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重力赤方偏移の厳密な式

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第12章 Schwarzschild 解と太陽系の検証
目次
  1. 静止した観測者の時計と振動数
  2. 強い場での赤方偏移
  3. 動く時計
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対論入門 第12章 §12.4 ★★ 静止した観測者の振動数の比 g00\sqrt{g_{00}} の比を Schwarzschild 計量で厳密に書き、弱い場の近似が破れる中性子星まで使えるようにする

静止した観測者の時計と振動数

第9章 §9.4 では、静的な時空で、静止した2人の観測者が測る光の角振動数が

ωg00=一定(12.33)\omega\sqrt{g_{00}}=\text{一定}\tag{12.33}

を満たすことを、Killing ベクトル ∂0\partial_0 の保存量 k0k_0 から導いた。この式は弱い場の近似を使っていない。Schwarzschild 計量の g00=1−rs/rg_{00}=1-r_{\mathrm s}/r を入れると、次の厳密な式を得る。

定理 12.7(Schwarzschild 時空の重力赤方偏移 ★★★)

面積半径 r1r_1 に静止した観測者が、角振動数 ω1\omega_1 で光を送る。それを面積半径 r2r_2 に静止した観測者が受けると、その角振動数は

ω2ω1=1−rs/r11−rs/r2(12.34)\frac{\omega_2}{\omega_1}=\sqrt{\frac{1-r_{\mathrm s}/r_1}{1-r_{\mathrm s}/r_2}}\tag{12.34}

である。とくに半径 RR の星の表面から出て無限遠で受ける光の赤方偏移 z≡λ受/λ発−1=ω発/ω受−1z\equiv\lambda_{\text{受}}/\lambda_{\text{発}}-1=\omega_{\text{発}}/\omega_{\text{受}}-1 は

1+z=11−rs/R(12.35)1+z=\frac{1}{\sqrt{1-r_{\mathrm s}/R}}\tag{12.35}

である。

同じ比は、静止した時計の進み方の比としても読める。面積半径 rr に静止した時計の固有時は、dr=dθ=dφ=0\mathrm{d} r=\mathrm{d}\theta=\mathrm{d}\varphi=0 を計量に入れて

dτ=1−rsr  dt(12.36)\mathrm{d}\tau=\sqrt{1-\frac{r_{\mathrm s}}{r}}\;\mathrm{d} t\tag{12.36}

である。計量は時刻によらないので、光の山が送り手から受け手に届くまでの座標時間は、どの山についても同じである。したがって、送り手が座標時間 Δt\Delta t のあいだに出した山の数は、受け手が同じ長さの座標時間のあいだに受ける山の数に等しい。両者の固有時は (12.36) で異なるので、山の数を各自の固有時で割った振動数の比が (12.34) になる(確認テスト 12.4-4)。

rs/r≪1r_{\mathrm s}/r\ll1 では、(12.34) を1次まで展開して

ω2ω1≃1−rs2r1+rs2r2=1+Φ(r1)−Φ(r2)c2(Φ=−GMr)\frac{\omega_2}{\omega_1}\simeq1-\frac{r_{\mathrm s}}{2r_1}+\frac{r_{\mathrm s}}{2r_2}=1+\frac{\Phi(r_1)-\Phi(r_2)}{c^2}\qquad\Bigl(\Phi=-\frac{GM}{r}\Bigr)

となり、第7章 §7.3 の Δf/f=−ΔΦ/c2\Delta f/f=-\Delta\Phi/c^2 に戻る。地上の Pound–Rebka の実験や GPS の補正(第7章)は、この1次の範囲で十分であった。

強い場での赤方偏移

(12.35) の赤方偏移は、星の半径が rsr_{\mathrm s} に近づくと無限大になる。zz を rs/Rr_{\mathrm s}/R の関数として描くと、弱い場の近似との差は図 12.4 のようになる。白色矮星では rs/R∼10−4r_{\mathrm s}/R\sim10^{-4} で近似は十分によいが、中性子星では rs/R∼0.3r_{\mathrm s}/R\sim0.3 で、近似は3割ほど小さな値を与える(例題 12.5)。r→rsr\to r_{\mathrm s} で赤方偏移が発散することは、r=rsr=r_{\mathrm s} の面から外へ届く光が無いこと(事象の地平面)の最初の手がかりで、第13章 §13.1 で詳しく扱う。

