相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第1部 第3章 §1.3.3 ★★★ 一様分布と比べるとエントロピーの上限が出て、結合分布の驚きを2つに分けると条件付きエントロピーと連鎖律が出る
一様分布と比べる
X の上の一様分布を u(x)=1/∣X∣ とする。任意の分布 p について
D(p∥u)=x∑p(x)ln(p(x)∣X∣)=ln∣X∣−H(p)
なので、
H(p)=ln∣X∣−D(p∥u)(1.3.9)
が成り立つ。Gibbs の不等式から H(p)≤ln∣X∣ で、等号は p=u のときに限る。一方、−lnp(x)≥0 なので H(p)≥0 で、等号は p がある1つの値に確率1を置くときである。まとめると
0≤H(X)≤ln∣X∣.(1.3.10)
式 (1.3.9) は、エントロピーを「一様分布からどれだけ離れているか」の裏返しとして読む式である。最大エントロピーが一様分布で実現されるという主張は、Gibbs の不等式の等号条件そのものである。この形は、統計力学で「エネルギーの平均だけを知っているときの分布」を求める問題(第2部第1章)で、比べる相手を一様分布から別の分布に替えて使う。
結合エントロピーと条件付きエントロピー
2つの確率変数 X,Y が有限集合 X,Y に値をとり、結合分布 pXY(x,y) を持つとする。周辺分布をpX(x)=∑ypXY(x,y)、pY(y)=∑xpXY(x,y)、pY(y)>0 のときの条件付き分布を pX∣Y(x∣y)=pXY(x,y)/pY(y) と書く。組 (X,Y) を1つの確率変数とみたエントロピー
H(X,Y):=−x,y∑pXY(x,y)lnpXY(x,y)
を結合エントロピーと呼ぶ。
第1部第2章で定義した条件付きエントロピー(式 (1.2.7))と連鎖律(式 (1.2.8))を、相互情報量に使う形で書き直しておく。Y=y を知ったあとの X の分布 pX∣Y(⋅∣y) のエントロピーを H(X∣Y=y) と書くと、それを pY で平均したもの
H(X∣Y)=y∑pY(y)H(X∣Y=y)=−x,y∑pXY(x,y)lnpX∣Y(x∣y)(1.3.11)
が、Y を知ったときの X の条件付きエントロピーである(第2章の式で X と Y の役を入れ替えたもの)。
結合分布の驚きは、pXY(x,y)=pY(y)pX∣Y(x∣y) の対数をとって
−lnpXY(x,y)=−lnpY(y)−lnpX∣Y(x∣y)
と2つに分かれる。「y が出た驚き」と「y を知ったうえで x が出た驚き」の和である。これを pXY で平均すると、エントロピーの連鎖律
H(X,Y)=H(Y)+H(X∣Y)=H(X)+H(Y∣X)(1.3.12)
を得る。変数が n 個でも同じで、H(X1,…,Xn)=∑i=1nH(Xi∣X1,…,Xi−1) となる(i=1 の項は H(X1))。
H(X∣Y=y) は1つの分布のエントロピーなので、式 (1.3.10) から 0≤H(X∣Y=y)≤ln∣X∣ を満たす。平均した H(X∣Y) も同じ範囲にある。H(X∣Y)=0 となるのは、確率が正のすべての y で X が y から確定するとき、つまり X が Y の関数であるときである。H(X∣Y) を H(X) と比べるには、次の節の相互情報量を使う。
例題 1.3.3 2×2 の表から条件付きエントロピーを求める ★★
オリジナルX,Y∈{0,1} の結合分布が
pXY(0,0)=21,pXY(0,1)=41,pXY(1,0)=0,pXY(1,1)=41
で与えられている。
- (1) 周辺分布 pX,pY と、H(X)、H(Y)、H(X,Y) を求めよ。
- (2) H(X∣Y=0)、H(X∣Y=1) と H(X∣Y) を求め、連鎖律 (1.3.12) を確かめよ。
解答
(1) pX=(3/4,1/4)、pY=(1/2,1/2) である。H(X)=hb(1/4)=43ln34+41ln4≈0.5623、H(Y)=ln2≈0.6931。結合分布は確率 1/2,1/4,1/4 の3つの値を持つので
H(X,Y)=21ln2+41ln4+41ln4=23ln2≈1.0397.
(2) Y=0 のとき pX∣Y(⋅∣0)=(1,0) で、X=0 が確定するので H(X∣Y=0)=0。Y=1 のとき pX∣Y(⋅∣1)=(1/2,1/2) なので H(X∣Y=1)=ln2。平均すると
H(X∣Y)=21⋅0+21ln2=21ln2≈0.3466.
連鎖律の右辺は H(Y)+H(X∣Y)=ln2+21ln2=23ln2 で、(1) の H(X,Y) と一致する。
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