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この章で取り出すモード:横の波数で分けた平面波

2026年10月15日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第6章 回折
目次
  1. Helmholtz 方程式とスカラーの場
  2. 平面波のモードと角スペクトル
  3. 近軸の伝達関数は2次元の自由粒子の伝搬
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

光学と量子エレクトロニクス 第6章 §6.1 ★★★ 自由な空間では横の波数 q\bm{q} ごとの平面波が位相 eikzz\mathrm{e}^{\mathrm{i} k_zz} を回すだけで混ざらない。∣q∣>k\lvert \bm{q}\rvert >k のモードは伝わらない

第1部では光を光線として扱い、波長 λ→0\lambda\to0 の極限で結像と収差を調べた。第3章で見たとおり、収差が無い理想のレンズでも点の像は点にならず、波長と開口の大きさで決まる広がりを持つ。光線の理論はこの広がりを扱えない。光線は向きを1つしか持たないが、有限の大きさの開口を通った光は、向きの違う平面波をいくつも重ね合わせたものになるからである。この章では、光線の代わりに平面波を基本の対象にとり、開口を通った光がどう広がるかを調べる。

この章で取り出すモードは、光軸に垂直な面の上の横の波数 q\bm{q} で番号を付けた平面波である。物質のモデルは開口(光を通す穴と通さない板)で、光との結合は「開口の面の上で、入射した場に開口の透過の関数を掛ける」ことに尽きる。6.1節で、自由な空間を伝わる間は各モードが位相を回すだけで混ざらないことを示し、横の波数が k=2π/λk=2\pi/\lambda を超えるモードは伝わらずに減衰することを見る。6.2節では、このモードの伝わり方を位置の言葉に戻して Rayleigh–Sommerfeld の積分を作り、円開口の軸上の場を厳密に求めて、Fresnel 近似と Fresnel 数 NFN_{\mathrm F} を導入する。6.3節と6.4節が「出てくるもの」で、遠方(NF≪1N_{\mathrm F}\ll1)の回折像が開口の透過の関数の Fourier 変換になること、スリットと回折格子の像、円開口の Airy 円盤と回折限界を順に出す。6.5節で置いた近似を札にまとめ、レーザーで髪の毛の太さを測る実験で確かめ方を述べる。6.6節で学部の光学で習う Huygens–Fresnel の原理と Fresnel 帯の形と並べる。

Helmholtz 方程式とスカラーの場

光の電場の1つの成分を、角周波数 ω\omega の複素振幅 U(r)U(\bm{r}) で Re⁡[U(r)e−iωt]\operatorname{Re}[U(\bm{r})\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega t}] と書く(この本の流儀)。真空中(空気もほぼ同じ)では波動方程式に e−iωt\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega t} を入れて

(∇2+k2)U(r)=0,k=ωc=2πλ(6.1)(\nabla^2+k^2)U(\bm{r})=0,\qquad k=\frac{\omega}{c}=\frac{2\pi}{\lambda}\tag{6.1}

を得る。これを Helmholtz 方程式と呼ぶ。電場は本当はベクトルで、3つの成分は ∇⋅E=0\nabla\cdot\bm{E}=0 で結ばれているが、この章では1つの成分だけを独立に扱う(スカラー近似。6.5節)。光の強度は ∣U∣2\lvert U\rvert ^2 に比例するので、入射光の振幅を 11 に規格化し、強度を入射光の強度 I0I_0 との比 I/I0=∣U∣2I/I_0=\lvert U\rvert ^2 で書く。

光軸を zz にとり、光軸に垂直な面の上の位置を x=(x,y)\bm{x}=(x,y) と書く。開口は z=0z=0 の面に置き、光は z<0z<0 の側から来て、z>0z>0 の側で観測する。z>0z>0 には光源も物体も無い。

平面波のモードと角スペクトル

z>0z>0 で Helmholtz 方程式を満たす最も簡単な解は平面波 ei(q⋅x+kzz)\mathrm{e}^{\mathrm{i}(\bm{q}\cdot\bm{x}+k_zz)} で、式 (6.1) に入れると ∣q∣2+kz2=k2\lvert \bm{q}\rvert ^2+k_z^2=k^2 が要る。q=(qx,qy)\bm{q}=(q_x,q_y) を横の波数と呼ぶ。∣q∣<k\lvert \bm{q}\rvert <k なら kz=k2−∣q∣2k_z=\sqrt{k^2-\lvert \bm{q}\rvert ^2} は正の実数で、平面波は光軸と角 θ\theta(sin⁡θ=∣q∣/k\sin\theta=\lvert \bm{q}\rvert /k)をなす向きに進む。第3章の光線の運動量 p=nsin⁡θ\bm{p}=n\sin\theta(の横の成分)と比べると、空気中(n=1n=1)では q=kp\bm{q}=k\bm{p} で、横の波数は光線の運動量を 1/k1/k で割ったものに当たる。光線の理論の ℏ\hbar の役を 1/k1/k が持つ、という第3章の見立てがここで式になる。

z=0z=0 の面の上の場 U(x,0)U(\bm{x},0) を横の位置について Fourier 変換し、

U~(q;0)=∫d2x U(x,0) e−iq⋅x,U(x,0)=∫d2q(2π)2 U~(q;0) eiq⋅x(6.2)\tilde U(\bm{q};0)=\int\mathrm{d}^2x\,U(\bm{x},0)\,\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\bm{q}\cdot\bm{x}},\qquad U(\bm{x},0)=\int\frac{\mathrm{d}^2q}{(2\pi)^2}\,\tilde U(\bm{q};0)\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}\bm{q}\cdot\bm{x}}\tag{6.2}

