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Riemann テンソル

2026年10月15日23分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第10章 曲率
目次
  1. 偏微分は交換するが、共変微分は交換しない
  2. 交換子の計算
  3. 平坦な空間では 、その逆
  4. 小さな閉曲線に沿った平行移動
  5. 確認テスト
  6. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対論入門 第10章 §10.1 ★★★ 共変微分の交換子は、微分を含まない (1,3)(1,3) 型テンソルになる。それが Riemann テンソルで、小さなループに沿った平行移動のずれも同じ量で書ける

第8章では、計量 gμνg_{\mu\nu} から Christoffel 記号 Γρμν\Gamma^\rho{}_{\mu\nu} を作り、共変微分と平行移動を定義した。そこで2つの事実が残された。1つは、各点で計量の1階微分は座標の取り方で 0 にできるのに、2階微分のうち n2(n2−1)/12n^2(n^2-1)/12 個(4次元で 20 個)は消せないこと(第8章 §8.2 の局所平坦性の定理)である。

もう1つは、球面上でベクトルを閉じた道に沿って平行移動すると、1周したときに元の向きに戻らず、その回転の角が囲んだ面積に比例すること(第8章 §8.4)である。この章では、この2つが同じ1つのテンソル、Riemann テンソルで表されることを示す。

一般相対論で曲率が要る理由は、第7章の等価原理にある。自由落下する実験室の中では重力は消えるが、離れた2点の落下の加速度の差、つまり潮汐力は消えなかった。

第8章の言葉では、重力の場の「強さ」を表す Γ\Gamma は1点で 0 にできるが、その微分は消せない。第9章では、自由落下する粒子が測地線

d2xρdτ2+Γρμνdxμdτdxνdτ=0(10.1)\frac{\mathrm{d}^2x^\rho}{\mathrm{d}\tau^2}+\Gamma^\rho{}_{\mu\nu}\frac{d x^\mu}{d \tau}\frac{d x^\nu}{d \tau}=0\tag{10.1}

に沿って動くこと、そして静的で弱い重力の場では計量が

g00≃1+2Φc2,gij≃−δij(10.2)g_{00}\simeq1+\frac{2\Phi}{c^2},\qquad g_{ij}\simeq-\delta_{ij}\tag{10.2}

で表され(Φ\Phi は Newton のポテンシャル)、(10.1) が Newton の運動方程式に戻ることを示した(第9章 §9.2)。この章では、隣り合う2本の測地線の間隔の変化を計算し、その加速度が Riemann テンソルで決まり、弱い場の極限で第7章の潮汐力の式に一致することを示す。

章の流れは次のとおりである。

  1. §10.1 では、共変微分の交換子から Riemann テンソルを定義し、小さな閉曲線に沿った平行移動のずれがそれで書けることを示す。
  2. §10.2 では、測地線偏差の方程式を導き、潮汐力との関係を確かめる。
  3. §10.3 では、Riemann テンソルの対称性を調べて独立な成分を数え、縮約して Ricci テンソルとスカラー曲率を作り、Bianchi 恒等式を証明する。最後の縮約した Bianchi 恒等式 ∇μGμν=0\nabla^\mu G_{\mu\nu}=0 は、第11章で Einstein 方程式の形を決める条件になる。
  4. §10.4 では、2次元の球面で曲率を最後まで計算し、第8章の平行移動の結果と照らし合わせる。

曲率と潮汐力を解析力学の側から整理した道筋は、虎の巻『解析力学から様々な理論分野を組み立てる』第2部第14章にある。

この章の符号の流儀

  • 計量は (+,−,−,−)(+,-,-,-) で、Christoffel 記号は第8章の式 Γρμν=12gρσ(∂μgσν+∂νgσμ−∂σgμν)\Gamma^\rho{}_{\mu\nu}=\frac12g^{\rho\sigma}(\partial_\mu g_{\sigma\nu}+\partial_\nu g_{\sigma\mu}-\partial_\sigma g_{\mu\nu}) を使う。
  • Riemann テンソルと Ricci テンソルの定義は MTW・Carroll と同じ式にそろえる(下の (10.7) と (10.26))。Weinberg の本は Riemann テンソルの全体の符号が逆なので、式を比べるときは注意する。
  • 正定値の計量 a2(dθ2+sin⁡2θ dφ2)a^2(\mathrm{d}\theta^2+\sin^2\theta\,\mathrm{d}\varphi^2) の球面でスカラー曲率は R=+2/a2R=+2/a^2 になる(§10.4)。

