光学と量子エレクトロニクス 第34章 §34.6 ★★ 学部の量子力学の黄金律と状態密度の式は、式 (34.12) の Γ=2πJ(ω0) と同じ式である。古典の双極子放射の Larmor の式からは振幅 2deg の双極子で同じ Γ が出て、半古典の理論からは Γρee(1−ρee) しか出ない
黄金律
学部の量子力学では、始状態 ∣i⟩ から連続な終状態への遷移の速さを Fermi の黄金律
wi→f=ℏ2πf∑∣⟨f∣H^int∣i⟩∣2δ(Ef−Ei)=ℏ2π∣⟨f∣H^int∣i⟩∣2ρ(Ei)(34.25)
で求める(ρ(E) は終状態の状態密度)。∣i⟩=∣e,0⟩、∣f⟩=∣g,1ks⟩ とすれば行列要素は ℏgks∗ で、δ(Ef−Ei)=δ(ωk−ω0)/ℏ からw=2π∑∣gks∣2δ(ωk−ω0)=2πJ(ω0) になり、式 (34.12) の Γ と一致する。授業の式は、状態密度 ρ(E) と行列要素 ∣⟨f∣H∣i⟩∣2 を別々に書き、この章はそれを1つの J(ω) にまとめた。まとめると、自由空間と共振器を同じ式で比べることができる。黄金律は「始状態の確率がほとんど減っていない短い時間」で導くが、Wigner–Weisskopf の方法は同じ速さで確率が e−Γt と減り続けることまで示す。授業の黄金律は、この章の Markov 近似を、減衰を無視した初めの時間で使ったものに当たる。
学部の電磁気の授業の多くは、自然放出の速さを Einstein の関係で出す。第20章の A21=π2c3ℏω3B21(u(ω) 基準。u(ν) 基準では A=c38πhν3B(ν))に、黄金律で計算した B21 を入れる方法である。この章の式 (34.13) は、その結果を熱平衡を経ずに直接出した。
古典の双極子放射と半古典の理論
古典電磁気学では、振幅 d0 で Re[d0e−iωt] と振動する双極子が出す光の平均の仕事率は Larmor の式
P=12πε0c3ω4d02(34.26)
で与えられる。d0=2deg と置くと P/(ℏω)=ω3deg2/(3πε0ℏc3)=Γ で、量子論の自然放出の速さと一致する。授業で自然放出の速さを「振幅 2deg の古典の双極子の放射」から覚える流儀は、この一致を使っている。
一致の意味は、場を古典に置いたままの半古典の理論と比べると分かる。原子の状態が cg∣g⟩+ce∣e⟩ のとき、双極子の期待値の振幅は d0=2∣ρeg∣deg で、純粋状態では ∣ρeg∣2=ρeeρgg である。Larmor の式から出る放射の速さ(光子数)は
ℏωP=Γρee(1−ρee)(34.27)
で、量子論の Γρee と比べて Γρee2 だけ足りない。ρee=1 の励起状態では、双極子の期待値が0なので半古典の理論は何も放射しない。足りない分が、真空の揺らぎ Eph に促された放出(式 (34.6) の n+1 の 1)である。弱く励起された原子(ρee≪1)では2つが一致するので、第3部の Lorentz 振動子の放射減衰は半古典の扱いで正しい値になる。
例題 34.7 半古典の理論で足りない放出 ★★
オリジナル自然放出の速さ Γ の2準位の原子を、時刻 0 に ρee(0)=1−ϵ(0<ϵ≪1)の純粋状態に置く。
- (1) 量子論の ρ˙ee=−Γρee に従うとき、ρee=21 になる時刻を求めよ。
- (2) 半古典の式 (34.27) に従って ρ˙ee=−Γρee(1−ρee) で減るとき、同じ時刻を求め、ϵ→0 でどうなるかを述べよ。
解答
(1) ρee=(1−ϵ)e−Γt で、21 になるのは t=Γ−1ln[2(1−ϵ)]≈(ln2)/Γ=0.693/Γ である。
(2) 方程式はロジスティック型で、dtdln1−ρeeρee=−Γ から 1−ρeeρee=ϵ1−ϵe−Γt である。ρee=21 では左辺が1なので、t=Γ−1ln[(1−ϵ)/ϵ] になる。ϵ→0 でこの時刻は対数で発散し、完全に励起された原子は半古典の理論では放射を始めない。量子論では、真空の揺らぎに促された放出が初めから起きるので、時刻は ϵ によらず 0.693/Γ に収まる。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com