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出てくるもの (3):Aharonov–Bohm 効果と Foucault の振り子

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第9章 断熱定理と Berry 位相
目次
  1. 磁束のまわりを運ぶ箱
  2. Berry 接続はベクトルポテンシャル
  3. 古典の対応物:Foucault の振り子
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部 第9章 §4.9.5 ★★ 磁束を囲んで箱を運ぶと Berry 位相は qΦ/ℏq\Phi/\hbar になり、Aharonov–Bohm 効果がこの章の特別な場合になる。古典の対応物は Foucault の振り子の振動面の回転

磁束のまわりを運ぶ箱

Berry が最初の論文で挙げた例の1つは、Aharonov–Bohm 効果1Y. Aharonov and D. Bohm (1959), Phys. Rev. 115, 485–491.下の脚注へをこの章の枠組みで読み直すものである。電荷 qq の粒子を小さな箱に閉じ込め、箱の位置 R\bm{R} をパラメータとする。空間には細い磁束管があって全磁束 Φ\Phi を運ぶが、箱は磁束管の外にあり、粒子のいる所では磁場は 00 である。磁場が 00 でもベクトルポテンシャル A(r)\bm{A}(\bm{r}) は 00 でなく、∇×A=0\nabla\times\bm{A}=0 である。第4部第6章(第4部第6章)で見たとおり、粒子の Hamiltonian はH^=12m(p^−qA(r^))2+V(r^−R)\hat H=\frac{1}{2m}(\hat{\bm{p}}-q\bm{A}(\hat{\bm{r}}))^2+V(\hat{\bm{r}}-\bm{R}) で、VV は箱の閉じ込めのポテンシャルである。

A=0\bm{A}=0 のときの箱の中の固有関数を ϕn(r−R)\phi_n(\bm{r}-\bm{R})(実数にとる)とする。箱の中では ∇×A=0\nabla\times\bm{A}=0 なので、線積分 ∫RrA⋅dr′\int_{\bm{R}}^{\bm{r}}\bm{A}\cdot\mathrm{d}\bm{r}' は箱の中の道の選び方に依らず、

ψn(r;R)=exp⁡(iqℏ∫RrA(r′)⋅dr′)ϕn(r−R)(4.9.23)\psi_n(\bm{r};\bm{R})=\exp\Bigl(\frac{\mathrm{i} q}{\hbar}\int_{\bm{R}}^{\bm{r}}\bm{A}(\bm{r}')\cdot\mathrm{d}\bm{r}'\Bigr)\phi_n(\bm{r}-\bm{R})\tag{4.9.23}

が A\bm{A} のあるときの固有関数になる(位相因子を掛けると (p^−qA)(\hat{\bm{p}}-q\bm{A}) が p^\hat{\bm{p}} に置き換わる。第4部第6章のゲージ変換と同じ計算)。固有値は A\bm{A} が無いときと同じである。

Berry 接続はベクトルポテンシャル

式 (4.9.23) を R\bm{R} で微分すると、積分の下端の微分から −iqℏA(R)ψn-\frac{\mathrm{i} q}{\hbar}\bm{A}(\bm{R})\psi_n が、ϕn(r−R)\phi_n(\bm{r}-\bm{R}) の微分から −(∇ϕn)-(\nabla\phi_n) に位相因子を掛けたものが出る。ψn∗\psi_n^* を掛けて積分すると、第2の項は −∫ϕn∇ϕn d3r=−12∫∇(ϕn2) d3r=0-\int\phi_n\nabla\phi_n\,\mathrm{d}^3r=-\frac12\int\nabla(\phi_n^2)\,\mathrm{d}^3r=0 なので

An(R)=i⟨ψn∣∇Rψn⟩=qℏA(R),γn(C)=qℏ∮CA⋅dR=qΦℏ(4.9.24)\bm{A}_n(\bm{R})=\mathrm{i}\langle \psi_n | \nabla_{\bm{R}}\psi_n \rangle =\frac{q}{\hbar}\bm{A}(\bm{R}),\qquad \gamma_n(C)=\frac q\hbar\oint_C\bm{A}\cdot\mathrm{d}\bm{R}=\frac{q\Phi}{\hbar}\tag{4.9.24}

となる。Berry 接続は電磁場のベクトルポテンシャルそのもの(の q/ℏq/\hbar 倍)で、Berry 位相は箱の道が囲む磁束 Φ\Phi に比例する。準位 nn にも、箱の形にも、道の形にも依らず、道が磁束管を何回囲んだかだけで決まる。Berry 曲率は qℏ∇×A\frac{q}{\hbar}\nabla\times\bm{A} で、箱の通る所では 00 であり、磁束管の中にだけ集中している。4.9.4節の単極子が「パラメータ空間の点に集中した曲率」だったのと同じく、ここでは曲率がパラメータ空間(箱の位置の空間)の1本の線に集中している。

