光学と量子エレクトロニクス 第4章 §4.5 ★★ 近軸近似とスカラー近似の小さいパラメータは 1/(kw0)。ビームの幅はナイフエッジやカメラで測り、w(z) の双曲線から w0 と M2 を読む
置いた近似
この章で置いた近似は2つある。1つ目は Helmholtz 方程式 (4.3) の ∂z2u を捨てた近軸近似で、小さいパラメータは θ02/4、ガウスビームでは θ0=2/(kw0) なので 1/(kw0)2 である。2つ目は電場を1成分のスカラーとして扱ったことで、Maxwell 方程式の ∇⋅E=0 から、横の向きに偏ったビームにも縦(z)の成分が Ez∼(∂xEx)/(ik) の大きさで必ず伴う。この縦の成分は横の成分に比べて 1/(kw0) の程度である。M. Lax, W. H. Louisell, W. B. McKnight は Maxwell 方程式を f=1/(kw0) の冪で展開し、0次の場が近軸波動方程式に従うことと、1次・2次・3次の補正の満たす式を示した(Lax, Louisell, McKnight(1975)、Phys. Rev. A 11、1365)。
近似の裏付け
型 B(極限) | 小さいもの 1/(kw0)→0(ビームの太さに比べて波長が短い。広がりの角 θ0=2/(kw0) が小さい) | 証明 要確認(Lax–Louisell–McKnight(1975)で、Maxwell 方程式を 1/(kw0) で展開した0次が近軸波動方程式になり、高次の補正の式が順に定まることは確かめた。展開の誤差の上界を与える定理の形は確かめていない) | 行き先 近似の数理 第7章
近軸近似が崩れる様子を、近似を置かない回折の計算と比べる。横の1つの向きだけを考え、z=0 の包絡線 e−x2/w02 を Fourier 変換して、各平面波の成分に厳密な kz=k2−kx2 の位相を掛けて重ね直す(角スペクトルの方法。∣kx∣>k の成分は減衰するので落とす)。図 4.4 は、強度の2次モーメントで測った半径 2σx を近軸の w(z) と比べたものである。w0=10λ0 では2つは 10−3 より良く一致し、w0=λ0(θ0=0.32rad)でも z=5zR で厳密な値のほうが 4 パーセント太いだけである。ビームの太さは、例題 4.1 で見た位相よりもはるかに近軸近似に強い。

図 4.4 くびれの半径 w0=λ0 のビーム(横は1つの向き)の半径。実線は近軸の w(z)=w01+z2/zR2、点線(点つき)は角スペクトルの方法による厳密なスカラーの回折計算で、強度の2次モーメントから 2σx として出した。zR=πw02/λ0
近軸近似の側には、もう1つの見方がある。式 (4.5) は、光線の Hamiltonian H=−n2−∣p∣2 を2次で打ち切ってから量子化したものなので、打ち切った4次の項 ∣p∣4/(8n3) は第3章の収差の波の版で、ガウスビームでは σp∼θ0 の4乗の補正として現れる。
何の実験の量で確かめるか
ビームの半径はナイフエッジ法で測ることができる。ビームを刃で x<xe の側から遮り、残りの出力を測ると、透過の割合は
T(xe)=∫−∞∞e−2x2/w2dx∫xe∞e−2x2/w2dx=21erfc(w2xe)(4.25)
である(y の向きは積分で消える)。刃を動かしながら T を記録して誤差関数に合わせると w が出る。CCD などのカメラで強度の分布を直接撮って、2次モーメントから w=2σx を出すこともできる。
w(z) を光軸に沿って何点も測り、双曲線 w(z)2=w02[1+(M2λ0(z−z0)/(πnw02))2] に合わせると、くびれの位置 z0・半径 w0・ビーム品質 M2 が決まる。M2 は例題 4.5 の比で、基本ガウスビームで 1、Hermite–Gauss モード um0 の x の向きで 2m+1 である。幅を2次モーメントで定義した M2 は近軸の伝搬で変わらないので、レーザーの出す光が基本モードにどれだけ近いかを1つの数で表すことができる。Gouy 位相は、焦点の前後で光を参照の波と干渉させ、縞の位置のずれとして測る。
例題 4.7 ナイフエッジの 10–90 の距離 ★
オリジナル式 (4.25) で、透過の割合が 90 パーセントになる刃の位置と 10 パーセントになる位置の距離 d10–90 を w で書け。d10–90=0.50mm と測れたときの w を求めよ。
解答
T=0.1 は erfc(2x/w)=0.2、2x/w=erfc−1(0.2)=0.9062 で x=0.6408w。T=0.9 は対称に x=−0.6408w なのでd10–90=1.2816w、w=0.780d10–90 である。d10–90=0.50mm なら w=0.390mm になる。この関係は強度の分布がガウス型であることを仮定しているので、M2 の大きいビームにそのまま使うと半径を取り違える。
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