光学と量子エレクトロニクス 第31章 §31.2 ★★★ 古典の電流は a^ の1次で結合して a^→a^+α(変位)を、2倍の周波数のポンプは a^ の2次で結合して a^→a^coshr−a^†e2iθsinhr(スクイーズ)を作る。どちらも直交位相の線形の正準変換
1次の結合:変位演算子
古典の電流がモードを揺すると、相互作用は a^ と a^† の1次の式になる。回転座標(相互作用描像)で書くと
H^I(t)=ℏ(f(t)a^†+f∗(t)a^)(31.6)
で、f(t) は電流の強さと位相を表す複素数の関数である。Heisenberg の運動方程式は dtda^=[a^,H^I]/(iℏ)=−if(t) で、右辺が演算子を含まないので、
a^ → a^+α,α=−i∫f(t)dt(31.7)
とただ数が足される。H^I を別の時刻の自分と交換するのは数だけなので、時間発展の演算子は位相の因子を除いて
D^(α)=exp(αa^†−α∗a^),D^(α)†a^D^(α)=a^+α(31.8)
になる。D^(α) を変位演算子と呼ぶ。後ろの式は、Baker–Campbell–Hausdorff の展開 e−B^a^eB^=a^+[a^,B^]+⋯ で [a^,αa^†−α∗a^]=α が数なので2項目で止まることから出る。直交位相で言えば X^1→X^1+Reα、X^2→X^2+Imα で、位相平面の平行移動である。揺らぎの形は変わらない。
2次の結合:スクイーズ演算子
第17章の縮退したパラメトリック過程では、角周波数 2ω のポンプ光が χ(2) を通して、角周波数 ω の光子を2個ずつ作ったり消したりする。ポンプを古典の振幅に置き、回転座標で速く振動する項を捨てると、相互作用は a^ の2次の式
H^I=2iℏ(κa^†2−κ∗a^2)(31.9)
になる。κ はポンプの複素振幅と χ(2) に比例する定数で、その位相はポンプの位相である。運動方程式は dtda^=[a^,H^I]/(iℏ)=κa^† で、κ=g>0(実数)に選ぶと
dtdX^1=gX^1,dtdX^2=−gX^2⟹X^1(t)=egtX^1,X^2(t)=e−gtX^2(31.10)
を得る。ポンプと位相のそろった直交位相は指数関数で増幅され、それと直交する直交位相は同じ割合で減衰する。これが位相に敏感な増幅で、古典の非線形光学でも同じ式が成り立つ。量子論で新しいのは、この式が揺らぎにも当たることで、真空の揺らぎも一方の向きに e−gt 倍に縮み、他方の向きに egt 倍に伸びる。
時間発展の演算子を一般の形で書いておく。
定義 31.1(スクイーズ演算子)
複素数 ζ=re2iθ(r≥0)について
S^(ζ)=exp[21(ζ∗a^2−ζa^†2)](31.11)
をスクイーズ演算子、r をスクイーズの強さと呼ぶ。式 (31.9) の時間発展は S^(ζ) で ζ=−κt である。
命題 31.2(スクイーズの変換 ★★★)
S^(ζ)†a^S^(ζ)=a^coshr−a^†e2iθsinhr,S^(ζ)†X^θS^(ζ)=e−rX^θ,S^(ζ)†X^θ+π/2S^(ζ)=erX^θ+π/2.(31.12)
証明は例題 31.2 で行う。a^ を a^ と a^† の1次結合に移す変換を Bogoliubov 変換と呼ぶ。cosh2r−sinh2r=1 なので、変換した演算子も [a^′,a^′†]=1 を満たす。向き θ の直交位相が e−r 倍に縮み、それと直交する向きが er 倍に伸びる。位相平面の面積は変わらない。
2つの変換はどちらも線形の正準変換
変位は (X^1,X^2) の平行移動、スクイーズは行列式 1 の線形変換 diag(e−r,er)(を θ だけ回した座標で見たもの)である。古典の位相平面で言えば、どちらも面積を保つ線形の正準変換(シンプレクティック変換)で、第4章(第4章)の ABCD 行列の行列式が 1 であるのと同じ種類の変換である。Hamiltonian が演算子の2次以下の式なら Heisenberg の運動方程式は線形になり、量子論の時間発展は古典の線形の正準変換をそのまま演算子に当てたものになる。真空の Gauss 型の揺らぎは、この変換で Gauss 型のまま移る。この章の状態がすべて Gauss 型の広がりで描けるのはこのためである。
例題 31.2 スクイーズの変換を微分方程式で導く ★★
オリジナルζ=re2iθ を固定し、s∈[0,r] について S^s=exp[2s(e−2iθa^2−e2iθa^†2)]、a^(s)=S^s†a^S^s とおく。
- (1) dsda^(s)=−e2iθa^†(s) を示し、これを解いて式 (31.12) の1つ目を導け。
- (2) θ=0 のとき、変換が (X^1,X^2)→(e−rX^1,erX^2) であることを示せ。一般の θ では X^θ が縮むことを示せ。
- (3) (X^1,X^2) に対する一般の θ の変換行列の行列式が 1 であることを確かめよ。
解答
(1) G^=21(e−2iθa^2−e2iθa^†2) とおくと S^s=esG^、G^†=−G^ で、dsda^(s)=S^s†[a^,G^]S^s である。[a^,a^2]=0、[a^,a^†2]=2a^† から [a^,G^]=−e2iθa^† で、dsda^(s)=−e2iθa^†(s) を得る。エルミート共役をとると dsda^†(s)=−e−2iθa^(s) で、2つを合わせると ds2d2a^(s)=a^(s)。初期条件 a^(0)=a^、a^′(0)=−e2iθa^† を満たす解は a^(s)=a^coshs−a^†e2iθsinhs で、s=r で式 (31.12) になる。
(2) θ=0 では a^→a^coshr−a^†sinhr、a^†→a^†coshr−a^sinhr で、X^1=21(a^+a^†)→21(a^+a^†)(coshr−sinhr)=e−rX^1、X^2=2i1(a^−a^†)→2i1(a^−a^†)(coshr+sinhr)=erX^2 である。一般の θ では b^=a^e−iθ とおくと、変換は b^→b^coshr−b^†sinhr と θ=0 の形になり、X^θ=21(b^+b^†) が e−r 倍、X^θ+π/2 が er 倍になる。
(3) a^=X^1+iX^2 を代入して実部と虚部に分けると、変換は
(X^1X^2)→(coshr−sinhrcos2θ−sinhrsin2θ−sinhrsin2θcoshr+sinhrcos2θ)(X^1X^2)
である。行列式は cosh2r−sinh2rcos22θ−sinh2rsin22θ=cosh2r−sinh2r=1。対称な行列で、固有値 e∓r の固有ベクトルが向き θ と θ+π/2 である。
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