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この章で選ぶ HH:パラメータを含む Hamiltonian と瞬間の固有状態

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第9章 断熱定理と Berry 位相
目次
  1. 選ぶ Hamiltonian
  2. 固有状態の位相は決まっていない
  3. 例:磁場の中のスピン
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部 第9章 §4.9.1 ★★★ 外から動かすパラメータ R\bm{R} を含む H^(R)\hat H(\bm{R}) を選び、各 R\bm{R} での固有状態 ∣n(R)⟩| n(\bm{R}) \rangle を並べる。固有状態の位相は R\bm{R} ごとに自由に選べる

第1部第14章(第1部第14章)では、Hamiltonian に含まれるパラメータ λ\lambda を周期に比べてゆっくり変えると、作用変数 JJ がほとんど変わらないことを示した。理由は、JJ の変化の速さ J˙=−λ˙ ∂Λ/∂θ\dot J=-\dot\lambda\,\partial\Lambda/\partial\theta が角変数 θ\theta について振動していて、1周で平均すると 00 になることだった。量子力学では作用変数は量子数で数えられる(第4部第4章の調和振動子では Jn=(n+12)ℏJ_n=(n+\frac12)\hbar)。したがって古典の断熱不変性の量子版は「パラメータをゆっくり変えても、系は同じ番号の固有状態にとどまる」という主張になる。これを断熱定理と呼ぶ。

断熱定理の主張そのものは、第3部第5章(第3部第5章)で断熱消磁の計算に使い、証明の骨格は近似の数理 第7章(近似の数理 第7章)で示した。この章で扱うのは、断熱定理が言い残していることである。量子状態は固有状態の番号だけでなく位相も持つ。パラメータを1周させて元の Hamiltonian に戻したとき、状態は元の固有状態に戻るが、位相はエネルギーの時間積分 −1ℏ∫En dt-\frac1\hbar\int E_n\,\mathrm{d} t だけでは決まらず、パラメータが描いた閉曲線の形だけで決まる項 γn\gamma_n が加わる。これを Berry 位相と呼ぶ1M. V. Berry (1984), Proc. R. Soc. Lond. A 392, 45–57.下の脚注へ。Berry 位相は、パラメータの空間で定義されるベクトルポテンシャル(Berry 接続)の周回積分として書け、その回転(Berry 曲率)は固有値が縮退する点に置いた磁気単極子の磁場の形になる。

解析力学の言葉では、この章の計算は次の2つの対応の上に組み立てる。第1に、時刻とともに動く固有状態の組を基底に選ぶことは、時刻を含む正準変換を行うことにあたり、新しい Hamiltonian に第1部第14章の λ˙Λ\dot\lambda\Lambda と同じ形の余分な項が付く。第2に、その余分な項のうち速く振動する部分は平均で消え(断熱定理)、振動しない部分が位相に残る(Berry 位相)。古典力学でも、ゆっくり1周させた可積分系の角変数には ∫ω dt\int\omega\,\mathrm{d} t のほかに幾何学的なずれが残り、Foucault の振り子の振動面の回転がその例になる。

4.9.1節でパラメータを含む Hamiltonian とその瞬間の固有状態を選び、4.9.2節で動く基底への変換と断熱定理を当てる。4.9.3節から4.9.5節が「出てくるもの」で、Berry 位相とそのゲージ不変性、Berry 曲率と縮退点の単極子、Aharonov–Bohm 効果と Foucault の振り子を順に扱う。4.9.6節では、授業の断熱近似の式と Born–Oppenheimer 近似の式に、この章の項を書き足して並べる。

選ぶ Hamiltonian

この章で選ぶのは、外から動かすことのできるパラメータの組 R=(R1,R2,… )\bm{R}=(R_1,R_2,\dots) を含む Hamiltonian

H^=H^(R),R=R(t)(4.9.1)\hat H=\hat H(\bm{R}),\qquad \bm{R}=\bm{R}(t)\tag{4.9.1}

である。R\bm{R} は系の力学変数ではなく、実験者が決める時刻の関数で、磁場の向き、閉じ込めのポテンシャルの位置、分子の中の原子核の位置などにあたる。第1部第14章と第3部第5章で使った1つのパラメータ λ\lambda を、複数の成分を持つ R\bm{R} に広げたものである。成分が2つ以上あることが、この章では本質になる。パラメータが1つだけなら、λ\lambda を変えて元に戻す道は行って帰る往復しかないが、2つ以上あれば、面積を囲む閉曲線を描いて元に戻ることができる。

各 R\bm{R} を止めたときの固有値問題

H^(R)∣n(R)⟩=En(R)∣n(R)⟩,⟨m(R)∣n(R)⟩=δmn(4.9.2)\hat H(\bm{R})| n(\bm{R}) \rangle =E_n(\bm{R})| n(\bm{R}) \rangle ,\qquad \langle m(\bm{R}) | n(\bm{R}) \rangle =\delta_{mn}\tag{4.9.2}

