になることを示し、スカラーの項の値を求めよ(ほかの電子状態へ移る項は落とす)。この方程式が、Aharonov–Bohm の磁束を囲む環の上の粒子と同じ形であることを述べ、磁束が磁束量子 h/∣q∣ の何倍にあたるか答えよ。4. (4) (使う道具:第4部第5章の角運動量・(3))χ が1価であることから準位を求め、最低準位の縮退を答えよ。Berry 位相を落とした授業の Born–Oppenheimer 近似の準位と比べよ。5. (5) (使う道具:4.9.2節の断熱定理・近似の数理 第7章)ℏ2/(2I) を単位にとると、電子と原子核を合わせた H^ の数値対角化で、最低準位 E+κ はκ=50 で 0.4975、κ=500 で 0.49975 になった(どちらも2重に縮退)。(4) の値との差がどう小さくなるかを述べ、(3) で落とした項の大きさと結びつけよ。
解答
(1) H^e=κ(cosφsinφsinφ−cosφ) の固有値は ±κ で、φ に依らずギャップは 2κ である。低い方の固有ベクトルは例題 4.9.7 の ∣n(φ)⟩=(−sin2φ, cos2φ)T で、φ→φ+2π で sin2φ, cos2φ がともに符号を変えるので ∣n⟩→−∣n⟩。eiφ/2 も1周で −1 倍になるので、∣n~(φ)⟩=eiφ/2∣n(φ)⟩ は1価である。
(2) ∣n⟩ は実数で規格化されているので ⟨n∣∂φn⟩=21∂φ⟨n∣n⟩=0。∂φ∣n~⟩=2i∣n~⟩+eiφ/2∣∂φn⟩ から⟨n~∣∂φn~⟩=2i、Aφ=i⋅2i=−21。1周の Berry 位相は ∮Aφdφ=−π≡π である。4.9.4節の言葉では、(cosφ,sinφ) を3次元の R の xz 面の大円とみると、立体角 2π を囲み、低い方の状態の γ−=+21⋅2π=π と一致する。
(3) ∂φ(χn~)=χ′n~+χ∂φn~、∂φ2(χn~)=χ′′n~+2χ′∂φn~+χ∂φ2n~。⟨n~∣ を掛けると、⟨n~∣∂n~⟩=−iAφ と、それを微分した ⟨n~∣∂2n~⟩=−iAφ′−⟨∂n~∣∂n~⟩ から
−⟨n~∣∂φ2(χ∣n~⟩)=−χ′′+2iAφχ′+iAφ′χ+⟨∂n~∣∂n~⟩χ=(−i∂φ−Aφ)2χ+(⟨∂n~∣∂n~⟩−Aφ2)χ
となる(右辺の2乗を展開すると −χ′′+2iAφχ′+iAφ′χ+Aφ2χ)。⟨n~∣H^e∣n~⟩=−κ を合わせれば問題の式になる。スカラーの項は ⟨∂n~∣∂n~⟩=41+⟨∂n∣∂n⟩=41+41=21(交差項は ⟨n∣∂n⟩=0 で消え、∂φ∣n⟩=−21(cos2φ,sin2φ)T のノルムの2乗が 41)、Aφ2=41 なので 2Iℏ2⋅41 である。半径 ρ の環の上の電荷 q の粒子は、環の中を磁束 Φ が貫くとき 2mρ21(−iℏ∂φ−2πqΦ)2 に従う(A の周方向の成分が Φ/(2πρ))。ℏAφ=qΦ/(2π) と読み替えると、Aφ=−21 は qΦ/h=−21、つまり磁束量子 h/∣q∣ の半分の磁束にあたる。
(4) χ=eimφ(m は整数。1価のため)を入れると、(−i∂φ+21)2χ=(m+21)2χ なので
Em=−κ+2Iℏ2[(m+21)2+41],m=0,±1,±2,…
である。m と −1−m が同じ準位を与えるので、すべての準位が2重に縮退し、最低準位は m=0,−1 の −κ+2Iℏ2⋅21 である。原子核の実効的な角運動量 ℏ(m+21) は半整数になる。Berry 位相を落とすと χ が ∣n⟩ の符号の反転を知らないまま1価に量子化され、Em=−κ+2Iℏ2(m2+41) となって、最低準位は m=0 の1つだけ(縮退なし)、次が m=±1 の2重縮退になる。図 4.9.3 のとおり、厳密な準位はすべて2重に縮退していて、後者とは合わない。
(5) κ=50 で 0.5−0.4975=0.0025、κ=500 で 0.5−0.49975=0.00025 で、差は 1/κ に比例して減り、どちらも 1/(8κ) に等しい。(3) で落としたのは、原子核の運動エネルギーの演算子が電子の低い状態と高い状態をつなぐ項で、その大きさは 2Iℏ2∣⟨上∣∂φn⟩∣⋅∣∂φ∣∼2Iℏ2 の程度である。これが2次の摂動としてギャップ 2κ で割られて準位をずらすので、補正は (2Iℏ2)2/κ の大きさ、単位 ℏ2/(2I) で測って 1/κ に比例する。断熱定理の条件 ℏ∣R˙∣∥∇H^∥/g2≪1 は、原子核の回転の角速度 φ˙∼ℏ/I と ∥∂φH^e∥=κ、g=2κ を入れるとIκℏ2≪1 となり、κ≫ℏ2/(2I) と同じ条件になる(検算 verify_ch4-09.py)。