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弱法則

2026年10月15日24分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第12章 大数の法則
目次
  1. Chebyshev の不等式による証明
  2. 相関の弱い列への一般化
  3. 期待値だけを仮定する弱法則
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

確率論入門 第12章 §12.1 ★★★ 分散の有限性と Chebyshev の不等式だけで、標本平均が期待値に確率収束することを示す。独立性は無相関、さらに相関の減衰まで弱められる

硬貨を何度も投げると、表の出た割合は 1/2 の近くに落ち着いていく。この経験的な事実を確率論の言葉で述べたものが大数の法則である。確率空間 (Ω,F,P)(\Omega,\mathcal F,P) の上に確率変数の列 X1,X2,…X_1,X_2,\dots をとる。部分和と標本平均を

Sn=X1+X2+⋯+Xn,Xˉn=Snn(12.1)S_n=X_1+X_2+\cdots+X_n,\qquad \bar X_n=\frac{S_n}{n}\tag{12.1}

と書く。大数の法則は、各項が独立で同じ期待値 μ\mu をもつとき、標本平均が μ\mu に収束するという主張である。収束の意味を確率収束にとったものを弱法則、概収束にとったものを強法則と呼ぶ。

この章で作るものは4つある。

  1. §12.1 では、Chebyshev の不等式から弱法則を示す。独立性を「相関が弱い」まで弱めた形と、期待値の存在だけを仮定した形(Khinchin の弱法則)へ広げる。
  2. §12.2 では、4次モーメントを仮定して強法則を Borel–Cantelli の補題から証明する。Kolmogorov の強法則(期待値が有限であることが必要十分)も述べる。
  3. §12.3 では、独立な確率変数の級数 ∑nXn\sum_nX_n がいつ収束するかを調べる。その結果から Kolmogorov の強法則の証明を完成させる。
  4. §12.4 では、期待値を標本平均で近似する Monte Carlo 積分と、標本から分布関数を推定する経験分布関数に強法則を使う。

前の章から借りる結果を、式の形で先に書いておく。第10章 §10.1 の Markov の不等式と Chebyshev の不等式は、正の数 a,r,εa,r,\varepsilon について

P(∣Y∣≥a)≤E[∣Y∣r]ar,P(∣Y−E[Y]∣≥ε)≤V[Y]ε2(12.2)P(\left\vert Y\right\vert \ge a)\le\frac{E[\left\vert Y\right\vert ^r]}{a^r},\qquad P(\left\vert Y-E[Y]\right\vert \ge\varepsilon )\le\frac{V[Y]}{\varepsilon ^2}\tag{12.2}

である。第10章 §10.4 の Kolmogorov の不等式は、次を主張する。独立で E[Xk]=0E[X_k]=0、E[Xk2]<∞E[X_k^2]<\infty の確率変数について

P(max⁡1≤k≤n∣Sk∣≥ε)≤V[Sn]ε2=1ε2∑k=1nV[Xk](12.3)P\Bigl(\max_{1\le k\le n}\left\vert S_k\right\vert \ge\varepsilon \Bigr)\le\frac{V[S_n]}{\varepsilon ^2}=\frac{1}{\varepsilon ^2}\sum_{k=1}^{n}V[X_k]\tag{12.3}

が成り立つ。Chebyshev の不等式は最後の時刻だけを見る。これに対し Kolmogorov の不等式は、途中の最大値まで同じ上界で抑える。第4章 §4.4 からは Borel–Cantelli の補題を借りる。事象の列 AnA_n について

∑nP(An)<∞ ⟹ P(An i.o.)=0,An が独立で ∑nP(An)=∞ ⟹ P(An i.o.)=1(12.4)\sum_nP(A_n)<\infty\ \Longrightarrow\ P(A_n\ \text{i.o.})=0,\qquad A_n\ \text{が独立で}\ \sum_nP(A_n)=\infty\ \Longrightarrow\ P(A_n\ \text{i.o.})=1\tag{12.4}

である。とくに第4章 §4.4 の命題 4.23 の次の形を使う。

任意の ε>0 で ∑nP(∣Yn−Y∣>ε)<∞⟹Yn→Y a.s.\text{任意の}\ \varepsilon >0\ \text{で}\ \sum_nP(\left\vert Y_n-Y\right\vert >\varepsilon )<\infty\quad\Longrightarrow\quad Y_n\to Y\ \text{a.s.}

