確率論入門 第15章 §15.7
- 15.1-1 すべての状態が過渡的なら、各状態への訪問は確率 1 で有限回である(定理 15.3)。状態が有限個なら、訪問回数の合計も有限になる。しかし連鎖はすべての時刻にどこかの状態にいるので、合計は無限大でなければならず、矛盾する。
式で書けば
j∈S∑G(i,j)=n∑j∑pij(n)=n∑1=∞
である。状態が有限なら、ある j で G(i,j)=∞ となる。G(i,j)≤G(j,j) から、その状態は再帰的である。2. 15.1-2 a に戻る道は2通りある。1歩目でその場に留まる道と、b に行ってすぐ戻る道である。よって
faa=31+32⋅21=32,G(a,a)=1−2/31=3
である。a から出れば、その場に留まり続けない限り必ず b に行く。留まり続ける確率は 0 なので、fab=1 である。b に戻るには a を経由するしかないので
fbb=pbafab=21,G(b,b)=2,G(a,b)=fabG(b,b)=2
である。行列で確かめる。
Q=(3121320),det(I−Q)=32−31=31
なので
(I−Q)−1=3(1213232)=(32322)
となり一致する。吸収までの時間は、過渡的な2状態に滞在する回数の合計である。よって期待値は G(a,a)+G(a,b)=3+2=5 である。3. 15.1-3 根号の部分を g と置く。
Φ(s)=2qs1−g(s),g(s)=1−4pqs2,g′(s)=−g(s)4pqs
商の微分から
Φ′(s)=4q2s2−g′(s)⋅2qs−(1−g(s))⋅2q=2qs24pqs2/g(s)−(1−g(s)).
p>q なら g(1)=(p−q)2=p−q である。s→1 とすると
Φ′(1)=2q4pq/(p−q)−(1−p+q)=2q4pq/(p−q)−2q=p−q2p−1=p−qp+q
となり、p+q=1 から E0[T1]=1/(p−q) である。4. 15.1-4 2n ステップで原点に戻るのは、各軸の正負の向きを同じ回数ずつ選ぶときである。横の軸の回数を i、縦の軸の回数を j とする。和は n である。よって
p00(2n)=i+j=n∑i!i!j!j!(2n)!4−2n=4−2n(n2n)i=0∑n(i!(n−i)!n!)2=4−2n(n2n)i∑(in)2
である。途中で (i!j!)2(2n)!=(n2n)(i!j!n!)2 を使った。恒等式から最後の和は (n2n) なので、p00(2n)=(n2n)24−2n を得る。
恒等式は、2n 個から n 個選ぶ方法を、前半と後半から何個ずつ選ぶかで分けて数えれば従う。前半から i 個選ぶ場合を足すと
(n2n)=i∑(in)(n−in)=i∑(in)2
となる。5. 15.1-5 1歩の変位 η∈{−1,0,1} は、独立な2つの Bernoulli(21) の確率変数を使って
η=B+B′−1,P(η=1)=41,P(η=0)=21,P(η=−1)=41
と書ける。n 歩後の位置は ∑(Bk+Bk′)−n である。和 ∑(Bk+Bk′) は二項分布 Bin(2n,21) に従うので
p00(n)=P(Bin(2n,21)=n)=(n2n)4−n∼πn1
である。∑nn−1/2=∞ なので、定理 15.3 から原点は再帰的である。
§15.2 一次ステップ解析
- 15.2-1 i≥1 で p⋅1+q⋅1=1 なので、定数 1 は (15.15) を満たす。しかし §15.2 の計算から、最小の非負解は hi=(q/p)i<1 である。定理 15.10 から、到達確率は最小解の方である。定数 1 は方程式を満たすが、帰納法の評価 (15.16) は x≥h を与えるだけで、等号を保証しない。状態空間が無限なので、命題 15.12 の一意性も使えない。
- 15.2-2 公正な場合は、u2=2/6=31 と D2=2⋅4=8 である。p=32 では r=21 で
u2=1−(1/2)61−(1/2)2=63/643/4=6348=2116≈0.762