の解を瞬間の固有状態、En(R)E_n(\bm{R}) を瞬間の固有値と呼ぶ。この章では、注目する準位 En(R)E_n(\bm{R}) が考える範囲の R\bm{R} で縮退しない(ほかの準位と離れている)とする。離れている度合いをギャップ

g=min⁡Rmin⁡m≠n∣Em(R)−En(R)∣(4.9.3)g=\min_{\bm{R}}\min_{m\neq n}\lvert E_m(\bm{R})-E_n(\bm{R})\rvert\tag{4.9.3}

で測る。

固有状態の位相は決まっていない

式 (4.9.2) は、∣n(R)⟩| n(\bm{R}) \rangle を位相因子 eiχ(R)\mathrm{e}^{\mathrm{i}\chi(\bm{R})} 倍しても成り立つ。χ(R)\chi(\bm{R}) は R\bm{R} の任意の実関数でよい。つまり、瞬間の固有状態は「方向」(Hilbert 空間の中の1次元の部分空間)までは H^(R)\hat H(\bm{R}) で決まるが、各 R\bm{R} での位相は決まらない。数値計算で H^(R)\hat H(\bm{R}) を対角化すると、固有ベクトルの位相は R\bm{R} ごとにでたらめに出てくる。この自由度を変える操作

∣n(R)⟩ → eiχ(R)∣n(R)⟩(4.9.4)| n(\bm{R}) \rangle \ \to\ \mathrm{e}^{\mathrm{i}\chi(\bm{R})}| n(\bm{R}) \rangle\tag{4.9.4}

を、電磁気のゲージ変換になぞらえてゲージ変換と呼ぶ。名前だけの類似ではなく、4.9.3節で見るとおり、この変換で Berry 接続が An→An−∇Rχ\bm{A}_n\to\bm{A}_n-\nabla_{\bm{R}}\chi と電磁場のベクトルポテンシャルと同じ形で変わる。物理的な結果は、ゲージ変換で変わらない量で書けなければならない。

古典力学の対応物は、作用角変数の角変数 θ\theta の原点の選び方である。第1部第14章では各 λ\lambda で角変数を定めたが、どこを θ=0\theta=0 に選ぶかは λ\lambda ごとに自由だった。その選び方を λ\lambda によって変えると、母関数 W(q,J;λ)W(q,J;\lambda) の λ\lambda 依存性が変わり、Λ=∂W/∂λ\Lambda=\partial W/\partial\lambda も変わる。量子力学では、角変数の原点の自由度が固有状態の位相の自由度になっている。

例:磁場の中のスピン 12\frac12

この章を通して使う例は、向きを変えられる磁場の中のスピン 12\frac12 である。電子のスピンの Hamiltonian −μ^⋅B=μBB⋅σ-\hat{\bm{\mu}}\cdot\bm{B}=\mu_{\mathrm B}\bm{B}\cdot\bm{\sigma}(g≈2g\approx2)を、エネルギーの次元を持つベクトル R=μBB\bm{R}=\mu_{\mathrm B}\bm{B} で書くと

H^(R)=R⋅σ=Rxσx+Ryσy+Rzσz(4.9.5)\hat H(\bm{R})=\bm{R}\cdot\bm{\sigma}=R_x\sigma_x+R_y\sigma_y+R_z\sigma_z\tag{4.9.5}

になる。パラメータの空間は3次元で、R\bm{R} を極座標 (R,θ,φ)(R,\theta,\varphi) で書き、向きを単位ベクトル n=(sin⁡θcos⁡φ,sin⁡θsin⁡φ,cos⁡θ)\bm{n}=(\sin\theta\cos\varphi,\sin\theta\sin\varphi,\cos\theta) で表す。(n⋅σ)2=1(\bm{n}\cdot\bm{\sigma})^2=1 なので固有値は E±=±RE_\pm=\pm R、ギャップは 2R2R で、R=0\bm{R}=0 でだけ2つの準位が縮退する。固有状態は

∣+(R)⟩=(cos⁡θ2eiφsin⁡θ2),∣−(R)⟩=(−e−iφsin⁡θ2cos⁡θ2)(4.9.6)| +(\bm{R}) \rangle =\begin{pmatrix}\cos\frac\theta2\\[2pt] \mathrm{e}^{\mathrm{i}\varphi}\sin\frac\theta2\end{pmatrix},\qquad | -(\bm{R}) \rangle =\begin{pmatrix}-\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\varphi}\sin\frac\theta2\\[2pt] \cos\frac\theta2\end{pmatrix}\tag{4.9.6}

と選べる。∣+⟩| + \rangle はスピンが n\bm{n} の向きを向いた状態(⟨σ⟩=n\langle \bm{\sigma} \rangle =\bm{n})で、エネルギーは高い方である。固有状態は R=∣R∣R=\lvert \bm{R}\rvert に依らず、向き (θ,φ)(\theta,\varphi) だけで決まる。