収束の定義は第11章 §11.1 のとおりである。

  • 概収束 Yn→YY_n\to Y a.s. は、P(lim⁡nYn=Y)=1P(\lim_nY_n=Y)=1 をいう。
  • 確率収束は、任意の ε>0\varepsilon >0 で P(∣Yn−Y∣>ε)→0P(\left\vert Y_n-Y\right\vert >\varepsilon )\to0 となることをいう。記号は Yn→PYY_n\xrightarrow{P}Y である。
  • LpL^p 収束は、E[∣Yn−Y∣p]→0E[\left\vert Y_n-Y\right\vert ^p]\to0 となることをいう。記号は Yn→LpYY_n\xrightarrow{L^p}Y である。

第11章 §11.2 から「概収束と LpL^p 収束はどちらも確率収束を導く」ことを借りる。第5章 §5.4 からは、分散が有限な確率変数について

V[Sn]=∑k=1nV[Xk]+2∑1≤j<k≤nCov(Xj,Xk)(12.5)V[S_n]=\sum_{k=1}^{n}V[X_k]+2\sum_{1\le j<k\le n}\mathrm{Cov}(X_j,X_k)\tag{12.5}

が成り立ち、対ごとに無相関なら右辺の第2項が消えることを借りる。

この章の結果の使い道も書いておく。大数の法則は Xˉn−μ\bar X_n-\mu が 0 に近づくことだけを述べ、どの速さで近づくかは述べない。

ずれの大きさはおよそ σ/n\sigma/\sqrt n である。そのずれを n\sqrt n 倍したものの分布が正規分布に近づくことは、第13章の中心極限定理が示す。第15章 §15.4 のエルゴード定理は、独立でないマルコフ連鎖の時間平均について同じ形の強法則を示し、§15.5 の MCMC はその上に立つ。

Chebyshev の不等式による証明

標本平均が期待値に近づく理由は、分散の計算から分かる。各項が対ごとに無相関で分散が σ2\sigma^2 なら、(12.5) から次のようになる。

V[Sn]=nσ2,V[Xˉn]=V[Sn]n2=σ2nV[S_n]=n\sigma^2,\qquad V[\bar X_n]=\frac{V[S_n]}{n^2}=\frac{\sigma^2}n

平均をとることで分散が 1/n1/n 倍に縮むので、標本平均の分布は μ\mu のまわりに集まっていく。これを Chebyshev の不等式で確率の評価に直したものが次の定理である。

定理 12.1(Chebyshev の弱法則)

X1,X2,…X_1,X_2,\dots は対ごとに無相関とする。さらに kk によらない定数 CC があって、次が成り立つとする。

E[Xk]=μ,V[Xk]≤CE[X_k]=\mu,\qquad V[X_k]\le C

このとき

E[(Xˉn−μ)2]≤Cn,P(∣Xˉn−μ∣≥ε)≤Cnε2(ε>0)(12.6)E\bigl[(\bar X_n-\mu)^2\bigr]\le\frac{C}{n},\qquad P(\left\vert \bar X_n-\mu\right\vert \ge\varepsilon )\le\frac{C}{n\varepsilon ^2}\qquad(\varepsilon >0)\tag{12.6}

が成り立つ。とくに標本平均は μ\mu に L2L^2 収束し、確率収束もする。

証明

期待値の線形性から E[Xˉn]=1n∑k=1nE[Xk]=μE[\bar X_n]=\frac1n\sum_{k=1}^nE[X_k]=\mu である。したがって左辺は分散 V[Xˉn]V[\bar X_n] に等しい。無相関の仮定と (12.5) から

V[Xˉn]=1n2V[Sn]=1n2∑k=1nV[Xk]≤1n2⋅nC=CnV[\bar X_n]=\frac{1}{n^2}V[S_n]=\frac{1}{n^2}\sum_{k=1}^{n}V[X_k]\le\frac{1}{n^2}\cdot nC=\frac{C}{n}

となる。これが第1の不等式である。第2の不等式は、Chebyshev の不等式 (12.2) を Y=XˉnY=\bar X_n に使えば得られる。番号を大きくすると両辺が 0 に近づくので、2つの収束が従う。

