光学と量子エレクトロニクス 第4章 §4.4 ★★★ 放物型の媒質の横モードは調和振動子の固有関数そのもので、伝搬定数が α の間隔で並ぶ。一様な媒質でも、複素光線で作った梯子の演算子が伝搬と可換なので、Hermite–Gauss モードは形を保って進み、Gouy 位相を (m+21) 倍で受け取る
放物型の媒質:調和振動子そのもの
屈折率が n2=n02(1−α2∣x∣2) の放物型の媒質(光ファイバーの屈折率分布型のコアや、第3章の棒レンズ)では、式 (4.5) の演算子は
H^2=2n0p^x2+p^y2+2n0α2(x^2+y^2),[x^,p^x]=[y^,p^y]=k0i(4.20)
で、質量 n0、角振動数 α の2次元の調和振動子である。その固有値は (m+21)α/k0+(l+21)α/k0(m,l=0,1,2,…)で、固有関数は
uml(x)=Hm(ws2x)Hl(ws2y)exp(−ws2∣x∣2),ws2=k0n0α2(4.21)
である(Hm は Hermite 多項式。調和振動子の基底状態の幅 ℏ/(mω) の写しが ws/2)。固有関数は z によらない形のまま位相 e−ik0Emlz を受け取るので、場は E=umleiβmlz、
βml=n0k0−(m+l+1)α(4.22)
の形で進む。βml を伝搬定数と呼ぶ。この形を保って進む場の分布が、ファイバーの横モードである。隣り合うモードの伝搬定数の差は α で、2つのモードを重ねると z について周期 2π/α でうなりが起こる。これは近軸の光線が光軸の周りを振動する周期 2π/α(第3章の総合問題)と同じで、量子力学で調和振動子の準位の間隔が古典の振動数に等しいことの写しである。
式 (4.21) の基底状態は、ABCD 則からも出る。放物型の媒質の行列 (cosαz−n0αsinαzsinαz/(n0α)cosαz) の1次分数変換で変わらない qˉ はqˉ2=−1/(n0α)2 の根のうち Im(1/qˉ)>0 のもの qˉ=−i/(n0α) で、Im(1/qˉ)=n0α=2/(k0ws2) から同じ ws になる。行列の固定点を探すこの方法は、第5章(第5章)で共振器の固有モードを求めるときにそのまま使う。
一様な媒質:複素光線で作る梯子の演算子
一様な媒質には閉じ込めるポテンシャルが無いので、時間(z)によらない固有関数は無い。それでも、くびれで調和振動子の固有関数の形をした包絡線は、太さを変えながら同じ形を保って進む。これを示すのに、複素光線 (xc(z),pc)(4.2節)を使って1成分ごとに
b^(z)=2k0(xc(z)p^−pcx^),xc(z)=w0(1+izRz),pc=iπw0λ0(4.23)
を作る(b^ は正本の光子の a^ と分けるための記号)。
命題 4.2(複素光線の梯子の演算子 ★★★)
- (i) [b^,b^†]=4k02I(c,c∗)k0i=1。交換子は複素光線の Lagrange の不変量で、z によらない。
- (ii) b^(z) はガウスビームの包絡線 u0(x,z)∝exp(ik0pcx2/(2xc)) を消す:b^(z)u0(⋅,z)=0。
- (iii) 伝搬の演算子を U^(z)=exp(−ik0H^2z) とすると b^(z)=U^(z)b^(0)U^(z)†。b^† も同じ。
証明
(i) [x^,p^]=i/k0 から [xcp^−pcx^,xc∗p^−pc∗x^]=(xcpc∗−pcxc∗)i/k0=I(c,c∗)i/k0。式 (4.23) の値で I=−2iIm(pcxc∗)=−2i⋅2/k0 なので、交換子は (k02/4)(−4i/k0)(i/k0)=1 である。
(ii) p^u0=−(i/k0)∂xu0=(pcx/xc)u0 なので (xcp^−pcx^)u0=0。
(iii) 時間に陽によらない演算子の U^O^U^† は dO^/dz=−ik0[H^2,O^] に従う。H^2=p^2/(2n) では [H^2,x^]=−ip^/(nk0) なので右辺は (pc/n)(k0/2)p^、左辺は dxc/dz=pc/n(複素光線の Hamilton 方程式)から (k0/2)(pc/n)p^ で、両者は等しい。z=0 で一致するので、b^(z)=U^b^(0)U^† である。
命題 4.2 から、くびれで um(⋅,0)∝(b^(0)†)mu0(⋅,0) と作った包絡線は、um(⋅,z)=U^(z)um(⋅,0)∝(b^(z)†)mu0(⋅,z) と進む。b^(z)† を u0(⋅,z) に m 回当てる操作は、z によらない調和振動子の梯子の演算子の幅を w0 から w(z)=∣xc∣ に取り替え、位相 (xc∗/xc)1/2=e−iψG を1回ごとに掛けたものになる。2つの横の向きを合わせて、Hermite–Gauss モード
