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2026年10月15日13分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第9章 断熱定理と Berry 位相
目次
  1. 残った対角の項
  2. ゲージ変換と閉じた道
  3. スピン の Berry 位相
  4. 角運動量 の状態と回転の生成子
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部 第9章 §4.9.3 ★★★ 断熱的に1周させた状態は、動的位相のほかに γn=∮An⋅dR\gamma_n=\oint\bm{A}_n\cdot\mathrm{d}\bm{R} を拾う。An=i⟨n∣∇Rn⟩\bm{A}_n=\mathrm{i}\langle n | \nabla_{\bm{R}}n \rangle はゲージ変換で An−∇χ\bm{A}_n-\nabla\chi と変わり、閉曲線の積分は変わらない

残った対角の項

断熱定理が成り立つとき、式 (4.9.8) の非対角の項を落とし、cn(0)=1c_n(0)=1 の成分だけを追えばよい:

c˙n=−cn⟨n∣n˙⟩=−cn R˙⋅⟨n∣∇Rn⟩.\dot c_n=-c_n\langle n | \dot n \rangle =-c_n\,\dot{\bm{R}}\cdot\langle n | \nabla_{\bm{R}}n \rangle .

⟨n∣n˙⟩\langle n | \dot n \rangle は純虚数なので、解は絶対値1の位相因子 cn(t)=eiγn(t)c_n(t)=\mathrm{e}^{\mathrm{i}\gamma_n(t)} で、

∣ψ(t)⟩=eiγn(t) e−iηn(t)∣n(R(t))⟩,γn(t)=∫R(0)R(t)An(R)⋅dR(4.9.12)| \psi(t) \rangle =\mathrm{e}^{\mathrm{i}\gamma_n(t)}\,\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\eta_n(t)}| n(\bm{R}(t)) \rangle ,\qquad \gamma_n(t)=\int_{\bm{R}(0)}^{\bm{R}(t)}\bm{A}_n(\bm{R})\cdot\mathrm{d}\bm{R}\tag{4.9.12}

となる。ここで

An(R)=i⟨n(R)∣∇Rn(R)⟩(4.9.13)\bm{A}_n(\bm{R})=\mathrm{i}\langle n(\bm{R}) | \nabla_{\bm{R}}n(\bm{R}) \rangle\tag{4.9.13}

を Berry 接続と呼ぶ。⟨n∣∇n⟩\langle n | \nabla n \rangle が純虚数なので An\bm{A}_n は実数のベクトルである。4.9.2節の動く基底の言葉では、式 (4.9.9) の新しい Hamiltonian の対角要素が En−ℏR˙⋅AnE_n-\hbar\dot{\bm{R}}\cdot\bm{A}_n になり、その時間積分を −1ℏ-\frac1\hbar 倍したものが −ηn+γn-\eta_n+\gamma_n である。

式 (4.9.12) の γn\gamma_n は時間の積分でなく、パラメータ空間の道に沿った線積分になっている。R(t)\bm{R}(t) を同じ道に沿って2倍の速さで動かしても、dR\mathrm{d}\bm{R} の積分は同じである。動的位相 ηn\eta_n はかかった時間に比例するのに対し、γn\gamma_n は通った道の形だけで決まる。この性質を「幾何学的」と呼ぶ。

ゲージ変換と閉じた道

式 (4.9.4) のゲージ変換 ∣n⟩→eiχ(R)∣n⟩| n \rangle \to\mathrm{e}^{\mathrm{i}\chi(\bm{R})}| n \rangle をすると

i⟨n∣∇n⟩ → i⟨n∣e−iχ∇(eiχ∣n⟩)=i⟨n∣∇n⟩−∇χ,つまりAn→An−∇Rχ\mathrm{i}\langle n | \nabla n \rangle \ \to\ \mathrm{i}\langle n |\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\chi}\nabla\bigl(\mathrm{e}^{\mathrm{i}\chi}| n \rangle \bigr)=\mathrm{i}\langle n | \nabla n \rangle -\nabla\chi, \qquad\text{つまり}\quad \bm{A}_n\to\bm{A}_n-\nabla_{\bm{R}}\chi

