光学と量子エレクトロニクス 第9章 §9.2 ★★★ 2枚の鏡の間の多重反射を足すと Airy 関数になり、共鳴の近くでは共振器は1つの減衰するモードとして書ける。入口の結合と残りの損失が等しいと反射が消える
多重反射の和と Airy 関数
平行な2枚の鏡を距離 L だけ離して置き、間を屈折率 1 の媒質で満たす。鏡 i(i=1,2)の強度の反射率・透過率・吸収率を Ri, Ti, Ai(Ri+Ti+Ai=1)とし、共振器の内側の面での振幅の反射率を実数 ri=Ri>0 にとる(反射の位相は基準面の位置、つまり L の小さな付け替えに吸収できる)。光が垂直に入るとき、鏡の間を1往復した光は位相 φ=2kL をもらう。鏡1を透過した振幅 t1E0 は、鏡2を透過して出るまでに0回、1回、2回、…と往復し、往復のたびに r1r2eiφ が掛かる。出ていく振幅を足し上げると
tFP=t1t2eiφ/2m=0∑∞(r1r2eiφ)m=1−r1r2eiφt1t2eiφ/2(9.5)
で、透過率は
TFP(φ)=∣tFP∣2=1+Fsin2(φ/2)Tmax,Tmax=(1−R1R2)2T1T2,F=(1−R1R2)24R1R2(9.6)
となる。この φ の関数を Airy 関数と呼ぶ(第6章の Airy 円盤とは別のものである)。φ=2πm(m は整数)で透過率が最大になる。この条件 2L=mλ が共振器の縦モードで、隣の共鳴までの周波数の間隔は νFSR=c/(2L)(第1章(第1章)の FSR)である。損失が無く鏡が等しい(R1=R2=R, Ai=0)と Tmax=1 で、反射率 0.99 の鏡2枚を重ねても、共鳴では光がすべて通り抜ける。
共鳴の鋭さは、透過率が半分になる Fsin2(φ/2)=1 で測る。F≫1 では半値全幅が φ で 4/F なので、共鳴の間隔 2π との比
F=4/F2π=2πF=1−R1R2π(R1R2)1/4(9.7)
をフィネスと呼ぶ。周波数の半値全幅は Δν1/2=νFSR/F である。厳密には半値全幅は φ で 4arcsin(1/F) で、式 (9.7) はその F≫1 の形である。これは第5章で周回の Airy 関数から出したフィネス(式 (5.18) で r1r2 を R1R2 と読んだもの。Ri=ri2)と同じ式で、線幅と光子の寿命の関係 Δν1/2=1/(2πτc) も第5章の式 (5.20) のとおりである(この章では τc をコヒーレンス時間に使うので、光子の寿命は次の小節の減衰率 κ を使って 1/κ と書く。第5章の τc と同じ量である)。この節で多重反射を足し上げたのは、外から見た透過の最大値 Tmax と、鏡の吸収 Ai がそれをどう下げるかを出すためである。図 9.2 に3つの反射率で Airy 関数を描いた。反射率を上げると、共鳴の間隔を変えずに幅だけが狭くなる。

図 9.2 損失の無い対称な Fabry–Perot 干渉計の透過率(式 (9.6))。R=0.3, 0.7, 0.95 でフィネスはそれぞれ 2.5, 8.8, 61 である(R=0.3 では F≫1 でないので式 (9.7) は目安)。どの反射率でも共鳴では TFP=1 になる。
例題 9.2 長さ 10cm の共振器の Q 値と鏡の吸収 ★★★
オリジナル第5章の例題 5.5 の共振器(等しい鏡 R=0.99 を L=10cm 離したもの。νFSR=1.50GHz・F=313・Δν1/2=4.80MHz・光子の寿命 33.2ns)を、波長 633nm の光で使う。
- (1) Q 値 ν/Δν1/2 を求めよ。
- (2) 両方の鏡が吸収 A=10−3 を持ち、反射率は R=0.99 のまま(T=0.009)のとき、共鳴の透過率を求めよ。
解答
(1) ν=c/λ=4.74×1014Hz で、Q=9.88×107 である。
