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出てくるもの(3):Pancharatnam の位相

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第15章 異方性媒質と偏光
目次
  1. 異なる偏光の間の位相
  2. 立体角の半分
  3. 板による幾何学的な位相
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

光学と量子エレクトロニクス 第15章 §15.5 ★★★ 偏光を Poincaré 球の上で閉じた道に沿って変えて元に戻すと、光は道が囲む立体角の半分の位相を受ける。式は Berry 位相と同じで、λ/2\lambda/2 板の向きで位相を変える幾何学的な位相板の原理になる

異なる偏光の間の位相

同じ偏光の2つの光の位相差は、重ねたときの干渉で決まる。偏光が違う2つの光の位相差は、Pancharatnam(S. Pancharatnam (1956)、Proc. Indian Acad. Sci. A 44, 247)が次のように定めた。2つの光 ψ1,ψ2\psi_1,\psi_2 を重ねた強度は ∣ψ1+ψ2∣2=2+2Re⁡⟨ψ1∣ψ2⟩\lvert \psi_1+\psi_2\rvert ^2=2+2\operatorname{Re}\langle \psi_1 | \psi_2 \rangle で、ψ2\psi_2 の全体の位相を変えると強度が変わる。強度が最大になるとき、すなわち ⟨ψ1∣ψ2⟩\langle \psi_1 | \psi_2 \rangle が正の実数のとき、2つの光は同じ位相にあると定める。直交していない2つの偏光は、この意味で必ず位相を比べられる。⟨ψ1∣ψ2⟩\langle \psi_1 | \psi_2 \rangle の偏角 arg⁡⟨ψ1∣ψ2⟩\arg\langle \psi_1 | \psi_2 \rangle が ψ1\psi_1 から見た ψ2\psi_2 の位相の進みである。

この定め方には、推移律が成り立たないという性質がある。∣B⟩| B \rangle が ∣A⟩| A \rangle と同じ位相にあり、∣C⟩| C \rangle が ∣B⟩| B \rangle と同じ位相にあっても、∣A⟩| A \rangle が ∣C⟩| C \rangle と同じ位相にあるとは限らない。具体的に、偏光子を A→B→C→AA\to B\to C\to A の順に通すと、出てくる光は

PAPCPB∣A⟩=⟨A∣C⟩⟨C∣B⟩⟨B∣A⟩∣A⟩(15.23)\mathsf P_A\mathsf P_C\mathsf P_B| A \rangle =\langle A | C \rangle \langle C | B \rangle \langle B | A \rangle | A \rangle\tag{15.23}

で、偏光子を1枚通るたびに光は直前の偏光と同じ位相の状態に射影される。最後に元の偏光 ∣A⟩| A \rangle に戻ったとき、入ってきた光から見た位相は Φ=arg⁡(⟨A∣C⟩⟨C∣B⟩⟨B∣A⟩)\Phi=\arg(\langle A | C \rangle \langle C | B \rangle \langle B | A \rangle ) で、一般に 00 にならない。この位相はどの状態の全体の位相を取り替えても変わらない(各ケットとブラが1回ずつ現れるので打ち消し合う)。

立体角の半分

Φ\Phi を Poincaré 球の上で計算する。式 (15.20) により、偏光は Bloch 球の上の2準位系の状態と同じなので、2準位系の結果をそのまま使える。解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第9章 で示したとおり、状態の列 ∣n1⟩,…,∣nN⟩,∣n1⟩| n_1 \rangle ,\dots,| n_N \rangle ,| n_1 \rangle に対して、離散の Berry 位相 γ=−arg⁡∏k⟨nk∣nk+1⟩\gamma=-\arg\prod_k\langle n_k | n_{k+1} \rangle はゲージによらず、スピン 12\frac12 の状態では、Bloch ベクトルの道が囲む立体角を ΘC\Theta_{\mathrm C} として γ=−ΘC/2\gamma=-\Theta_{\mathrm C}/2 になる。γ\gamma の定義の積の複素共役が式 (15.23) の係数なので Φ=γ\Phi=\gamma で、

