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当てる道具:Rayleigh–Sommerfeld の積分と Fresnel 近似

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第6章 回折
目次
  1. 伝達関数を位置の言葉に戻す
  2. 円開口の軸上の場
  3. Fresnel 近似と Fresnel 数
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

光学と量子エレクトロニクス 第6章 §6.2 ★★★ モードの伝わり方を位置の言葉に戻すと、開口の各点から出る2次波の重ね合わせになる。円開口の軸上の場は閉じた形で求まり、Fresnel 数 NFN_{\mathrm F} が近似の目安になる

伝達関数を位置の言葉に戻す

式 (6.3) は角スペクトルに伝達関数 eikzz\mathrm{e}^{\mathrm{i} k_zz} を掛けたものの逆変換なので、位置の言葉では z=0z=0 の場と、伝達関数の逆変換 h(x,z)h(\bm{x},z) との畳み込みになる:

U(x,z)=∫d2x′ U(x′,0) h(x−x′,z),h(x,z)=∫d2q(2π)2 eikzz eiq⋅x.(6.5)U(\bm{x},z)=\int\mathrm{d}^2x'\,U(\bm{x}',0)\,h(\bm{x}-\bm{x}',z),\qquad h(\bm{x},z)=\int\frac{\mathrm{d}^2q}{(2\pi)^2}\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} k_zz}\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}\bm{q}\cdot\bm{x}}.\tag{6.5}

hh を求めるには、球面波を平面波に分ける Weyl の展開

eikrr=i2π∫d2q ei(q⋅x+kz∣z∣)kz,r=∣x∣2+z2(6.6)\frac{\mathrm{e}^{\mathrm{i} kr}}{r}=\frac{\mathrm{i}}{2\pi}\int\mathrm{d}^2q\,\frac{\mathrm{e}^{\mathrm{i}(\bm{q}\cdot\bm{x}+k_z\lvert z\rvert )}}{k_z},\qquad r=\sqrt{\lvert \bm{x}\rvert ^2+z^2}\tag{6.6}

を使う。右辺の各項は Helmholtz 方程式を満たし、z=0z=0 で ∂z\partial_z が跳ぶ量が点源の強さに当たる(式の証明は面の上の Fourier 変換を極座標で実行するもので、ここでは結果だけ使う)。z>0z>0 で両辺を zz で微分すると、右辺の 1/kz1/k_z が消えて

−12π∂∂zeikrr=∫d2q(2π)2 eikzz eiq⋅x=h(x,z)-\frac{1}{2\pi}\frac{\partial }{\partial z}\frac{\mathrm{e}^{\mathrm{i} kr}}{r}=\int\frac{\mathrm{d}^2q}{(2\pi)^2}\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} k_zz}\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}\bm{q}\cdot\bm{x}}=h(\bm{x},z)

となる。左辺の微分を実行すれば次の結果を得る。

命題 6.2(Rayleigh–Sommerfeld の積分(第1種) ★★★)

z>0z>0 の場は z=0z=0 の面の上の場だけで決まり、

U(x,z)=∫d2x′ U(x′,0) zr eikriλr(1+ikr),r=∣x−x′∣2+z2(6.7)U(\bm{x},z)=\int\mathrm{d}^2x'\,U(\bm{x}',0)\,\frac{z}{r}\,\frac{\mathrm{e}^{\mathrm{i} kr}}{\mathrm{i}\lambda r}\Bigl(1+\frac{\mathrm{i}}{kr}\Bigr),\qquad r=\sqrt{\lvert \bm{x}-\bm{x}'\rvert ^2+z^2}\tag{6.7}