図

図 12.4 星の表面から無限遠へ届く光の赤方偏移 zz。実線は厳密な式 (12.35)、破線は弱い場の1次の近似。点は質量 1.4M⊙1.4M_\odot、半径 12 km12\,\mathrm{km} の中性子星(例題 12.5)。

動く時計

円軌道を回る時計の進みも、Schwarzschild 計量から厳密に求められる。円軌道では

dr=0,θ=π2,dφdt=Ω\mathrm{d} r=0,\qquad \theta=\frac{\pi}{2},\qquad \frac{d \varphi}{d t}=\Omega

なので、計量 (12.13) を c2dt2c^2\mathrm{d} t^2 で割って

(dτdt)2=1−rsr−r2Ω2c2\Bigl(\frac{d \tau}{d t}\Bigr)^2=1-\frac{r_{\mathrm s}}{r}-\frac{r^2\Omega^2}{c^2}

である。測地線の円軌道では (12.19) により r2Ω2=GM/rr^2\Omega^2=GM/r なので、

dτdt=1−3GMc2r=1−3rs2r(12.37)\frac{d \tau}{d t}=\sqrt{1-\frac{3GM}{c^2r}}=\sqrt{1-\frac{3r_{\mathrm s}}{2r}}\tag{12.37}

を得る。重力による遅れ rs/rr_{\mathrm s}/r と速さによる遅れ GM/(c2r)GM/(c^2r) が、近似なしにこの形でまとまる。第7章 §7.3 の dτ/dt≃1+Φ/c2−u2/(2c2)\mathrm{d}\tau/\mathrm{d} t\simeq1+\Phi/c^2-u^2/(2c^2) はこの式の1次の展開である。

例題 12.5 白色矮星と中性子星の赤方偏移 ★★

オリジナルGM⊙=1.3271×1020 m3/s2GM_\odot=1.3271\times10^{20}\,\mathrm{m^3/s^2}、c=2.998×108 m/sc=2.998\times10^8\,\mathrm{m/s} とする。太陽の Schwarzschild 半径は 2.953 km2.953\,\mathrm{km} である。

  1. (1) 白色矮星(質量 1.0M⊙1.0M_\odot、半径 5.8×106 m5.8\times10^6\,\mathrm m)の表面から出た光の赤方偏移を求めよ。これを Doppler 効果の速さ czcz に直せ。
  2. (2) 中性子星(質量 1.4M⊙1.4M_\odot、半径 12 km12\,\mathrm{km})について、赤方偏移を2通りに求めて比べよ。1つは厳密な式 (12.35)、もう1つは弱い場の近似 z≃rs/(2R)z\simeq r_{\mathrm s}/(2R) である。
解答

(1) rs/R=2.953×103/(5.8×106)=5.09×10−4r_{\mathrm s}/R=2.953\times10^3/(5.8\times10^6)=5.09\times10^{-4} である。(12.35) から

z=11−5.09×10−4−1=2.55×10−4,cz=2.998×108×2.55×10−4=7.6×104 m/s=76 km/s\begin{gathered}z=\frac{1}{\sqrt{1-5.09\times10^{-4}}}-1=2.55\times10^{-4},\\ cz=2.998\times10^8\times2.55\times10^{-4}=7.6\times10^4\,\mathrm{m/s}=76\,\mathrm{km/s}\end{gathered}

である。弱い場の近似 rs/(2R)=2.55×10−4r_{\mathrm s}/(2R)=2.55\times10^{-4} とは有効数字3桁で一致する。白色矮星のスペクトル線は、星が静止していても秒速数十キロメートルで遠ざかる Doppler 効果と同じだけ長い波長の側にずれる。

(2) rs=1.4×2.953=4.134 kmr_{\mathrm s}=1.4\times2.953=4.134\,\mathrm{km} で、rs/R=4.134/12=0.3445r_{\mathrm s}/R=4.134/12=0.3445 である。厳密な式では

z=11−0.3445−1=10.8096−1=0.235z=\frac{1}{\sqrt{1-0.3445}}-1=\frac{1}{0.8096}-1=0.235