最も簡単な場合として、事象 AA を独立に繰り返し観測する状況を考える。XkX_k を、kk 回目にこの事象が起きたかどうかの指示関数とする。すると Xk∼Ber(p)X_k\sim\mathrm{Ber}(p)(p=P(A)p=P(A))で、標本平均は事象の起きた相対頻度である。分散は V[Xk]=p(1−p)≤14V[X_k]=p(1-p)\le\frac14 だから、定理 12.1 から

P(∣Xˉn−p∣≥ε)≤p(1−p)nε2≤14nε2(12.7)P(\left\vert \bar X_n-p\right\vert \ge\varepsilon )\le\frac{p(1-p)}{n\varepsilon ^2}\le\frac{1}{4n\varepsilon ^2}\tag{12.7}

を得る。相対頻度が確率 pp に確率収束するというこの結果は、J. Bernoulli が二項分布の計算から示したもので、Bernoulli の大数の法則と呼ばれる。最右辺は pp を知らなくても計算できる。よって未知の確率を推定するのに何回の試行が必要かの見積もりに使える(確認テスト 12.1-2)。

Chebyshev の評価は粗い

  • (12.7) の右辺は、試行回数について 1/n1/n でしか減らない。有界な確率変数については、第10章 §10.3 の Hoeffding の不等式によって、指数的に減る上界が得られる。

P(∣Xˉn−p∣≥ε)≤2e−2nε2P(\left\vert \bar X_n-p\right\vert \ge\varepsilon )\le2\mathrm{e}^{-2n\varepsilon ^2}

  • それでも Chebyshev の評価には、仮定が分散の有限性と無相関性だけで済むという利点がある。この節の一般化は、すべてこの利点の上に立つ。

相関の弱い列への一般化

定理 12.1 の証明で使ったのは、V[Sn]/n2→0V[S_n]/n^2\to0 という1つの事実だけである。この事実を仮定として取り出すと、期待値がそろっていない場合も含めた形になる。

定理 12.2(分散の条件による弱法則)

X1,X2,…X_1,X_2,\dots の分散がすべて有限で、次が成り立つとする。

V[Sn]n2→0(n→∞)\frac{V[S_n]}{n^2}\to0\qquad(n\to\infty)

このとき

Sn−E[Sn]n→L20,Sn−E[Sn]n→P0.\frac{S_n-E[S_n]}{n}\xrightarrow{L^2}0,\qquad \frac{S_n-E[S_n]}{n}\xrightarrow{P}0 .

証明

Yn=(Sn−E[Sn])/nY_n=(S_n-E[S_n])/n と置く。これは次を満たす。

E[Yn]=0,E[Yn2]=V[Sn]n2E[Y_n]=0,\qquad E[Y_n^2]=\frac{V[S_n]}{n^2}

仮定から E[Yn2]→0E[Y_n^2]\to0 であり、これが L2L^2 収束である。Chebyshev の不等式から次となり、確率収束も従う。

P(∣Yn∣≥ε)≤V[Sn]n2ε2→0P(\left\vert Y_n\right\vert \ge\varepsilon )\le\frac{V[S_n]}{n^2\varepsilon ^2}\to0

この条件は、相関が離れた番号のあいだで弱くなる列で満たされる。時系列の観測値のように、近い時刻どうしには相関があっても遠い時刻どうしはほぼ無関係という状況がこれにあたる。

系 12.3(相関が減衰する列の弱法則)

すべての kk で E[Xk]=μE[X_k]=\mu とする。さらに非負の数列 r(0),r(1),…r(0),r(1),\dots があって

∣Cov(Xj,Xk)∣≤r(∣j−k∣)(j,k≥1),r(m)→0(m→∞)(12.8)\left\vert \mathrm{Cov}(X_j,X_k)\right\vert \le r(\left\vert j-k\right\vert )\qquad(j,k\ge1),\qquad r(m)\to0\quad(m\to\infty)\tag{12.8}

とする(j=kj=k のときは V[Xk]≤r(0)V[X_k]\le r(0) という意味になる)。このとき標本平均は μ\mu に L2L^2 収束し、確率収束もする。

証明

定理 12.2 の条件 V[Sn]/n2→0V[S_n]/n^2\to0 を確かめればよい。分散を共分散の和に展開する。

V[Sn]=∑j=1n∑k=1nCov(Xj,Xk)V[S_n]=\sum_{j=1}^n\sum_{k=1}^n\mathrm{Cov}(X_j,X_k)