と書ける。z=0z=0 の場を与えれば、この式は Helmholtz 方程式の厳密な解になる。

核の形を読む。kr≫1kr\gg1(観測点が開口から波長より十分遠い)なら括弧は 11 で、核は eikr/(iλr)\mathrm{e}^{\mathrm{i} kr}/(\mathrm{i}\lambda r) に z/r=cos⁡θz/r=\cos\theta を掛けたものになる。開口の各点 x′\bm{x}' から、振幅 U(x′,0)U(\bm{x}',0) の球面波 eikr/r\mathrm{e}^{\mathrm{i} kr}/r が出て、それを全部足し合わせたものが観測点の場である、という形をしている。前の 1/(iλ)1/(\mathrm{i}\lambda) は、2次波の位相が入射波より π/2\pi/2 進み、大きさが波長に反比例することを表し、cos⁡θ\cos\theta は斜めに出る2次波が弱いこと(傾斜因子)を表す。学部の光学で Huygens–Fresnel の原理として習う形は、この核の kr≫1kr\gg1 の形である(6.6節)。

数値で確かめておく。式 (6.5) の hh を、伝わるモード(∣q∣<k\lvert \bm{q}\rvert <k)とエバネッセント波(∣q∣>k\lvert \bm{q}\rvert >k)の両方を含めて数値積分すると、∣x∣=1.3λ\lvert \bm{x}\rvert =1.3\lambda, z=2λz=2\lambda の点で式 (6.7) の核と 10−610^{-6} の精度で一致する(verify_ch06.py)。エバネッセント波を落とすと一致しない。開口のすぐ近く(z∼λz\sim\lambda)では括弧の i/(kr)\mathrm{i}/(kr) の項もエバネッセント波も残り、それらを含めて初めて式 (6.7) は厳密になる。

円開口の軸上の場

半径 aa の円い穴に振幅 11 の平面波が垂直に入り、穴の中では U(x′,0)=1U(\bm{x}',0)=1、穴の外では 00 とする(この置き方を Kirchhoff の境界条件と呼ぶ。6.5節)。光軸の上(x=0\bm{x}=0)では rr が穴の中の点までの距離 ρ=∣x′∣\rho=\lvert \bm{x}'\rvert だけで決まるので、r=ρ2+z2r=\sqrt{\rho^2+z^2} を変数にとると ρ dρ=r dr\rho\,\mathrm{d}\rho=r\,\mathrm{d} r で、

U(0,z)=∫0a2πρ dρ zreikriλr(1+ikr)=∫zRadr z eikrr2(−ik+1r)=[−z eikrr]zRaU(0,z)=\int_0^a2\pi\rho\,\mathrm{d}\rho\,\frac{z}{r}\frac{\mathrm{e}^{\mathrm{i} kr}}{\mathrm{i}\lambda r}\Bigl(1+\frac{\mathrm{i}}{kr}\Bigr) =\int_z^{R_a}\mathrm{d} r\,\frac{z\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} kr}}{r^2}\Bigl(-\mathrm{i} k+\frac1r\Bigr) =\Bigl[-\frac{z\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} kr}}{r}\Bigr]_z^{R_a}

となる(Ra=a2+z2R_a=\sqrt{a^2+z^2} は軸上の点から穴の縁までの距離)。被積分関数がちょうど −z eikr/r-z\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} kr}/r の微分になっているので積分は閉じた形で求まり、

U(0,z)=eikz−zRa eikRa(6.8)U(0,z)=\mathrm{e}^{\mathrm{i} kz}-\frac{z}{R_a}\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} kR_a}\tag{6.8}

を得る。第1項は穴の中心から来た波、第2項は穴の縁から来た波と読める。軸上の明るさは2つの波の干渉で決まり、縁までの光路が中心までより半波長の奇数倍だけ長いと明るく、偶数倍だと暗い。

Fresnel 近似と Fresnel 数

観測点が開口に比べて十分遠いと、rr を ∣x−x′∣2/z2\lvert \bm{x}-\bm{x}'\rvert ^2/z^2 について展開できる:

r=z+∣x−x′∣22z−∣x−x′∣48z3+⋯ .(6.9)r=z+\frac{\lvert \bm{x}-\bm{x}'\rvert ^2}{2z}-\frac{\lvert \bm{x}-\bm{x}'\rvert ^4}{8z^3}+\cdots .\tag{6.9}