例題 4.9.5 半分の磁束量子を囲む電子 ★★

オリジナル電子(q=−eq=-e)を閉じ込めた箱を、磁束 Φ\Phi の管のまわりに1周させる。

  1. (1) Φ=h/(2e)\Phi=h/(2e) のときの Berry 位相を求めよ。h/eh/e の値を Wb\mathrm{Wb} で求めよ(h=6.626×10−34 J sh=6.626\times10^{-34}\,\mathrm{J\,s}、e=1.602×10−19 Ce=1.602\times10^{-19}\,\mathrm C)。
  2. (2) 箱を2つに分け、片方を磁束管の右側、もう片方を左側を通して反対側で合わせる干渉実験を考える。2つの道の位相差を Berry 位相で表し、(1) の磁束のとき干渉の縞がどうなるか述べよ。
  3. (3) 1周させる道を、磁束管を囲まない閉曲線に変えると Berry 位相はいくらか。
解答

(1) 式 (4.9.24) で γ=qΦ/ℏ=−e⋅h2e⋅2πh=−π\gamma=q\Phi/\hbar=-e\cdot\frac{h}{2e}\cdot\frac{2\pi}{h}=-\pi。eiγ=−1\mathrm{e}^{\mathrm{i}\gamma}=-1 で、箱の中の状態は1周で符号が反転する。h/e=6.626×10−34/1.602×10−19=4.136×10−15 Wbh/e=6.626\times10^{-34}/1.602\times10^{-19}=4.136\times10^{-15}\,\mathrm{Wb}。

(2) 右回りの道 C1C_1 と左回りの道 C2C_2 の位相の差は qℏ(∫C1−∫C2)A⋅dR=qℏ∮A⋅dR\frac q\hbar\bigl(\int_{C_1}-\int_{C_2}\bigr)\bm{A}\cdot\mathrm{d}\bm{R}=\frac{q}{\hbar}\oint\bm{A}\cdot\mathrm{d}\bm{R} で、C1C_1 と −C2-C_2 をつないだ閉曲線が磁束管を1回囲むので qΦ/ℏq\Phi/\hbar になる。Φ=h/(2e)\Phi=h/(2e) では差が −π-\pi で、磁束が無いときに強め合っていた位置が弱め合いになり、縞が半周期ずれる。

(3) 磁束管を囲まない閉曲線の内側では ∇×A=0\nabla\times\bm{A}=0 なので、Stokes の定理で γ=0\gamma=0 である。

古典の対応物:Foucault の振り子

古典力学に Berry 位相の対応物があるかを考える。第1部第14章の作用角変数で、パラメータをゆっくり変えると JJ は保たれ、角変数は θ˙=ω(J,λ)\dot\theta=\omega(J,\lambda) で進む。パラメータを閉曲線に沿って1周させたとき、角変数の進みは ∫ω dt\int\omega\,\mathrm{d} t だけでなく、パラメータの道の形だけで決まるずれを含みうる。Hannay(1985)はこのずれを可積分系について一般に与えた2J. H. Hannay (1985), J. Phys. A: Math. Gen. 18, 221–230.下の脚注へ。これを Hannay 角と呼ぶ。量子の動的位相 −ηn=−1ℏ∫En dt-\eta_n=-\frac1\hbar\int E_n\,\mathrm{d} t が古典の ∫ω dt\int\omega\,\mathrm{d} t に、Berry 位相が Hannay 角にあたる。

Hannay 角の例としてよく引かれるのが Foucault の振り子である。余緯度 θc\theta_{\mathrm c}(北極からの角。緯度は 90∘−θc90^\circ-\theta_{\mathrm c})の地点で、地面に固定した東向きを xx、北向きを yy とする。地球の自転の角速度 ωE\omega_{\mathrm E} の鉛直成分は ωEcos⁡θc\omega_{\mathrm E}\cos\theta_{\mathrm c} で、小さな振れの振り子は地面に固定した枠で

x¨=−ω02x+2ωEcos⁡θc y˙,y¨=−ω02y−2ωEcos⁡θc x˙(4.9.25)\ddot x=-\omega_0^2x+2\omega_{\mathrm E}\cos\theta_{\mathrm c}\,\dot y,\qquad \ddot y=-\omega_0^2y-2\omega_{\mathrm E}\cos\theta_{\mathrm c}\,\dot x\tag{4.9.25}