偏微分は交換するが、共変微分は交換しない

平らな空間の直交座標では、偏微分の順序を入れ替えても結果は変わらない。

∂μ∂νVρ=∂ν∂μVρ\partial_\mu\partial_\nu V^\rho=\partial_\nu\partial_\mu V^\rho

しかし ∂μ∂νVρ\partial_\mu\partial_\nu V^\rho は一般の座標でテンソルにならない(第8章 §8.1)ので、この性質は座標によらない主張になっていない。座標によらない形にするには、偏微分を共変微分に置き換えた ∇μ∇νVρ\nabla_\mu\nabla_\nu V^\rho を考え、その順序を入れ替えた差を調べればよい。

その差はテンソルであり、平らな空間の直交座標では Γ=0\Gamma=0 なので 0 になる。テンソルの成分は1つの座標で 0 ならすべての座標で 0 である(第8章 §8.1 の定理)から、平らな空間ではこの差がどの座標でも 0 である。逆に言えば、この差が 0 でなければ、空間は平らでない。

計算の準備として、第8章 §8.3 の共変微分の規則を再掲しておく。ベクトルと (1,1)(1,1) 型テンソルに対して

∇μVρ=∂μVρ+ΓρμσVσ,∇μTρν=∂μTρν+ΓρμλTλν−ΓλμνTρλ\begin{align*}\nabla_\mu V^\rho&=\partial_\mu V^\rho+\Gamma^\rho{}_{\mu\sigma}V^\sigma,\tag{10.3}\\\nabla_\mu T^\rho{}_\nu&=\partial_\mu T^\rho{}_\nu+\Gamma^\rho{}_{\mu\lambda}T^\lambda{}_\nu-\Gamma^\lambda{}_{\mu\nu}T^\rho{}_\lambda\tag{10.4}\end{align*}

である。上付きの添字には +Γ+\Gamma、下付きの添字には −Γ-\Gamma の項が1つずつ付く。この章で使う接続は Levi-Civita 接続なので、Γρμν=Γρνμ\Gamma^\rho{}_{\mu\nu}=\Gamma^\rho{}_{\nu\mu}(ねじれが無い)である。

交換子の計算

Tρν=∇νVρT^\rho{}_\nu=\nabla_\nu V^\rho は (1,1)(1,1) 型テンソルなので、(10.4) を当てはめる。

∇μ∇νVρ=∂μ(∇νVρ)+Γρμλ∇νVλ−Γλμν∇λVρ=∂μ∂νVρ+(∂μΓρνσ)Vσ+Γρνσ∂μVσ+Γρμλ∂νVλ+ΓρμλΓλνσVσ−Γλμν∇λVρ.\begin{align*}\nabla_\mu\nabla_\nu V^\rho &=\partial_\mu\bigl(\nabla_\nu V^\rho\bigr)+\Gamma^\rho{}_{\mu\lambda}\nabla_\nu V^\lambda-\Gamma^\lambda{}_{\mu\nu}\nabla_\lambda V^\rho\\&=\partial_\mu\partial_\nu V^\rho+\bigl(\partial_\mu\Gamma^\rho{}_{\nu\sigma}\bigr)V^\sigma+\Gamma^\rho{}_{\nu\sigma}\partial_\mu V^\sigma\\&\qquad+\Gamma^\rho{}_{\mu\lambda}\partial_\nu V^\lambda+\Gamma^\rho{}_{\mu\lambda}\Gamma^\lambda{}_{\nu\sigma}V^\sigma-\Gamma^\lambda{}_{\mu\nu}\nabla_\lambda V^\rho .\tag{10.5}\end{align*}

2行目は、∇νVρ=∂νVρ+ΓρνσVσ\nabla_\nu V^\rho=\partial_\nu V^\rho+\Gamma^\rho{}_{\nu\sigma}V^\sigma を ∂μ\partial_\mu で微分して積の微分を展開したものである。次に、μ\mu と ν\nu を入れ替えた式を引く。6つの項を1つずつ調べると、次のようになる。