振幅の 1/r1/r と z/rz/r では最初の項 zz だけを残し、位相 krkr では2番目の項まで残し、括弧の i/(kr)\mathrm{i}/(kr) を落とす。これを Fresnel 近似と呼び、

U(x,z)≈eikziλz∫d2x′ U(x′,0) exp⁡[ik∣x−x′∣22z](6.10)U(\bm{x},z)\approx\frac{\mathrm{e}^{\mathrm{i} kz}}{\mathrm{i}\lambda z}\int\mathrm{d}^2x'\,U(\bm{x}',0)\,\exp\Bigl[\frac{\mathrm{i} k\lvert \bm{x}-\bm{x}'\rvert ^2}{2z}\Bigr]\tag{6.10}

を得る。この核の Fourier 変換は近軸の伝達関数 eikze−i∣q∣2z/(2k)\mathrm{e}^{\mathrm{i} kz}\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\lvert \bm{q}\rvert ^2z/(2k)} そのもので、Fresnel 近似は式 (6.4) の近軸近似を位置の言葉で書いたものになっている。位相で落とした3番目の項が 11 ラジアンより十分小さい、つまり開口と観測の範囲で ∣x−x′∣\lvert \bm{x}-\bm{x}'\rvert の最大値を ρmax⁡\rho_{\max} として

kρmax⁡48z3≪1⟺z3≫πρmax⁡44λ(6.11)\frac{k\rho_{\max}^4}{8z^3}\ll1\quad\Longleftrightarrow\quad z^3\gg\frac{\pi\rho_{\max}^4}{4\lambda}\tag{6.11}

が、Fresnel 近似を使ってよい十分条件である。

円開口の軸上では、式 (6.8) の Ra≈z+a2/(2z)R_a\approx z+a^2/(2z)、z/Ra≈1z/R_a\approx1 と置くことに当たり、

U(0,z)≈eikz(1−eiπNF),I(0,z)I0≈4sin⁡2πNF2,NF=a2λz(6.12)U(0,z)\approx\mathrm{e}^{\mathrm{i} kz}\bigl(1-\mathrm{e}^{\mathrm{i}\pi N_{\mathrm F}}\bigr),\qquad \frac{I(0,z)}{I_0}\approx4\sin^2\frac{\pi N_{\mathrm F}}{2},\qquad N_{\mathrm F}=\frac{a^2}{\lambda z}\tag{6.12}

となる。NFN_{\mathrm F} を Fresnel 数と呼ぶ。開口の縁と中心の光路差 a2/(2z)a^2/(2z) が半波長の何倍かを表す無次元量で、回折の様子は NFN_{\mathrm F} でほぼ決まる。NFN_{\mathrm F} が奇数の所で軸上は入射光の4倍の明るさになり、偶数の所で真っ暗になる。NF≫1N_{\mathrm F}\gg1 の近い所では、開口の影がほぼ幾何光学のとおりにでき、縁の近くだけに縞が出る。NF≪1N_{\mathrm F}\ll1 の遠い所では、開口全体が1つの点のように振る舞い、次の節の Fraunhofer 回折になる。

図

図 6.1 半径 a=10λa=10\lambda の円開口の軸上の強度。実線は Fresnel 近似 (6.12)、点線は Rayleigh–Sommerfeld の積分の厳密な値 (6.8)。NF≤1N_{\mathrm F}\le1(z≥100λz\ge100\lambda)では差は 0.050.05 未満で、NFN_{\mathrm F} が大きい(開口に近い)ほど明暗の位置がずれ、NF=5N_{\mathrm F}=5(z=20λz=20\lambda)の明るい所は厳密には 2.952.95 になる

