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出てくるもの (2):Berry 曲率と縮退点の単極子

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第9章 断熱定理と Berry 位相
目次
  1. Stokes の定理と Berry 曲率
  2. 固有状態を微分しない公式
  3. スピン :縮退点の単極子
  4. 離散の公式
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部 第9章 §4.9.4 ★★★ Stokes の定理で Berry 位相は曲率 Ωn=∇×An\bm{\Omega}_n=\nabla\times\bm{A}_n の面積分になる。曲率はゲージに依らず、縮退点に置いた単極子の磁場の形をとる

Stokes の定理と Berry 曲率

パラメータ空間が3次元のとき、閉曲線 CC を縁とする面 SS をとれば、Stokes の定理で

γn(C)=∮CAn⋅dR=∫SΩn⋅dS,Ωn(R)=∇R×An(R)(4.9.18)\gamma_n(C)=\oint_C\bm{A}_n\cdot\mathrm{d}\bm{R}=\int_S\bm{\Omega}_n\cdot\mathrm{d}\bm{S},\qquad \bm{\Omega}_n(\bm{R})=\nabla_{\bm{R}}\times\bm{A}_n(\bm{R})\tag{4.9.18}

と書ける。Ωn\bm{\Omega}_n を Berry 曲率と呼ぶ。ゲージ変換で An→An−∇χ\bm{A}_n\to\bm{A}_n-\nabla\chi としても ∇×∇χ=0\nabla\times\nabla\chi=0 なので、Ωn\bm{\Omega}_n はゲージに依らない。電磁気の言葉では、An\bm{A}_n がベクトルポテンシャル、Ωn\bm{\Omega}_n が磁場、γn(C)\gamma_n(C) が閉曲線を貫く磁束にあたる。Berry 位相が閉じた道でだけ意味を持つことと、Aharonov–Bohm の位相が閉じた道を貫く磁束で決まることは、同じ構造である(4.9.5節)。

この「パラメータ空間の中の幾何学」は、数学ではファイバー束の接続とホロノミーにあたり、Berry の論文の直後に Simon(1983)がその対応を指摘した1B. Simon (1983), Phys. Rev. Lett. 51, 2167–2170.下の脚注へ。この章ではその言葉は使わず、ベクトル解析だけで進む。

固有状態を微分しない公式

Ωn\bm{\Omega}_n の成分を書くと Ωn,i=i∑j,kϵijk⟨∂jn∣∂kn⟩\Omega_{n,i}=\mathrm{i}\sum_{j,k}\epsilon_{ijk}\langle \partial_jn | \partial_kn \rangle である(⟨n∣∂j∂kn⟩\langle n | \partial_j\partial_kn \rangle は j,kj,k について対称なので消える)。間に完全系 ∑m∣m⟩⟨m∣\sum_m| m \rangle \langle m | を挟む。m=nm=n の項は ⟨∂jn∣n⟩⟨n∣∂kn⟩=−⟨n∣∂jn⟩⟨n∣∂kn⟩\langle \partial_jn | n \rangle \langle n | \partial_kn \rangle =-\langle n | \partial_jn \rangle \langle n | \partial_kn \rangle で j,kj,k について対称なので消え、m≠nm\neq n の項に式 (4.9.10) の形 ⟨m∣∂kn⟩=⟨m∣∂kH^∣n⟩/(En−Em)\langle m | \partial_kn \rangle =\langle m | \partial_k\hat H | n \rangle /(E_n-E_m) を使うと

Ωn(R)=−Im⁡∑m≠n⟨n∣∇RH^∣m⟩×⟨m∣∇RH^∣n⟩(Em−En)2(4.9.19)\bm{\Omega}_n(\bm{R})=-\operatorname{Im}\sum_{m\neq n}\frac{\langle n | \nabla_{\bm{R}}\hat H | m \rangle \times\langle m | \nabla_{\bm{R}}\hat H | n \rangle }{(E_m-E_n)^2}\tag{4.9.19}

