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授業で習った形との対応

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第9章 断熱定理と Berry 位相
目次
  1. 授業の断熱近似
  2. 授業の Born–Oppenheimer 近似
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部 第9章 §4.9.6 ★★ 授業の断熱近似は位相 γn\gamma_n を「付け替えれば消せる」として落とす。閉じた道ではそれができず、Born–Oppenheimer 近似の核の方程式にはベクトルポテンシャル ℏAn\hbar\bm{A}_n が入る

授業の断熱近似

学部の量子力学の授業では、時間に依る Hamiltonian H^(t)\hat H(t) の固有状態 ψn(t)\psi_n(t) で Ψ(t)=∑ncn(t)e−iηn(t)ψn(t)\Psi(t)=\sum_nc_n(t)\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\eta_n(t)}\psi_n(t) と展開し、

c˙m=−cm⟨ψm∣∂ψm∂t⟩−∑n≠mcn⟨ψm∣∂tH^∣ψn⟩En−Em ei(ηm−ηn)\dot c_m=-c_m\Bigl\langle\psi_m\Bigm|\frac{\partial \psi_m}{\partial t}\Bigr\rangle-\sum_{n\neq m}c_n\frac{\langle \psi_m | \partial_t\hat H | \psi_n \rangle }{E_n-E_m}\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}(\eta_m-\eta_n)}

を導いて、第2項を落とすことで断熱近似を述べる。この式は式 (4.9.8) と式 (4.9.10) を合わせたものと同じである。第1項については「ψm(t)\psi_m(t) の位相を時刻ごとに選び直せば ⟨ψm∣∂tψm⟩=0\langle \psi_m | \partial_t\psi_m \rangle =0 にできる」として、Ψ(t)≈e−iηn(t)ψn(t)\Psi(t)\approx\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\eta_n(t)}\psi_n(t) を答えとすることが多い。

この扱いは開いた道では正しい。位相を ⟨ψn∣∂tψn⟩=0\langle \psi_n | \partial_t\psi_n \rangle =0 となるように選ぶこと(平行移動のゲージ)は、χ(t)=γn(t)\chi(t)=\gamma_n(t) のゲージ変換で γn\gamma_n を固有状態の側へ吸収することにあたる。しかし閉じた道では、平行移動で運んだ ψn(T)\psi_n(T) が出発点の ψn(0)\psi_n(0) と一致する保証は無く、一致させようとすると eiγn(C)\mathrm{e}^{\mathrm{i}\gamma_n(C)} の食い違いが残る。1価性(同じ H^\hat H には同じ固有状態)と平行移動を両方満たす選び方は、γn(C)=0\gamma_n(C)=0(2π2\pi を法として)の場合にしか存在しない。

1984年まで Berry 位相が見過ごされていた一因は、ここにある。もう1つの理由は、Hamiltonian が実数の行列のとき固有状態を実数にとれて、⟨n∣∂n⟩\langle n | \partial n \rangle が実数かつ純虚数、つまり 00 になることである。このときでも、固有状態を実数のまま閉じた道に沿って連続に運ぶと、出発点に戻ったとき符号が反転していることがある。符号の反転は Berry 位相 π\pi にあたる。実数の Hamiltonian の Berry 位相は 00 か π\pi に限られ、π\pi になるのは道が縮退点を囲むときである。

授業の Born–Oppenheimer 近似

分子の授業では、原子核の位置 R\bm{R} を止めて電子の Schrödinger 方程式を解き、得られた En(R)E_n(\bm{R}) をポテンシャルとして原子核の Schrödinger 方程式

[P^22M+En(R)]χ(R)=Eχ(R)(4.9.26)\Bigl[\frac{\hat{\bm{P}}^2}{2M}+E_n(\bm{R})\Bigr]\chi(\bm{R})=E\chi(\bm{R})\tag{4.9.26}