各項を (12.8) で抑える。差 m=∣j−k∣m=\left\vert j-k\right\vert が等しい組 (j,k)(j,k) の個数は次のとおりである。

  • m=0m=0 なら nn 個である。
  • 1≤m≤n−11\le m\le n-1 なら 2(n−m)≤2n2(n-m)\le2n 個である。

よって

V[Sn]≤n r(0)+2n∑m=1n−1r(m),V[Sn]n2≤r(0)n+2n∑m=1n−1r(m)V[S_n]\le n\,r(0)+2n\sum_{m=1}^{n-1}r(m),\qquad \frac{V[S_n]}{n^2}\le\frac{r(0)}{n}+\frac{2}{n}\sum_{m=1}^{n-1}r(m)

となる。右辺の第1項は 0 に近づく。第2項は数列 r(m)r(m) の Cesàro 平均であり、数列が 0 に近づくなら 0 に近づく。

実際、η>0\eta>0 を任意にとる。番号 MM を、それより先で r(m)<ηr(m)<\eta となるように選ぶ。すると n>Mn>M で

1n∑m=1n−1r(m)≤1n∑m=1M−1r(m)+n−Mn η≤1n∑m=1M−1r(m)+η\frac1n\sum_{m=1}^{n-1}r(m)\le\frac1n\sum_{m=1}^{M-1}r(m)+\frac{n-M}{n}\,\eta\le\frac1n\sum_{m=1}^{M-1}r(m)+\eta

である。右辺の第1項は n→∞n\to\infty で 0 に近づくので、上極限は η\eta 以下になる。η\eta は任意だから極限は 0 である。

とくに和 ∑m≥0r(m)\sum_{m\ge0}r(m) が有限なら、上の評価から次となる。

V[Xˉn]≤1n(r(0)+2∑m≥1r(m))V[\bar X_n]\le\frac1n\Bigl(r(0)+2\sum_{m\ge1}r(m)\Bigr)

よって無相関の場合と同じく、1/n1/n の速さで分散が縮む。たとえば 0<ρ<10<\rho<1 について r(m)=Cρmr(m)=C\rho^m とする。このとき括弧の中は C(1+ρ)/(1−ρ)C(1+\rho)/(1-\rho) である。

相関が減衰しないと平均は定数に近づかない

  • 設定。ZZ と ξ1,ξ2,…\xi_1,\xi_2,\dots を独立にとる。V[Z]=τ2>0V[Z]=\tau^2>0 とする。ξk\xi_k は平均 0・分散 σ2\sigma^2 の独立同分布とする。 Xk=Z+ξkX_k=Z+\xi_k と置くと、異なる番号の組で Cov(Xj,Xk)=τ2\mathrm{Cov}(X_j,X_k)=\tau^2 となる。相関は番号が離れても減らない。
  • 極限は確率変数になる。標本平均は Z+ξˉnZ+\bar\xi_n である。第2項は 0 に確率収束するので、標本平均は ZZ に確率収束する。極限は定数 E[Xk]=E[Z]E[X_k]=E[Z] ではなく、確率変数 ZZ である。
  • すべての観測に共通する誤差(たとえば測定器の較正のずれ)は、回数を増やしても平均で消えない。

期待値だけを仮定する弱法則

独立同分布の列では、分散が無限でも期待値さえ有限なら弱法則が成り立つ。証明の道具は切断で、大きな値を切り落とした確率変数に Chebyshev の不等式を使い、切り落とした部分が無視できることを別に示す。

定理 12.4(Khinchin の弱法則)

X1,X2,…X_1,X_2,\dots が独立同分布で、E[∣X1∣]<∞E[\left\vert X_1\right\vert ]<\infty とする。μ=E[X1]\mu=E[X_1] と置くと、Xˉn→Pμ\bar X_n\xrightarrow{P}\mu である。

証明

各 nn について、最初の nn 項を同じ高さで切断した

Yn,k=Xk1{∣Xk∣≤n},Tn=∑k=1nYn,kY_{n,k}=X_k\mathbf 1_{\{\left\vert X_k\right\vert \le n\}},\qquad T_n=\sum_{k=1}^{n}Y_{n,k}

