\coloneqq\{\omega\in\Omega : X(\omega)\le x\}

の確率 P({X≤x})P(\{X\le x\}) として書くのが自然である。ところが PP は F\mathcal F の元にしか値を持たない。

第1章で見たように、F\mathcal F は一般に Ω\Omega のすべての部分集合を含むわけではない。したがって {X≤x}\{X\le x\} が F\mathcal F に入っていなければ、この確率は定義されない。確率を語りたい量に対しては、関連する集合が事象になることをあらかじめ要求しておく必要がある。この要求が可測性である。

定義 3.1(確率変数)

(Ω,F)(\Omega,\mathcal F) を可測空間とする。関数 X ⁣:Ω→RX\colon\Omega\to\mathbb{R} が

X−1(B)={ω:X(ω)∈B}∈F(すべての B∈B(R))(3.3)X^{-1}(B)=\{\omega : X(\omega)\in B\}\in\mathcal F\qquad(\text{すべての }B\in\mathcal B(\mathbb{R}))\tag{3.3}

を満たすとき、XX を F\mathcal F-可測な関数、または確率変数と呼ぶ。X−1(B)X^{-1}(B) を {X∈B}\{X\in B\} とも書く。

定義に PP は現れない。可測性は σ加法族 F\mathcal F だけで決まる性質である。同じ Ω\Omega の上でも、F\mathcal F を小さく取り替えると可測でなくなる関数がある(例題 3.1)。

「確率変数」は変数ではない

  • 確率変数 XX は、標本空間から実数への関数である。「ランダムに値が変わる数」という言い方は直観としては正しいが、数学的な対象としては関数 ω↦X(ω)\omega\mapsto X(\omega) を指す。
  • ランダムさは ω\omega の選ばれ方(確率測度)の側にあり、XX 自体は決定論的な対応である。

生成元で確かめれば足りる

定義 (3.3) をそのまま確かめるには、すべての Borel 集合 BB について逆像を調べる必要がある。Borel 集合族は非常に大きく、その元を具体的に書き下すことはできないので、このままでは使いにくい。次の補題によって、調べる集合を生成元に限ってよいことが分かる。

補題 3.2(逆像で引き戻した集合族)

X ⁣:Ω→RX\colon\Omega\to\mathbb{R} を任意の関数とし、(Ω,F)(\Omega,\mathcal F) を可測空間とする。

G≔{B⊂R:X−1(B)∈F}\mathcal G\coloneqq\{B\subset\mathbb{R} : X^{-1}(B)\in\mathcal F\}

は R\mathbb{R} の上の σ加法族である。

証明

逆像は集合演算と交換する。すなわち

X−1(R)=Ω,X−1(Bc)=(X−1(B))c,X−1(⋃nBn)=⋃nX−1(Bn)X^{-1}(\mathbb{R})=\Omega,\qquad X^{-1}(B^c)=\bigl(X^{-1}(B)\bigr)^c,\qquad X^{-1}\Bigl(\bigcup_n B_n\Bigr)=\bigcup_n X^{-1}(B_n)

が成り立つ。

  • 2番目は、次の2条件が同じであることから従う。

X(ω)∉B,ω∉X−1(B).X(\omega)\notin B,\qquad \omega\notin X^{-1}(B).

  • 3番目は、次の2条件が同じであることから従う。

ある n で X(ω)∈Bn,ある n で ω∈X−1(Bn).\text{ある }n\text{ で }X(\omega)\in B_n,\qquad \text{ある }n\text{ で }\omega\in X^{-1}(B_n).

これを使って σ加法族の3条件を確かめる。

  1. Ω∈F\Omega\in\mathcal F なので R∈G\mathbb{R}\in\mathcal G である。
  2. B∈GB\in\mathcal G なら、次の式から Bc∈GB^c\in\mathcal G である。

X−1(Bc)=(X−1(B))c∈F.X^{-1}(B^c)=(X^{-1}(B))^c\in\mathcal F. 3. Bn∈GB_n\in\mathcal G なら、次の式から ⋃Bn∈G\bigcup B_n\in\mathcal G である。

X−1(⋃nBn)=⋃nX−1(Bn)∈F.X^{-1}\Bigl(\bigcup_n B_n\Bigr)=\bigcup_n X^{-1}(B_n)\in\mathcal F.