である。3. 15.2-3 方程式は次のとおりである。
kN=0,k0=1+k1,ki=1+21(ki−1+ki+1)(1≤i≤N−1)
命題 15.12 から、解はただ1つである。ki=N2−i2 を入れると
1+21[N2−(i−1)2+N2−(i+1)2]=1+N2−21(2i2+2)=N2−i2
で、境界の式 k0=1+(N2−1)=N2 と kN=0 も満たす。N=3 のときは、方程式を直接解いて確かめる。
k0k1k2=1+k1,k1=1+21(k0+k2),k2=1+21k1=1+21(1+k1+k2) ⟹ k1=3+k2=1+21(3+k2) ⟹ k2=5,k1=8,k0=9(方程式)(第1式を第2式に代入)(第3式に代入)
公式の値 9−4=5、9−1=8、9 と一致する。4. 15.2-4 過渡的な状態は「進みなし(s0)」「直前が H(s1)」と、もう1つある。それは「直前が HT(s2)」である。吸収状態は「HTH 完成」である。
- 進みなしからは、H で s1 に、T で同じ状態に移る。
- s1 からは、H で同じ状態に留まり(新しい H が先頭になる)、T で s2 に移る。
- s2 からは、H で完成し、T で s0 に戻る(HTT の末尾は HTH の先頭と重ならない)。
各状態からの平均時間を k0,k1,k2 とすると
k0=1+21(k1+k0),k1=1+21(k1+k2),k2=1+21k0.
順に解く。
k0k1k0=2+k1=2+k2=4+k2=5+21k0(第1式)(第2式)(第3式を代入)
よって k0=10 である。
§15.3 定常分布と極限定理
- 15.3-1 P=I の連鎖は状態を動かないので、1→2 である。よって既約でない(クラスが2つある)。定理 15.19 は既約な連鎖についての主張なので、矛盾しない。
- 15.3-2 定常分布と平均再帰時間は
π=(0.40.1,0.40.3)=(41,43),m1=π11=4
である。ずれは
p11(n)−π1=a+ba(1−a−b)n=0.75×0.6n
なので、条件 0.75×0.6n<0.01 は
n>log0.6log(0.01/0.75)≈8.45
と同値である。最小の n は 9 である。実際 0.75×0.68≈0.0126 で、0.75×0.69≈0.0076 である。3. 15.3-3 πP=π の第0成分は π0=qπ0+qπ1 である。ここから π1=qpπ0 を得る。j≥1 の成分は πj=pπj−1+qπj+1 である。r=p/q と置き、πj=rjπ0 と仮定して次の項を計算する。
qπj+1r−pπj+1=πj−pπj−1=(rj−prj−1)π0=rj−1(r−p)π0=qp−p=qp(1−q)=qp2=rj−1q2p2π0=rj+1π0
帰納法から πj=rjπ0 である。r<1 なので規格化でき、πj=(1−r)rj である。p=31 では r=21 である。よって π0=21 で、m0=1/π0=2 である。4. 15.3-4 一様分布 πi=1/∣S∣ を考える。列の和が 1 なので
i∑πipij=∣S∣1i∑pij=∣S∣1=πj
となり、定常分布である。系 15.20 から定常分布はこれだけである。定理 15.19 から mi=1/πi=∣S∣ である。5. 15.3-5 n ステップ後の位置は、二項分布を平行移動したものである。よって
pij(n)=p0,j−i(n)≤kmaxp0k(n)≤(⌊n/2⌋n)2−n→0
である。定常分布 π があるとすると、任意の n で
πj=i∑πipij(n)≤kmaxp0k(n)i∑πi=kmaxp0k(n)
が成り立つ。n→∞ とすると πj=0 となる。すべての成分が 0 なのは、総和が 1 であることと矛盾する。
§15.4 エルゴード定理と再生報酬
- 15.4-1 連鎖は既約で有限なので、正再帰的である。エルゴード定理から
nV3(n)→m31=π3=83a.s.