に従う(Coriolis 力 −2mωE×r˙-2m\bm{\omega}_{\mathrm E}\times\dot{\bm{r}} の水平成分。遠心力は重力に含めた)。x+iyx+\mathrm{i} y に組むと、解は e−iωEcos⁡θct\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega_{\mathrm E}\cos\theta_{\mathrm c}t} と振動の積になり、振動面は角速度 −ωEcos⁡θc-\omega_{\mathrm E}\cos\theta_{\mathrm c}(北半球では上から見て時計回り)で回る。地球が1回転(恒星日)する間に、振動面は地面に対して −2πcos⁡θc-2\pi\cos\theta_{\mathrm c} 回る。

角度は 2π2\pi を法として意味を持つので、−2πcos⁡θc≡2π(1−cos⁡θc)=ΘC-2\pi\cos\theta_{\mathrm c}\equiv2\pi(1-\cos\theta_{\mathrm c})=\Theta_C である。ΘC\Theta_C は、振り子の吊り下げ点の鉛直方向(パラメータ)が1日に描く緯線が、北極側に張る立体角にほかならない。スピン 12\frac12 の Berry 位相 −12ΘC-\frac12\Theta_C と同じ立体角が現れる。球面の緯線を1周する接ベクトルを平行移動したときの回転 2π(1−cos⁡θ0)2\pi(1-\cos\theta_0)(第2部第13章の式 (2.13.24)。θ0\theta_0 が緯線の余緯度)とも同じ立体角で、振動面の向きは球面の上で平行移動される接ベクトルにあたる。この角は ωE\omega_{\mathrm E} にも振り子の振幅にも依らず、緯線の形だけで決まる。地球の自転が今の半分の速さでも、1回転あたりの振動面の回転は同じである(式 (4.9.25) の数値積分で確かめた。検算 verify_ch4-09.py)。

量子の言葉でも同じ結論が出る。2次元の等方的な振動子の円運動の状態は、鉛直軸のまわりの角運動量 ±ℏ\pm\hbar を持ち、鉛直軸の向きが閉曲線を描くと式 (4.9.17) で ∓ΘC\mp\Theta_C の Berry 位相を拾う。直線の振動は2つの円運動の重ね合わせで、相対位相 2ΘC2\Theta_C のずれは振動面の向きを ΘC\Theta_C だけ回す。

例題 4.9.6 東京の Foucault の振り子 ★★

オリジナル東京(北緯 35.68∘35.68^\circ)に Foucault の振り子を置く。恒星日を 23.934523.9345 時間とする。

  1. (1) 振動面が地面に対して1周する時間を求めよ。
  2. (2) 地球が1回転する間に振動面が回る角を度で求め、それが緯線の張る立体角 ΘC\Theta_C(2π2\pi を法として)と等しいことを確かめよ。
  3. (3) 赤道と北極では1回転あたりの角はいくらか。ΘC\Theta_C の値と照らし合わせよ。
解答

(1) 振動面の角速度の大きさは ωEcos⁡θc=ωEsin⁡(35.68∘)\omega_{\mathrm E}\cos\theta_{\mathrm c}=\omega_{\mathrm E}\sin(35.68^\circ) で、sin⁡35.68∘=0.5833\sin35.68^\circ=0.5833。1周の時間は 23.9345/0.5833=41.023.9345/0.5833=41.0 時間である。

(2) 1回転で −360∘×0.5833=−210.0∘-360^\circ\times0.5833=-210.0^\circ(時計回りに 210.0∘210.0^\circ)。360∘360^\circ を足すと +150.0∘+150.0^\circ。一方 ΘC=2π(1−cos⁡θc)=2π(1−0.5833)=2.618 rad=150.0∘\Theta_C=2\pi(1-\cos\theta_{\mathrm c})=2\pi(1-0.5833)=2.618\,\mathrm{rad}=150.0^\circ で一致する。

(3) 赤道(θc=90∘\theta_{\mathrm c}=90^\circ)では振動面は回らず、角は 00。緯線は大円で、北側に張る立体角は半球の 2π≡02\pi\equiv0 である。北極(θc=0\theta_{\mathrm c}=0)では −360∘≡0-360^\circ\equiv0 で、鉛直方向は動かず、緯線は1点に縮んで ΘC=0\Theta_C=0 である。北極の振り子は宇宙に対して向きを保ち、地球がその下で1回転する。

1 Y. Aharonov and D. Bohm (1959), Phys. Rev. 115, 485–491.

2 J. H. Hannay (1985), J. Phys. A: Math. Gen. 18, 221–230.

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