を解く(P^=−iℏ∇R\hat{\bm{P}}=-\mathrm{i}\hbar\nabla_{\bm{R}})。この章の言葉では、原子核の位置が電子の Hamiltonian のパラメータ R\bm{R} である。違いは、パラメータが外から決まった時刻の関数でなく、原子核自身の量子力学の変数になっていることである。全体の波動関数を Ψ=χ(R)∣n(R)⟩\Psi=\chi(\bm{R})| n(\bm{R}) \rangle と置き、電子の状態 ∣n(R)⟩| n(\bm{R}) \rangle に射影して原子核の方程式を作ると、

[(P^−ℏAn(R))22M+En(R)+ℏ22M(⟨∇Rn∣∇Rn⟩−∣An∣2)]χ(R)=Eχ(R)(4.9.27)\Bigl[\frac{(\hat{\bm{P}}-\hbar\bm{A}_n(\bm{R}))^2}{2M}+E_n(\bm{R})+\frac{\hbar^2}{2M}\Bigl(\langle \nabla_{\bm{R}}n | \nabla_{\bm{R}}n \rangle -\lvert \bm{A}_n\rvert ^2\Bigr)\Bigr]\chi(\bm{R})=E\chi(\bm{R})\tag{4.9.27}

になる(ほかの電子状態へ移る項は落とした)。P^\hat{\bm{P}} が ∣n(R)⟩| n(\bm{R}) \rangle にも当たることで、P^(χ∣n⟩)\hat{\bm{P}}\bigl(\chi| n \rangle \bigr) を ⟨n∣\langle n | に射影すると (P^−ℏAn)χ(\hat{\bm{P}}-\hbar\bm{A}_n)\chi が出る。原子核は Berry 接続をベクトルポテンシャルとする「磁場」の中を運動し、電荷 qq の位置に ℏ\hbar が入る。第2部第2章(第2部第2章)の最小結合 p−qA\bm{p}-q\bm{A} と同じ形である。この形は Mead と Truhlar(1979)が分子の問題で明示した1C. A. Mead and D. G. Truhlar (1979), J. Chem. Phys. 70, 2284–2296.下の脚注へ。

授業の式 (4.9.26) は、An\bm{A}_n の項と、式 (4.9.27) の最後の小さなスカラーの項を落としたものである。固有状態を実数にとれるとき An\bm{A}_n は局所的には 00 だが、原子核の道が電子の準位の交差点(円錐交差)を囲むと、上で見た符号の反転が起き、原子核の波動関数 χ\chi に「1周で符号が反転する」という境界条件が課される2H. C. Longuet-Higgins, U. Öpik, M. H. L. Pryce and R. A. Sack (1958), Proc. R. Soc. Lond. A 244, 1–16.下の脚注へ。これを落とすと、原子核の回転の準位を誤る。図 4.9.3 は総合問題の模型(円周の上を回る原子核と2準位の電子)で、厳密な準位と、2つの近似の準位を比べたものである。

図

図 4.9.3 円周の上を回る原子核(慣性モーメント II)と、交差点を囲む2準位の電子の模型(総合問題)の低い準位。左は授業の Born–Oppenheimer 近似の m2+14m^2+\frac14、中央は Berry 位相 π\pi を入れた (m+12)2+14(m+\frac12)^2+\frac14(実線)、右は電子と原子核を合わせた Hamiltonian の数値対角化(点線、κ=50ℏ2/(2I)\kappa=50\hbar^2/(2I))。右の数字は縮退の数。厳密な準位はすべて2重に縮退し、中央の近似と 0.030.03 以下の差で合う

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ℏ2/(Mg ℓ2)→0\hbar^2/(M g\,\ell^2)\to0(原子核の運動のエネルギーの尺度が電子の準位の間隔 gg より小さい。ℓ\ell は原子核の運動の長さの尺度) | 証明 要確認(ギャップが閉じる交差点の近くでは前提が破れる。原子核の波動関数が交差点から離れていることが要るが、その誤差評価を原論文で確かめていない) | 行き先 近似の数理 第7章