定理 3.3(可測性の同値な特徴づけ ★★★)

(Ω,F)(\Omega,\mathcal F) を可測空間、X ⁣:Ω→RX\colon\Omega\to\mathbb{R} を関数とする。次の4条件は同値である。

  • (a) すべての B∈B(R)B\in\mathcal B(\mathbb{R}) について {X∈B}∈F\{X\in B\}\in\mathcal F(確率変数の定義)。
  • (b) すべての開集合 O⊂RO\subset\mathbb{R} について {X∈O}∈F\{X\in O\}\in\mathcal F。
  • (c) すべての x∈Rx\in\mathbb{R} について {X≤x}∈F\{X\le x\}\in\mathcal F。
  • (d) すべての x∈Rx\in\mathbb{R} について {X<x}∈F\{X< x\}\in\mathcal F。
証明

開集合も半直線 (−∞,x](-\infty,x]・(−∞,x)(-\infty,x) も Borel 集合なので、(a) から (b)・(c)・(d) はただちに従う。逆向きを示すには、補題 3.2 の G\mathcal G を使う。G\mathcal G は σ加法族である。

(b) から (a) を導く。(b) は「G\mathcal G がすべての開集合を含む」と言っている。B(R)\mathcal B(\mathbb{R}) は開集合を含む最小の σ加法族なので、G⊃B(R)\mathcal G\supset\mathcal B(\mathbb{R}) となり (a) が従う。

(c) から (b) を導く。(c) は、G\mathcal G がすべての半直線 (−∞,x](-\infty,x] を含むことを言う。G\mathcal G は σ加法族なので、次の集合も含む。

(a,b]=(−∞,b]∖(−∞,a],(a,b)=⋃n=1∞(a, b−1n].(a,b]=(-\infty,b]\setminus(-\infty,a],\qquad (a,b)=\bigcup_{n=1}^{\infty}\Bigl(a,\,b-\frac1n\Bigr].

さらに開集合 O⊂RO\subset\mathbb{R} は、自分に含まれる有理数端点の開区間全体の和集合に等しい。

O=⋃{(p,q):p,q∈Q, (p,q)⊂O}.O=\bigcup\{(p,q) : p,q\in\mathbb Q,\ (p,q)\subset O\}.

実際、点 x∈Ox\in O をとると、OO はこの点のまわりの小さな開区間を含む。その中に xx を含む有理数端点の開区間がとれる。有理数端点の開区間は可算個しかないので、この和集合は可算和であり、O∈GO\in\mathcal G が従う。

(d) から (c) を導く。半直線は可算個の共通部分で書ける。

(−∞,x]=⋂n=1∞(−∞, x+1n)なので{X≤x}=⋂n{X<x+1n}∈F.(-\infty,x]=\bigcap_{n=1}^\infty\Bigl(-\infty,\,x+\frac1n\Bigr) \quad\text{なので}\quad \{X\le x\}=\bigcap_n\Bigl\{X<x+\frac1n\Bigr\}\in\mathcal F.