  1. ∂μ∂νVρ\partial_\mu\partial_\nu V^\rho は μ,ν\mu,\nu について対称なので、引き算で消える。
  2. Γρνσ∂μVσ+Γρμλ∂νVλ\Gamma^\rho{}_{\nu\sigma}\partial_\mu V^\sigma+\Gamma^\rho{}_{\mu\lambda}\partial_\nu V^\lambda は、和の添字の名前をそろえると μ,ν\mu,\nu について対称な組になっていて、消える。
  3. Γλμν∇λVρ\Gamma^\lambda{}_{\mu\nu}\nabla_\lambda V^\rho は、ねじれが無いので μ,ν\mu,\nu について対称で、消える。
  4. 残るのは、VσV^\sigma に微分が掛かっていない項だけである。

したがって

[∇μ,∇ν]Vρ≔∇μ∇νVρ−∇ν∇μVρ=RρσμνVσ(10.6)\bigl[\nabla_\mu,\nabla_\nu\bigr]V^\rho\coloneqq\nabla_\mu\nabla_\nu V^\rho-\nabla_\nu\nabla_\mu V^\rho=R^\rho{}_{\sigma\mu\nu}V^\sigma\tag{10.6}

となる。ここで

  Rρσμν=∂μΓρνσ−∂νΓρμσ+ΓρμλΓλνσ−ΓρνλΓλμσ  (10.7)\boxed{\;R^\rho{}_{\sigma\mu\nu}=\partial_\mu\Gamma^\rho{}_{\nu\sigma}-\partial_\nu\Gamma^\rho{}_{\mu\sigma}+\Gamma^\rho{}_{\mu\lambda}\Gamma^\lambda{}_{\nu\sigma}-\Gamma^\rho{}_{\nu\lambda}\Gamma^\lambda{}_{\mu\sigma}\;}\tag{10.7}

とおいた。

定義 10.1(Riemann テンソル)

(10.7) で定まる RρσμνR^\rho{}_{\sigma\mu\nu} を Riemann テンソル(曲率テンソル)と呼ぶ。すべての成分が 0 のとき、その空間(時空)は平坦であるという。

(10.6) の左辺には VV の微分が現れていたのに、右辺では微分がすべて消えて、VσV^\sigma の値に掛かる係数だけが残った。この係数は計量の2階微分(∂Γ\partial\Gamma の項)と1階微分の2乗(ΓΓ\Gamma\Gamma の項)で書かれていて、ベクトルにはよらない。

命題 10.2

RρσμνR^\rho{}_{\sigma\mu\nu} は (1,3)(1,3) 型テンソルである。

証明

(10.6) の左辺は、テンソル ∇μ∇νVρ\nabla_\mu\nabla_\nu V^\rho から添字を入れ替えたテンソルを引いたものである。したがって、どのベクトル場 VV に対しても (1,2)(1,2) 型テンソルである。座標 xx から x′x' へ変えたとき、両辺の変換を比べる。左辺は (1,2)(1,2) 型の変換則に従い、右辺の VσV^\sigma はベクトルとして変換するので、

R′ρσμνV′σ=∂x′ρ∂xα∂xγ∂x′μ∂xδ∂x′νRαβγδVβ=∂x′ρ∂xα∂xβ∂x′σ∂xγ∂x′μ∂xδ∂x′νRαβγδV′σR'^\rho{}_{\sigma\mu\nu}V'^\sigma=\frac{\partial x'^\rho}{\partial x^\alpha}\frac{\partial x^\gamma}{\partial x'^\mu}\frac{\partial x^\delta}{\partial x'^\nu}R^\alpha{}_{\beta\gamma\delta}V^\beta =\frac{\partial x'^\rho}{\partial x^\alpha}\frac{\partial x^\beta}{\partial x'^\sigma}\frac{\partial x^\gamma}{\partial x'^\mu}\frac{\partial x^\delta}{\partial x'^\nu}R^\alpha{}_{\beta\gamma\delta}V'^\sigma

が成り立つ。2つ目の等号では Vβ=(∂xβ/∂x′σ)V′σV^\beta=(\partial x^\beta/\partial x'^\sigma)V'^\sigma を使った。点 pp での V′σV'^\sigma の値は自由に選べるので、その係数どうしが等しい。これは (1,3)(1,3) 型テンソルの変換則そのものである。