uml(x,z)=ww0Hm(w2x)Hl(w2y)exp(−w2∣x∣2+i2Rk∣x∣2)e−i(m+l+1)ψG(z)(4.24)
を得る(w, R, ψG は基本ガウスビームと同じ。m≤5 まで近軸波動方程式を満たすことを verify で確かめた)。放物型の媒質では xc=wseiαz の大きさが一定で偏角だけが αz で増えるので、同じ式の ψG が αz に置き換わり、式 (4.22) に戻る。Gouy 位相は、複素光線の偏角で測った調和振動子の位相の進みで、モードの次数 m+l が1つ上がるごとに1回分ずつ多く受け取る。図 4.3 に m=0,1,2,3 の強度の分布を示す。光軸のまわりに回転対称な系では、HmHl の積の代わりに角運動量の固有状態に当たる Laguerre–Gauss モードを使うこともでき、そのときの Gouy 位相は (2p+∣ℓ∣+1)ψG(p は動径の次数、ℓ は方位角の次数)になる。

図 4.3 Hermite–Gauss モードの1つの向きの強度の分布 Hm(2x/w)2e−2x2/w2(出力が等しくなるように規格化し、縦にずらした)。m 個の節を持ち、外側へ広がる。調和振動子の第 m 励起状態の確率密度と同じ形である
例題 4.5 Hermite–Gauss モードの2次モーメントの幅 ★★
オリジナル1つの向きの Hermite–Gauss モード um(x)=Hm(2x/w0)e−x2/w02(くびれ)を考える。
- (1) 調和振動子の第 m 励起状態の ⟨x^2⟩=(m+21)ℏ/(Mω)(M は質量)を、基底状態の幅との比で使って、∣um∣2 の分散 σx2 を w0 で書け。
- (2) 運動量の分散も同じ比で増えることを使い、σxσp を求めよ。
- (3) σxσp を基本ガウスビームの値で割った比 M2 を求め、この比が z によらないことを説明せよ。
解答
(1) 基底状態(m=0)の分散は w02/4(4.3節)で、調和振動子の ⟨x^2⟩ は基底状態の 2m+1 倍なので、σx2=(2m+1)w02/4。数値積分 ∫x2Hm(2x)2e−2x2dx/∫Hm(2x)2e−2x2dx=(2m+1)/4 でも確かめられる。
(2) 調和振動子の ⟨p^2⟩ も基底状態の 2m+1 倍なので σp=2m+1/(k0w0)、σxσp=(2m+1)/(2k0) である。
(3) M2=2m+1。σxσp を1本の光線の束の「相空間で占める面積」と読むと、近軸の伝搬は行列式 1 の線形の写像なので面積は変わらない。くびれから離れると σx と σp の積そのものは位置と傾きの相関で大きくなるが、相関を差し引いた ⟨x2⟩⟨p2⟩−⟨xp⟩2 は保存し、くびれでは相関が 0 なので σxσp に等しい。M2 が 1 より大きいビームは、同じくびれの太さでも M2 倍速く広がる(4.5節)。
例題 4.6 梯子の演算子で u1 を作る ★★
オリジナル1次元で、ガウスビームの包絡線を u0(x,z)=(w0/xc)1/2exp(ik0pcx2/(2xc))(xc, pc は式 (4.23)、n=1)とする。
- (1) b^†u0 を計算し、xu0 に比例することを示せ。
- (2) 比例係数の位相から、u1 の Gouy 位相が 23ψG であることを示せ。
解答
(1) b^†=2k0(xc∗p^−pc∗x^)、p^u0=(pcx/xc)u0 なので
b^†u0=2k0(xcxc∗pc−pc∗)xu0=2k0xcxc∗pc−xcpc∗xu0=xc2ixu0.
最後に xc∗pc−xcpc∗=−I(c,c∗)=4i/k0 を使った。H1(t)=2t なので x=22wH1(2x/w) で、これは H1 の形である。
(2) xc=∣xc∣eiψG、∣xc∣=w なので、u0 の位相は −21ψG(ほかに曲率の項)、1/xc がさらに −ψG を足す。x/xc=(x/w)e−iψG と x/w=H1(2x/w)/(22) を合わせて、定数を除き u1∝(w0/w)1/2H1(2x/w)e−x2/w2+ikx2/(2R)e−i23ψG で、Gouy 位相は (1+21)ψG である。振幅の因子 (w0/w)1/2 は1次元の出力の保存に当たり、H1 の引数を w で測ることで形は z によらない。
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