光学と量子エレクトロニクス 第6章 §6.3 ★★★ NF≪1 の遠方では、向き θ に届く場は横の波数 q=ksinθ のモードの振幅そのもの。スリットと回折格子の像がここから出る
遠方の場は角スペクトルそのもの
Fresnel 近似の式 (6.10) の指数の中を ∣x−x′∣2=∣x∣2−2x⋅x′+∣x′∣2 と分ける。開口の大きさを a として、開口の Fresnel 数が小さい(NF=a2/(λz)≪1、つまり k∣x′∣2/(2z)≪1)なら、∣x′∣2 の項を落としてよい。残りは
U(x,z)≈iλzeikzeik∣x∣2/(2z)U~(q=zkx;0),I0I(x)=λ2z21U~(zkx;0)2(6.13)
となる。これを Fraunhofer 回折と呼ぶ。遠方の像は、開口の面の上の場の Fourier 変換(角スペクトル)を、横の波数 q=kx/z で見たものである。
この結果の意味は、モードの言葉で読むとはっきりする。遠くの点 x は開口から向き x/z≈sinθ に見えるので、そこには開口から sinθ の向きに進む平面波だけが届く。その平面波は横の波数 q=ksinθ のモードで、振幅は角スペクトル U~(q;0) である。遠くに離れると、重ね合わせていた平面波のモードが向きごとに分かれて見える。近軸の極限 ∣x∣≪z では x/z=tanθ≈sinθ で、この差は6.5節で数値で見る。
全パワーの保存も確かめておく。d2x=(z/k)2d2q なので、式 (6.13) の強度を面の上で積分すると∫d2xI/I0=∫(2π)2d2q∣U~∣2=∫d2x′∣U(x′,0)∣2(最後は Parseval の等式)となり、開口を通ったパワーがそのまま遠方に届く。レンズの焦点面でも、距離 z を焦点距離 f に置き換えた同じ式が、遠方まで行かずに成り立つ。レンズの位相が ∣x′∣2 の項を打ち消すからで、この性質を使う光学(4f 系・空間フィルタ)は第7章(第7章)で扱う。
スリットと回折格子
y の向きに長い幅 b のスリット(∣x′∣<b/2 で透過率 1)では、x の向きの変換だけが要り、
t~(qx)=∫−b/2b/2e−iqxx′dx′=bqxb/2sin(qxb/2),I(θ)∝(usinu)2,u=λπbsinθ(6.14)
となる。暗い所は bsinθ=mλ(m=±1,±2,…)で、中央の明るい帯の半分の角度幅 λ/b は、スリットが狭いほど広い。Δq∼1/b の見積もりがそのまま正確な形になった。
同じスリットを間隔 d で N 本並べると、n 番目のスリットの透過の関数は x′ を nd ずらしたものなので、Fourier 変換は e−inqxd 倍になる。全部を足すと
t~N(qx)=t~(qx)n=0∑N−1e−inqxd,n=0∑N−1e−2inγ2=sin2γsin2Nγ,γ=2qxd=λπdsinθ(6.15)
を得る。強度は1本のスリットの像(包絡線)に、並べたことによる因子 sin2Nγ/sin2γ を掛けたものである。この因子は γ=mπ、つまり
dsinθ=mλ(m=0,±1,±2,…)(6.16)
で最大値 N2 をとる(回折格子の式)。m を回折の次数と呼ぶ。主な最大の山から最初の 0 までは Δγ=π/N、角度で Δ(sinθ)=λ/(Nd) で、本数が多いほど山は細い。山の高さが N2 で幅が 1/N なので、各山のパワーは N に比例し、本数に比例して光が通ることと合っている。
格子は波長を分ける道具になる。波長 λ と λ+Δλ の2本の線を m 次で見ると、山の位置は Δ(sinθ)=mΔλ/d だけずれる。このずれが山の半分の幅 λ/(Nd) に等しいとき、一方の山の頂上がもう一方の最初の 0 に重なり、2本がちょうど分かれて見える(Rayleigh の基準)。したがって分解能は
Δλλ=mN(6.17)
で、照らされた本数と次数の積で決まる。格子の間隔 d そのものは分解能に入らない。

図 6.2 幅 b のスリットを間隔 d=3b で N=5 本並べたときの Fraunhofer 回折の強度(実線)と、1本のスリットの像 (sinu/u)2(破線)。主な山は dsinθ=mλ に立ち、山の間に N−2=3 個の小さな山がある。3 次の山は1本のスリットの像の 0(bsinθ=λ)と重なって消える
例題 6.3 回折格子でナトリウムの D 線を分ける ★★★
オリジナル1 mm あたり 600 本の回折格子に、ナトリウムの D 線(589.0nm と 589.6nm。平均 589.3nm)を垂直に入れる。
- (1) 1次の回折の角度を求めよ。何次までの光が出るか。
- (2) 格子を幅 25mm にわたって照らすとき、1次と2次の分解能を求めよ。D 線を分けるのに要る分解能と、1次で分けられる最小の波長差を求めよ。
- (3) 照らす幅を 1mm に絞ると、1次と2次で D 線は分かれるか。
解答
(1) d=1/600mm=1.667μm。sinθ=λ/d=0.3536 で θ=20.71∘。∣sinθ∣≤1 なので次数は ∣m∣≤d/λ=2.83、つまり2次までである。3次の「モード」は横の波数が k を超え、6.1節のエバネッセント波になって格子の面に張り付いている。
(2) 照らされた本数は N=25×600=15000 で、式 (6.17) から1次で λ/Δλ=15000、2次で 30000。D 線を分けるには 589.3/0.6=982 あればよいので、どちらでも十分に分かれる。1次で分けられる最小の波長差は 589.3/15000=0.0393nm である。
(3) N=600 で、1次の分解能 600 は 982 に足りず分かれない。2次では 1200>982 で分かれる。照らす幅を狭めても格子の式 (6.16) の山の位置は変わらないが、山の幅が 1/N に比例して太くなり、隣の線と重なる。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com