を得る(和の中の外積は純虚数で、i×(純虚数)=−Im⁡(⋅)\mathrm{i}\times(\text{純虚数})=-\operatorname{Im}(\cdot) を使った)。この形は固有状態の微分を含まないので、位相の選び方を気にせず計算することができる。分母の (Em−En)2(E_m-E_n)^2 から、曲率は準位が近づく所で大きくなり、縮退点で発散する。また ∑nΩn=0\sum_n\bm{\Omega}_n=0 が成り立つ(和の中の各対 (n,m)(n,m) と (m,n)(m,n) が打ち消す)。

スピン 12\frac12:縮退点の単極子

式 (4.9.5) では ∇RH^=σ\nabla_{\bm{R}}\hat H=\bm{\sigma}、E−−E+=−2RE_--E_+=-2R なので、式 (4.9.19) から(または式 (4.9.15) の回転をとって)

Ω±(R)=∓R2R3(4.9.20)\bm{\Omega}_\pm(\bm{R})=\mp\frac{\bm{R}}{2R^3}\tag{4.9.20}

となる。これは原点に置いた「磁荷」∓12\mp\frac12 の単極子が作る磁場の形である。Ω+\bm{\Omega}_+ を、原点を中心とする球面で積分すると、立体角が 4π4\pi なので

∮球面Ω+⋅dS=−12×4π=−2π(4.9.21)\oint_{\text{球面}}\bm{\Omega}_+\cdot\mathrm{d}\bm{S}=-\frac12\times4\pi=-2\pi\tag{4.9.21}

で、2π2\pi で割ると整数 −1-1 になる。閉曲線 CC で球面を北と南に分けると、北側の面で計算した γ+\gamma_+ と南側の面で計算した γ+\gamma_+ は、全体の流束 −2π-2\pi だけ違う。両者は 2π2\pi を法として同じ位相を与えるので、Berry 位相が 2π2\pi を法として決まることと矛盾しない。

4.9.1節で、球面全体で1価な ∣+⟩| + \rangle の選び方が存在しないことを見た。これは、閉じた面を貫く流束が 00 でないことの言い換えである。もし球面全体で1価で滑らかな A+\bm{A}_+ があれば、Stokes の定理で閉じた面の流束は縁が無いので 00 になるはずである。流束が −2π-2\pi である以上、A+\bm{A}_+ はどこかで特異点(Dirac の紐)を持つ。式 (4.9.15) の A+\bm{A}_+ は南極で ∣A+∣∝1/sin⁡θ\lvert \bm{A}_+\rvert \propto1/\sin\theta が発散し、紐は負の zz 軸に沿っている。

閉じた面を貫く Berry 曲率の流束を 2π2\pi で割った整数を Chern 数と呼ぶ。縮退点を囲む面では 00 でない整数になり、縮退点が無ければ連続変形で 00 に縮められるので 00 である。バンドの波数 k\bm{k} をパラメータとする Berry 曲率と、Brillouin 域全体の Chern 数は、第4部第11章(第4部第11章)で異常速度と Hall 伝導度を出すのに使う。

離散の公式

数値計算で Berry 位相を求めるときは、An\bm{A}_n を経ずに、閉曲線の上の点 R1,…,RN\bm{R}_1,\dots,\bm{R}_N で対角化した固有ベクトルを使う。隣り合う点の重なりは⟨n(Rk)∣n(Rk+1)⟩=1+ΔR⋅⟨n∣∇n⟩+⋯=1−iAn⋅ΔR+⋯≈e−iAn⋅ΔR\langle n(\bm{R}_k) | n(\bm{R}_{k+1}) \rangle =1+\Delta\bm{R}\cdot\langle n | \nabla n \rangle +\cdots=1-\mathrm{i}\bm{A}_n\cdot\Delta\bm{R}+\cdots\approx\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\bm{A}_n\cdot\Delta\bm{R}} なので、

γn(C)=−lim⁡N→∞arg⁡∏k=1N⟨n(Rk)∣n(Rk+1)⟩,RN+1=R1(4.9.22)\gamma_n(C)=-\lim_{N\to\infty}\arg\prod_{k=1}^{N}\langle n(\bm{R}_k) | n(\bm{R}_{k+1}) \rangle ,\qquad \bm{R}_{N+1}=\bm{R}_1\tag{4.9.22}