を考える。Yn,1,…,Yn,nY_{n,1},\dots,Y_{n,n} は独立な確率変数の関数なので独立で、同じ分布をもつ。証明は3段に分かれる。

(i) SnS_n と TnT_n が異なる確率は 0 に近づく。Sn≠TnS_n\neq T_n なら、どれかの項で ∣Xk∣>n\left\vert X_k\right\vert >n である。よって劣加法性から

P(Sn≠Tn)≤∑k=1nP(∣Xk∣>n)=nP(∣X1∣>n)≤E[∣X1∣;∣X1∣>n]P(S_n\neq T_n)\le\sum_{k=1}^{n}P(\left\vert X_k\right\vert >n)=nP(\left\vert X_1\right\vert >n)\le E\bigl[\left\vert X_1\right\vert ;\left\vert X_1\right\vert >n\bigr]

となる。最後の不等式は、事象 {∣X1∣>n}\{\left\vert X_1\right\vert >n\} の上で n<∣X1∣n<\left\vert X_1\right\vert であることによる。関数 ∣X1∣1{∣X1∣>n}\left\vert X_1\right\vert \mathbf 1_{\{\left\vert X_1\right\vert >n\}} は各点で 0 に近づき、∣X1∣\left\vert X_1\right\vert で抑えられる。よって優収束定理(第5章 §5.2)から右辺は 0 に近づく。

(ii) Tn/nT_n/n の期待値は μ\mu に近づく。実際 E[Tn]/n=E[X1;∣X1∣≤n]E[T_n]/n=E[X_1;\left\vert X_1\right\vert \le n] である。切断した値 X11{∣X1∣≤n}X_1\mathbf 1_{\{\left\vert X_1\right\vert \le n\}} は各点でもとの値に近づき、∣X1∣\left\vert X_1\right\vert で抑えられる。よって優収束定理により E[Tn]/n→μE[T_n]/n\to\mu である。

(iii) Tn/nT_n/n は自分の期待値のまわりに集まる。独立性から

V[Tn]n2=nV[Yn,1]n2≤E[X12;∣X1∣≤n]n=E[∣X1∣⋅∣X1∣n1{∣X1∣≤n}]\frac{V[T_n]}{n^2}=\frac{nV[Y_{n,1}]}{n^2}\le\frac{E[X_1^2;\left\vert X_1\right\vert \le n]}{n}=E\Bigl[\left\vert X_1\right\vert \cdot\frac{\left\vert X_1\right\vert }{n}\mathbf 1_{\{\left\vert X_1\right\vert \le n\}}\Bigr]

である。期待値の中の確率変数は ∣X1∣\left\vert X_1\right\vert 以下である。また各標本点で ∣X1(ω)∣/n→0\left\vert X_1(\omega)\right\vert /n\to0 だから、各点で 0 に近づく。再び優収束定理から V[Tn]/n2→0V[T_n]/n^2\to0 を得る。

3つを合わせる。ε>0\varepsilon >0 をとる。(ii) により、番号が大きければ ∣E[Tn]/n−μ∣<ε/2\left\vert E[T_n]/n-\mu\right\vert <\varepsilon /2 となる。このとき

P(∣Xˉn−μ∣>ε)≤P(Sn≠Tn)+P(∣Tnn−μ∣>ε)≤P(Sn≠Tn)+P(∣Tn−E[Tn]n∣>ε2)P(\left\vert \bar X_n-\mu\right\vert >\varepsilon )\le P(S_n\neq T_n)+P\Bigl(\Bigl|\frac{T_n}{n}-\mu\Bigr|>\varepsilon \Bigr) \le P(S_n\neq T_n)+P\Bigl(\Bigl|\frac{T_n-E[T_n]}{n}\Bigr|>\frac{\varepsilon }2\Bigr)

である。第2項は Chebyshev の不等式で次のように抑えられる。

P(∣Tn−E[Tn]n∣>ε2)≤4V[Tn]n2ε2P\Bigl(\Bigl|\frac{T_n-E[T_n]}{n}\Bigr|>\frac{\varepsilon }2\Bigr)\le\frac{4V[T_n]}{n^2\varepsilon ^2}