Γ\Gamma はテンソルでないのに、その組み合わせ (10.7) がテンソルになっている。Christoffel 記号の変換則の非斉次の項(第8章 §8.3)が、∂Γ\partial\Gamma の項と ΓΓ\Gamma\Gamma の項の間でちょうど打ち消し合っている。上の証明は、その打ち消し合いを直接計算する代わりに、左辺がテンソルであることから結論を引き出した。

定義から直ちに分かる性質を1つ挙げておく。(10.7) は後ろの2つの添字について反対称である。

Rρσμν=−Rρσνμ.(10.8)R^\rho{}_{\sigma\mu\nu}=-R^\rho{}_{\sigma\nu\mu}.\tag{10.8}

交換子 [∇μ,∇ν][\nabla_\mu,\nabla_\nu] が μ,ν\mu,\nu について反対称であることの表れである。ほかの対称性は §10.3 で調べる。

余接ベクトル ωσ\omega_\sigma に対しても同じ計算ができて、結果は

[∇μ,∇ν]ωσ=−Rρσμν ωρ(10.9)\bigl[\nabla_\mu,\nabla_\nu\bigr]\omega_\sigma=-R^\rho{}_{\sigma\mu\nu}\,\omega_\rho\tag{10.9}

になる(確認テスト 10.1-3)。一般のテンソルでは、上付きの添字1つごとに +R+R の項、下付きの添字1つごとに −R-R の項が付く。

平坦な空間では R=0R=0、その逆

平らな空間の直交座標(時空なら Minkowski 座標)では Γ=0\Gamma=0 なので、(10.7) から Rρσμν=0R^\rho{}_{\sigma\mu\nu}=0 である。Riemann テンソルはテンソルなので、同じ空間をどんな曲線座標で表しても Rρσμν=0R^\rho{}_{\sigma\mu\nu}=0 のままである。平面の極座標は Γrφφ=−r\Gamma^r{}_{\varphi\varphi}=-r のように 0 でない Christoffel 記号を持つが、Riemann テンソルは 0 になる(確認テスト 10.1-2)。

Christoffel 記号が 0 でないことは、座標が曲がっていることを表すだけで、空間の曲がりを表すとは限らない。曲がっているかどうかを判定するのは Riemann テンソルである。

逆向きの主張も成り立つ。

定理 10.3(平坦性の判定)

ある領域で Rρσμν=0R^\rho{}_{\sigma\mu\nu}=0 ならば、その領域の各点の近くで、計量の成分が定数になる座標をとることができる。定数は時空なら ημν\eta_{\mu\nu}、正定値の空間なら δμν\delta_{\mu\nu} である。

証明の筋
  1. 次の小節で示すように、平行移動のずれは囲んだ領域の Riemann テンソルの積分で決まる。曲率が0なら、点 pp から点 qq へベクトルを平行移動した結果は経路によらない。
  2. そこで点 pp で正規直交な基底 e(a)e_{(a)} を選ぶ。添字の範囲は a=0,…,n−1a=0,\dots,n-1 である。それを各点へ平行移動して、nn 本のベクトル場 e(a)μ(x)e_{(a)}{}^\mu(x) を作る。経路によらないので、場は一意に決まり、どこでも ∇νe(a)μ=0\nabla_\nu e_{(a)}{}^\mu=0 を満たす。
  3. 平行移動は内積を保つ(第8章 §8.4)ので、各点で gμνe(a)μe(b)ν=ηabg_{\mu\nu}e_{(a)}{}^\mu e_{(b)}{}^\nu=\eta_{ab} である。
  4. 添字を下げた e(a)μ=gμνe(a)νe_{(a)\mu}=g_{\mu\nu}e_{(a)}{}^\nu は ∇νe(a)μ=0\nabla_\nu e_{(a)\mu}=0 を満たす。Γ\Gamma が下2つの添字について対称なので

∂νe(a)μ−∂μe(a)ν=∇νe(a)μ−∇μe(a)ν=0\partial_\nu e_{(a)\mu}-\partial_\mu e_{(a)\nu}=\nabla_\nu e_{(a)\mu}-\nabla_\mu e_{(a)\nu}=0