である。2. 15.4-2 到着間隔を ξ とする。周期の中の時刻 s∈[0,ξ) に来た客の待ち時間は ξ−s である。その積分が1周期の報酬で
∫0ξ(ξ−s)ds=2ξ2
となる。間隔の平均と2乗の平均は
E[ξ]=1,E[ξ2]=V[ξ]+E[ξ]2=31+1=34
なので、定理 15.24 から長時間平均は
E[ξ]E[ξ2/2]=12/3=32
(約 6.7 分)である。平均の到着間隔の半分(5 分)より長い。長い間隔ほどその中に来る客が多いので、客が経験する間隔は平均より長くなる。3. 15.4-3 2状態の公式で a=0.1、b=0.3 である。よって定常分布は
π=(0.40.3,0.40.1)=(0.75,0.25)
である。エルゴード定理から、平均利益は 3×0.75+(−1)×0.25=2 である。4. 15.4-4 行列の累乗 Pn は、偶数乗なら単位行列で、奇数乗なら P 自身である。よって p11(n) は 1,0,1,0,… と振動して収束しない。一方、∑k<np11(k)=⌈n/2⌉ なので
n1⌈2n⌉→21
である。これは毎回2歩で戻ること、つまり m1=2 と合う。
一般の場合は、0≤Vj(n)/n≤1 なので (15.30) に有界収束定理(第5章 §5.2 の優収束定理)を使えて
n1k=0∑n−1pij(k)=Ei[nVj(n)]→mj1
である。
- 15.5-1 列の和もすべて 1 なので、確認テスト 15.3-4 から一様分布 π=(31,31,31) が定常分布である。しかし π1p12=31=0=π2p21 なので、詳細つり合いは成り立たない。この連鎖は1つの向きにしか回らず、時間を逆にすると向きが変わるので可逆でない。
- 15.5-2 重みは wk=2−k である。上へ移る提案は確率 wk+1/wk=21 で受け入れ、下へ移る提案は必ず受け入れる。よって
pk,k+1=21⋅21=41 (k=0,1,2),pk,k−1=21 (k=1,2,3),p00=43, p11=p22=41, p33=21
である。目標の分布 π=(8,4,2,1)/15 について
πkpk,k+1=4πk,πk+1pk+1,k=2πk+1=4πk
なので、詳細つり合いが成り立つ。時間平均の極限は
k∑kπk=150⋅8+1⋅4+2⋅2+3⋅1=1511
である。3. 15.5-3 定理 15.19 から
π3=64(36)=6420=165,m3=516=3.2,m0=26=64
である。4. 15.5-4 2つの粒子の1歩をそれぞれ η,η′ とする(独立に ±1)。法5で Dn+1−Dn=η−η′ である。この差は +2,0,−2 を確率 41,21,41 でとり、過去と独立である。よって D は次の遷移確率のマルコフ連鎖である。
pd,d±2=41,pdd=21
これは 25 状態の組 (X,Y) の連鎖から集約したものである。
3⋅2=6≡1(mod5) なので、En=3Dnmod5 と置く。差の ±2 の動きは、新しい変数の ±1 の動きになる。
よって新しい変数は円周上で、左右に確率 41 ずつ動き、確率 21 で留まる連鎖である。出発の D0=1 は E0=3 に対応する。2つの粒子が出会うことは E=0 に対応する。0 に達するまでの平均時間を ke とする(k0=k5=0)。e=1,…,4 について
ke=1+21ke+41(ke−1+ke+1),すなわちke=2+21(ke−1+ke+1)
である。ke=2e(5−e) を入れると
2+21⋅2[(e−1)(6−e)+(e+1)(4−e)]=2+(2e(5−e)−2)=2e(5−e)
で満たす。命題 15.12 から解はこれだけである。求める期待値は k3=2⋅3⋅2=12 である。5. 15.5-5 i=j で qij,qji>0 とし、比を
ρ=wiqijwjqji≤1
と仮定する(ρ>1 なら2つの状態を入れ替える)。このとき
pij=qijρ=wiwjqji,pji=qjimin(1,1/ρ)=qji
なので
wipij=wjqji=wjpji
で、Z で割れば詳細つり合いである。提案の確率が 0 の場合は別に見る。qij=0 のときは pij=0 と定める。qji=0 のときも受け入れ確率が 0 となって pij=0 なので、両辺とも 0 である。
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