図 6.1 は a=10λa=10\lambda の場合を比べたもので、開口に近づく(NFN_{\mathrm F} が大きくなる)ほど Fresnel 近似は厳密な値から外れる。近くでは式 (6.9) の3番目の項が位相を数ラジアンずらし、振幅の z/Raz/R_a も 11 から離れるからである。

命題 6.3(Babinet の原理 ★★)

開口の透過の関数が t1(x′)t_1(\bm{x}') の板と、それを反転した t2(x′)=1−t1(x′)t_2(\bm{x}')=1-t_1(\bm{x}') の板(相補的な板)に同じ光を入れると、z>0z>0 の場は U1+U2=UincU_1+U_2=U_{\mathrm{inc}}(板が無いときの場)を満たす。

証明

式 (6.7) は z=0z=0 の場について線形で、U1(x′,0)+U2(x′,0)=(t1+t2)Uinc(x′,0)=Uinc(x′,0)U_1(\bm{x}',0)+U_2(\bm{x}',0)=(t_1+t_2)U_{\mathrm{inc}}(\bm{x}',0)=U_{\mathrm{inc}}(\bm{x}',0) だからである。

例題 6.2 円い穴と円い板の軸上の明るさ ★★★

オリジナル波長 λ=500 nm\lambda=500\,\mathrm{nm} の平面波が半径 a=1 mma=1\,\mathrm{mm} の円い穴に垂直に入る。

  1. (1) 軸上の強度が入射光の4倍になる距離と 00 になる距離を、遠い方から4つ求めよ。z=2 mz=2\,\mathrm m と 1 m1\,\mathrm m で、厳密な式 (6.8) の値も求めよ。
  2. (2) 穴の代わりに同じ大きさの不透明な円板を置く。円板の影の中心(軸上)の強度を厳密に求め、z=1 mz=1\,\mathrm m の値を出せ。
解答

(1) NF=a2/(λz)=2 m/zN_{\mathrm F}=a^2/(\lambda z)=2\,\mathrm m/z なので、NF=1,2,3,4N_{\mathrm F}=1,2,3,4 の z=2, 1, 0.667, 0.5 mz=2,\ 1,\ 0.667,\ 0.5\,\mathrm m が順に明・暗・明・暗の位置である。厳密な式では z=2 mz=2\,\mathrm m で I/I0=4.000I/I_0=4.000、z=1 mz=1\,\mathrm m で 0.0000.000(どちらも 10−610^{-6} 以下のずれ)。a/z∼10−3a/z\sim10^{-3} なので、式 (6.9) の3番目の項は位相で 10−610^{-6} ラジアンの桁しかない。穴を通った光が、穴の真後ろの軸上で入射光より明るくなることも、真っ暗になることもある。中心から来た波と縁から来た波が強め合えば振幅は 22 倍、強度は 44 倍になる。

(2) Babinet の原理(命題 6.3)から、円板の後ろの場は板が無いときの eikz\mathrm{e}^{\mathrm{i} kz} から穴の場 (6.8) を引いたもので、

U円板(0,z)=eikz−(eikz−zRaeikRa)=zRaeikRa,II0=z2z2+a2.U_{\text{円板}}(0,z)=\mathrm{e}^{\mathrm{i} kz}-\Bigl(\mathrm{e}^{\mathrm{i} kz}-\frac{z}{R_a}\mathrm{e}^{\mathrm{i} kR_a}\Bigr)=\frac{z}{R_a}\mathrm{e}^{\mathrm{i} kR_a},\qquad \frac{I}{I_0}=\frac{z^2}{z^2+a^2}.

z=1 mz=1\,\mathrm m で 0.9999990.999999。不透明な円板の影の真ん中に、どの距離でも入射光とほぼ同じ明るさの点ができる。これを Arago の点(Poisson の点)と呼ぶ。縁から来る波は円板の全周で軸上に同じ位相で届くので、強め合って中心を照らす。幾何光学の影の中に光がある、という結果は、光が波であることの最もはっきりした証拠の1つである。

木下の勉強ステータス

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