と変わる。電磁場のベクトルポテンシャルのゲージ変換と同じ形である。したがって開いた道の γn\gamma_n は χ(終点)−χ(始点)\chi(\text{終点})-\chi(\text{始点}) だけ変わり、固有状態の位相の選び方で好きな値にすることができる。固有状態 ∣n(R(t))⟩| n(\bm{R}(t)) \rangle 自身の位相も同じだけ変わるので、状態 ∣ψ(t)⟩| \psi(t) \rangle は変わらない。開いた道では γn\gamma_n に物理的な意味はない。

道が閉じていて R(T)=R(0)\bm{R}(T)=\bm{R}(0) のとき、χ\chi が1価なら χ(R(T))−χ(R(0))=0\chi(\bm{R}(T))-\chi(\bm{R}(0))=0 で、

γn(C)=∮CAn⋅dR(4.9.14)\gamma_n(C)=\oint_C\bm{A}_n\cdot\mathrm{d}\bm{R}\tag{4.9.14}

はゲージ変換で変わらない。χ\chi が1周で 2π2\pi の整数倍だけ変わる選び方も許すと、γn(C)\gamma_n(C) は 2π2\pi を法として決まる。このとき ∣n(R(T))⟩=∣n(R(0))⟩| n(\bm{R}(T)) \rangle =| n(\bm{R}(0)) \rangle なので、終わりの状態は初めの状態の

∣ψ(T)⟩=eiγn(C) e−iηn(T)∣ψ(0)⟩| \psi(T) \rangle =\mathrm{e}^{\mathrm{i}\gamma_n(C)}\,\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\eta_n(T)}| \psi(0) \rangle

倍になる。動的位相と並んで、閉曲線 CC で決まる位相 γn(C)\gamma_n(C) が観測できる量として残る。これが Berry 位相である。全体の位相は1つの状態だけでは観測できないが、別の道を通った状態や別の準位の状態と重ね合わせると、干渉の縞のずれとして測ることができる。

スピン 12\frac12 の Berry 位相

式 (4.9.6) の ∣+⟩| + \rangle で Berry 接続を計算する。R\bm{R} の向きだけに依るので、θ\theta と φ\varphi の微分を計算すればよい。∂θ∣+⟩=12(−sin⁡θ2, eiφcos⁡θ2)T\partial_\theta| + \rangle =\frac12(-\sin\frac\theta2,\ \mathrm{e}^{\mathrm{i}\varphi}\cos\frac\theta2)^{\mathsf T} と ∣+⟩| + \rangle の内積は 00、∂φ∣+⟩=(0, ieiφsin⁡θ2)T\partial_\varphi| + \rangle =(0,\ \mathrm{i}\mathrm{e}^{\mathrm{i}\varphi}\sin\frac\theta2)^{\mathsf T} との内積は isin⁡2θ2\mathrm{i}\sin^2\frac\theta2 なので、

A+⋅dR=i⟨+∣∂φ+⟩ dφ=−sin⁡2θ2 dφ(4.9.15)\bm{A}_+\cdot\mathrm{d}\bm{R}=\mathrm{i}\langle + | \partial_\varphi+ \rangle \,\mathrm{d}\varphi=-\sin^2\frac\theta2\,\mathrm{d}\varphi\tag{4.9.15}

である。R\bm{R} が極角 θ0\theta_0 の円を φ\varphi の増える向き(zz 軸の正の側から見て反時計回り)に1周すると

γ+(C)=−2πsin⁡2θ02=−π(1−cos⁡θ0)=−12 ΘC,ΘC=2π(1−cos⁡θ0)(4.9.16)\gamma_+(C)=-2\pi\sin^2\frac{\theta_0}{2}=-\pi(1-\cos\theta_0)=-\frac12\,\Theta_C,\qquad \Theta_C=2\pi(1-\cos\theta_0)\tag{4.9.16}