式 (4.9.6) の位相の選び方には癖がある。北極 θ=0\theta=0 では ∣+⟩=(1,0)| + \rangle =(1,0) で φ\varphi に依らないが、南極 θ=π\theta=\pi では ∣+⟩=(0,eiφ)| + \rangle =(0,\mathrm{e}^{\mathrm{i}\varphi}) となり、同じ点 n=(0,0,−1)\bm{n}=(0,0,-1) なのに φ\varphi ごとに違うベクトルになってしまう。全体に e−iφ\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\varphi} を掛けると南極ではよくなるが、今度は北極で φ\varphi に依る。球面全体で滑らかで1価な位相の選び方は存在しない。この事実は4.9.4節で、縮退点 R=0\bm{R}=0 に単極子があることとして説明される。

例題 4.9.1 磁場の向きに沿ったスピンの状態 ★★

オリジナル式 (4.9.5) の Hamiltonian について次の問いに答えよ。

  1. (1) 式 (4.9.6) の ∣+⟩| + \rangle が固有値 +R+R の固有状態であることを確かめ、⟨σ⟩=n\langle \bm{\sigma} \rangle =\bm{n} を示せ。
  2. (2) R\bm{R} が yy 軸の正の向き(θ=φ=π/2\theta=\varphi=\pi/2)のとき ∣+⟩| + \rangle を書き、σy\sigma_y の固有値 +1+1 の固有ベクトルになっていることを確かめよ。
  3. (3) 南極 θ=π\theta=\pi で ∣+⟩| + \rangle が φ\varphi に依ることを示し、e−iφ∣+⟩\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\varphi}| + \rangle に取り替えるとどこで同じ問題が起きるかを述べよ。
解答

(1) c=cos⁡θ2c=\cos\frac\theta2, s=sin⁡θ2s=\sin\frac\theta2 と書く。R⋅σ=R(cos⁡θsin⁡θ e−iφsin⁡θ eiφ−cos⁡θ)\bm{R}\cdot\bm{\sigma}=R\begin{pmatrix}\cos\theta&\sin\theta\,\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\varphi}\\ \sin\theta\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}\varphi}&-\cos\theta\end{pmatrix} なので、第1成分は R(cos⁡θ c+sin⁡θ s)=R c (cos⁡θ+2s2)=R cR(\cos\theta\,c+\sin\theta\,s)=R\,c\,(\cos\theta+2s^2)=R\,c(sin⁡θ=2sc\sin\theta=2sc、cos⁡θ=1−2s2\cos\theta=1-2s^2 を使った)、第2成分は R eiφ(sin⁡θ c−cos⁡θ s)=R eiφs (2c2−cos⁡θ)=R eiφsR\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}\varphi}(\sin\theta\,c-\cos\theta\,s)=R\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}\varphi}s\,(2c^2-\cos\theta)=R\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}\varphi}s。よって固有値 +R+R である。期待値は ⟨σz⟩=c2−s2=cos⁡θ\langle \sigma_z \rangle =c^2-s^2=\cos\theta、⟨σx⟩+i⟨σy⟩=2⟨σ+⟩\langle \sigma_x \rangle +\mathrm{i}\langle \sigma_y \rangle =2\langle \sigma_+ \rangle で、σ+=(0100)\sigma_+=\begin{pmatrix}0&1\\0&0\end{pmatrix} を使うと2c eiφs=sin⁡θ eiφ2c\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}\varphi}s=\sin\theta\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}\varphi}。実部と虚部から ⟨σx⟩=sin⁡θcos⁡φ\langle \sigma_x \rangle =\sin\theta\cos\varphi、⟨σy⟩=sin⁡θsin⁡φ\langle \sigma_y \rangle =\sin\theta\sin\varphi で、⟨σ⟩=n\langle \bm{\sigma} \rangle =\bm{n} である。

(2) θ=π/2\theta=\pi/2 で c=s=1/2c=s=1/\sqrt2、eiπ/2=i\mathrm{e}^{\mathrm{i}\pi/2}=\mathrm{i} なので ∣+⟩=12(1,i)T| + \rangle =\frac{1}{\sqrt2}(1,\mathrm{i})^{\mathsf T}。σy(1,i)T=(−i⋅i, i⋅1)T=(1,i)T\sigma_y(1,\mathrm{i})^{\mathsf T}=(-\mathrm{i}\cdot\mathrm{i},\ \mathrm{i}\cdot1)^{\mathsf T}=(1,\mathrm{i})^{\mathsf T} で、固有値 +1+1 の固有ベクトルである。

(3) θ=π\theta=\pi で c=0c=0, s=1s=1 なので ∣+⟩=(0,eiφ)T| + \rangle =(0,\mathrm{e}^{\mathrm{i}\varphi})^{\mathsf T}。φ=0\varphi=0 と φ=π/2\varphi=\pi/2 で (0,1)(0,1) と (0,i)(0,\mathrm{i}) になり、同じ点で違うベクトルを与える(位相が1価でない)。e−iφ∣+⟩=(e−iφc, s)T\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\varphi}| + \rangle =(\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\varphi}c,\ s)^{\mathsf T} は南極で (0,1)(0,1) と1価になるが、北極 θ=0\theta=0 で (e−iφ,0)(\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\varphi},0) となり、今度は北極で φ\varphi に依る。どちらの選び方でも球面のどこか1点で1価性が破れる。

1 M. V. Berry (1984), Proc. R. Soc. Lond. A 392, 45–57.

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