光学と量子エレクトロニクス 第32章 §32.2 ★★★ 1つのモードの g(2)(0)=1+(Varn−nˉ)/nˉ2 は光子数の分布の幅で決まる。コヒーレント状態で 1、熱的な光で 2、光子数状態 ∣N⟩ で 1−1/N。古典の光は g(2)(0)≥1 を満たす
1つのモードの g(2)(0)
1つのモードでは、式 (32.4) の τ=0 の値は、Eph と位相の因子が分子と分母で消えて
g(2)(0)=⟨a^†a^⟩2⟨a^†2a^2⟩=nˉ2⟨n^(n^−1)⟩=1+nˉ2Varn−nˉ(32.6)
になる。nˉ=⟨n^⟩、Varn=⟨n^2⟩−nˉ2 である。光子数の分布 Pn(光子が n 個ある確率)の平均と分散だけで決まる。分散が平均に等しい分布、つまり Poisson 分布を基準にとり、そこからのずれを
QM=nˉVarn−nˉ=nˉ(g(2)(0)−1)(32.7)
と書いて Mandel の Q パラメータと呼ぶ。QM>0 を超 Poisson、QM<0 をサブ Poisson と呼ぶ。
3つの代表的な状態で分布を比べる。
コヒーレント状態 ∣α⟩ では Pn=e−nˉnˉn/n!(nˉ=∣α∣2)の Poisson 分布である(第31章)。a^∣α⟩=α∣α⟩ から直接 ⟨a^†2a^2⟩=∣α∣4 となり、g(2)(0)=1、QM=0 である。しきい値より上のレーザーの光はこの状態に近い。
熱的な状態は、1つのモードが熱平衡にあるときの ρ^∝e−βℏωn^ で、平均光子数 nˉ で書くと
Pn=(1+nˉ)n+1nˉn,Varn=nˉ+nˉ2,g(2)(0)=2(32.8)
になる(Bose–Einstein 分布)。nˉ=nB(ω) は Planck 分布である。Pn は n=0 が最も大きく、n とともに等比で減る。
光子数状態 ∣N⟩ では分散が 0 なので、g(2)(0)=1−1/N、QM=−1 である。N=1 では g(2)(0)=0 になる。

図 32.1 平均光子数 nˉ=4 の3つの状態の光子数の分布(どれも厳密な式なので点線でつないだ)。Poisson 分布は g(2)(0)=1、熱的な分布は幅が広く g(2)(0)=2、光子数状態は幅が 0 で g(2)(0)=3/4。光子数状態の棒は高さ 1 を図の上で切った
古典の光は g(2)(0)≥1
古典の光と量子の光の境目をはっきりさせるために、状態をコヒーレント状態の重ね合わせ(混合)で書く。
ρ^=∫P(α)∣α⟩⟨α∣d2α(32.9)
を Glauber–Sudarshan の P 表示と呼ぶ。どんな状態もこの形に書けるが、P(α) は普通の関数にならず、負の値や特異な超関数になることがある。P(α) が確率密度(非負の関数)になる状態は、振幅 α がでたらめに揺らぐ古典の場と区別がつかないので、古典の状態と呼ぶ。コヒーレント状態(P はデルタ関数)と熱的な状態(P は Gauss 関数)は古典の状態で、光子数状態は古典の状態でない。
命題 32.1(古典の光の g(2)(0))
P(α)≥0 の状態では g(2)(0)≥1 である。したがって g(2)(0)<1(QM<0)の光は古典の状態でない。
証明
正規順序の積の期待値は、a^∣α⟩=α∣α⟩ と ⟨α∣a^†=α∗⟨α∣ から ⟨a^†ka^k⟩=∫P(α)∣α∣2kd2α になる。P≥0 を確率密度とみなし、x=∣α∣2 の平均を ⟨x⟩P と書くと、⟨a^†2a^2⟩−⟨a^†a^⟩2=⟨x2⟩P−⟨x⟩P2=⟨(x−⟨x⟩P)2⟩P≥0 である。両辺を ⟨a^†a^⟩2 で割れば g(2)(0)−1≥0 を得る。
古典の言葉では、g(2)(0)−1 は強度の揺らぎの分散 ⟨I2⟩−⟨I⟩2 を ⟨I⟩2 で割ったもので、負にならない。光子数状態の光は、強度が揺らがない以上に光子数がそろっている。
ビームスプリッタと損失は g(2)(0) を変えない
1台の検出器は、1回鳴った後しばらく鳴らない(不感時間。数十 ns が多い)。そのため短い τ の g(2) は、光を 50:50 のビームスプリッタで2つに分け、2つの出口に置いた検出器の同時計数で測る(32.4節の Hanbury Brown–Twiss の配置)。ビームスプリッタの2つの出口のモードを c^=(a^+b^)/2、d^=(a^−b^)/2 と書く(第9章のユニタリな散乱行列の1つの選び方。もう一方の入口のモード b^ は真空)。真空の b^ を右から掛けると 0 になるので、b^ を含む項は正規順序の期待値から消え、
⟨c^†c^⟩⟨d^†d^⟩⟨c^†d^†d^c^⟩=(nˉ/2)2⟨a^†2a^2⟩/4=g(2)(0)(32.10)
となる。2つの出口の同時計数の比は入口の光の g(2)(0) そのものである。光子1個の状態では左辺の分子が 0 で、光子は2つの出口の片方にしか現れない。
同じ計算から、検出の効率 η(光が途中で失われる損失も含む)も g(2)(0) を変えないことがわかる。損失は、割合 η だけを通すビームスプリッタの片方の出口だけを見ることと同じで、⟨a^†2a^2⟩ が η2 倍、nˉ が η 倍になるからである。一方 QM=nˉ(g(2)(0)−1) は nˉ に比例するので η 倍になる。効率の低い検出器ではサブ Poisson の度合い QM は小さくしか見えないが、g(2)(0) はそのまま見える。
例題 32.2 光子5個の状態を効率 0.6 で数える ★★
オリジナル光子数状態 ∣5⟩ の光を、効率 η の検出器で数える。光子1個1個が独立に確率 η で数えられるとする。
- (1) 数えた光子数の分布を書き、平均と分散を η で表せ。
- (2) 数えた光子数の g(2)(0) と QM を求めよ。
- (3) η=0.6 のときの平均・分散・QM を求め、同じ平均の Poisson 分布と比べよ。
解答
(1) 5個のうち j 個が数えられる確率は二項分布 (j5)ηj(1−η)5−j で、平均 5η、分散 5η(1−η) である。
(2) 二項分布の階乗の積率は ⟨j(j−1)⟩=20η2 なので、g(2)(0)=20η2/(5η)2=4/5 で、η によらず入口の 1−1/5 と同じである。QM=(5η(1−η)−5η)/(5η)=−η で、入口の −1 の η 倍になる。
(3) 平均 3.00、分散 1.20、QM=−0.60 である。同じ平均の Poisson 分布の分散は 3.00 なので、数えた結果の分布は Poisson 分布より狭い。η→0 では分散が平均に近づき、どんな光も数えた結果は Poisson 分布に近づく。光子をまばらに間引くと、間引かれた後の光子どうしの相関が見えにくくなるからである。
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