となる。ΘC\Theta_C は、原点から見て円 CC が張る立体角(単位球面の上の北極側の帽子の面積)である(図 4.9.1)。スピン 12\frac12 の Berry 位相は、磁場の向きが描いた閉曲線の立体角の −12-\frac12 倍になる。磁場の強さ RR にも、1周にかけた時間にも依らない。反対向きの状態 ∣−⟩| - \rangle では同じ計算で γ−(C)=+12ΘC\gamma_-(C)=+\frac12\Theta_C になる。

図

図 4.9.1 磁場の向き R(t)/R\bm{R}(t)/R が単位球面の上に描く閉曲線 CC(極角 θ0\theta_0 の円)と、それが北極側に張る立体角 ΘC=2π(1−cos⁡θ0)\Theta_C=2\pi(1-\cos\theta_0)(塗った帽子)。スピン 12\frac12 の ∣+⟩| + \rangle の Berry 位相は γ+=−ΘC/2\gamma_+=-\Theta_C/2 で、縮退点(原点)から見た閉曲線の見込む立体角だけで決まる

角運動量 mm の状態と回転の生成子

式 (4.9.16) は、第1部第9章(第1部第9章)の生成子の言葉で一般のスピンに広げることができる。角運動量 jj の系が H^=bℏ n⋅J^\hat H=\frac{b}{\hbar}\,\bm{n}\cdot\hat{\bm{J}} に従うとき、n\bm{n} の向きの成分が mℏm\hbar の固有状態は、zz 向きの ∣m⟩| m \rangle を回転させて

∣m;n⟩=e−iφ(J^z/ℏ−m) e−iθJ^y/ℏ∣m⟩| m;\bm{n} \rangle =\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\varphi(\hat J_z/\hbar-m)}\,\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\theta\hat J_y/\hbar}| m \rangle

と作ることができる。J^y/ℏ\hat J_y/\hbar と J^z/ℏ\hat J_z/\hbar は回転の生成子(第4部第5章)で、eimφ\mathrm{e}^{\mathrm{i} m\varphi} の因子は北極で1価にするために付けた。∂φ\partial_\varphi は先頭の因子から −i(J^z/ℏ−m)-\mathrm{i}(\hat J_z/\hbar-m) を下ろすので

Aφ=i⟨m;n∣∂φ m;n⟩=1ℏ⟨m∣eiθJ^y/ℏJ^ze−iθJ^y/ℏ∣m⟩−m=mcos⁡θ−mA_\varphi=\mathrm{i}\langle m;\bm{n} | \partial_\varphi\, m;\bm{n} \rangle =\frac{1}{\hbar}\langle m | \mathrm{e}^{\mathrm{i}\theta\hat J_y/\hbar}\hat J_z\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\theta\hat J_y/\hbar} | m \rangle -m=m\cos\theta-m

であり(J^z\hat J_z を yy 軸のまわりに回すと J^zcos⁡θ−J^xsin⁡θ\hat J_z\cos\theta-\hat J_x\sin\theta で、∣m⟩| m \rangle での J^x\hat J_x の期待値は 00)、θ\theta 成分は ⟨J^y⟩=0\langle \hat J_y \rangle =0 から 00 になる。よって

γm(C)=−m ΘC(4.9.17)\gamma_m(C)=-m\,\Theta_C\tag{4.9.17}

を得る。m=12m=\frac12 が式 (4.9.16) である。Berry 位相は、角運動量の成分 mm と、軸の向きが描いた立体角の積になる。ΘC\Theta_C は回転の角度を立体角に置き換えたもので、軸を zz 軸のまわりに角 α\alpha だけ回す変換が e−imα\mathrm{e}^{-\mathrm{i} m\alpha} を与えることの、閉じた道に対する版になっている。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ℏω/b→0\hbar\omega/b\to0(1周にかける時間が、準位の間隔で決まる位相の周期より長い) | 証明 条件付き(ギャップが閉じない。有限の速さでの補正が ℏω/b\hbar\omega/b の1次であることは、この節の回る磁場の厳密解で確かめた) | 行き先 近似の数理 第7章