と書く(2π2\pi は逆変換の側に置く。この本の流儀)。U~(q;0)\tilde U(\bm{q};0) を場の角スペクトルと呼ぶ。z=0z=0 の場を、横の波数 q\bm{q} の平面波のモードに分けたときの各モードの振幅である。z>0z>0 では、各モードを zz の向きに進む平面波として延ばせば Helmholtz 方程式の解になる。

命題 6.1(角スペクトルの伝わり方 ★★★)

z>0z>0 に光源が無く、場が z→+∞z\to+\infty で発散しないとき、z>0z>0 の場は

U(x,z)=∫d2q(2π)2 U~(q;0) eikzz eiq⋅x,kz={k2−∣q∣2(∣q∣<k)i∣q∣2−k2(∣q∣>k)(6.3)U(\bm{x},z)=\int\frac{\mathrm{d}^2q}{(2\pi)^2}\,\tilde U(\bm{q};0)\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} k_zz}\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}\bm{q}\cdot\bm{x}},\qquad k_z=\begin{cases}\sqrt{k^2-\lvert \bm{q}\rvert ^2}&(\lvert \bm{q}\rvert <k)\\[2pt] \mathrm{i}\sqrt{\lvert \bm{q}\rvert ^2-k^2}&(\lvert \bm{q}\rvert >k)\end{cases}\tag{6.3}

で与えられる。つまり U~(q;z)=U~(q;0) eikzz\tilde U(\bm{q};z)=\tilde U(\bm{q};0)\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} k_zz} で、各モードは zz を進む間に互いに混ざらず、伝達関数 eikzz\mathrm{e}^{\mathrm{i} k_zz} が掛かるだけである。

証明

式 (6.1) を横の位置について Fourier 変換すると、∇2\nabla^2 の横の部分が −∣q∣2-\lvert \bm{q}\rvert ^2 になるので、各 q\bm{q} について常微分方程式 ∂z2U~+kz2U~=0\partial_z^2\tilde U+k_z^2\tilde U=0 を得る。解は e+ikzz\mathrm{e}^{+\mathrm{i} k_zz} と e−ikzz\mathrm{e}^{-\mathrm{i} k_zz} の重ね合わせである。∣q∣<k\lvert \bm{q}\rvert <k では e−ikzz\mathrm{e}^{-\mathrm{i} k_zz} は −z-z の向きに進む波で、z>0z>0 に光源が無いので含めない。∣q∣>k\lvert \bm{q}\rvert >k では eikzz=e−κz\mathrm{e}^{\mathrm{i} k_zz}=\mathrm{e}^{-\kappa z}(κ=∣q∣2−k2\kappa=\sqrt{\lvert \bm{q}\rvert ^2-k^2})が減衰し、もう一方の e+κz\mathrm{e}^{+\kappa z} は発散するので含めない。どちらも eikzz\mathrm{e}^{\mathrm{i} k_zz} だけが残り、z=0z=0 で U~(q;0)\tilde U(\bm{q};0) に合わせれば式 (6.3) になる。

∣q∣>k\lvert \bm{q}\rvert >k のモードは zz の向きに 1/κ1/\kappa の長さで減衰する。これをエバネッセント波と呼ぶ。開口の場の中で、波長より細かい構造(∣q∣>2π/λ\lvert \bm{q}\rvert >2\pi/\lambda の Fourier 成分)を運ぶのはこのモードで、開口から波長の数倍も離れるとほぼ消える。遠くで見る像が波長より細かい構造を持つことができないのは、伝わるモードの横の波数が ∣q∣<k\lvert \bm{q}\rvert <k に限られることの言い換えであり、6.4節の回折限界はここで既に決まっている。エバネッセント波を開口のすぐ近くで拾って限界を越える方法(近接場)は第8章(第8章)で扱う。

近軸の伝達関数は2次元の自由粒子の伝搬

光軸に近い向きのモードだけを考え、∣q∣≪k\lvert \bm{q}\rvert \ll k として kzk_z を展開すると

kz=k−∣q∣22k+O(∣q∣4/k3),eikzz≈eikz e−i∣q∣2z/(2k)(6.4)k_z=k-\frac{\lvert \bm{q}\rvert ^2}{2k}+\mathcal{O}(\lvert \bm{q}\rvert ^4/k^3),\qquad \mathrm{e}^{\mathrm{i} k_zz}\approx\mathrm{e}^{\mathrm{i} kz}\,\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\lvert \bm{q}\rvert ^2z/(2k)}\tag{6.4}