以上で (d) から (c)、(c) から (b)、(b) から (a) の含意がつながり、4条件は同値である。

この定理により、実用上は (c) の「{X≤x}\{X\le x\} が事象になる」ことを確かめれば十分である。証明の骨組みを一般的に述べておく。

生成元の原理

B(R)=σ(C)\mathcal B(\mathbb{R})=\sigma(\mathcal C) となる集合族 C\mathcal C(開集合全体、半直線全体、有理数端点の区間全体など)を1つ選ぶ。すべての C∈CC\in\mathcal C について {X∈C}∈F\{X\in C\}\in\mathcal F なら、それだけで確率変数である。理由は、次の集合族が C\mathcal C を含む σ加法族になり、したがって σ(C)\sigma(\mathcal C) を含むからである。

{B:{X∈B}∈F}\{B : \{X\in B\}\in\mathcal F\}

確率変数が生成する σ加法族

確率変数 XX について、{X∈B}\{X\in B\} の形の集合全体

σ(X)≔{X−1(B):B∈B(R)}(3.4)\sigma(X)\coloneqq\{X^{-1}(B) : B\in\mathcal B(\mathbb{R})\}\tag{3.4}

を考える。逆像が集合演算と交換することから、σ(X)\sigma(X) は標本空間の上の σ加法族になる(補題 3.2 の証明と同じ計算)。

F\mathcal F-可測であることは、包含 σ(X)⊂F\sigma(X)\subset\mathcal F と同じである。つまり σ(X)\sigma(X) は、XX を可測にする最小の σ加法族である。これを XX が生成する σ加法族と呼ぶ。

σ(X)\sigma(X) は「XX の値を知っている人が、起きたか起きなかったかを判定できる事象」の全体と解釈できる。XX の値を知れば X∈BX\in B かどうかは判定できるが、それ以外の情報は得られない。この解釈は、第4章の独立性(σ加法族どうしの独立)と、第14章のフィルトレーション(時刻とともに増える情報)で使う。

Doob–Dynkin の補題(主張だけ)

  • 確率変数 YY について、次の2つは同値である。

    • (i) YY は σ(X)\sigma(X)-可測である。
    • (ii) ある Borel 可測関数 g ⁣:R→Rg\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R} によって Y=g(X)Y=g(X) と書ける。
  • 「XX の情報だけで決まる量は XX の関数である」という直観の正確な形である。標本空間が有限なら、例題 3.1 で直接確かめられる。

連続関数・合成・和と積・上限

実数から実数への関数 gg が B(R)\mathcal B(\mathbb{R})-可測であるとき、これを Borel 可測関数と呼ぶ。これは (Ω,F)=(R,B(R))(\Omega,\mathcal F)=(\mathbb{R},\mathcal B(\mathbb{R})) と取った場合の確率変数の定義そのものである。

命題 3.4(連続関数は Borel 可測)

連続関数 g ⁣:R→Rg\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R} は Borel 可測である。

証明

連続関数による開集合の逆像は開集合である(位相的な連続性の定義)。したがってすべての開集合 OO について g−1(O)g^{-1}(O) は開集合であり、Borel 集合である。定理 3.3 の (b) から gg は Borel 可測である。

命題 3.5(合成)

XX を確率変数、gg を Borel 可測関数とする。合成 g(X)=g∘Xg(X)=g\circ X は確率変数である。

証明

B∈B(R)B\in\mathcal B(\mathbb{R}) に対して

(g∘X)−1(B)=X−1(g−1(B))(g\circ X)^{-1}(B)=X^{-1}\bigl(g^{-1}(B)\bigr)

である。gg が Borel 可測なので g−1(B)∈B(R)g^{-1}(B)\in\mathcal B(\mathbb{R}) である。XX が確率変数なので、その逆像は F\mathcal F に入る。

これで次の関数はすべて確率変数である。

X2,∣X∣,eX,sin⁡X.X^2,\quad \left\vert X\right\vert ,\quad \mathrm{e}^{X},\quad \sin X.

