確率論入門 第10章 §10.6
10.1 の解答
10.1-1 Markov の不等式の上限は E[X]/3=31 で、P(X≥3)=31 はその等号の場合である。定理 10.1 の等号の条件から X∈{0,3} a.s. である。E[X]=3P(X=3)=1 から、値 3 の確率は 1/3、値 0 の確率は 2/3 である。逆にこの分布は E[X]=1、P(X≥3)=31 を満たすので、求める分布はこれだけである。
10.1-2 E[X]=V[X]=4 である。3つの上限を求める。
- Markov の不等式から、P(X≥10)≤104=0.4 である。
- X≥10 なら ∣X−4∣≥6 である。よって Chebyshev の不等式から、上限は 364=91≈0.111 である。
Cantelli の不等式では a=6 として P(X−4≥6)≤4+364=0.1 である。正確な値 0.00813 に対して、上限は順に約49倍、14倍、12倍である。3. 10.1-3 0<a≤21 とする。事象 X−21≥a は、次の2つの和と同値である。
{X≤21−a}∪{X≥21+a}
よって正確な値は (21−a)+(1−21−a)=1−2a である。
V[X]=121 なので Chebyshev の上限は 12a21 である。これが 1 より小さくなるのは a2>121、すなわち a>231≈0.289 のときである。a=0.4 では、正確な値が 1−0.8=0.2 である。上限は 12×0.161=1.921≈0.521 である。4. 10.1-4 系 10.2 の p 次モーメントの形を ∣Xn−X∣ に使うと
P(∣Xn−X∣≥ε)≤εpE[∣Xn−X∣p]
である。ε を固定して n→∞ とすると、右辺は仮定から 0 に近づく。左辺は 0 以上なので 0 に近づく。
10.2 の解答
- 10.2-1 E[X]=31+2+4=37、E[1/X]=31(1+21+41)=31⋅47=127≈0.583 である。1/E[X]=73≈0.429 なので E[1/X]≥1/E[X] が成り立つ。対数については
E[logX]=31(log1+log2+log4)=31log8=log2≈0.693,logE[X]=log37≈0.847
なので、E[logX]≤logE[X] が成り立つ。指数をとると、相乗平均 (1⋅2⋅4)1/3=2 が相加平均 37 以下であることを表している。2. 10.2-2 正確な値は E[X2]=31≈0.3333 である。p=3、q=23 の Hölder の不等式から
E[X⋅X]≤(E[X3])1/3(E[X3/2])2/3=(41)1/3(52)2/3≈0.630×0.543≈0.342
である(E[Xr]=∫01xrdx=r+11 を使った)。p=q=2 では E[X2]E[X2]=E[X2]=31 で等号になる。2つの因子が同じ X なので、指数を等しく割り当てた Cauchy–Schwarz では Young の不等式の等号条件 U2=V2 が満たされるからである。3. 10.2-3 ∥X∥2=E[X2]=1、∥X∥4=31/4≈1.316 である。∥X∥1=E[∣X∣] は、対称性と ϕ′(x)=−xϕ(x) から
E[∣X∣]=2∫0∞x2πe−x2/2dx=2π2[−e−x2/2]0∞=π2≈0.798
である。0.798<1<1.316 となり、Lyapunov の不等式の順に並んでいる。4. 10.2-4 p≥1 では ∣x∣p は凸である。凸性 (10.9) を λ=21 で使うと
2x+yp≤2∣x∣p+∣y∣p
である。両辺に 2p を掛けると ∣x+y∣p≤2p−1(∣x∣p+∣y∣p) を得る。X,Y∈Lp なら、これを各点で使って期待値をとると E[∣X+Y∣p]<∞ となる。よって Lp は和で閉じる。5. 10.2-5 X+Y=1A+1Ac=1 なので、∥X+Y∥p=1 である。∣X∣p=1A なので
∥X∥p=P(A)1/p=2−1/p,同様に∥Y∥p=2−1/p
である。したがって ∥X∥p+∥Y∥p=2⋅2−1/p=21−1/p である。0<p<1 では指数 1−p1 が負である。よって 21−1/p<1=∥X+Y∥p となり、三角不等式が成り立たない。
10.3 の解答
- 10.3-1 MZ(t)=et2/2 なので、e−taMZ(t)=exp(2t2−ta) である。指数の2次式は
2t2−ta=21(t−a)2−2a2
で、t=a≥0 のとき最小値 −2a2 をとる。よって下限は e−a2/2 である。a=3 では e−4.5≈0.0111 で、正確な値 0.00135 の約8倍である。この差は、Mills の比 (10.28) の因子 a2π1≈0.133 に相当する。2. 10.3-2 試行回数は 100、成功確率は 1/2、割合の閾値は a=0.75 である。(10.26) から
D(0.75∥0.5)=0.75log0.50.75+0.25log0.50.25=0.75log1.5−0.25log2≈0.30410−0.17329=0.13081
なので、Chernoff 限界は e−13.081≈2.08×10−6 である。Hoeffding の不等式では、平均 50、s=25、∑(bi−ai)2=100 として
exp(−2⋅625/100)=e−12.5≈3.73×10−6
である。Chebyshev の不等式では、分散 25 から
P(S≥75)≤P(∣S−50∣≥25)≤62525=0.04
である。正確な値 2.82×10−7 に対して、指数的な2つの上限は1桁の範囲に入り、Chebyshev の上限は5桁大きい。3. 10.3-3 Ex(1) のレート関数は、(10.27) から I(a)=a−1−loga である。a=2 は平均 1 より大きいので、系 10.17 から
P(Sn≥2n)≤e−n(2−1−log2)=(elog2−1)n=(e2)n
である。n=10 では (2/e)10≈0.0465 で、正確な値 0.00500 の約9倍である。
正確な値の式は次のように確かめられる。Sn∼Ga(n,1) で密度は (n−1)!xn−1e−x である。F(s)=e−s∑k=0n−1k!sk と置くと
F′(s)=−e−sk=0∑n−1k!sk+e−sk=1∑n−1(k−1)!sk−1=−e−s(n−1)!sn−1
である。s→∞ で F(s)→0 なので、次のようになる。
F(s)=∫s∞(n−1)!xn−1e−xdx=P(Sn≥s)
4. 10.3-4 2つの関数の級数展開は
cosht=k≥0∑(2k)!t2k,et2/2=k≥0∑2kk!t2k
である。分母を比べると
(2k)!=j=1∏k(2j−1)(2j)≥j=1∏k2j=2kk!
