光学と量子エレクトロニクス 第4章 §4.3 ★★★ くびれの半径 w0 だけでビームの形が決まる。Rayleigh 長 zR=πnw02/λ0 の内側では太さがほぼ一定で、外側では角 λ0/(πnw0) で広がり、焦点を通る間に位相が π だけ遅れる
幅と波面の曲率
一様な媒質(屈折率 n、k=nk0)で、z=0 にくびれを持つビームを考える。くびれでは波面が平らで R=∞ なので、式 (4.9) から q(0)=−izR、
zR=2kw02=λ0πnw02(4.14)
である。zR を Rayleigh 長と呼ぶ。式 (4.8) から q(z)=z−izR で、1/q=(z+izR)/(z2+zR2) の実部と虚部を読むと
w(z)=w01+zR2z2,R(z)=z+zzR2(4.15)
になる。前の因子は q(0)/q(z)=1/(1+iz/zR)=(w0/w)e−iψG(z) で、
E(r)=E0w(z)w0exp(−w(z)2∣x∣2)exp(ikz+i2R(z)k∣x∣2−iψG(z)),ψG(z)=arctanzRz(4.16)
がガウスビーム(基本ガウスビーム)の場である。図 4.1 にビームの包絡と波面の形を示す。
∣z∣≪zR ではビームの太さはほぼ w0 のままで、波面はほぼ平らである。z=±zR で断面積が 2 倍になり、波面の曲率半径が最小の 2zR になる。∣z∣≫zR では w≈w0∣z∣/zR と距離に比例して太くなり、R≈z で、くびれの中心から出た球面波のように見える。この遠方での広がりの半角は
θ0=zRw0=πnw0λ0(4.17)
で、細いビームほど速く広がる。

図 4.1 ガウスビームの半径 w(z)(青の実線)と波面(赤)。横(x)は縦(z)より大きく拡大し、w0=zR に見える尺度で描いた。波面は z=±zR で最も曲がり、くびれ(z=0)と遠方で平らに近づく。遠方の包絡は角 θ0 の漸近線(灰色の破線)に沿う
Gouy 位相
式 (4.16) の位相のうち kz は平面波と同じで、−ψG(z) が余分である。ψG を Gouy 位相と呼ぶ。ψG は z=−∞ から +∞ までに −π/2 から +π/2 まで増え、そのうち半分の π/2 が −zR<z<zR の間に起こる(図 4.2)。光軸の上の位相は、焦点を通る間に平面波より全体で π だけ遅れる。2次元の自由粒子の波束の位相が、広がる途中で arctan(ℏt/(mσ2)) の形で遅れるのと同じ現象である。光線の言葉では、2本の実の光線(式 (4.13))で作った複素光線 xc=w0(1+iz/zR) の偏角 argxc=ψG が Gouy 位相で、前の因子は w0/xc の2乗(2次元)になっている。Gouy 位相は、共振器の中のモードの共鳴の周波数(第5章)と、高次の横モードの位相の進み(4.4節)に現れる。L. G. Gouy は焦点の前後で位相が反転することを干渉縞の観察で示した(Gouy(1890)、C. R. Acad. Sci. Paris 110、1251)。

図 4.2 ビームの半径 w/w0(青)と Gouy 位相 ψG を π/2 で割ったもの(赤)。Gouy 位相の変化の半分が ∣z∣<zR に集まる
最小不確定の波束と出力
くびれでの強度は ∣u∣2∝exp(−2∣x∣2/w02) で、x の分布の標準偏差は σx=w0/2 である。包絡線 e−x2/w02 の Fourier 変換は e−kx2w02/4 なので、横の波数の標準偏差は σkx=1/w0、運動量 p=kx/k0 の標準偏差は σp=1/(k0w0) である。積は
σxσp=2k01(4.18)
で、表 4.1 の ℏ→1/k0 で写した不確定性関係 σxσp≥ℏ/2 の等号に当たる。ガウスビームは、太さと広がりの積が最も小さいビームである。遠方の広がりの角 θ0(式 (4.17))は 1/e2 の強度で測った値で、nθ0=2σp である。
ビームの出力 P は強度を断面で積分したもので、中心の強度を I0 とすると
P=∫0∞I0e−2r2/w22πrdr=2πw2I0,I0=πw22P(4.19)
である。第1章の総合問題(第1章)で使った焦点の強度 I=2P/(πw02) はこれである。半径 w の円の内側を通る出力の割合は 1−e−2=0.865 である。
例題 4.3 He–Ne レーザーのビームの広がり ★★
オリジナル波長 633nm の He–Ne レーザーが、空気中(n=1)に半径 w0=0.5mm のくびれを作る。
- (1) Rayleigh 長と遠方の広がりの半角を求めよ。
- (2) くびれから 10m の所の半径と波面の曲率半径を求め、遠方の近似 w≈θ0z と比べよ。
- (3) くびれから zR の所までに、光軸の上の位相が平面波よりどれだけ遅れるか。
解答
(1) zR=πw02/λ0=π(0.5×10−3)2/(633×10−9)=1.24m、θ0=λ0/(πw0)=4.03×10−4rad である。
(2) z/zR=8.06 なので w=0.51+8.062mm=4.06mm、R=z+zR2/z=10.15m。遠方の近似では w≈θ0z=4.03mm で、差は 1 パーセントに満たない。10m 先ではビームはほぼくびれから出た球面波で、半径は直径にして約 8mm である。
(3) ψG(zR)=arctan1=π/4 だけ遅れる。焦点を挟んで −zR から zR まででは π/2 である。
例題 4.4 集光の限界と焦点の強度 ★★
オリジナル波長 λ0 の平行なビーム(半径 wL、くびれはレンズの位置)を、空気中の焦点距離 f のレンズで絞る。f≪πwL2/λ0 とする。
- (1) 焦点にできるくびれの半径 wf を、例題 4.2 の結果から求め、F 値 N=f/(2wL) で書け。
- (2) 出力 1W のビームを wf=10μm に絞ったときの焦点の中心の強度を求めよ。
- (3) 焦点の Rayleigh 長(焦点深度の半分)を N で書け。
解答
(1) 例題 4.2 で fθ0≪wL の極限をとると、くびれは焦点にでき、半径は2本目の光線の高さ
wf=πwLλ0f=π2λ0N
である。ビームの太さ 2wL を開口とみなした F 値が 1 のレンズで、くびれの半径は 0.64λ0 になる。幾何光学では焦点は点だが、波では半径が波長と F 値の積の程度になる。
(2) 式 (4.19) から I0=2P/(πwf2)=2/(π×10−10)Wm−2=6.37×109Wm−2 である。
(3) zR=πwf2/λ0=4λ0N2/π。F 値を2倍にすると、くびれは2倍に太り、焦点深度は4倍に伸びる。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com