(i) と (iii) から右辺は 0 に近づく。

期待値が無いときと、特性関数による別証明

  • 期待値が無いと成り立たない。標準 Cauchy 分布では E[∣X1∣]=∞E[\left\vert X_1\right\vert ]=\infty である。第9章 §9.3 で示すとおり、標本平均はどの番号でも標準 Cauchy 分布に従う。平均をとっても分布は狭まらず、弱法則は成り立たない。
  • 特性関数による別証明。Khinchin の弱法則は、第8章の特性関数の展開 φX1(t)=1+iμt+o(t)\varphi_{X_1}(t)=1+\mathrm{i}\mu t+o(t) からも示すことができる。

φXˉn(t)=φX1(t/n)n→eiμt\varphi_{\bar X_n}(t)=\varphi_{X_1}(t/n)^n\to\mathrm{e}^{\mathrm{i}\mu t}

となるので、第13章 §13.1 の Lévy の連続性定理から Xˉn→dμ\bar X_n\xrightarrow{d}\mu である。極限が定数なので、確率収束もする。

例題 12.1 Bernstein 多項式による Weierstrass の近似定理 ★★

オリジナルff を [0,1][0,1] 上の連続関数とする。区間の各点 xx ごとに、二項分布 Bin(n,x)\mathrm{Bin}(n,x) に従う確率変数をとる。それを SnS_n と書く。そのうえで

Bnf(x)=E[f(Snn)]=∑k=0nf(kn)(nk)xk(1−x)n−kB_nf(x)=E\Bigl[f\Bigl(\frac{S_n}{n}\Bigr)\Bigr]=\sum_{k=0}^{n}f\Bigl(\frac kn\Bigr)\binom nk x^k(1-x)^{n-k}

と置く(これは xx の nn 次以下の多項式である)。

  1. 次を示せ。

sup⁡0≤x≤1∣Bnf(x)−f(x)∣→0(n→∞)\sup_{0\le x\le1}\left\vert B_nf(x)-f(x)\right\vert \to0\qquad(n\to\infty) 2. f(x)=∣x−12∣f(x)=\left\vert x-\frac12\right\vert とする。次を示し、n=100n=100 での値 B100f(12)B_{100}f(\frac12) と比べよ。

sup⁡x∣Bnf(x)−f(x)∣≤12n\sup_x\left\vert B_nf(x)-f(x)\right\vert \le\frac{1}{2\sqrt n}

解答
  1. Sn/nS_n/n は、独立な Ber(x)\mathrm{Ber}(x) の平均である。よって平均と分散は次のとおりである。

E[Snn]=x,V[Snn]=x(1−x)n≤14nE\Bigl[\frac{S_n}n\Bigr]=x,\qquad V\Bigl[\frac{S_n}n\Bigr]=\frac{x(1-x)}n\le\frac1{4n}

ff は閉区間で連続だから有界で、一様連続である。上界を ∥f∥\left\Vert f\right\Vert と書く。η>0\eta>0 に対して、δ>0\delta>0 を次が成り立つように選ぶ。

∣y−x∣<δ ⟹ ∣f(y)−f(x)∣<η\left\vert y-x\right\vert <\delta\ \Longrightarrow\ \left\vert f(y)-f(x)\right\vert <\eta

事象 A={∣Sn/n−x∣<δ}A=\{\left\vert S_n/n-x\right\vert <\delta\} の上では、ずれ ∣f(Sn/n)−f(x)∣\left\vert f(S_n/n)-f(x)\right\vert は小さい。余事象の上では、このずれは 2∥f∥2\left\Vert f\right\Vert 以下である。よって

∣Bnf(x)−f(x)∣≤E[∣f(Sn/n)−f(x)∣]≤η+2∥f∥ P(∣Snn−x∣≥δ)≤η+2∥f∥4nδ2\left\vert B_nf(x)-f(x)\right\vert \le E\bigl[\left\vert f(S_n/n)-f(x)\right\vert \bigr]\le\eta+2\left\Vert f\right\Vert \,P\Bigl(\Bigl|\frac{S_n}{n}-x\Bigr|\ge\delta\Bigr)\le\eta+\frac{2\left\Vert f\right\Vert }{4n\delta^2}