2つの確率変数の和 X+YX+Y や積 XYXY については、平面の上の Borel 集合族を使って同じ議論をする。B(R2)\mathcal B(\mathbb{R}^2) は R2\mathbb{R}^2 の開集合から生成される σ加法族である。

命題 3.6(確率ベクトルと成分)

X,YX,Y を標本空間の上の実数値関数とし、組 Z=(X,Y) ⁣:Ω→R2Z=(X,Y)\colon\Omega\to\mathbb{R}^2 を考える。次の2条件は同値である。

  • (i) すべての B∈B(R2)B\in\mathcal B(\mathbb{R}^2) について {Z∈B}∈F\{Z\in B\}\in\mathcal F。
  • (ii) XX と YY がともに確率変数である。

したがって X,YX,Y が確率変数で、h ⁣:R2→Rh\colon\mathbb{R}^2\to\mathbb{R} が連続とする。このとき合成 h(X,Y)h(X,Y) も確率変数である。とくに次の4つは確率変数である。

X+Y,XY,max⁡(X,Y),min⁡(X,Y).X+Y,\quad XY,\quad \max(X,Y),\quad \min(X,Y).

証明

(i) から (ii) を導く。次の等式が成り立つ。

{X≤x}={Z∈(−∞,x]×R}\{X\le x\}=\{Z\in(-\infty,x]\times\mathbb{R}\}

右辺の (−∞,x]×R(-\infty,x]\times\mathbb{R} は閉集合なので Borel 集合である。YY についても同じ。

(ii) から (i) を導く。長方形 (a,b)×(c,d)(a,b)\times(c,d) の逆像は、次のとおり事象である。

{a<X<b}∩{c<Y<d}∈F.\{a<X<b\}\cap\{c<Y<d\}\in\mathcal F.

R2\mathbb{R}^2 の開集合は、有理数端点の開長方形の可算和で書ける(1次元のときと同じ理由)。したがって補題 3.2 の R2\mathbb{R}^2 版の集合族は開集合をすべて含み、B(R2)\mathcal B(\mathbb{R}^2) を含む。

最後の主張は、hh による開集合の逆像が R2\mathbb{R}^2 の開集合であることと、命題 3.5 と同じ合成の計算から従う。

和の可測性は、R2\mathbb{R}^2 を経由しない直接の証明もある(例題 3.2)。確率変数の列 X1,X2,…X_1,X_2,\dots に対する上限・下限・上極限も確率変数になる。各 ω\omega で上限が有限であるとすると、

{sup⁡nXn≤x}=⋂n=1∞{Xn≤x}∈F(3.5)\Bigl\{\sup_n X_n\le x\Bigr\}=\bigcap_{n=1}^\infty\{X_n\le x\}\in\mathcal F\tag{3.5}

だからである。左辺の条件「すべての nn で Xn(ω)≤xX_n(\omega)\le x」と右辺の条件は同じことを言っている。同様に inf⁡nXn=−sup⁡n(−Xn)\inf_n X_n=-\sup_n(-X_n) と

lim sup⁡n→∞Xn=inf⁡msup⁡n≥mXn,lim inf⁡n→∞Xn=sup⁡minf⁡n≥mXn\limsup_{n\to\infty}X_n=\inf_{m}\sup_{n\ge m}X_n,\qquad \liminf_{n\to\infty}X_n=\sup_{m}\inf_{n\ge m}X_n

も確率変数である(値が ±∞\pm\infty になりうる場合は、[−∞,∞][-\infty,\infty] に値をとる関数として同じ議論をする)。極限 lim⁡Xn\lim X_n が各点で存在するなら、それは lim sup⁡Xn\limsup X_n に等しいので確率変数である。この事実は第11章で確率変数列の極限を扱うときに使う。

最も簡単な確率変数は事象の指示関数

1A(ω)={1(ω∈A)0(ω∉A)\mathbf 1_A(\omega)=\begin{cases}1 & (\omega\in A)\\ 0 & (\omega\notin A)\end{cases}

である。集合 {1A≤x}\{\mathbf 1_A\le x\} は xx の範囲で次のように変わる。

{1A≤x}={∅(x<0)Ac(0≤x<1)Ω(x≥1)\{\mathbf 1_A\le x\}=\begin{cases}\emptyset & (x<0)\\ A^c & (0\le x<1)\\ \Omega & (x\ge1)\end{cases}