式 (4.9.16) は断熱極限の値である。例題 4.9.2 の回る枠を使うと、有限の速さでも厳密な解が書けるので、断熱極限からのずれを見ることができる。1周 T=2π/ωT=2\pi/\omega の後の arg⁡⟨+(R(0))∣ψ(T)⟩\arg\langle +(\bm{R}(0)) | \psi(T) \rangle から動的位相 −bT/ℏ-bT/\hbar を引いた量を数値で求め、−π(1−cos⁡θ0)-\pi(1-\cos\theta_0) と比べたのが図 4.9.2 である。H^′\hat H' の固有値 R′=b2−bℏωcos⁡θ0+ℏ2ω2/4R'=\sqrt{b^2-b\hbar\omega\cos\theta_0+\hbar^2\omega^2/4} を ℏω/b\hbar\omega/b で展開すると、ずれは −π4(ℏω/b)sin⁡2θ0-\frac\pi4(\hbar\omega/b)\sin^2\theta_0 で、ℏω/b→0\hbar\omega/b\to0 で Berry 位相に収束する(検算 verify_ch4-09.py)。

図

図 4.9.2 円錐の上を1周する磁場の中のスピン 12\frac12 の幾何学的位相。実線は断熱極限の Berry 位相 γ+=−π(1−cos⁡θ0)\gamma_+=-\pi(1-\cos\theta_0)、点線つきの印は回る枠で求めた厳密解から動的位相 −bT/ℏ-bT/\hbar を引いた値(2π2\pi の整数倍は実線に近い枝を選んだ)。速さ ℏω/b\hbar\omega/b を小さくすると実線に近づく

例題 4.9.3 円錐の上を回る磁場の Berry 位相 ★★

オリジナルスピン 12\frac12 の ∣+⟩| + \rangle が、極角 θ0\theta_0 の円錐の上をゆっくり1周する磁場に追随する。

  1. (1) θ0=60∘\theta_0=60^\circ と θ0=90∘\theta_0=90^\circ の Berry 位相を求めよ。90∘90^\circ の結果が π\pi と同じ位相になることを確かめよ。
  2. (2) θ0=60∘\theta_0=60^\circ の円を、同じ向きに2周させたときの Berry 位相を求めよ。1周を2倍の時間をかけて回した場合と比べよ。
  3. (3) 初めの状態を 12(∣+⟩+∣−⟩)\frac{1}{\sqrt2}(| + \rangle +| - \rangle ) にとって θ0=90∘\theta_0=90^\circ の円を1周させると、終わりの状態の ∣+⟩| + \rangle と ∣−⟩| - \rangle の相対位相のうち、動的でない部分はいくらか。
解答

(1) θ0=60∘\theta_0=60^\circ では cos⁡θ0=12\cos\theta_0=\frac12 で ΘC=π\Theta_C=\pi、γ+=−π/2\gamma_+=-\pi/2。θ0=90∘\theta_0=90^\circ では ΘC=2π\Theta_C=2\pi(半球)で γ+=−π\gamma_+=-\pi。位相は 2π2\pi を法として決まるので −π-\pi と π\pi は同じで、eiγ+=−1\mathrm{e}^{\mathrm{i}\gamma_+}=-1 である。赤道を1周した状態は符号が反転する。

(2) 線積分 ∮A+⋅dR\oint\bm{A}_+\cdot\mathrm{d}\bm{R} を2回行うので γ+=2×(−π/2)=−π\gamma_+=2\times(-\pi/2)=-\pi。1周を2倍の時間で回しても、通る道は同じなので Berry 位相は −π/2-\pi/2 のまま変わらず、動的位相だけが2倍になる。Berry 位相は「何周したか」には比例するが、「どれだけ時間をかけたか」には依らない。

(3) ∣+⟩| + \rangle は −π-\pi、∣−⟩| - \rangle は +π+\pi の Berry 位相を拾うので、動的でない相対位相は γ+−γ−=−2π\gamma_+-\gamma_-=-2\pi で、e−2πi=1\mathrm{e}^{-2\pi\mathrm{i}}=1 となり干渉には現れない。一般の θ0\theta_0 では相対位相は −ΘC-\Theta_C で、たとえば θ0=60∘\theta_0=60^\circ なら −π-\pi となり、2つの成分の相対的な符号が反転する。

ほかの巻では

木下の勉強ステータス

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