となる。最後に (12.7) を使った。

右辺は xx によらない。よって上限をとってから n→∞n\to\infty とすると、上極限は η\eta 以下になる。η\eta は任意だから一様収束が従う。2. 関数 f(x)=∣x−12∣f(x)=\left\vert x-\frac12\right\vert は ∣f(y)−f(x)∣≤∣y−x∣\left\vert f(y)-f(x)\right\vert \le\left\vert y-x\right\vert を満たす。Cauchy–Schwarz の不等式 E[∣Y∣]≤E[Y2]E[\left\vert Y\right\vert ]\le\sqrt{E[Y^2]}(第5章 §5.4)から

∣Bnf(x)−f(x)∣≤E[∣Snn−x∣]≤V[Snn]=x(1−x)n≤12n\left\vert B_nf(x)-f(x)\right\vert \le E\Bigl[\Bigl|\frac{S_n}{n}-x\Bigr|\Bigr]\le\sqrt{V\Bigl[\frac{S_n}{n}\Bigr]}=\sqrt{\frac{x(1-x)}{n}}\le\frac{1}{2\sqrt n}

である。n=100n=100 なら上界は 0.05 になる。点 12\frac12 では f(12)=0f(\frac12)=0 だから、誤差は次の値そのものである。

B100f(12)=E[∣S100100−12∣]B_{100}f\Bigl(\frac12\Bigr)=E\Bigl[\Bigl|\frac{S_{100}}{100}-\frac12\Bigr|\Bigr]

二項分布の確率で和をとると、この値は約 0.0398 となる。上界 0.05 との比は約 0.80 で、これは 2/π≈0.798\sqrt{2/\pi}\approx0.798 に近い。このことは第13章の中心極限定理と、Z∼N(0,1)Z\sim\mathrm N(0,1) について E[∣Z∣]=2/πE[\left\vert Z\right\vert ]=\sqrt{2/\pi} であることから説明できる。

この例題では、確率論の結果を使って解析学の定理(連続関数は多項式で一様に近似できる)を構成的に証明した。

例題 12.2 上昇の回数(隣どうしだけ相関する列) ★★

オリジナルξ1,ξ2,…\xi_1,\xi_2,\dots を独立同分布で、連続な分布関数をもつ確率変数とする。次のように置く。

Xk=1{ξk<ξk+1},Sn=X1+⋯+XnX_k=\mathbf 1_{\{\xi_k<\xi_{k+1}\}},\qquad S_n=X_1+\cdots+X_n

SnS_n は、ξ1,…,ξn+1\xi_1,\dots,\xi_{n+1} の中で隣が上がる箇所の数である。

  1. 平均 E[Xk]E[X_k] と分散 V[Xk]V[X_k] を求めよ。隣との共分散 Cov(Xk,Xk+1)\mathrm{Cov}(X_k,X_{k+1}) も求めよ。また番号の差が2以上の2つの項 XjX_j、XkX_k が独立であることを確かめよ。
  2. V[Sn]=n+212V[S_n]=\frac{n+2}{12} を示し、Sn/n→P12S_n/n\xrightarrow{P}\frac12 を導け。n=1000n=1000 のとき、次の確率を Chebyshev の不等式で上から評価せよ。

P(∣Snn−12∣≥0.05)P\Bigl(\Bigl|\frac{S_n}n-\frac12\Bigr|\ge0.05\Bigr)

解答
  1. 同点の確率は 0。分布関数が連続なので、隣どうしが等しくなる確率は 0 である。隣どうしの組の同時分布は積測度であり、対角線 {x=y}\{x=y\} の測度は Tonelli の定理により次のとおりだからである。

∫P(ξk+1=x) Pξk(dx)=0\int P(\xi_{k+1}=x)\,P_{\xi_k}(\mathrm{d} x)=0

平均と分散。組 (ξk,ξk+1)(\xi_k,\xi_{k+1}) と、順を入れ替えた組は同じ分布をもつ。よって上がる確率と下がる確率はどちらも 12\frac12 である。

E[Xk]=12,V[Xk]=12−14=14E[X_k]=\frac12,\qquad V[X_k]=\frac12-\frac14=\frac14

隣との共分散。3つの値 ξk,ξk+1,ξk+2\xi_k,\xi_{k+1},\xi_{k+2} の大小の並び方は 3!=63!=6 通りある。並べ替えても同時分布が変わらないので、どれも確率 16\frac16 である。XkXk+1=1X_kX_{k+1}=1 は ξk<ξk+1<ξk+2\xi_k<\xi_{k+1}<\xi_{k+2} の1通りだけである。よって

