光学と量子エレクトロニクス 第13章 §13.3 ★★★ ω≪γ では反射率が直流の伝導度で決まり(Hagen–Rubens)、γ≪ω≪ωp では R≈1−2γ/ωp で光は深さ c/ωp までしか入らず、ω>ωp で透明になる
金属では γ≪ωp が普通に成り立つ(銅に近い値で ℏγ≈0.03eV、ℏωp≈10eV。例題 13.3)。そのため、周波数の軸は γ と ωp の2点で3つの帯に分かれ、各帯で (13.3) を簡単な形に近似することができる。この節と次の節では εb=1 とする。
低い周波数 ω≪γ:Hagen–Rubens の帯
ω≪γ では σ(ω)≈σ0 で、(13.2) の第2項 iσ0/(ε0ω) が 1 よりはるかに大きい。i=(1+i)/2 から
n~≈(1+i)2ε0ωσ0,n=κ≫1
で、(13.8) に n=κ=N を入れると R=(2N2−2N+1)/(2N2+2N+1)≈1−2/N、すなわち
R≈1−σ08ε0ω(13.11)
である。これが Hagen–Rubens の関係で、赤外の反射率が直流の伝導度だけで決まることを言う。表皮の深さは (13.7) から
δs=μ0σ0ω2(13.12)
で、電気回路で習う表皮効果の式そのものである。この帯では光も交流の電流も同じ式に従う。
中間の周波数 γ≪ω≪ωp:緩和の帯
ω≫γ では電子が1回衝突するまでに何回も振動するので、衝突は小さな補正になる。(13.4) は ε1≈−ωp2/ω2, ε2≈γωp2/ω3 で、∣ε1∣≫ε2 である。−a+ib=ia1−ib/a≈ia+b/(2a)(0<b≪a)から
n≈2ω2γωp,κ≈ωωp
となり、(13.8) の 1−R≈4n/κ2 に入れて
R≈1−ωp2γ,δs≈ωpc(13.13)
を得る。反射率も表皮の深さも周波数によらない。電子は電場と逆位相で動いて内部の電場を打ち消し、打ち消しきれない分が深さ c/ωp の層に残る。吸収されるのは、その層の中で電子が衝突するときに失う割合 2γ/ωp だけである。可視光に対して金属が鏡になるのは、可視光がこの帯に入るからである。
高い周波数 ω>ωp:透明の帯
ω>ωp では ε1>0 になり、γ を無視すると n~=1−ωp2/ω2 は実数である。光は減衰せずに進み、反射率は R=((1−n)/(1+n))2 に下がる。ω が ωp を超えると、電子は慣性のために電場に追いつけず、電場を打ち消す分極を作ることができない。金属は誘電体と同じに光を通す。
図 13.1 に n と κ を、図 13.2 に 1−R を示す。3つの帯の境 ω≈γ と ω=ωp で、近似の形が切り替わる。

図 13.1 Drude の式(εb=1, γ/ωp=0.01)の屈折率 n(青)と消衰係数 κ(赤)。破線は ω=γ と ω=ωp。ω≪γ で n=κ∝ω−1/2、緩和の帯で κ≈ωp/ω≫n≈γωp/(2ω2)、ω>ωp で κ→0, n→1

図 13.2 反射率の不足分 1−R(点線が Drude の式から (13.8) で計算した値、γ/ωp=0.01)。実線は近似:青が Hagen–Rubens (13.11)(σ0/ε0=ωp2/γ と書き直すと 1−R=8γω/ωp)、赤が緩和の帯の (13.13)。ω=ωp を超えると 1−R が 1 に近づき、金属は光を通す
例題 13.3 銅に近い金属の赤外の反射 ★★
オリジナルne=8.47×1028m−3、σ0=6.0×107Sm−1 の金属(銅に近い値)を Drude の式(εb=1, m は電子の質量)で扱う。
- (1) τ, ℏγ, ℏωp を求めよ。
- (2) 波長 1mm, 100μm, 10μm の光について ωτ と、(13.8) で計算した 1−R を求め、Hagen–Rubens の値 (13.11) および緩和の帯の値 2γ/ωp と比べよ。
解答
(1) τ=mσ0/(nee2)=2.51×10−14s、ℏγ=ℏ/τ=0.0262eV。ωp=nee2/(ε0m)=1.64×1016s−1 で ℏωp=10.8eV である。γ/ωp=2.4×10−3 で、帯の境は大きく離れている。
(2) ω=2πc/λ から次のようになる。
| λ | ωτ | 1−R((13.8)) | Hagen–Rubens | 2γ/ωp |
| 1mm | 0.047 | 1.46×10−3 | 1.49×10−3 | 4.85×10−3 |
| 100μm | 0.47 | 3.74×10−3 | 4.72×10−3 | 4.85×10−3 |
| 10μm | 4.7 | 4.81×10−3 | 1.49×10−2 | 4.85×10−3 |
ωτ≪1 の 1mm では Hagen–Rubens が 2 パーセントで合い、ωτ≫1 の 10μm では緩和の帯の値が 1 パーセントで合う。ωτ≈0.5 の 100μm はどちらの近似も 2 割以上ずれる境の帯である。Hagen–Rubens の式を ωτ>1 に使うと、1−R を3倍に見積もる。反射率から直流の伝導度を読むには ωτ≪1 の遠赤外まで下りる必要がある。
例題 13.4 表皮の深さの3つの値 ★★
オリジナル例題 13.3 の金属で、50Hz と 2.45GHz の表皮の深さを (13.12) で、可視光の表皮の深さを (13.13) で求めよ。2.45GHz で (13.12) を使ってよい理由も述べよ。
解答
50Hz では δs=2/(μ0σ0ω)=9.19mm、2.45GHz では 1.31μm である。2.45GHz でも ωτ=3.9×10−4≪1 なので、伝導度は直流の値のまま使うことができる。可視光(550nm で ωτ=86)では δs=c/ωp=18.3nm で、周波数によらない。送電線の太い電線の中心に交流の電流が流れにくいことと、厚さ 100nm の金属膜で鏡が作れることは、同じ式の両端である。
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AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com