なので、各項で前者が後者以下であり、cosht≤et2/2 を得る。E[etεi]=2et+e−t=cosht なので、独立性から t>0 について
P(ε1+⋯+εn≥s)≤e−ts(cosht)n≤exp(−ts+2nt2)
である。t=s/n で指数は最小値 −2ns2 をとる。この結果は Hoeffding の不等式で bi−ai=2 とした exp(−2s2/(4n)) と一致する。5. 10.3-5 (10.20) から P(X≤a)≤inft≤0exp(−ta+λ(et−1)) である。a=λ/2<λ なので、命題 10.16 の後半から上限は e−I(λ/2) に等しい。実際、指数 g(t)=−ta+λ(et−1) は、g′(t)=−a+λet=0 となる点で最小になる。その点は t=log(a/λ)=−log2<0 である。(10.25) に a=λ/2 を代入して
I(2λ)=2λlog21−2λ+λ=2λ(1−log2)
を得る。λ=20 では e−10(1−log2)=e−3.069≈0.0465 で、正確な値 0.0108 の約4倍である。
10.4 の解答
- 10.4-1 Xi∼U(−1,1) は平均 0、分散 ∫−112x2dx=31 である。V[S12]=12×31=4 なので、P(maxk≤12∣Sk∣≥4)≤164=41 である。
- 10.4-2 n=3 では V[S3]=1+41+91=3649 である。よって上限は 36×449=14449≈0.340 である。一般の n では
V[Sn]=i=1∑ni21<i=1∑∞i21=6π2
なので、上限は 6×4π2=24π2≈0.411 より小さい。3. 10.4-3 (a) S1=ξ かつ S2=0 である。よって最後の分散は 0 で、右辺は 0 である。一方 ∣S1∣=1 がつねに成り立つので左辺は 1 である。X1,X2 はどちらも平均 0 で分散 1 だが、独立でない(P(X1=1,X2=1)=0=41=P(X1=1)P(X2=1))。欠けているのは独立性である。 (b) 定数は互いに独立で、分散は 0 なので右辺は 0 である。一方 ∣S1∣=1≥1 なので左辺は 1 である。欠けているのは平均 0 の仮定である。Xi−E[Xi]=0 に使えば P(maxk∣Sk−E[Sk]∣≥1)=0≤0 となり、正しい形の不等式は成り立つ。4. 10.4-4 Xn=εnn−α は独立で、平均 0、分散 n−2α である。2α>1 なので、分散の和は有限である。実際、次の積分と比較すればよい。
∫1∞x−2αdx=2α−11<∞
定理 10.22 から ∑nXn はほとんど確実に収束する。5. 10.4-5 (a) V[S400]=400 なので、条件は a2400≤0.01 である。すなわち a≥200 が必要である。
(b) 確認テスト 10.3-4 の結果を上側と下側に使うと P(∣Sk∣≥a)≤2e−a2/(2k)≤2e−a2/800(k≤400)である。劣加法性から
P(k≤400max∣Sk∣≥a)≤k=1∑4002e−a2/(2k)≤800e−a2/800
である。右辺が 0.01 以下となる条件は
a2≥800log80000≈800×11.290=9031.8
すなわち a≥95.04 である。
Kolmogorov の不等式は、劣加法性による 400 倍の損失を持たない。しかし分散しか使わないので、1/δ の形の弱い評価になる。Hoeffding の不等式は 400 倍の損失を含んでも、指数的な裾によってそれが対数の中に吸収される。よってこの δ=0.01 の場合は、より小さい閾値を与える。
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