である。したがって各点の近くで、e(a)μ=∂μyae_{(a)\mu}=\partial_\mu y_a を満たす関数 yay_a がある。5. ya=ηabyby^a=\eta^{ab}y_b を新しい座標に選ぶと、線素は

ds2=gμνdxμdxν=ηabdyadyb\mathrm{d} s^2=g_{\mu\nu}\mathrm{d} x^\mu\mathrm{d} x^\nu=\eta_{ab}\mathrm{d} y^a\mathrm{d} y^b

となる。

最後の段は、逆行列の関係 gμν=ηabe(a)μe(b)νg^{\mu\nu}=\eta^{ab}e_{(a)}{}^\mu e_{(b)}{}^\nu から、gμν=ηabe(a)μe(b)νg_{\mu\nu}=\eta^{ab}e_{(a)\mu}e_{(b)\nu} が出ることによる。4番目の段の「回転が 0 の余接ベクトル場は勾配で書ける」ことは、単連結な領域で成り立つ Poincaré の補題である。

定理 10.3 により、「重力の場があるかどうか」という問いは、「Riemann テンソルが 0 かどうか」という座標によらない問いに置き換わる。加速する座標や回転する座標で現れる見かけの重力は、Christoffel 記号を 0 でなくするが、Riemann テンソルは 0 のままである。その例を次の例題で確かめる。

例題 10.1 一様に加速する座標の曲率 ★★

オリジナル第8章 §8.2 の例題で導いた、一様に加速する座標の2次元の計量

ds2=N(ξ)2c2dT2−dξ2,N(ξ)=1+αξc2\mathrm{d} s^2=N(\xi)^2c^2\mathrm{d} T^2-\mathrm{d}\xi^2,\qquad N(\xi)=1+\frac{\alpha\xi}{c^2}

を考える。座標は x0=cTx^0=cT、x1=ξx^1=\xi である。α\alpha は原点 ξ=0\xi=0 の観測者の固有加速度である。

  1. 0 でない Christoffel 記号を書き出せ(第8章の確認テスト 8.3-2 の結果を使ってよい)。
  2. Rξ0ξ0R^\xi{}_{0\xi0} を (10.7) から計算し、0 になることを示せ。
  3. 2次元では Riemann テンソルの独立な成分が1つしかないこと(§10.3)を使い、この座標で表した時空が平坦であることを結論せよ。その物理的な意味を述べよ。
解答
  1. 計量の成分は g00=N2g_{00}=N^2、g11=−1g_{11}=-1 で、時刻によらない。0 でない微分は ∂ξg00=2NN′\partial_\xi g_{00}=2NN'(N′=dN/dξ=α/c2N'=\mathrm{d} N/\mathrm{d}\xi=\alpha/c^2)だけである。第8章の Christoffel 記号の式から

Γ00ξ=Γ0ξ0=12g00∂ξg00=N′N=αc2N,Γξ00=−12gξξ∂ξg00=NN′=αNc2.\Gamma^0{}_{0\xi}=\Gamma^0{}_{\xi0}=\frac12g^{00}\partial_\xi g_{00}=\frac{N'}{N}=\frac{\alpha}{c^2N},\qquad \Gamma^\xi{}_{00}=-\frac12g^{\xi\xi}\partial_\xi g_{00}=NN'=\frac{\alpha N}{c^2}.

ほかの成分はどれも0である。

Γ000=Γ0ξξ=Γξ0ξ=Γξξξ=0\Gamma^0{}_{00}=\Gamma^0{}_{\xi\xi}=\Gamma^\xi{}_{0\xi}=\Gamma^\xi{}_{\xi\xi}=0 2. (10.7) で (ρ,σ,μ,ν)=(ξ,0,ξ,0)(\rho,\sigma,\mu,\nu)=(\xi,0,\xi,0) とおく。

Rξ0ξ0=∂ξΓξ00−∂0Γξξ0+ΓξξλΓλ00−Γξ0λΓλξ0.R^\xi{}_{0\xi0}=\partial_\xi\Gamma^\xi{}_{00}-\partial_0\Gamma^\xi{}_{\xi0}+\Gamma^\xi{}_{\xi\lambda}\Gamma^\lambda{}_{00}-\Gamma^\xi{}_{0\lambda}\Gamma^\lambda{}_{\xi0}.