E[XkXk+1]=16,Cov(Xk,Xk+1)=16−14=−112E[X_kX_{k+1}]=\frac16,\qquad\mathrm{Cov}(X_k,X_{k+1})=\frac16-\frac14=-\frac1{12}

である。

離れた組の独立性。∣j−k∣≥2\left\vert j-k\right\vert \ge2 とする。XjX_j は組 (ξj,ξj+1)(\xi_j,\xi_{j+1}) の関数である。もう一方は、添字が重ならない別の組の関数である。

第4章 §4.2 のまとめ方の補題から、両者は独立である。2. (12.5) で、共分散が 0 でない組は隣どうしの n−1n-1 組だけである。よって

V[Sn]=n⋅14+2(n−1)(−112)=3n−2n+212=n+212V[S_n]=n\cdot\frac14+2(n-1)\Bigl(-\frac1{12}\Bigr)=\frac{3n-2n+2}{12}=\frac{n+2}{12}

となる。V[Sn]/n2=(n+2)/(12n2)→0V[S_n]/n^2=(n+2)/(12n^2)\to0 なので、定理 12.2 から Sn/n−12→P0S_n/n-\frac12\xrightarrow{P}0 である。系 12.3 を、次の数列で使ってもよい。

r(0)=14,r(1)=112,r(m)=0(m≥2)r(0)=\frac14,\qquad r(1)=\frac1{12},\qquad r(m)=0\quad(m\ge2)

n=1000n=1000 では

P(∣Snn−12∣≥0.05)≤V[Sn]n2(0.05)2=100212⋅106⋅0.0025=100230000≈0.0334P\Bigl(\Bigl|\frac{S_n}{n}-\frac12\Bigr|\ge0.05\Bigr)\le\frac{V[S_n]}{n^2(0.05)^2}=\frac{1002}{12\cdot10^6\cdot0.0025}=\frac{1002}{30000}\approx0.0334

である。負の相関のために、独立な場合の上界 n/4n2ε2=0.1\frac{n/4}{n^2\varepsilon ^2}=0.1 より小さくなる。

確認テスト

オリジナル

  1. 12.1-1 すべて同じ確率変数 X1=X2=⋯=XX_1=X_2=\cdots=X をとり、V[X]>0V[X]>0 とする。標本平均は何に収束するか。系 12.3 の仮定のどこが満たされないかを答えよ。
  2. 12.1-2 確率 pp が未知の事象を独立に nn 回観測し、相対頻度でその確率を推定する。次を保証する最小の整数 nn を求めよ。

P(∣Xˉn−p∣≥0.05)≤0.05P(\left\vert \bar X_n-p\right\vert \ge0.05)\le0.05

(12.7) を使う場合と、Hoeffding の不等式 P(∣Xˉn−p∣≥ε)≤2e−2nε2P(\left\vert \bar X_n-p\right\vert \ge\varepsilon )\le2\mathrm{e}^{-2n\varepsilon ^2} を使う場合のそれぞれについて求めよ。3. 12.1-3 ξ1,ξ2,…\xi_1,\xi_2,\dots を独立同分布とする。平均を μ\mu、分散を σ2\sigma^2 とする。Xk=12(ξk+ξk+1)X_k=\frac12(\xi_k+\xi_{k+1}) と置く。次を2通りで示せ。

V[Sn]=(2n−1)σ22V[S_n]=\frac{(2n-1)\sigma^2}{2}

2通りとは、共分散の和から求める方法と、SnS_n を ξ\xi の線形結合に書き直す方法である。さらに Xˉn→Pμ\bar X_n\xrightarrow{P}\mu を導け。4. 12.1-4 X1,X2,…X_1,X_2,\dots が独立同分布で、E[X12]<∞E[X_1^2]<\infty とする。分散を σ2=V[X1]\sigma^2=V[X_1] と書く。次の量について σ^n2→Pσ2\hat\sigma_n^2\xrightarrow{P}\sigma^2 を示せ。

σ^n2=1n∑k=1n(Xk−Xˉn)2\hat\sigma_n^2=\frac1n\sum_{k=1}^n(X_k-\bar X_n)^2

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