(2) 式 (9.6) で Tmax=T2/(1−R)2=(0.009/0.01)2=0.81。1−R=T+A なので Tmax=(T/(T+A))2 で、往復するあいだに吸われる割合 A が漏れ出る割合 T の 1/9 でも、共鳴の透過は2割近く下がる。光は共振器の中を平均約 50 回往復し(与えた光子の寿命 1/κ=33.2ns を1往復の時間 2L/c=0.667ns で割った数)、そのあいだに吸収が積み重なるからである。
共鳴の近くを1つのモードで書く
F≫1 のとき、共鳴 φ=2πm の近くでは sin2(φ/2)≈(φ−2πm)2/4 で、φ−2πm=2L(ω−ωc)/c(ωc=2πm⋅c/(2L) は共鳴の角周波数)なので、Airy 関数は角周波数について Lorentz 形
TFP≈1+(2Δc/κ)2Tmax,Δc=ω−ωc,κ=LF2c
になる(κ は角周波数の半値全幅)。この形は、共振器の中に1つのモードだけがあり、その振幅がエネルギーの減衰率 κ で減衰振動する、と考えても出てくる。共振器の中の場のモードの複素振幅を a(t)(∣a∣2 がモードのエネルギー)、入射波の振幅を sin(t)(∣sin∣2 がパワー)として
dtda=−iωca−2κa+κ1sin,sr=−sin+κ1a,st=κ2a,κ=κ1+κ2+κ0(9.8)
と置く。κ1, κ2 は鏡1・鏡2から外へ漏れ出る率、κ0 は吸収など共振器の中で失われる率で、sr, st は反射と透過の振幅である。sr の第1項 −sin は鏡1の外側の面で直接返る光で、共鳴から遠い所では sr≈−sin(r1≈1 の鏡の外側の反射率 −r1)になるように符号を選んだ。1往復の時間 2L/c に鏡 i から割合 Ti が漏れるので、Ti≪1 では κi=cTi/(2L)、κ0=c(A1+A2)/(2L) である。エネルギーの収支を確かめると、式 (9.8) から d∣a∣2/dt=−κ∣a∣2+2κ1Re(a∗sin) で、外から入って出ていかないパワー ∣sin∣2−∣sr∣2−∣st∣2=2κ1Re(a∗sin)−(κ1+κ2)∣a∣2 は、モードのエネルギーの増える速さと中で失われる κ0∣a∣2 の和に等しい。
角周波数 ω の入射 sin∝e−iωt に対する定常解は a=κ1sin/(κ/2−iΔc) で、
r(Δc)=sinsr=−1+κ/2−iΔcκ1,∣t(Δc)∣2=∣sin∣2∣st∣2=κ2/4+Δc2κ1κ2(9.9)
となる。共鳴での透過率は 4κ1κ2/κ2 で、κi=cTi/(2L) を入れると 4T1T2/(T1+T2+A1+A2)2 になり、式 (9.6) の Tmax を 1−Ri≪1 で展開したものと一致する。1つのモードの式 (9.8) は、多重反射の和 (9.5) のうち1つの共鳴の近くだけを取り出したもので、ほかの縦モード(±νFSR 離れた共鳴)を捨てている。この縮約が使えるのは、線幅 κ/(2π) が共鳴の間隔 νFSR より十分小さい、つまり F≫1 のときである。
臨界結合
式 (9.9) の共鳴での反射率は
r(0)=κ1+κ2+κ0κ1−(κ2+κ0)(9.10)
で、入口の鏡から漏れる率 κ1 が、それ以外のすべての損失 κ2+κ0 に等しいとき 0 になる。これを臨界結合と呼ぶ。臨界結合では、入口の鏡で直接返る光(−sin)と、共振器にたまって鏡1から漏れ出る光(κ1a)が同じ大きさで逆の位相になり、打ち消し合う。κ1<κ2+κ0 を結合不足、κ1>κ2+κ0 を結合過剰と呼ぶ。出口の鏡と損失を決めたとき、共鳴の透過率 4κ1κ2/κ2 を κ1 について最大にする条件も∂(κ1/(κ1+κ2+κ0)2)/∂κ1=0 から κ1=κ2+κ0 で、臨界結合と同じになる。