Φ=arg⁡(⟨A∣C⟩⟨C∣B⟩⟨B∣A⟩)=−ΘC2(15.24)\Phi=\arg\bigl(\langle A | C \rangle \langle C | B \rangle \langle B | A \rangle \bigr)=-\frac{\Theta_{\mathrm C}}{2}\tag{15.24}

を得る。ここで ΘC\Theta_{\mathrm C} は、Poincaré 球の上で A,B,CA,B,C を大円の弧で順に結んだ球面三角形の立体角で、道を外から見て反時計回りにたどるときを正とする。3点のときは、式 (15.23) の係数を2準位系の内積として直接計算しても、同じ結果が確かめられる。球面三角形の3つの頂点を sA,sB,sC\bm{s}_A,\bm{s}_B,\bm{s}_C とすると

tan⁡ΘC2=sA⋅(sB×sC)1+sA⋅sB+sB⋅sC+sC⋅sA\tan\frac{\Theta_{\mathrm C}}{2}=\frac{\bm{s}_A\cdot(\bm{s}_B\times\bm{s}_C)}{1+\bm{s}_A\cdot\bm{s}_B+\bm{s}_B\cdot\bm{s}_C+\bm{s}_C\cdot\bm{s}_A}

で、⟨A∣C⟩⟨C∣B⟩⟨B∣A⟩\langle A | C \rangle \langle C | B \rangle \langle B | A \rangle の偏角はこの右辺の逆正接に一致する。

要点

偏光を Poincaré 球の上で閉じた道に沿って変え、各段で直前の偏光と同じ位相の状態へ移していくと、元の偏光に戻ったとき光は −ΘC/2-\Theta_{\mathrm C}/2 の位相を受ける(ΘC\Theta_{\mathrm C} は道が囲む立体角)。この位相は道の形だけで決まり、道をたどる速さや光が媒質の中にいた時間にはよらない。Berry 位相と同じく、幾何学的な位相である。

λ/2\lambda/2 板による幾何学的な位相

偏光子は強度を捨てるが、波長板を使えば強度を捨てずに同じ位相を作れる。式 (15.16) を ∣+⟩| + \rangle に当てると

W(θ,π)∣+⟩=e2iθ∣−⟩,W(θ,π)∣−⟩=e−2iθ∣+⟩(15.25)\mathsf W(\theta,\pi)| + \rangle =\mathrm{e}^{2\mathrm{i}\theta}| - \rangle ,\qquad\mathsf W(\theta,\pi)| - \rangle =\mathrm{e}^{-2\mathrm{i}\theta}| + \rangle\tag{15.25}

で、λ/2\lambda/2 板は円偏光の螺旋度を反転させ、板の向き θ\theta に比例する位相 ±2θ\pm2\theta を付ける。Poincaré 球の上では、北極から、経度 2θ2\theta の進相軸のまわりの π\pi の回転で、南極へ大円の半分をたどる。回転軸が状態の Bloch ベクトルと常に直交しているので、生成子 n^⋅σ\hat{\bm{n}}\cdot\bm{\sigma} の期待値は道の上でずっと 00 で、動的な位相は付かない。板の中の共通の位相 ei(no+ne)k0d/2\mathrm{e}^{\mathrm{i}(n_{\mathrm o}+n_{\mathrm e})k_0d/2} は θ\theta によらない。θ\theta によって変わる位相 2θ2\theta はすべて幾何学的な位相である。

これを立体角で確かめる。向きが θ\theta と θ′\theta' の2枚の λ/2\lambda/2 板を考えると、北極から南極への2つの道は経度が 2(θ′−θ)2(\theta'-\theta) だけ違う。一方の道で南極へ行き、もう一方の道を逆にたどって北極へ戻る閉じた道は、開き角 2(θ′−θ)2(\theta'-\theta) の月形を囲み、立体角は 4(θ′−θ)4(\theta'-\theta) である。式 (15.24) の立体角の半分の大きさ 2∣θ′−θ∣2\lvert \theta'-\theta\rvert が、2枚の板を通った光の相対的な位相 2θ′−2θ2\theta'-2\theta の大きさと一致する(符号は道をたどる向きで決まる)。