したがって、1A\mathbf 1_A が確率変数であることと A∈FA\in\mathcal F は同値である。指示関数の有限個の線形結合 ∑i=1kai1Ai\sum_{i=1}^k a_i\mathbf 1_{A_i} を単関数と呼び、第5章で期待値を構成するときの出発点になる。

例題 3.1 情報の少ない σ加法族での可測性 ★★

オリジナル硬貨を2回投げる。Ω={HH,HT,TH,TT}\Omega=\{\mathrm{HH},\mathrm{HT},\mathrm{TH},\mathrm{TT}\}(H は表、T は裏)とし、表の回数を NN とする。

  1. σ(N)\sigma(N) の元をすべて書け。
  2. 1回目が表なら 1、裏なら 0 をとる関数 YY は σ(N)\sigma(N)-可測でないことを示せ。
  3. 「少なくとも1回表が出たら 1、そうでなければ 0」をとる関数 SS は σ(N)\sigma(N)-可測であることを示せ。また S=g(N)S=g(N) となる関数 gg を求めよ。
解答
  1. NN のとる値は 0, 1, 2 で、

{N=0}={TT},{N=1}={HT,TH},{N=2}={HH}\{N=0\}=\{\mathrm{TT}\},\quad\{N=1\}=\{\mathrm{HT},\mathrm{TH}\},\quad\{N=2\}=\{\mathrm{HH}\}

である。Borel 集合 BB の逆像 {N∈B}\{N\in B\} は、この集合が 0, 1, 2 のうちどれを含むかだけで決まる。それは上の3つの集合のうち、BB に対応するものの和集合になる。含む・含まないの選び方は 23=82^3=8 通りなので、σ(N)\sigma(N) は次の8個の集合からなる。

∅, {TT}, {HT,TH}, {HH}, {TT,HT,TH}, {TT,HH}, {HT,TH,HH}, Ω.\emptyset,\ \{\mathrm{TT}\},\ \{\mathrm{HT},\mathrm{TH}\},\ \{\mathrm{HH}\},\ \{\mathrm{TT},\mathrm{HT},\mathrm{TH}\},\ \{\mathrm{TT},\mathrm{HH}\},\ \{\mathrm{HT},\mathrm{TH},\mathrm{HH}\},\ \Omega. 2. {Y≤1/2}={Y=0}={TH,TT}\{Y\le 1/2\}=\{Y=0\}=\{\mathrm{TH},\mathrm{TT}\} である。この集合は上の8個のどれとも一致しないので σ(N)\sigma(N) に入らない。定理 3.3 の (c) が成り立たないので、YY は σ(N)\sigma(N)-可測でない。直観的には、表の回数が1回だと分かっても、それが1回目か2回目かは分からないことに対応する。3. SS の値で標本空間を分けると、次のようになる。どちらも σ(N)\sigma(N) に入る。

{S=0}={TT},{S=1}={HT,TH,HH}.\{S=0\}=\{\mathrm{TT}\},\qquad \{S=1\}=\{\mathrm{HT},\mathrm{TH},\mathrm{HH}\}.

集合 {S≤x}\{S\le x\} は xx の範囲で次のように変わる。どの場合も σ(N)\sigma(N) の元である。

{S≤x}={∅(x<0){TT}(0≤x<1)Ω(x≥1)\{S\le x\}=\begin{cases}\emptyset & (x<0)\\ \{\mathrm{TT}\} & (0\le x<1)\\ \Omega & (x\ge1)\end{cases}

関数 gg を次のように定めれば S=g(N)S=g(N) である。

g(0)=0,g(1)=g(2)=1.g(0)=0,\qquad g(1)=g(2)=1.