例題 4.9.7 実数の Hamiltonian と符号の反転 ★★

オリジナル実数の 2×22\times2 行列 H^(X,Z)=Xσx+Zσz\hat H(X,Z)=X\sigma_x+Z\sigma_z を考える。パラメータは平面 (X,Z)(X,Z) の点で、X=ρsin⁡φX=\rho\sin\varphi, Z=ρcos⁡φZ=\rho\cos\varphi と書く。

  1. (1) 低い方の固有値と、実数の固有ベクトル (−sin⁡φ2, cos⁡φ2)T(-\sin\frac\varphi2,\ \cos\frac\varphi2)^{\mathsf T} を確かめよ。φ\varphi を 00 から 2π2\pi まで連続に変えると何が起きるか。
  2. (2) 原点を囲む円の Berry 位相を、(1) と、式 (4.9.16) の立体角の両方から求めよ。
  3. (3) 中心 (X,Z)=(2,0)(X,Z)=(2,0)、半径 11 の円(原点を囲まない)を1周すると、Berry 位相はいくらか。
解答

(1) H^=ρ(cos⁡φsin⁡φsin⁡φ−cos⁡φ)\hat H=\rho\begin{pmatrix}\cos\varphi&\sin\varphi\\ \sin\varphi&-\cos\varphi\end{pmatrix} の固有値は ±ρ\pm\rho。v=(−sin⁡φ2,cos⁡φ2)Tv=(-\sin\frac\varphi2,\cos\frac\varphi2)^{\mathsf T} に掛けると、第1成分は ρ(−cos⁡φsin⁡φ2+sin⁡φcos⁡φ2)=ρsin⁡φ2\rho(-\cos\varphi\sin\frac\varphi2+\sin\varphi\cos\frac\varphi2)=\rho\sin\frac\varphi2、第2成分は ρ(−sin⁡φsin⁡φ2−cos⁡φcos⁡φ2)=−ρcos⁡φ2\rho(-\sin\varphi\sin\frac\varphi2-\cos\varphi\cos\frac\varphi2)=-\rho\cos\frac\varphi2 で、H^v=−ρv\hat Hv=-\rho v。φ→φ+2π\varphi\to\varphi+2\pi で v→−vv\to-v となり、連続に運んだ実数の固有ベクトルは1周で符号が反転する。

(2) vv は実数で ⟨v∣∂φv⟩=0\langle v | \partial_\varphi v \rangle =0 なので、vv をそのまま使うと Berry 接続は 00 だが、vv は1価でない。1価な eiφ/2v\mathrm{e}^{\mathrm{i}\varphi/2}v に取り替えると Aφ=i⋅i2=−12A_\varphi=\mathrm{i}\cdot\frac{\mathrm{i}}2=-\frac12 で、γ=−π≡π\gamma=-\pi\equiv\pi。立体角で見ると、R=(X,0,Z)\bm{R}=(X,0,Z) は単位球面の xzxz 面の大円を描き、北側の立体角は半球の 2π2\pi、低い方の状態は ∣−⟩| - \rangle なので γ−=+12⋅2π=π\gamma_-=+\frac12\cdot2\pi=\pi で一致する。

(3) 円の内側に縮退点が無いので、Berry 曲率の流束は 00 で γ=0\gamma=0。実際、固有ベクトルの角 φ\varphi は arctan⁡\arctan の範囲で行って戻るだけで 2π2\pi 回らず、符号の反転は起きない。離散の公式 (4.9.22) で数値計算すると、原点を囲む円で π\pi、囲まない円で 00 になる(検算 verify_ch4-09.py)。

1 C. A. Mead and D. G. Truhlar (1979), J. Chem. Phys. 70, 2284–2296.

2 H. C. Longuet-Higgins, U. Öpik, M. H. L. Pryce and R. A. Sack (1958), Proc. R. Soc. Lond. A 244, 1–16.

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