第1項は ∂ξ(NN′)=N′2=α2/c4\partial_\xi(NN')=N'^2=\alpha^2/c^4(N′′=0N''=0)。第2項は Γξξ0=0\Gamma^\xi{}_{\xi0}=0 なので 0。第3項は Γξξλ=0\Gamma^\xi{}_{\xi\lambda}=0 なので 0。第4項は λ=0\lambda=0 だけが残り、Γξ00Γ0ξ0=NN′⋅N′/N=N′2\Gamma^\xi{}_{00}\Gamma^0{}_{\xi0}=NN'\cdot N'/N=N'^2。したがって

Rξ0ξ0=α2c4−α2c4=0.R^\xi{}_{0\xi0}=\frac{\alpha^2}{c^4}-\frac{\alpha^2}{c^4}=0 . 3. 2次元では独立な成分が R0ξ0ξR_{0\xi0\xi} の1つだけで、ほかの成分はそれに ±1\pm1 を掛けたものか 0 である。Rξ0ξ0=gξξRξ0ξ0=0R_{\xi0\xi0}=g_{\xi\xi}R^\xi{}_{0\xi0}=0 なので、Riemann テンソルはすべて 0 になる。この座標は、第7章 §7.4 の Rindler 座標と同じく Minkowski 時空を加速する観測者の目で表したものにすぎない。Christoffel 記号 Γξ00=αN/c2\Gamma^\xi{}_{00}=\alpha N/c^2 は 0 でなく、手を放した物体は ξ\xi の負の向きに落ちていく(見かけの重力)が、時空そのものは平坦である。等価原理が「一様な重力の場は加速度で消せる」と述べるとき、消せるのはこの種の、曲率を伴わない重力である。

小さな閉曲線に沿った平行移動

第8章 §8.4 では、球面上でベクトルを閉じた道に沿って平行移動すると、1周したときに向きが変わることを見た。その変化を Riemann テンソルで書く。

2つの小さなベクトル δaμ\delta a^\mu、δbμ\delta b^\mu を考える。点 pp から出るこの2本で張られた平行四辺形をとる。点 pp を出て

p→p+δa→p+δa+δb→p+δb→pp\to p+\delta a\to p+\delta a+\delta b\to p+\delta b\to p

の順に1周する(図 10.1)。出発点でのベクトル VρV^\rho をこの道に沿って平行移動し、戻ってきたときのベクトルを Vρ+δVρV^\rho+\delta V^\rho とする。

図

図 10.1 δa\delta a と δb\delta b で張られた小さな平行四辺形を δa\delta a の向きから1周する。出発したベクトル VV(青)を平行移動して戻すと、V+δVV+\delta V(赤)になる。ずれ δVρ\delta V^\rho は −RρσμνVσδaμδbν-R^\rho{}_{\sigma\mu\nu}V^\sigma\delta a^\mu\delta b^\nu で、囲んだ面積に比例する(図ではずれを誇張して描いた)。

命題 10.4(小さなループに沿った平行移動)

δa,δb\delta a,\delta b の2次までで

δVρ=−Rρσμν(p) Vσ δaμ δbν(10.10)\delta V^\rho=-R^\rho{}_{\sigma\mu\nu}(p)\,V^\sigma\,\delta a^\mu\,\delta b^\nu\tag{10.10}

が成り立つ。

証明

点 pp で Γ(p)=0\Gamma(p)=0 となる座標を使い、その点を原点にとる。これは第8章 §8.3 で作った座標

x′ρ=yρ+12Γρμν(p)yμyνx'^\rho=y^\rho+\frac12\Gamma^\rho{}_{\mu\nu}(p)y^\mu y^\nu

である。原点の近くで Christoffel 記号は

Γρμσ(x)=∂λΓρμσ(p) xλ+O(x2)\Gamma^\rho{}_{\mu\sigma}(x)=\partial_\lambda\Gamma^\rho{}_{\mu\sigma}(p)\,x^\lambda+O(x^2)

と展開できる。平行移動の方程式(第8章 §8.4)は、道の上の点 xμ(λ)x^\mu(\lambda) で

dVρdλ=−Γρμσ(x) dxμdλ Vσ\frac{d V^\rho}{d \lambda}=-\Gamma^\rho{}_{\mu\sigma}(x)\,\frac{d x^\mu}{d \lambda}\,V^\sigma