となる。積の中で各 ∣n(Rk)⟩| n(\bm{R}_k) \rangle はブラとケットに1回ずつ現れるので、それぞれの位相は打ち消し合い、対角化で出てきたでたらめな位相のまま使ってよい。有限の NN でも積の偏角はゲージに依らない。

例題 4.9.4 3点で測る Berry 位相 ★★

オリジナルスピン 12\frac12 の ∣+⟩| + \rangle を、n\bm{n} が xx 軸、yy 軸、zz 軸の正の向きを順に指す3つの状態 ∣x⟩| x \rangle, ∣y⟩| y \rangle, ∣z⟩| z \rangle に選ぶ。

  1. (1) 3つの状態を書き、⟨x∣y⟩⟨y∣z⟩⟨z∣x⟩\langle x | y \rangle \langle y | z \rangle \langle z | x \rangle を計算して、式 (4.9.22) の N=3N=3 の値 −arg⁡(⋅)-\arg(\cdot) を求めよ。
  2. (2) 3点を大円の弧で結んだ球面三角形の立体角を求め、(1) が −12×-\frac12\times(立体角)に等しいことを確かめよ。
  3. (3) 各状態の位相を勝手に変えても (1) の値が変わらないことを示せ。極角 60∘60^\circ の円の上に等間隔に4点をとって同じ積を数値で計算すると −1.287-1.287 になる。円の Berry 位相 −π/2=−1.571-\pi/2=-1.571 と大きさが違う理由を述べよ。
解答

(1) 式 (4.9.6) から ∣x⟩=12(1,1)T| x \rangle =\frac{1}{\sqrt2}(1,1)^{\mathsf T}、∣y⟩=12(1,i)T| y \rangle =\frac{1}{\sqrt2}(1,\mathrm{i})^{\mathsf T}、∣z⟩=(1,0)T| z \rangle =(1,0)^{\mathsf T}。⟨x∣y⟩=12(1+i)\langle x | y \rangle =\frac12(1+\mathrm{i})、⟨y∣z⟩=12\langle y | z \rangle =\frac{1}{\sqrt2}、⟨z∣x⟩=12\langle z | x \rangle =\frac{1}{\sqrt2} なので積は 14(1+i)\frac14(1+\mathrm{i})、偏角は π/4\pi/4 で、N=3N=3 の値は −π/4-\pi/4 である。

(2) 3つの座標軸の正の向きを結ぶ球面三角形は、球面を8等分した1つで、立体角は 4π/8=π/24\pi/8=\pi/2。x→y→zx\to y\to z の順は外側から見て反時計回りで、(1) の −π/4=−12⋅π2-\pi/4=-\frac12\cdot\frac\pi2 と一致する。スピン 12\frac12 では、3点の積の偏角は大円で結んだ三角形の立体角のちょうど半分になり、N=3N=3 でも近似でない。

(3) ∣x⟩→eia∣x⟩| x \rangle \to\mathrm{e}^{\mathrm{i} a}| x \rangle などと置き換えると、∣x⟩| x \rangle は ⟨x∣y⟩\langle x | y \rangle でブラ(e−ia\mathrm{e}^{-\mathrm{i} a})、⟨z∣x⟩\langle z | x \rangle でケット(eia\mathrm{e}^{\mathrm{i} a})として現れ、積の中で打ち消す。∣y⟩| y \rangle, ∣z⟩| z \rangle も同じである。4点の積は、4点を大円の弧で結んだ球面四角形の立体角の −12-\frac12 倍を与える。極角 60∘60^\circ の緯線は大円でないので、隣り合う2点を結ぶ大円の弧は緯線より北極側を通り、四角形の面積は緯線が囲む帽子の面積 π\pi より小さい(2.5742.574)。点を増やすと大円の弧が緯線に近づき、積は −π/2-\pi/2 に収束する(検算 verify_ch4-09.py)。

ほかの巻では

1 B. Simon (1983), Phys. Rev. Lett. 51, 2167–2170.

木下の勉強ステータス

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