である。弱い場の近似では z≃0.3445/2=0.172z\simeq0.3445/2=0.172 で、厳密な値より 27 %27\,\% 小さい。中性子星の表面では、重力赤方偏移に1次の近似は使えない。

例題 12.6 GPS の時計の厳密な補正 ★★

オリジナルGPS 衛星は軌道半径 r=2.656×107 mr=2.656\times10^7\,\mathrm m の円軌道を回る。地表の時計は静止しているとする(自転は無視する)。定数は次の値を使う。

GM⊕=3.986×1014 m3/s2,R⊕=6.371×106 m,c=2.998×108 m/sGM_\oplus=3.986\times10^{14}\,\mathrm{m^3/s^2},\qquad R_\oplus=6.371\times10^6\,\mathrm m,\qquad c=2.998\times10^8\,\mathrm{m/s}

(12.36) と (12.37) を使って、衛星の時計が地表の時計に比べて1日(86400 s86400\,\mathrm s)あたりどれだけ進むかを求め、第7章 §7.3 の値 38.5 μs38.5\,\mu\mathrm s と比べよ。

解答

地球の GM/c2=3.986×1014/(2.998×108)2=4.435×10−3 mGM/c^2=3.986\times10^{14}/(2.998\times10^8)^2=4.435\times10^{-3}\,\mathrm m である。地表の静止した時計と衛星の時計の進みは

(dτdt)地表=1−2×4.435×10−36.371×106=1−6.960×10−10,(dτdt)衛星=1−3×4.435×10−32.656×107=1−2.505×10−10\begin{gathered}\Bigl(\frac{d \tau}{d t}\Bigr)_{\text{地表}}=\sqrt{1-\frac{2\times4.435\times10^{-3}}{6.371\times10^6}}=1-6.960\times10^{-10},\\ \Bigl(\frac{d \tau}{d t}\Bigr)_{\text{衛星}}=\sqrt{1-\frac{3\times4.435\times10^{-3}}{2.656\times10^7}}=1-2.505\times10^{-10}\end{gathered}

である(10−910^{-9} の大きさなので 1−x=1−x/2\sqrt{1-x}=1-x/2 で十分である)。比は

(dτ/dt)衛星(dτ/dt)地表=1+(6.960−2.505)×10−10=1+4.455×10−10\frac{(\mathrm{d}\tau/\mathrm{d} t)_{\text{衛星}}}{(\mathrm{d}\tau/\mathrm{d} t)_{\text{地表}}}=1+(6.960-2.505)\times10^{-10}=1+4.455\times10^{-10}

で、1日あたり 4.455×10−10×86400 s=3.85×10−5 s=38.5 μs4.455\times10^{-10}\times86400\,\mathrm s=3.85\times10^{-5}\,\mathrm s=38.5\,\mu\mathrm s 進む。第7章の値と一致する。地上の重力場では rs/r∼10−9r_{\mathrm s}/r\sim10^{-9} なので、2次の項は 10−1810^{-18} の大きさである。1日あたりにして 0.1 ピコ秒程度にしかならない。

確認テスト

オリジナル

  1. 12.4-1 重力赤方偏移の式 (12.34) が、弱い場の近似なしに成り立つ理由を、第9章のどの性質を使ったかを挙げて答えよ。
  2. 12.4-2 太陽の表面から出て無限遠で受ける光の赤方偏移 zz を求め、Doppler 効果の速さ czcz に直せ。数値は次の値とする。

rs=2.953×103 m,R⊙=6.957×108 m,c=2.998×108 m/sr_{\mathrm s}=2.953\times10^3\,\mathrm m,\qquad R_\odot=6.957\times10^8\,\mathrm m,\qquad c=2.998\times10^8\,\mathrm{m/s} 3. 12.4-3 半径 RR の星のまわりの円軌道を回る時計の進みが、星の表面に静止した時計の進みとちょうど等しくなる軌道半径を、(12.37) を使って近似なしに求めよ。4. 12.4-4 静止した観測者が測る振動数の比が、それぞれの位置に静止した時計の進みの比の逆数になることを、計量が tt によらないことから示せ。また、赤方偏移が z=1z=1 になる発射位置の面積半径を rsr_{\mathrm s} で表せ。

木下の勉強ステータス

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