一般に、有限な標本空間では、σ(N)\sigma(N)-可測な関数とは NN の値ごとに分けた各ブロック(上の3つの集合)の上で定数になる関数のことである。それは NN の関数にほかならない。

例題 3.2 和の可測性を有理数で示す ★★

オリジナルX,YX,Y を確率変数とする。すべての c∈Rc\in\mathbb{R} について

{X+Y<c}=⋃q∈Q({X<q}∩{Y<c−q})(3.6)\{X+Y<c\}=\bigcup_{q\in\mathbb Q}\Bigl(\{X<q\}\cap\{Y<c-q\}\Bigr)\tag{3.6}

が成り立つことを示し、これを使って X+YX+Y が確率変数であることを示せ。

解答

右辺の集合を RR とおく。

R⊂{X+Y<c}R\subset\{X+Y<c\}:ω∈R\omega\in R とする。ある有理数 qq について次の2つが成り立つ。

X(ω)<q,Y(ω)<c−q.X(\omega)<q,\qquad Y(\omega)<c-q.

2つを足すと X(ω)+Y(ω)<q+(c−q)=cX(\omega)+Y(\omega)<q+(c-q)=c となる。

{X+Y<c}⊂R\{X+Y<c\}\subset R:X(ω)+Y(ω)<cX(\omega)+Y(\omega)<c とする。δ=c−X(ω)−Y(ω)>0\delta=c-X(\omega)-Y(\omega)>0 とおく。有理数は実数の中で稠密なので、X(ω)<q<X(ω)+δX(\omega)<q<X(\omega)+\delta を満たす有理数 qq がとれる。このとき X(ω)<qX(\omega)<q であり、さらに

Y(ω)=c−X(ω)−δ<c−qY(\omega)=c-X(\omega)-\delta<c-q

も成り立つ(q<X(ω)+δq<X(\omega)+\delta を書き換えた)。よって ω∈{X<q}∩{Y<c−q}⊂R\omega\in\{X<q\}\cap\{Y<c-q\}\subset R である。

以上で (3.6) が示された。右辺の各項は2つの事象の共通部分なので事象であり、有理数は可算個なので右辺は事象の可算和として F\mathcal F に入る。定理 3.3 の (d) により X+YX+Y は確率変数である。

和集合を実数 qq 全体にわたってとると非可算和になり、σ加法族の公理からは F\mathcal F に入ることを保証できない。有理数に制限することがこの証明の要点である。

確認テスト

オリジナル

  1. 3.1-1 Ω={1,2,3,4,5,6}\Omega=\{1,2,3,4,5,6\} に次の σ加法族を入れる。

F=σ({1,2},{3,4},{5,6})\mathcal F=\sigma(\{1,2\},\{3,4\},\{5,6\})

次の2つの関数のそれぞれについて、F\mathcal F-可測かどうかを答えよ。

X(ω)=ω,Y(ω)=⌈ω/2⌉(ω/2 以上の最小の整数).X(\omega)=\omega,\qquad Y(\omega)=\lceil\omega/2\rceil\quad(\omega/2\text{ 以上の最小の整数}). 2. 3.1-2 XX を確率変数とし、c∈Rc\in\mathbb{R} とする。集合 {X2≤c}\{X^2\le c\} を XX についての事象で表せ。それを使い、X2X^2 が確率変数であることを定理 3.3 だけを使って確かめよ。3. 3.1-3 Ω=[0,1)\Omega=[0,1)、F=B([0,1))\mathcal F=\mathcal B([0,1)) とし、次の2つの関数を考える。

Z(ω)=⌊4ω⌋(4ω を超えない最大の整数),W(ω)=Z(ω) mod 2.Z(\omega)=\lfloor 4\omega\rfloor\quad(4\omega\text{ を超えない最大の整数}),\qquad W(\omega)=Z(\omega)\bmod 2.

σ(W)\sigma(W) の元をすべて書き、σ(Z)\sigma(Z) の元の個数を求めよ。4. 3.1-4 単調非減少な関数 g ⁣:R→Rg\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R} は Borel 可測であることを示せ。ここで単調非減少とは、x≤yx\le y なら g(x)≤g(y)g(x)\le g(y) となることである。

木下の勉強ステータス

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