光学と量子エレクトロニクス 第6章 §6.4 ★★★ 円開口の Fraunhofer 像は Airy 円盤 [2J1(ξ)/ξ]2 で、最初の暗い輪は sinθ=1.22λ/D。点の像の大きさの下限(回折限界)がここで決まる
円開口の Fourier 変換
半径 a(直径 D=2a)の円い穴の透過の関数の Fourier 変換を極座標で書く。x′=ρ(cosφ,sinφ)、q を x の向きにとると q⋅x′=qρcosφ で、
t~(q)=∫0aρdρ∫02πdφe−iqρcosφ=2π∫0aJ0(qρ)ρdρ=πa2qa2J1(qa)(6.18)
となる。ここで角度の積分 2π1∫02πe−iucosφdφ=J0(u) を0次の Bessel 関数の定義として使い、dud[uJ1(u)]=uJ0(u) から ∫0aJ0(qρ)ρdρ=aJ1(qa)/q とした。J1 は1次の Bessel 関数で、J1(u)≈u/2(u→0)なので t~(0)=πa2(穴の面積)である。式 (6.13) に入れて、遠方の強度は
I(θ)=I(0)[ξ2J1(ξ)]2,ξ=kasinθ=λπDsinθ,I(0)=λ2z2Pπa2(6.19)
になる(P=I0πa2 は穴を通る全パワー)。この分布を Airy 円盤(Airy パターン)と呼ぶ。中心の強度が穴の面積の2乗に比例するのは、面積に比例するパワーが、面積に反比例する広さに集まるからである。数値で ∫0∞ξ[2J1(ξ)/ξ]2dξ=2 を使うと、式 (6.19) を面の上で積分した全パワーがちょうど P になる。
J1 の最初の 0 は ξ=3.8317 にあるので、最初の暗い輪は
sinθ1=π3.8317Dλ=1.22Dλ(6.20)
にある。強度が半分になる点は ξ=1.616 で、半値全幅は 1.029λ/D である。最初の暗い輪の内側に入るパワーの割合は 1−J0(ξ1)2−J1(ξ1)2=0.838 で、全パワーの 84 パーセントが中心の円盤に入る。

図 6.3 直径 D の円開口の Airy 円盤 [2J1(ξ)/ξ]2(実線)と、幅 D のスリットの (sinu/u)2(破線)。横軸は同じ Dsinθ/λ。スリットの最初の 0 は 1、円開口は 1.22 で、円開口のほうが縁の近くの面積が小さいぶん、広がりがやや大きい
回折限界
望遠鏡で2つの星を見る場合のように、互いに干渉しない2つの点光源の像を考える。像は2つの Airy 円盤の強度の和で、一方の中心がもう一方の最初の暗い輪に重なる角度 1.22λ/D を、分けて見える限界の目安にする(Rayleigh の基準)。レンズの焦点面では式 (6.13) の z が焦点距離 f に置き換わり、像の面での Airy 円盤の半径は
rAiry=1.22Dλf=0.61NAλ(6.21)
になる(NA≈D/(2f) は第2章の像の側の開口数)。第2章(第2章)で幾何光学が「点に集まる」とした焦点は、実際にはこの大きさを持つ。これを回折限界と呼ぶ。収差を完全に消しても、これより小さい点に光を集めることはできない。
回折限界の起源はモードの数で言い直せる。面積 A の開口を、立体角 Ω の向きの範囲に出ていく光のモードの数は、横の波数の面の上の面積 k2Ω に開口の面積を掛けて (2π)2 で割ったAk2Ω/(2π)2=AΩ/λ2 程度である。モード1つ分(AΩ∼λ2)より狭い所に光を詰めることはできない。第4章のガウスビームは、ビームの断面積 πw02 と広がりの立体角 πθ02(θ0=λ/(πw0))の積がちょうど λ2 で、モード1つ分の光になっている。幾何光学のエタンデュ(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部第10章で Liouville の定理として示した、光の相空間の体積)は、波の言葉ではモードの数で、その最小の単位が λ2 である。
点の像の中心の強度は、収差の評価にも使える。焦点面の中心(q=0)の場は、式 (6.13) から瞳の上の場をそのまま積分したものなので、瞳の上に光路長のずれ Φ(x′) があると、中心の振幅は ∫eikΦd2x′ に比例する。収差の無い場合との強度の比は
S=A1∫瞳eikΦ(x′)d2x′2(6.22)
で、これが第3章(第3章)で先に使った Strehl 比である。回転対称な Φ(ρ) なら第3章の式の形になり、開口の縁で λ/4 のデフォーカスでは S=0.811 になる。
例題 6.4 目・望遠鏡・顕微鏡の回折限界 ★★
オリジナル
- (1) 明るい所の目の瞳の直径を 3mm、波長を 550nm として、目の回折限界の角度を求めよ。間隔 1m の2つの点(たとえば車の前照灯)は、どこまで離れると1つに見えるか。口径 200mm の望遠鏡ではどうか。
- (2) 開口数 0.5 の対物レンズで波長 532nm の光を集めるとき、焦点の Airy 円盤の半径を求めよ。
解答
(1) θ=1.22λ/D=1.22×550×10−9/(3×10−3)=2.24×10−4rad で、角度の秒にすると 46′′(0.77′)。間隔 1m の2点がこの角度に見えるのは 1/(2.24×10−4)=4.47km で、それより遠いと回折だけで1つに見える(実際の目の分解能は網膜の細胞の間隔と収差でも決まり、これと同程度である)。口径 200mm の望遠鏡では 1.22λ/D=0.69′′ で、目より70倍ほど細かく分けることができる。
(2) 式 (6.21) から rAiry=0.61×0.532/0.5=0.649μm。可視光の顕微鏡で分けられる2点の間隔は、波長の程度が下限になる。これをどう越えるかが第8章の主題である。
例題 6.5 収差で決まるか、回折で決まるか ★★★
オリジナル第2章(第2章)の平凸レンズ(焦点距離 f=100mm、凸面を平行光の側に向ける)では、高さ h で入った光線の縦の球面収差(近軸の焦点からのずれ)が ch2、c=0.01157mm−1 だった。近軸の焦点面での横のずれは、縦のずれに光線の傾き h/f を掛けて ch3/f と見積もる。光を高さ h までの円い開口で絞ったとき(NA=h/f)、波長 500nm で次を求めよ。
- (1) h=2mm と h=10mm のときの、縁の光線の横のずれと Airy 円盤の半径。
- (2) 2つが等しくなる h。
解答
(1) Airy 半径は 0.61λ/NA=0.61λf/h。h=2mm では横のずれ 0.01157×8/100=0.93μm、Airy 半径 15.3μm で、点の像の大きさは回折で決まる。h=10mm では横のずれ 116μm、Airy 半径 3.05μm で、収差で決まる。
(2) ch3/f=0.61λf/h を解いて h=(0.61λf2/c)1/4=4.03mm(NA=0.04)。開口を広げると、回折のぼけは 1/h で小さくなり、球面収差のぼけは h3 で大きくなる。この2つが釣り合う開口の近くで、レンズの像は最も細かくなる。同じレンズでも、絞って使えば回折限界の性能になり、開いて使えば収差で決まる。どちらの領域かを見分けるのが、第3章の Strehl 比 S≥0.8(Maréchal の基準)の役目である。
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