反射の振幅 r(Δc) は、Δc を −∞ から +∞ まで動かすと複素平面で円を描く。1/(1−ix) が中心 1/2・半径 1/2 の円を描くことから、r は中心 −1+κ1/κ・半径 κ1/κ の円を描き、Δc=±∞ で −1 に戻る(図 9.3)。この円が原点を囲むのは半径が中心までの距離より大きいとき、つまり κ1/κ>1/2(結合過剰)のときで、そのとき反射の位相は共鳴を横切るあいだに 2π 回る。結合不足では円が原点を囲まず、位相は行って戻るだけである。反射の強度 ∣r∣2 は κ1 と κ2+κ0 を入れ替えても変わらないので、強度だけからは結合不足と結合過剰を区別できず、位相を測って初めて区別できる。

図 9.3 共振器の反射の振幅 r(Δc)(式 (9.9))が複素平面に描く円。κ1/(κ2+κ0)=0.5(結合不足)・1(臨界結合)・2(結合過剰)。共鳴から遠い所ではどれも r=−1 にあり、共鳴で円の反対側に来る。臨界結合の円は原点を通る。
例題 9.3 反射の谷から結合の率を読む ★★
オリジナル共鳴の角周波数 ωc/2π=194THz(波長 1.55μm)の共振器を、片側の結合だけで外とつないだ(κ2=0)。反射の強度を周波数で掃くと、谷の底で ∣r(0)∣2=0.25、谷の半値全幅(角周波数で κ)が κ/2π=10MHz だった。
- (1) κ1 と κ0 を求めよ。答えが2通りあることを示せ。
- (2) それぞれの場合の内部の Q 値 ωc/κ0 と、結合込みの Q 値 ωc/κ を求めよ。
- (3) 2通りを区別するには何を測ればよいか。
解答
(1) 式 (9.10) から r(0)=2κ1/κ−1=±0.5 で、κ1/κ=0.75 または 0.25。κ/2π=10MHz なので、結合過剰なら κ1/2π=7.5MHz, κ0/2π=2.5MHz、結合不足なら κ1/2π=2.5MHz, κ0/2π=7.5MHz である。谷の半値全幅は、式 (9.9) から 1−∣r∣2=κ1κ0/(κ2/4+Δc2) が Lorentz 形なので、確かに κ である。
(2) 結合込みの Q 値はどちらも 194×1012/(10×106)=1.94×107。内部の Q 値は結合過剰なら 194×1012/(2.5×106)=7.76×107、結合不足なら 2.59×107 で、3倍違う。
(3) 反射の位相を測る。結合過剰では位相が共鳴をまたいで 2π 回り、結合不足では回らない(図 9.3)。位相を測らずに区別するには、結合の強さを少し変えて谷が深くなる向きを見ればよい。結合を強めて谷が浅くなれば結合過剰、深くなれば結合不足である。
例題 9.4 1つのモードの式はどれだけ正しいか ★★
オリジナル損失の無い等しい鏡の Fabry–Perot 共振器で、共鳴の半値全幅(角周波数)を、厳密な Airy 関数からと、1つのモードの式 κ=κ1+κ2=c(1−R)/L からとで求め、R=0.9 と R=0.99 で比べよ。
解答
厳密には Fsin2(φ/2)=1 の2つの解の間隔が φ で 4arcsin(1/F)=4arcsin((1−R)/(2R)) で、dφ=(2L/c)dω なので、角周波数の半値全幅は(2c/L)arcsin((1−R)/(2R)) である。c/L を単位にすると、R=0.9 で厳密 0.1055、1つのモードの式 0.1000(差 5.2 パーセント)、R=0.99 で厳密 0.010050、1つのモードの式 0.010000(差 0.50 パーセント)である。差はほぼ 1−R に比例し、フィネスで言えば 1/F の桁である。差の主な部分は、漏れの率を κi=cTi/(2L) と1次で書いたことによる。1往復で振幅が r1r2 倍になることを正確に使うと κ=(c/2L)(−lnR1R2) で、R=0.9 でも 0.1054 と厳密な値に 0.1 パーセントまで近づく。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com