となる。後ろの因子 e−i∣q∣2z/(2k)\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\lvert \bm{q}\rvert ^2z/(2k)} は、質量 mm の自由粒子の運動量表示の時間発展 e−i∣p∣2t/(2mℏ)\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\lvert \bm{p}\rvert ^2t/(2m\hbar)} で p/ℏ→q\bm{p}/\hbar\to\bm{q}、t/m→z/kt/m\to z/k と置いたものと同じ形である。つまり近軸では、光の横の分布は zz を時刻とする2次元の自由粒子の波動関数のように広がる。これを方程式の形に書いたものが近軸波動方程式で、第4章(第4章)でガウスビームを出す出発点になる。波動関数の広がりが不確定性関係 Δx Δp≳ℏ\Delta x\,\Delta p\gtrsim\hbar で決まるのと同じく、幅 aa の開口を通った光は横の波数に Δq∼1/a\Delta q\sim1/a の幅を持ち、角度にして Δθ∼1/(ka)=λ/(2πa)\Delta\theta\sim1/(ka)=\lambda/(2\pi a) 程度に広がる。これが回折の広がりの大きさの見積もりである。

例題 6.1 周期的な開口の角スペクトル ★★

オリジナル波長 λ=0.633 μm\lambda=0.633\,\mu\mathrm m の平面波が、xx の向きに周期 Λ\Lambda で透過率が変わる薄い板(回折格子)に垂直に入る。透過した場は周期 Λ\Lambda の周期関数なので、角スペクトルは qx=2πm/Λq_x=2\pi m/\Lambda(mm は整数)にだけ値を持つ。

  1. (1) Λ=2 μm\Lambda=2\,\mu\mathrm m のとき、m=1m=1 のモードが進む向き θ\theta を求めよ。
  2. (2) Λ=0.5 μm\Lambda=0.5\,\mu\mathrm m のとき、m=±1m=\pm1 のモードは伝わるか。伝わらないなら、強度でなく振幅が 1/e1/\mathrm{e} になる長さ 1/κ1/\kappa を求めよ。
  3. (3) Λ=2 μm\Lambda=2\,\mu\mathrm m で、透過した場が m=0,±1m=0,\pm1 の3つのモードだけを持つとき(透過率が正弦波の格子)、zz を進むと横の強度分布は周期的に元に戻る。その周期(Talbot 距離)zTz_{\mathrm T} を、厳密な kzk_z と近軸の式 (6.4) の両方で求めよ。
解答

(1) sin⁡θ=qx/k=λ/Λ=0.633/2=0.3165\sin\theta=q_x/k=\lambda/\Lambda=0.633/2=0.3165 で、θ=18.45∘\theta=18.45^\circ。周期が細かいほど qxq_x が大きく、回折の向きは光軸から離れる。

(2) qx=2π/Λ=12.57 μm−1q_x=2\pi/\Lambda=12.57\,\mu\mathrm m^{-1} は k=2π/λ=9.93 μm−1k=2\pi/\lambda=9.93\,\mu\mathrm m^{-1} より大きいので、m=±1m=\pm1 のモードは伝わらない。κ=qx2−k2\kappa=\sqrt{q_x^2-k^2} から 1/κ=0.130 μm1/\kappa=0.130\,\mu\mathrm m で、波長の 1/51/5 の距離で振幅が 1/e1/\mathrm{e} になる。Λ<λ\Lambda<\lambda の格子を遠くから見ると、m=0m=0 のモードしか伝わらず、縞は見えない。

(3) 3つのモードの zz についての位相は eikz\mathrm{e}^{\mathrm{i} kz} と、m=±1m=\pm1 の eikz1z\mathrm{e}^{\mathrm{i} k_{z1}z}(kz1=k2−(2π/Λ)2k_{z1}=\sqrt{k^2-(2\pi/\Lambda)^2})である。強度分布は2種類の位相の差 (k−kz1)z(k-k_{z1})z だけで決まるので、それが 2π2\pi 進むごとに元に戻る:

zT=2πk−kz1=12.3 μm.z_{\mathrm T}=\frac{2\pi}{k-k_{z1}}=12.3\,\mu\mathrm m .

近軸の式では k−kz1≈(2π/Λ)2/(2k)k-k_{z1}\approx(2\pi/\Lambda)^2/(2k) なので zT≈2Λ2/λ=12.6 μmz_{\mathrm T}\approx2\Lambda^2/\lambda=12.6\,\mu\mathrm m。sin⁡θ=0.32\sin\theta=0.32 の傾きでは近軸の式は2パーセントずれる。近軸の式では mm 番目のモードの位相のずれが m2m^2 に比例するので、すべての mm が同時に 2π2\pi の整数倍に戻り、どんな周期的な開口でも 2Λ2/λ2\Lambda^2/\lambda ごとに像が元に戻る(Talbot 効果)。厳密な kzk_z ではこの揃い方は崩れる。

木下の勉強ステータス

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