板の向き θ\theta を場所によって変えた板(軸の向きの模様を持つ液晶の膜や微細構造の膜)を作ると、場所ごとに位相 2θ(x,y)2\theta(x,y) を持つ位相板になる。厚さを変えずに、軸の向きだけでレンズや回折格子が作れる。このような素子を Pancharatnam–Berry 位相素子と呼ぶ。位相の符号は螺旋度で逆になるので、同じ素子が ∣+⟩| + \rangle には凸レンズ、∣−⟩| - \rangle には凹レンズとしてはたらく。

例題 15.5 偏光子の列で付く位相 ★★★

オリジナル

  1. (1) ∣H⟩| H \rangle の光を、∣D⟩| D \rangle の偏光子、∣+⟩| + \rangle だけを通す素子、∣H⟩| H \rangle の偏光子の順に通す。出てくる光の強度と位相を、式 (15.23) から直接求め、図 15.2 の立体角と比べよ。
  2. (2) ∣H⟩| H \rangle の光を、向きを 00 から 180∘180^\circ まで少しずつ変えた NN 枚の直線偏光子に通す(N→∞N\to\infty)。出てくる光の強度と、入射光から見た位相を求めよ。
  3. (3) (2) の直線偏光子を、楕円率角 β=20∘\beta=20^\circ の楕円偏光だけを通す素子に替え、楕円の傾きを 00 から 180∘180^\circ まで変える。付く位相を求めよ。
解答

(1) ⟨D∣H⟩=1/2\langle D | H \rangle =1/\sqrt2、⟨+∣D⟩=(1−i)/2\langle + | D \rangle =(1-\mathrm{i})/2、⟨H∣+⟩=1/2\langle H | + \rangle =1/\sqrt2 で、係数の積は (1−i)/4(1-\mathrm{i})/4。強度は ∣(1−i)/4∣2=1/8\lvert (1-\mathrm{i})/4\rvert ^2=1/8、位相は arg⁡(1−i)=−π/4\arg(1-\mathrm{i})=-\pi/4 である。道 ∣H⟩→∣D⟩→∣+⟩| H \rangle \to| D \rangle \to| + \rangle は S1,S2,S3S_1,S_2,S_3 の正の軸を順に結び、外から見て反時計回りに球の 1/81/8 を囲むので、ΘC=4π/8=π/2\Theta_{\mathrm C}=4\pi/8=\pi/2 で、−ΘC/2=−π/4-\Theta_{\mathrm C}/2=-\pi/4 と一致する。強度の 1/81/8 は、3回の射影がそれぞれ cos⁡2(π/4)=1/2\cos^2(\pi/4)=1/2 を通すことによる。

(2) 隣り合う偏光子の角の差 π/N\pi/N ごとに振幅は cos⁡(π/N)\cos(\pi/N) 倍され、積は cos⁡N(π/N)→1\cos^N(\pi/N)\to1 なので、強度は 11 に近づく。各段の係数は正の実数なので位相は付かないように見えるが、最後の偏光子の Jones ベクトルは R(π)∣H⟩=−∣H⟩\mathsf R(\pi)| H \rangle =-| H \rangle である。出てくる光は −∣H⟩-| H \rangle で、入射光から見て位相 π\pi だけずれる。Poincaré 球では、道は赤道を1周し、北半球の立体角 2π2\pi を囲むので、−ΘC/2=−π-\Theta_{\mathrm C}/2=-\pi と一致する(位相 ±π\pm\pi は同じ)。偏光の向きを 180∘180^\circ 回して元の偏光に戻すと、場の符号が反転する。

(3) 道は Poincaré 球の緯度 2β=40∘2\beta=40^\circ の小円を1周する。北極を囲む球冠の立体角は ΘC=2π(1−sin⁡2β)=2π(1−0.6428)=2.244\Theta_{\mathrm C}=2\pi(1-\sin2\beta)=2\pi(1-0.6428)=2.244 で、位相は −ΘC/2=−1.122 rad=−64.3∘-\Theta_{\mathrm C}/2=-1.122\,\mathrm{rad}=-64.3^\circ である。β→45∘\beta\to45^\circ(円偏光)では道が北極の1点に縮んで位相は 00 になり、β=0\beta=0 では (2) の −π-\pi に戻る。楕円の傾きを同じだけ回しても、楕円率によって位相が連続に変わることが、位相が道の囲む面積で決まることの表れである。

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