である。Christoffel 記号が O(x)O(x) なので、道に沿ったベクトルの変化は O(x2)O(x^2) である。次の2つは、どちらも dx\mathrm{d} x を掛けて積分すると3次以上の量になる。

  • 右辺の VσV^\sigma を出発時の値に置き換えた誤差。
  • Christoffel 記号の展開の O(x2)O(x^2) の項の寄与。

したがって2次までで

δVρ=−∮Γρμσ(x) Vσ dxμ=−∂λΓρμσ(p) Vσ∮xλ dxμ\delta V^\rho=-\oint\Gamma^\rho{}_{\mu\sigma}(x)\,V^\sigma\,\mathrm{d} x^\mu =-\partial_\lambda\Gamma^\rho{}_{\mu\sigma}(p)\,V^\sigma\oint x^\lambda\,\mathrm{d} x^\mu

となる。残った積分は平行四辺形の形だけで決まり、

∮xλ dxμ=δaλδbμ−δbλδaμ\oint x^\lambda\,\mathrm{d} x^\mu=\delta a^\lambda\delta b^\mu-\delta b^\lambda\delta a^\mu

である。たとえば2辺を座標軸にとった長方形を考える。2辺 δa\delta a、δb\delta b をそれぞれ1番目と2番目の座標軸にとると、次のようになる。

  • ∮x1dx2\oint x^1\mathrm{d} x^2 は、右の辺からの δa δb\delta a\,\delta b である。
  • ∮x2dx1\oint x^2\mathrm{d} x^1 は、上の辺を逆向きに進む −δa δb-\delta a\,\delta b である。
  • ほかは0である。

代入すると

δVρ=−(∂μΓρνσ−∂νΓρμσ)(p) Vσ δaμ δbν\delta V^\rho=-\bigl(\partial_\mu\Gamma^\rho{}_{\nu\sigma}-\partial_\nu\Gamma^\rho{}_{\mu\sigma}\bigr)(p)\,V^\sigma\,\delta a^\mu\,\delta b^\nu

を得る(和の添字の名前を付け替えた)。Γ(p)=0\Gamma(p)=0 の座標では、(10.7) の ΓΓ\Gamma\Gamma の項がその点で消える。したがって括弧の中は Rρσμν(p)R^\rho{}_{\sigma\mu\nu}(p) に等しい。δVρ\delta V^\rho は同じ点 pp での2つのベクトルの差なのでベクトルであり、右辺もテンソルの縮約なので、この座標で成り立つ等式はどの座標でも成り立つ。

(10.10) は、ずれが囲んだ面積に比例し、その比例係数が Riemann テンソルであることを表している。第8章で見た「回転の角が囲んだ面積に比例する」という性質は、この式の特別な場合である。§10.4 で、球面のずれが面積を a2a^2 で割った角の回転になることを確かめる。周回の向きを逆にすると δa\delta a と δb\delta b の役割が入れ替わり、(10.8) によってずれの符号が反転する。

確認テスト

オリジナル

  1. 10.1-1 Riemann テンソルが後ろの2つの添字について反対称であること (10.8) を、定義 (10.7) から確かめよ。
  2. 10.1-2 平面の極座標 ds2=dr2+r2dφ2\mathrm{d} s^2=\mathrm{d} r^2+r^2\mathrm{d}\varphi^2 を考える。0でない Christoffel 記号は Γrφφ=−r\Gamma^r{}_{\varphi\varphi}=-r、Γφrφ=Γφφr=1/r\Gamma^\varphi{}_{r\varphi}=\Gamma^\varphi{}_{\varphi r}=1/r である。RrφrφR^r{}_{\varphi r\varphi} と RφrφrR^\varphi{}_{r\varphi r} を計算し、どちらも 0 になることを示せ。
  3. 10.1-3 スカラー場 ff に対して [∇μ,∇ν]f=0[\nabla_\mu,\nabla_\nu]f=0 であることを示し、それと (10.6) を使って、余接ベクトルの交換子 (10.9) を導け。
  4. 10.1-4 半径 aa の円柱の表面 ds2=a2dφ2+dz2\mathrm{d} s^2=a^2\mathrm{d}\varphi^2+\mathrm{d} z^2 の Riemann テンソルを求めよ。円柱の表面は3次元の空間の中で曲がって見えるのに、この結果になる理由を、円柱を切り開く操作と結びつけて説明せよ。

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